LOVE NIGHT


その2






「たっだいまかえりました〜。 ナミさんvv」

サンジが、ゾロと船に戻り、甲板を見回すと、武器の開発に余念のないウソップの姿が、目

に入った。

「あっれ〜?! ナミさんは??」

「おう、ナミなら、もう、街に買い物に行ったぞ。 今日は、帰ってこないって、言ってた

ぞ。 たぶん、ルフィも一緒じゃないかな。」

「ふ〜ん、そうなんだ。 じゃあ、ウソップ、てめえは、どうすんだ?」

「そうだなー。 俺は、宿に泊まる金も、開発にまわしたいし、今日は、ここで、いい

や。」

「じゃあ、ウソップも、夕飯、食うんだな。」

「おう! 頼む!」

そう、サンジと会話したウソップは、不意に、背後に殺気を感じた。

(・・・ゾロの睨み付けるような、視線が、痛い。 ・・・俺、何かまずいこと、サンジに

言ったか?)

ウソップは、訳が分からないまま、

「じゃあ、メシできたら呼んでくれ。」

と、サンジに言うと、男部屋に猛ダッシュした。

「さあて、作るか。 ゾロ、何か、食いたいモノ、有るか?」

ウソップに邪魔だとばかりに、怒りのオーラを向けていたゾロは、サンジの言葉に、がらりと

雰囲気を変えると、

「・・・そうだな。 肉じゃが、食いてえ。」

とサンジに返事した。

「・・・・理不尽すぎる・・・」

男部屋から覗いていたウソップが、涙ながらに呟いた。

「わかった。 じゃあ、出来たら、呼びに来てやっから。」

そう言うと、サンジは、キッチンに入っていった。






「おう! ウソップ! ゾロ! メシだ!!」

テーブルには、ご飯、きんぴらゴボウ、魚の煮付け、肉じゃが、シジミ汁と、ゾロの好きなモノ

ばかりが、並んだ。

ゾロの好きなモノばかり並んだ夕食が、ウソップには少し、気になったが、とりあえず、きのこ

料理はなかったので、これで良しとした。

(この場で、料理に文句の一つでも言おうモノなら、サンジの羊肉ショット+ゾロの鬼

斬りが、間違いなく、俺を襲う!!)

自分の危機に関しては、動物並に、勘が冴えるウソップであった。

「うー、食った、食った。 ごっそうさん。」

「どういたしまして。」

「じゃあ、俺、部屋に戻るわ・・・」

ウソップは、食事を終えると、早々にキッチンをあとにした。

ナミのいないキッチンでは、あらかさまなラブラブビームがウソップの前で、飛び交っていた。

(あんなの前にして、ずっと、キッチンに居続けていられるほど、俺の神経は、ズブく

ねえし、ゾロは、恐え顔で睨むし・・・・あーあ、やっぱ、俺も、宿に泊まった方が、良

かったかも・・・・)

「俺、今日、厄日か?!」

ウソップは、今日、2度目の理不尽さを噛みしめた。







食事の終わったキッチンでは、サンジの後片付けを見ながら、ゾロが、酒を飲んでいた。

片づけは、明日にすればいいと言ったのだが、片づけまでが、俺の仕事だと、サンジが、頑

として譲らなかった。

(妙なところで、融通がきかねえんだよな。 本当、責任感が強いって言うか、仕事意

識が強いって言うか。 でも、そこも、俺は、気に入ってるんだがな。)

そんなことを考えながら、流しで、鼻歌を歌いながら、皿を洗っているサンジを見て、

(クッ、かわいいぜ。)

ゾロは、頬を緩ませる。

今のゾロを見て、あの魔獣と怖れられる海賊狩りのロロノア=ゾロと、同一人物だと思う人

間は、きっと、誰もいないだろう。

そう思えるほど、ゾロを取り巻く雰囲気も、人相も、全く違う様相を呈していた。

「ゾ〜ロv 待たせたな。 さあ、飲もうぜ。」

サンジは、酒棚から買ってきたばかりのワインを取り出すと、つまみとグラスを2つもってき

て、ゾロの隣へ座った。

「これ、絶対、ゾロの好きな味だと思うんだ。」

そう言って、グラスに注ぎ、ゾロに渡す。

ゾロは、一息にグラスに入ったワインを飲み干すと、

「ああ、うめえな。」

と、サンジに言った。

「だろ?! だろ?! でも、これ、ホントは、すっげえ高いんだぞ。 でも何でか、店

の店主が機嫌良くってさ、すっげえ安くしてくれたし、他の食材も、予算より全然安く

手に入って、余った金で、買ってきたんだ。 そんな水飲むみてえに、ごくごく飲むも

んじゃねえんだからな。全く、これだから、いつまでも筋肉マリモなんだよ。

少しは、俺様を見習いやがれ!」

(全く、わかってねえのは、どっちだってんだ。 こいつは、買い出しの時、いつも、あ

あなのか? もう、危なっかしくて、一人じゃ行かせられねえな。)

「高かろうが、安かろうが、酒は、酒だ。」

俺は、そう言うと、サンジからボトルを取り上げると、なみなみとグラスに注いだ。

「でも、まあ、てめえが選んだ酒なら、何だって、俺には、一番うめえに違いねえけど

な。」

そう言って、俺は、2杯目をあけた。

「ば、馬鹿、てめえ・・・・」

(・・・こいつってば、何でこうサラッと殺し文句言えんだよ。)

