もう一度キスしたかった・・・


その4







「もう・・・何処に消えたんだよ、サンジの奴・・・。」

その頃、シュライヤはサンジの姿を駅前で、必死で探し回っていた。

「おい、その鞄・・・。 確か、バラティエ高校の生徒だよな? 何でこんな時間うろついてん

だ? 補導されるぞ。」

ゾロは、そう言ってシュライヤの腕を捕る。

「あ、えっと。 あんたは、確か・・・」

「ロロノア・ゾロ。 今日から養護教員になった教師だ。 ったく、っで、何キョロキョロしてん

だ? 捜し物か?」

「あ、ああ。 捜しモノとと言えばそうなんだけど・・・。 あんたにゃ、関係ない。 俺、早く探さ

ないと・・・・あいつ、マジヤバくなる・・・・。」

ゾロの言葉に、シュライヤはそう言って、ゾロの手を振りほどこうとした。

しかし、ゾロの手は一向にシュライヤから離れない。

「あいつって・・・探してるのは、お前の友人か何かか? うちの生徒か? だったら、尚更、

事情を話して貰おうか。 話すまでは、この腕、離さないからな。」

ゾロはそう言って、グッと手の力を強めた。

「あたたっ!! わかったって!! 腕、折れるよ!! 俺の親友が、ゲーセンで他校とやり

合ってさ・・・・はぐれちゃったんだ。 その他校・・・A校の連中が、今、サンジを捕まえようと

追いかけてる筈なんだ。 早く合流しないと・・・サンジが、危ないんだ・・!!」

「なに?! サンジだって? サンジが、ヤバいのか?」

ゾロは、シュライヤの言葉にそう反復する。

「ああ、そうさ。 サンジがヤバいって! あの高校のトップのバギーって奴、かなりえげつな

いやり方するから・・・。 それにサンジ、今日、足捻挫して、本調子じゃないし・・・。」

「それ、何処だ!! 何処にサンジは居るんだ?!」

ゾロは夢中で、シュライヤの襟を掴んでそう叫んだ。

「うっ・・あっ・・・苦しいよ・・・!!」

ゾロに首を締め付けられ、シュライヤは必死でもがく。

「ああ、ごめん、ごめん・・・つい・・・。」

「げほっ、ごほっ!! ・・・・・それを、今、探してんじゃないか! あー、死ぬかと思った

ぜ・・・。」

シュライヤは、そう言って咳をして、喉を押さえた。

不意にゾロ達の後ろから、携帯で話している声が聞こえた。

「なに? 見つけた? 何処だ? ふんふん、二丁目の空き地だな。 よし、俺達もすぐにそ

こに行くから。 絶対に逃がすなよ! バギーさんに締められるの、もう、嫌だからな!」

携帯で話していた男は、そう言って電話を切る。

「サンキュー、いい情報、聞かせて貰った。」

ゾロはそう呟いて、その男の首筋に手刀を当て、気絶させた。

周りにいた筈のA校の生徒達も、いつの間にか気絶している。

「ほらっ! さっさと行くぞ!」

「あ、ああ・・・。 本当に、養護教師かよ・・・。」

道ばたに気絶している生徒達の上を飛び越えながら、シュライヤはそう呟いて、ゾロと共に、

サンジの居る空き地へと向かった。











「なんだ? もう終わりかよ・・・? もう少し、楽しませてくれると、思ったんだがな・・・。」

空き地では、フラフラと立つのもやっとな感じのサンジが、残りわずかとなったA校の生徒達

にそう言って笑った。

「クソッ、何て強さだ・・・。とても俺達じゃ敵わねえ。 バギーさんは、まだ来ないのか?」

人数的に有利なはずのA校の生徒達も、あまりの強さにサンジが逃げないようにするのがや

っとだった。

「待たせたな、てめえら。 よく逃がさなかった。 後は、俺がやる・・・。」

程なくして、バギーがそう言ってサンジの前に姿を現す。

「・・・・・・やっとトップのご登場か。 これで少しは楽しめそうだな。」

サンジは深く息を吸い込み、姿勢を正すと、そう言ってバギーを見てニヤリと笑った。

「ふん。 いつまでも口だけは達者なようだが・・・? 立ってるのがやっとじゃねえか。 

けど、手加減はしねえからな。 落とし前、きっちりとつけさせて貰う・・・。」

バギーはそう言うと、ナイフを構えて、サンジに襲いかかる。

だんだんと俊敏になるバギーの動きに、サンジは避けるのがやっとだ。

そのうち、足元の石に蹴躓き、サンジが大きくバランスを崩した。

「てめえの馬鹿さ加減を呪うんだな・・・!!」

バギーはその隙に乗じて、サンジの太股にナイフを突き立てる。

引き抜かれたナイフの傷痕から、絶え間なくサンジの血が噴き出した。

