LOVE INCIDENT


その3







「よく見て見ろ!! 俺のトカゲの方がたくさん肉が取れて、尚かつ美味い!!」

「あア?! てめえの瞳は節穴か?! こっちのサイの方が、遙かにでけえ!! 

絶対に俺の勝ちだ。」

「いいや、俺の方がでかい!!」

「チッ。・・・・・ちょっと、こっちに来いよ。 クソコック!!」

自分の勝ちだと言って引かないサンジに、ゾロは、腕を引っ張って倉庫へと連れていく。

「な、なんだよ! どんなことされたって、絶対に今回ばかりは、俺は引かねえから

な!」

サンジは倉庫に入るってそう言うと、ゾロの腕を振り払った。

「・・・・・どんなことをされても、ねえ・・・・さて、どこまでそう強気でいられるのかな。」

ゾロはにやりと口の端を歪めるとサンジににじり寄る。

そして、グイッとサンジの顎を掴むと、強引に口付けた。

「んっ・・んんっ・・・・んーっ!! ヤッ・・・」

サンジは、必死でゾロの胸を叩いて抵抗する。

ゾロは、サンジの腰を抱きながら、より一層深く口付けた。

いつもなら、ここら辺でサンジの方が折れて、ゾロに軍配が下るのだが、今日のサンジは、

いつもと様子が違った。

ポロポロと蒼い瞳から涙を雫し、明らかに抵抗の意思が瞳に見える。

「・・・・・・どうした? サンジ・・・・・なんかあったのか?」

ゾロはサンジから唇を離すと、優しく髪を梳いた。

「っ・・・・ックッ・・・・・馬鹿野郎・・・・俺が・・・・・俺が、何とも思わねえって・・・・・

そう思ってるのかよ!! ・・・・・俺は、ゾロの何なんだ? ゾロの・・・・・・馬鹿ヤロ

ーッ!!」

サンジは、そう泣き叫んで、倉庫を出ていく。

「・・・・・・・サンジ・・・・」

ゾロは、その後ろ姿を呆然として見送った。




・・・・・・どうしたんだ??

・・・・・・なんで、あいつ・・・・・・・

・・・・・・今まで、こんなこと・・・・・・一度だって・・・・・・なかったのに。

・・・・・・そんなに、嫌だったのか??

・・・・・・俺のキス・・・・・あんなに泣いて嫌がるくらい・・・・・・・

・・・・・・嫌になったのか??

・・・・・・どうしたんだよ・・・・・

・・・・・・わかんねえよ・・・・・

・・・・・・サンジ・・・・・・てめえが・・・・・わかんねえよ。




ゾロは、がっくりと倉庫の床に腰を下ろす。

このリトルガーデンに着いた時までは、確かにサンジは、いつもと同じだった。

いつもと同じようにゾロの口付けに応えて頬を染め、瞳を揺らし、身体を預けてきた。

それなのに・・・・・サンジの無事な姿に他のクルー達の前だというのに抱き寄せ、口付けし

ようとしたゾロを、サンジは睨み付け、自分から視線を外し、ゾロの側からいきなり離れて歩

き出したのだ。

「・・・・・・・・どういうことなんだよ。 サンジ・・・・・・俺、わかんねえよ・・・・・」

ゾロはそう呟いて、窓の外から見える景色に視線を移した。

船は、無事、リトルガーデンを通過し、アラバスタへと向かう。

「・・・・・・ねえ、サンジ君、どうしちゃったのよ。 妙にニコニコしてるから機嫌が良い

のかと思えば、瞳が笑ってないし。 それに・・・・・あんた達、リトルガーデンを出てか

らギクシャクし過ぎよ。 もう少し、船の雰囲気ってもんを考えてよね。 いつものあて

られっぱなしの方が、まだマシよ。」

ナミはそう言って、トレーニング中のゾロに文句を言う。

「んなもん、知るか! サンジに言えよ、サンジに。 あいつが、俺を勝手に避けてん

だよ。 俺が近づくと、その気配で、どっかいっちまうし。 参ってるのは、こっちなん

だよ!!」

ゾロは、ナミの言葉に、尚一層眉間に皺を寄せ、ハンマーを振った。

「いいえ、絶対にあんたのせいよ。 ゾロ、白状しちゃいなさい。 あんた、サンジ君に

なにしたの? 嫌がるのを無理矢理にしちゃったとか。 もしかして、縛ったり、変な

道具を使って怪我させたとか・・・・」

ナミは、そう言ってゾロに詰め寄る。

「おいおい・・・なんで、そうなる・・・・。 だから・・・・・なにもしてねえって!! 