サンジは、どもりながら、顔を赤くした。

(本当、可愛いよな。 口では高いだの言いながら、ちゃんと、俺好みの味のやつ買

ってくるし。 ・・・全く、顔も良いし、料理は抜群、それにスタイルも良いときたもん

だ。足癖の悪さと、口汚さを差し引いても、充分釣りがくるってもんだ。 これが、全

部、俺のもんになんだよなあ。)

『・・・・ゾロ・・・お前・・・・終わったな・・・』

ウソップとナミの声が聞こえそうである。


ゾロは、赤くなって、俯いたままのサンジの腰に腕を廻すと、自分の膝の上に、抱き上げた。

(うわっ、俺、ゾロに抱っこされてるよ・・・)

「うわっ! ゾ、ゾロ。 こんなんじゃ、てめえ、酒が飲めなくなるだろ?! そ、それ

に、・・・ほら、つまみも、もう無えし・・・ よ、よし、俺が、作ってきてやるよ。」

(やっぱし、この体制は、ヤバいだろー。)

そう言って、ゾロの顔をチラリと、覗き見る。

バッチリと、目があった。

(う、うわっ! やべえ。 絶対にやべえ。 あの眼は、マジで、ヤバすぎる。 

俺、まだ覚悟も何も知らねえし・・・第一、ここは、俺の仕事場だ。 

こんなとこで、ヤられてたまるか。 絶対に阻止する!)

動揺しながらも、あわてて膝から降りようとしたサンジを、ゾロは、ギュッと抱きしめた。

ゾロの瞳が、真っ直ぐにサンジを射抜く。

嘘やごまかしを一切許さない、真っ直ぐな瞳。

サンジが大好きな、深緑の瞳。

「もう、待たねえ。」

ゾロが、サンジの耳元で、そう囁いた。

(心は、昨日、やっと通じ合った。 でも、それだけじゃ、嫌なんだ。 俺は、サンジの

全てが、欲しい。 サンジが、俺のもんだって言う、確証が欲しいんだ。)

ゾロは、自分の気持ちが伝わるようにと、抱いている腕に、力を込めた。

「・・・・・・わかった。」

サンジが、諦めたように言った。

「だけど、ここじゃ嫌だ。 キッチンは、俺の聖域だ。 そ、それに、お、俺・・・俺・・・

初めは、ベッドの方が・・良い・・・・・」

だんだんと声が、小さくなって、サンジはまた、耳まで真っ赤になってしまった。

「えっ?!」

ゾロは、自分の耳を疑った。

(いま、初めて・・・って言わなかったか? 嘘だろ?! おい、このルックスで、この

スタイルで、男ばかりのレストランにずっといて、それで、口じゃ、自称遊び人を気取

っていた、こいつが・・・・初めてだと?!)

「初めてなのか?」

ゾロは、確認するように、サンジに言った。

「ああ、そうだよ! オリャ、男相手にすんのは、てめえが、初めてだ。 あ、誤解すん

なよ。別に、童貞って言うわけじゃねえからな。 ちなみに、あんなキスしたのも、て

めえが、最初だ。」

サンジは、開き直ったように、そう言った。

「・・・・・・ベッドだと、問題ねえんだな。」

ゾロは、ニヤリと口の端をあげて笑うと、サンジを肩に抱え上げ、キッチンの扉を蹴破った。

そして、男部屋にいるウソップに向かって、

「ウソップ、後は任す!」

と叫ぶと、一目散に街にある宿屋に向かった。

ウソップが、あわてて男部屋から出てきたときには、すでに、二人の姿は、どこにもなかっ

た。

「・・・俺、一人で、何かあったら、どうすりゃいいんだ・・・・・」

ウソップは、誰もいなくなった船で、むなしく呟いた。






「なっ!! ?ん???」

サンジがあらがう暇もなく、ゾロは、サンジを肩にのせ、人通りの少なくなった道を迷うことな

く宿屋に着いた。

あの方向音痴のゾロが、何故迷いもせずに、宿屋までたどり着いたのか、それは、今持って

わからない・・・・

「部屋、開いてるか?」

ゾロが、サンジを肩に担いだままの姿で、宿の主人に言った。

「お客さん。 もめ事は、よそでお願いしますよ。」

ゾロの姿を見て、犯罪のにおいを嗅ぎ取ったらしく、宿の主人は、そう言った。

「そんなんじゃねえ! 良いから、部屋は、開いてんのか、ねえのか、どっちなん

だ!!」

「ヒッ!!」

ゾロの怒声に、身の危険を感じたのか、主人は、すぐに、鍵を渡した。

「金だ。 釣りは、いらねえ。」

ゾロは、お金をカウンターに置くと、鍵を手に取り、部屋に向かう。

・・・・・と、また、カウンターに、引き戻ってきた。

「っで、部屋は、どこだ?」

「・・・2階の・・奥の、205号室です・・・」

宿屋の主人は、カウンターの下に隠れて、声だけ返事した。







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<コメント>

ハイ、物は投げないで下さい!
今度は、絶対です。
お子ちゃまは、ここまでにしましょうね。
うちのゾロ、サンジにべた惚れです。
サンジも同じくらいにゾロのこと好きなはずなんですがね、
なんせ天然ですから・・・
では☆(逃)