LOVE INCIDENT


その2







「フォッ、フォッ、フォッ。 ・・・・・なんか、良いモノを見ちゃいましたね。 あの海賊狩

りのロロノア・ゾロがねえ・・・・・ 世の中、わかりませんね。 しかし、あの黒服の男

は綺麗で艶っぽい奴でしたね。 思わず、ゾクリとしましたよ。 私のコレクションにぴ

ったりな・・・・・ 正に、一石二鳥ってやつですね。 邪魔者は全て消して、頂きましょ

うかね・・・・金髪の素敵な芸術作品を・・・・ さて、行きますよ、ミスゴールデンウィー

ク・・・・」

そんな二人の様子をしっかりと覗いていたミスター3は、そう言って、罠を仕掛けるべく、行動

を開始した。















「うっし!! これで、狩り勝負は、俺の勝ちだな。 さて、どんなことをあいつにして

貰おうか・・・・・女装させるか、それとも・・・・・あいつ、すげえ恥ずかしがりだから

な。 日頃して貰えないことを、この際・・・・・となると。 ・・・・・・キスだな。 うん、

一日、3回のキスを毎日!! それも、朝起きてから日没までに!! これで、決ま

り、だな。」

ゾロは、ニヤリと笑ってそう呟くと、恐竜を引きずり、船へと急ぐ。

この時点で、一日だけ言うことを聞く決まりの筈が毎日に自己中心的に変わっていること

に、ゾロは気が付いていない。

「・・・・おかしいな。 確かこの樹を左に・・・・おっ! ナミ、丁度良いところに・・・・・

うげっ!!サンジ!! てめえ、何て言う格好を・・・・・」

木の下に立っていたナミの後ろに、シャツのはだけたサンジの姿を見て、ゾロは、慌てて

サンジの側に走った。

「阿呆か!!てめえ、こんな格好でナミの前に出てくる・・・・・な・・・・・ん?? 