俺自身、理由がわかんねえから、こんな状態になってんだろが。 理由がわかってた

ら、とっくの昔に仲直りしてる。 もう、うぜえからどっか行けよ。 いい加減な事言っ

てると、終いには斬るぜ。」

ゾロは、ハンマーを下ろすとそう言ってナミを睨み付けた。

「あれー?? 何だ、ゾロ。 もう足、引っ付いたのか? 早えなぁ・・・・でも、良かっ

たな。 サンジの店んとこのおっさんみたいに、義足付けなくてよ。 両方は、ちょっ

と、な。 まぁ、あれは、あれですげえ格好良いけど。 俺も、あんな義足が欲っし

い。」

「何の話だ、それ・・・・・・」

ゾロは、ルフィの言葉にそう尋ねる。

「ん?あれ?? お前、知らねえのか? サンジの店のオーナーの・・・なんて言った

けな?名前??」

「・・・・ゼフだろ。」

「そうそう、ゼフのおっさん。 あのおっさん、昔はすげえ強い海賊で、サンジと同じ

夢、オールブルーを探す旅をしてたんだと。 けど、サンジと遭難して、足を片方無く

して、海賊止めて、今の店を開いたそうだ。 っで、オールブルーを見つけるって夢

は、同じ夢を持つサンジに託したって、あの店で聞いたことが有るぞ。 サンジが、

なかなかあの店から旅立たなかったのも、おっさんの足に責任を感じてだと、そうも

言ってたな、確か・・・・なんだ、ゾロ。 お前、知らなかったのか。 そうかぁ。」

ルフィは、店での話を思い出したようにゾロに聞かせた。

「ああ、俺はあの時、鷹の目に負けて・・・・・あの店には、いなかったからな。 

ルフィ、ありがとう。 良く教えてくれた。 礼を言う・・・・・」

ゾロは、そう言ってルフィに頭を下げると、サンジがいるキッチンへと向かう。

ゾロがキッチンのドアを開けると、サンジは、壁際のソファに寝そべって天井を見つめ紫煙を

揺らしていた。

サンジは、ゾロの気配を察知して、身体を起こすと無言で、ゾロの側を通り抜けキッチンを出

ていこうとした。

「待てよ。 ・・・・・・サンジ、俺が、悪かった。 すまねえ。 けど・・・・・・」

ゾロはそう言って、サンジの腕を掴む。

「離せよ! んなの、俺には関係無えんだろ? ・・・・・そうだろ? 勝手に足でもな

んでも斬りゃいいだろうが。 俺なんか・・・・・・悪かったなんて思ってもいねえのに、

口先だけ謝るなよな! それで、俺が許すとでも・・・・・そう思ってやがんのか! 