サンジは、刺された足を庇い、その場に蹲る。

「この野郎!! 今までのお返しだ!!」

そう言って数名残っていたA校の生徒達が、蹲ったサンジを一斉に殴りつけた。

サンジは為す術もなく、じっと耐えている。

「さてと・・・。 俺に逆らった見せしめに、もうこの街にいられねえようにしてやるぜ。 野郎

共、そいつの衣服、引っ剥がせ!!」

「わかりました! バギーさん!!」

「てめえら、本当に、クソ野郎だな・・・。」

サンジはそう言って、バギーに唾を吐き掛けると、最後の力を振り縛って抗った。

ビリビリに裂けたシャツは、アッという間に剥ぎ取られ、傷一つないサンジの肌が、バギーの

目に留まる。

「ほう・・・。 性格的には問題有るが、外見は良いもんもってやがるな。 野郎共、しっかり手

足押さえとけよ。」

バギーはそう言って、サンジの肌に手を這わす。

「クソッ! 気味の悪い触り方しやがって!! 触るな!! 離せ!!」

バギーの手の感触に、全身が総毛立ち、悪寒で身体が震えた。

「へへっ。 良いこと考えたぜ。 この綺麗な背中に、俺の名前を彫り込んでやろう。 一生

消えないほど深くな・・・。 そして、己の惨めさを一生噛みしめて生きろよ・・・。」

バギーはそう言って、サンジに見せつけるために、ナイフを舌で舐め上げる。

「クッ・・・。 下衆が・・・!!」

サンジは、そんなバギーを殺さんとばかりに睨み付けた。

「んじゃあ、始めますか!」

バギーがそう言って、サンジの背中にナイフを突き立てようとした時。

「「サンジ!!」」

そう叫びながら、ゾロとシュライヤが現れた。

「なんだ、なんだ? てめえらは?」

A校の生徒達が、ゾロとシュライヤを囲む。

「・・・・・雑魚に用はねえ!! 怪我したくなかったら、そこを退け・・・。」

凛として、貫禄のあるゾロの声と、その視線に、A校の生徒達は、皆、金縛りにあったように

動けなくなってしまった。

ゴクリとシュライヤも喉を鳴らし、その場から動けなかった。

ゾロは、そのまま動けなくなった生徒達の間を通り、サンジの前まで来る。

「何しに来たんだよ!! 俺のことなんか知った事じゃないだろ! 放っておけよ! てめえ

には、全然関係無いことだ!!」

サンジは、ゾロに向かってそう言うと、解放された手足を使い、必死で立ち上がろうと身を捩

った。

「・・・・・放っておける訳ないだろ。 関係無くもない。 俺は、養護教員だからな。 生徒が怪

我してたら、駆けつけるのが、俺の仕事だ。 捻挫した足で無茶しやがって・・・馬鹿だろ、

お前。」

ゾロはそう言うと、軽々とサンジの身体を抱き上げる。

「馬鹿じゃねーよ! これくらい歩ける! それに・・・・・俺の知った事じゃないって・・・・そう

いってた癖に・・・。」

口では強がった事を言っているサンジだが、こうやって理由がどうであれ、自分のためにゾロ

が駆けつけてくれたことが、サンジにはとても嬉しかった。

「・・・・こいつ、俺の生徒だから。 連れていくぞ。」

「ふざけるな!! いくら教師だからって、この俺が、その位でビビるとでも思ってるの

か?!」

バギーは、ゾロの言葉にそう言って、ゾロに切りつける。

「・・・・ガキが。 刃物はな、ガキが遊び半分で使っちゃいけないんだぜ。」

ゾロは、バギーの攻撃を難なく避けると、バギーの手を掴み、ナイフごと、バギーの足に突き

立てた。

「うっぎゃあ・・・!! 痛え!! 痛えよ!!」

バギーは、ナイフが刺さった足を抱えて、そのまま床に蹲る。

その様子に、金縛りにあっていたA校の生徒達が一斉にどよめいた。

「・・・・・なんつう養護教員だよ・・・。 極道じゃねえのか、本当は・・・。」

「バギーさん!! 大丈夫ですか!!」

ざわざわとざわめく空き地の入り口で、ゾロはサンジを抱えたまま、もう一度、バギー達の方

を振り返る。

「ほら、そこの奴も、誰か連れてこい。 俺が、治療してやるから。」

「あ、ハイ・・・。」

ゾロの言葉に、生徒達は素直に従って、バギーを抱えてゾロの後について行った。










<next>    
<back> 




<コメント>

ゴクセン・・・・・いいえ、違います。 カタギです、カタギ。(笑)
久々に格好良いゾロを目指したのですが。
何気に、極道筋・・・?!
あはははは・・・・・・笑って・・・ばっくれる!!