サンジ??」

近くまで来て、ゾロは、やっとそれが、蝋人形だと気が付く。

「フォッフォッフォッ。 引っかかりましたね。 しかし、天下に名だたる海賊狩りの

ロロノア・ゾロが、ホモだったとは・・・・・意外でしたね。」

「ホモじゃねえって!!」

姿無き声に、ゾロは、速攻ツッコミを入れた。

「・・・・・・まっ、どちらにしても、その男は、私のコレクションとしてちゃんと後で可愛

がってあげますから・・・・・君は、どちらにしても、邪魔でしかない。 死んで貰いまし

ょうか・・・」

そう言って、姿を現したミスター3は、ゾロが刀を構える前に、蝋で両腕を拘束する。

「クソッ! 放しやがれ!! てめえ、サンジをどうするつもりだ・・・・・あいつになん

かしてみろ。 生きてることを絶対、後悔させてやる・・・・・」

「フォッフォッフォッ。 自分の状態をわきまえず、愚かなことを。 大丈夫。 ちゃんと

可愛がって上げますから。 もちろん、君が私の芸術作品となった後に、ね・・・・・」

ミスター3は、ゾロを見下した瞳で見て、そう言って笑った。




















「・・・・・・さて、こいつは、真剣に勝たねえといけねえよな。 あいつに勝たすとろくな

事にならねえ。 俺が勝ったら・・・・・・勝ったら?? なにさせようか・・・・・・う〜ん。

思いつかねえ。 まっ、とりあえず、俺が勝つことが先決だな。 やっぱ、料理に使う

からには、大きさも大事だが、美味くねえと、な。 あいつは、その辺がちっともわか

っちゃねえから・・・・」

サンジが、そうブツブツと独り言を呟いていると1匹のサーベルタイガーが現れた。

「チッ。 小物か・・・・・・しかも、不味そうだぜ。 こんなの、いらん、いらん・・・・」

サンジはそう言うと、サーベルタイガーを無視して歩き出す。

サーベルタイガーは、そんなサンジに牙を剥き襲いかかってきた。

「・・・・・てめえは、うぜえんだよ!!」

サンジは、背後から襲いかかってきたサーベルタイガーの頭上に踵を落とすと、紫煙を揺ら

してこう呟く。

「・・・ったく、こっちはさっきので、身体がだるいんだ。 無駄な労力は使いたくねえん

だよ。 わかったら、俺を乗せて運べ。」

サーベルタイガーは、否応なくサンジを乗せてジャングルを歩き始めた。

「ん? 何だ、この建物は・・・・・・誰かいんのか??」

サンジは、そう言ってジャングルに似つかわしくない建物に入っていく。

「ふ〜ん。 誰もいねえ。 ・・・・・けど、二人でくつろぐには、丁度良いかも知れねえ

な。」

サンジはそう言って、イスに腰掛けた。

「・・・ったく、あのエロ剣士は、ところ構わずサカリやがって・・・・・」

サンジは、先程のゾロとの情事を思い出し苦笑する。

いつも、真っ直ぐに射抜くように自分を見つめるゾロの視線・・・・

あの瞳を見つめるだけで、何も手に付かなくなる。

・・・魔性にも似た野生の獣のような・・・・瞳・・・

その瞳を思い出すだけで、サンジの背中に先程と同じゾクリとした甘い感覚が甦って来る。

サンジは、自分の唇をゆっくりと指でなぞった。

ゾロが触れるように優しく・・・・・ゆっくりと時間を掛けて・・・・・

「っ・・・・ヤベ。 ・・・・したくなってきた。 んっ・・・・あっ・・・ゾロ・・・・」

サンジは、イスに腰掛けたまま、ズボンの前をはだけ、自分の雄に手を添える。

そして、先程ゾロに触れられたように、自分で繰り返す。

「ああっ・・・・んあっ・・あっ・・・」

カァッと全身が火照り、快感がサンジの身体に押し寄せる。

「んっ・・・あっ・・・ゾ・・・ロッ・・・あっ・・」

瞳を閉じ、押し寄せる快感に身を捩るサンジの瞳に、ゾロの幻影が映る。

真っ直ぐにサンジだけを見つめ、欲情を湛えたゾロの・・・・

背中に・・・・・胸に・・・・・ゾロの腕の熱さまでもが鮮明に甦って・・・・

「んっ・・・あっ・・あっ・・・・アアーッ・・・ゾ・・・ッロ・・・クッ・・・」

サンジは、自分の手の中に白濁の精を吐き出した。

「・・・・・・なにしてんだ、俺は・・・・こんなとこで、自慰ってる場合じゃねえって・・・・

しかも、ナミさんやビビちゃんではなく・・・・・・・エロ剣士でかよ・・・とことん、終わっ

てるな、俺・・・・・・」

サンジは、衣服を整えるとタバコに火を点け、そう呟いた。

不意に、電伝虫が鳴り、サンジは、ミスター0と会話を交わす。

そこへ、急にラッコと禿鷹が現れ、なにやらごそごそと、描き始めた。

サンジは、?マークを頭に一杯思い浮かべながら、じっとその絵を見つめる。

ラッコと禿鷹は、サッとサンジの前にその絵を広げた。

その絵とは・・・・・先程までのサンジの姿態・・・・その表情までシビアに写し取っていた。

「なっ、なに描いてやがるんだーっ!! て、てめえら、ずっと見てやがったのかー

っ?! 止めろっ!! 描くな、んなもん!! 止めろって、言ってるだろが!! 