このクソ剣士がっ!!」

サンジは、ゾロにそう吐き捨てるように叫ぶと、ゾロの鳩尾めがけて蹴りを放った。

ドスッと言う鈍い音がして、ゾロは、腹を押さえ、膝をつく。

サンジは、そんな様子のゾロを一瞥すると、またドアの方へと歩き出した。

「っ・・・・待てと・・・・・・そう言っただろうがっ!!」

ゾロは呻くようにそう呟くと、サンジの襟首を掴んで思いっきり、ソファーにその身体を押し倒

す。

そして、素早く馬乗りになり、サンジの腕を掴んだ。

「クソッ!! 何しやがる! 離せ!! 俺は・・・・・・てめえがどうなろうと・・・・・・

知らねえ!! 勝手に足でも何でもてめえで斬って・・・・・・・一人で・・・・てめえ一人

で、何処へでも行っちまえ!! 俺は、知らねえ・・・・・・てめえなんか・・・・・知らね

え!!」

「サンジっ!!」

ゾロはサンジの名を呼んで、機関銃のように叫ぶサンジの唇を塞ぐ。

その先の行為を助長するような激しい口付けではなく、ただ唇に触れるだけのキス。

「・・・・・サンジ。」

ゾロは、サンジが静かになったのを確認して唇をそっと離した。

「っ・・・くっ・・・・ひぃ・・・・・っく・・・・・ふぇ・・・・っく・・・・」

サンジの嗚咽だけが、キッチンに響く。

「・・・・サンジ。 ごめん。 てめえの辛い過去を抉っちまった。 それは、俺が悪い。

だから、謝る。 けどな・・・・・・足を斬ったことは、謝らねえ。 あの時は、それが最

良の判断だったと、そう思ってる・・・・今でも。」

「やだ、もう聞きたくねえ・・・・・・やだ・・・・・俺に・・・・聞かせるな・・・・やだ・・・・」

サンジは、必死に身を捩り手で耳を塞ごうとした。

「良いから、聞くんだ!! ・・・・・てめえだから・・・・てめえだから、話すんだ。 

もし、拘束されたのが、足ではなく腕だったとしたら・・・・・俺は、自分の腕は、斬り落

とさねえ。 ・・・・・俺にとって、腕を失う事は、野望を失うことだから。 それは・・・・・

死んだと同じだ。 俺の言ってること、わかるか? 足は・・・・・俺にとって、まだ野望

を失うほど重要じゃねえ。 足を失うことより、てめえに生きてもう一度会う方が、俺に

は、大切だった。 てめえにもう一度会うまでは、絶対に死ねなかった。 

だから・・・・・・足を斬り捨てることを選んだ。 今は、まだ未熟だから、それしか選べ

なかった。 だけど、これからは、違う。 俺は、強くなる。 どんなモノでも、どんな体

勢でも斬れるように。 てめえが、こんなことで泣かなくて済むように・・・・俺は、絶対

に強くなるから。 だから・・・・・・俺を信じろ。 そして、その瞳で俺がどこまで高みに

行けるか見ててくれ・・・・・俺のすぐ傍で。 ・・・・・サンジ・・・・・俺を信じろ。」

ゾロは、サンジの瞳を真っ直ぐに見つめ、そう告げる。

迷いも曇りのない信念の揺るぎ無い瞳。

初めて見たときから惹かれ合った深緑の瞳。

その言葉に嘘はないと・・・・・そう告げる瞳。

「ふぇ・・・・うん。 ひっ・・・っく・・・・うん、ゾロ。 っく・・・・ゾロ・・・・・もう・・・・絶対

に・・・・俺の知らないとこで、っく・・・・自分で斬ったりするな。 闘って傷つくのは、

仕方ねえ。 けど・・・・ひっ・・・っく・・・・自分で自分を切り刻むことは、・・・・っ

く・・・・して欲しくねえんだ。 そんな時は、っく・・・・俺を呼べよ。 じゃねえと、

俺・・・・ひっ・・・・っく・・・・なんの為に、てめえの傍にいるのか・・・・・っく・・・・わか

んねえだろ・・・・」

サンジは、泣きじゃくりながらゾロにそう伝えた。

「んじゃ・・・・・・ずっと傍から、離れんじゃねえぞ。 わかったか、この泣き虫クソコッ

ク。」

「なにを?!てめえだって、迷子になって俺からはぐれるなよ! このSM剣士!!」

「「けど、狩り勝負は、俺の勝ちだ!!」」

ゾロとサンジは、同時にそう言う。

「ざけんなよ。 量が同じ時は、味で勝負なんだよ!!」

「味なんか、どれも一緒だ!! それに、俺の方が、どう見たって取れる量は絶対に

多い!!」

「いいや、トカゲの方が、てめえが持ってきたサイより絶対に美味い!!」

「味にこだわるって事は、てめえのトカゲの方が俺のサイより少ねえって、そう認めた

んだな。」

「うっ・・・・・・けど、食材は、味が重要なんだよ!! よって、この狩り勝負は、俺の

勝ちだ!!」

サンジは、ゾロの言葉に行き詰まりながらも、そう言って勝ちを宣言した。

「ふ〜ん。 ・・・・・味、ね。 ・・・・・そうか、味か。 まあ、料理するのは、てめえだ

し。 サイの肉で、美味い料理が作れないんじゃ、仕方ねえよな。」

「・・・・なんかその言い方、気に入らねえな。 俺は、どんな食材でも、最高の料理を

作る自信はある。 サイの肉だって俺にかかれば、どんな肉にもひけはとらねえ美味

い料理になるんだよ!!」

「・・・・・よく言った! てめえ、さっき、トカゲの肉の方が美味いから自分の勝ちだと

そう言ったよな? 今、てめえは、サイの肉でも、どんな肉にも引けはとらねえって、

確かにそう言った。 ・・・・と言うことは、やはり、俺の勝ちだ。」

「き、汚ねえぞ、てめえ・・・・・・・」

「ククク・・・・てめえの作る料理は、全部美味いからな。 トカゲもサイも比べようがね

えくらいに、な?」

ゾロは、そう言って苦笑する。

「う、うぅ〜〜〜〜こんな時だけそんなこと言いやがって・・・・/////」

「・・・・・・・この狩り勝負・・・・・・・・俺の勝ちだな?」

顔を真っ赤にして睨み付けているサンジにゾロは、そう宣言してニヤリと笑った。

「か、勝手にしろ!!・・・・//////」

サンジは、真っ赤な顔のままそう言って、ゾロの唇に触れる。

そして・・・・・・・・・二人は、そのままソファーの上で二人だけの時間を過ごした。














「・・・・・・・なあ、どうでも良いんだけど、俺、腹減った・・・・・・キッチン、まだ入っちゃ

ダメなのか?」

「ルフィ、ちょっと、しーっ!! 今、いいところなんだから、黙ってて!!」

ナミは、そう言ってしっかりとキッチンの中の様子を窓から覗いていた。

「・・・・・・ウソップさん、あの二人・・・ゾロとサンジさんは、いつも、ああなんですか?

私、初め、知らなくて・・・・・・・」

「ああ、キッチンのまたの名を、『愛の小部屋』と、俺達は呼んでいる。 直になれると

思うが・・・・・長い航海の中では、ちょっとした些細なことだ。 けど・・・・・入るとき

は、一度、あの窓から覗いてからが良いと・・・・・・」

ウソップは、仲間になったばかりのビビにそう言って説明をし始める。

「・・・・・これが、些細なことなのかしら・・・・・本当に奥が深いわ。 海賊って・・・・」

ビビは、ウソップの説明にそう呟いて感心するのだった。

それから、ゾロの希望は、次の日に叶えられ、それは、ビビの頭の中で、些細な出来事とし

て、記憶させられた。

「・・・・・本当に、海賊って・・・・・素敵vv ねえ、ナミさんvv 愛って、偉大だわvv」

ビビは、ほうっとため息を吐くと、隣にいるナミにそう言う。










それから、暫くして、アラバスタのミスター0の元に、一枚の報告書らしきモノが、届けられ

た。

「・・・・・・・なんなんだ、これは・・・・・・・ミスター13達は、一体何を描いて・・・・・ 

フッ、まあ、良い。 ・・・・・・・実際にこいつに逢ってみたいものだ。」

ミスター0はそう呟いて、その紙を自分の机の引き出しにそっとしまい込んだ。










<END>







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<コメント>

やっと、終わりました。 リトルガーデン編・・・・
本当は、12月の予定だったのに・・・・もう、2月末じゃん!
それに、楽しみにしていただいてた方・・・・・・
こんなにショボくてすみません。(-_-;)
いや、全部ショボイので、あまり違和感無いかと・・・・・(笑)
今回が・・・・・一番、ラブいかも・・・・
まっ、いいか・・・・・・
次回は、チョッパー登場のドラム島vv
サンジが、もちろんvvのあのシーンです。
今度は・・・・・・4月かなぁ・・・・3月は、ちょっと・・・・・(脱兎!)