おらっ!!」

サンジは、驚異の素早さで、二匹を床に沈めると、書き上げてある絵を全て回収し、火を点

けた。

「ったく・・・・・アブねえ奴らだぜ。 バロックワークスのところはよ・・・・・ こんなの、

世間に出回ったら・・・・・冗談じゃねえ・・・・」

サンジは、自分の瞳に触れただけで灰と化した絵にホッと胸を撫で下ろす。

「・・・・・それにしても、ミスター3が、ルフィ達を狙ってると言うことは・・・・・マジこん

なとこで、余裕ぶっこいてる場合じゃねえ! ん? これは・・・・・まあ、もらっとく

か。」

サンジはそう言ってログをポケットに入れると、急ぎ船に戻った。

しかしいつまで経っても、ゾロはおろか、ウソップやナミの姿さえ船には見当たらない。

「・・・・・・おかしい。 あんなに勝つことに執着していたゾロが、時間を過ぎても戻っ

てこないなんて・・・・何かあったに違いねえ。 あのエロ剣士が、こんなチャンスを逃

すなんて・・・・・絶対に、ありえねえからな。 ったく、世話のかかる野郎だぜ。」

サンジは、確信に近い予感に慌ただしく、またジャングルへと消えていった。

その間のルフィ達の激しい闘いをサンジは知る由もない。

そして、次にサンジが、ゾロと再会したのは、全ての闘いが終わった後であった。

「ナミさ〜んvv ビビちゅうわ〜んvv 皆、無事だったんだねvv」

サンジは、そう言ってクルー達の方へ向かう。

そして、サンジの視線の先には、ゾロの姿。

「なんだ、てめえも生きていたのか。」

サンジは、そう言ってニヤリと笑うとゾロの側に近づく。

「こんなとこで、死んじゃあ、洒落になんねえだろ。 狩り勝負の決着もまだだしな。」

ゾロも、そう言ってニヤリと笑い返し、サンジを抱き寄せる。

「・・・・本当に良かった。 マジ心配したんだからな。」

ゾロに抱きついて、そうゾロの耳元で囁くサンジは、血の匂いが鼻につくのを感じる。




・・・・・おかしい。 どっからだ?

・・・・・確かに血の匂いがする・・・・・こいつからだ。

・・・・・別に見たところ、どこも怪我してねえようだが・・・・・ん??




サンジは、ゾロの歩いて来た場所に点々と血がついてたのを見留めた。

よくよくゾロの足元を見ると、おびただしい血が、流れ出している。

その出血先は、ゾロの双足の足首。

この出血の量からして、かなりの深手だと容易に予想着いた。

「あ、そうそう。 ねえ聞いてよ、サンジ君。 ゾロってば、自分の足、斬り落とそうとし

たのよ。 信じられる?? 本当、筋金入りの馬鹿よね・・・・・」

先頭を歩いていたナミの言葉が、サンジの耳に入る。




・・・・・・自分で・・・・・斬った??

・・・・・・・ふざけるなっ!! このクソ野郎!!




サンジの脳裏に、かつて自分のために足を切断し、夢を断念せざるを得なかったゼフの姿が

浮かんだ。

背中にじんわりと流れる冷たい汗。

あの、ゼフの無くなった足を見たときと同じ衝撃が、サンジの中で甦ろうとしていた。

思わず息を詰めるサンジ。

いくら平静を装おうとしても、身体が拒絶反応を示す。

そして、瞳の前にいるこの剣士は、自分の足を失うところだったというのに、微塵もそのことを

気にする素振りさえ見せない。

いつものように、自分を抱き締め、口付けようと顔を近づけてくる。

プツンと、サンジの中で何かが切れた。

サンジは、ゾロを一瞥すると、スッと身体を離し、ナミのところへ歩いていった。




・・・・・あいつは、自分をなんだと思ってやがる。

・・・・・不死身かなんかと勘違いしてんのか・・・・・

・・・・・あまりにも、無頓着すぎる。

・・・・・自分のことに・・・・・・そして、その命にさえも・・・・・

・・・・・俺が・・・・俺がこんな気持ちになることさえ、わかっちゃいねえ。

・・・・・現実に俺は、見てきたんだ。

・・・・・俺のせいで足を失って・・・・・・・夢を断念した男の背中を・・・・・

・・・・・またその背中を・・・・・・俺に見せようとするのか・・・・・

・・・・・いやだ。

・・・・・いやだ、耐えられねえよ。

・・・・・俺達は、一緒に夢を追おうと・・・・・・そう約束したんじゃねえのか・・・・・

・・・・・最後まで・・・・一緒に見届けようと・・・・・そう約束したじゃねえか。

・・・・・それをあいつは・・・・・俺の知らねえところで・・・・・

・・・・・なにが、世界一の大剣豪だよ。

・・・・・足を無くして・・・・・・なにができるというんだよ・・・・・

・・・・・ふざけんな・・・・・・俺は・・・・

・・・・・俺は、絶対・・・・・・許さねえ。

・・・・・あいつが二度と同じ事を繰り返さないと誓うまで・・・・・・

・・・・・俺は、絶対に・・・・・

・・・・・そうじゃなきゃ・・・・・

・・・・・俺・・・・・てめえの側に・・・・いられねえよ・・・・・ゾロ。




サンジは、無表情のままタバコを銜え、ナミと共に船に戻った。








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<コメント>

ゲフゲフゲフ・・・・・永遠の名シーン、狩り勝負・・・・
今回は、やたら原作に沿って流れてます。
つうか、ゾロが足を斬る場面ぐらい書こうかとも思ったんですが。
そこまで書くとね・・・時間が(本音・笑)・・・・駄文に流れが無くなりそうで・・・(汗)
それは、日記にでもかいときます・・・・(-_-;)
で、では・・・・・・