LOVE SICK


その2





「ゾロ・・・サンジ・・・わりい。 俺、死んだ。」

そう言って、笑うルフィの姿に、俺達は、自分のふがいなさを責め、絶望が、その心に染み込

もうとしていたとき、奇跡は起こった。

俺達は、奇跡的に処刑台を無事脱出し、ナミさんの待つゴーイングメリー号へと向かう。

その途中、俺達は、あのレディとまた、出会った。

俺の心に影を作ったあの、黒髪のレディ・・・

彼女は、海軍のメンバーだった。

「ロロノア・ゾロ。 和道一文字、回収します!」

そう言って、そのレディは、ゾロに向かっていった。

はは・・・これだけのメンツがいて、しかも、賞金首のルフィがいるのに・・・

それでも、レディの瞳には、ゾロしか・・・ゾロしか映ってないんだ・・・

それって・・・運命なのか、な・・・・

「出、出た! このパクリ女! サンジ!ルフィ! 先に行ってろ!」

ゾロは、そう言うと、俺達を先に行かせる。

・・・パクリ・・・女・・・パクリ・・・

そうか・・・彼女は・・・彼女は、そっくりなんだな・・・

てめえの親友の、くいなちゃんに・・・

だから・・・だから、あんな笑顔を向けてたんだ・・・

・・・俺の・・・俺の運命の相手は、ゾロ・・・ゾロだけだと、そう思っていた・・・

・・・だけど・・・違うんだな・・・ゾロは・・・ゾロの運命の人は・・・・

ははは・・・俺・・・かなわねえよ・・・

かないっこねえじゃん・・・・そんなの・・・・

俺は、沈んだ気持ちのまま、海軍達を蹴り倒して・・・

何とか上手く、ルフィ達とゴーイングメリー号に飛び乗って・・・

皆、ほっと胸をなで下ろして・・・・

いつの間にか、海は、静かになっていた。

穏やかな・・・昨日まで、あんなに荒れ狂っていた海なのに・・・・

全く、それを感じさせないほどに・・・穏やかで、優しい海・・・

・・・ゾロは、あの後・・・どうしたんだろ・・・

あの後、俺達は、バタバタしてて、話す余裕もなくて・・・















「あー、何かほっとしたら、お腹空いて来ちゃった。 サンジ君、何か作って貰えない

かしらvv」

「わっかりました〜、ナミさんvv 早速、このエレファントホンマグロを使った料理を作

りま〜すvv」

ナミさんの笑顔に、精一杯の笑顔で返した俺は、キッチンで、いそいそと料理に取りかかる。

・・・海のように、何もなかったようには振る舞えないけれど・・・

料理してる間は、何にも考えねえですむから、その間に、少しずつ、現実を受け入れていこ

う・・・

・・・それが、たとえ、どんなことだろうと・・・

俺は、この船で、オールブルーを見つけるって、自分に誓ったんだから・・・

・・・・逃げることは、しねえ・・・・・

「おい!」

ゾロの声が、俺の後ろで聞こえる。

その声に、俺はビクッとなって、なんか、泣きそうになった。

なんでだろ?

何で、ゾロの声聞いてだけで・・・こんなに・・・

涙が出そうになるんだろう・・・

俺って、変だ・・・・

きっと、病気なんだ・・・

こんなに、心が、弱くなるなんて・・・

こんなに、心が震えるなんて・・・

「・・・なんだ。 酒なら、そこに置いてるだろう? つまみは、もう少し待ってろよ。 

もうすぐ、持ってってやるから・・・そこにいられると・・・邪魔だ。 さっさと出て・・・」

俺は、ゾロの顔を見ずにそう言った。

いや、みれなかった。

俺、今、絶対、変な顔してる・・・

ゾロに、この顔、見られたくねえ・・・・

今、ゾロの顔見たら・・・俺、とんでもねえこと、口走りそうで・・・

・・・見れなかった。

「・・・サンジ。 何があった? お前、さっきから、変だぞ。 黙ってねえで、何とか言

えよ。 てめえがそんな面してるの、嫌だ。 俺のせいか? 俺、何かしたのか? だ

ったら、黙ってねえで、全部、俺に言えよ。 ・・・胸が痛てえんだよ。 てめえのそん

な顔見てると、病気にかかったように、胸が、痛てえんだよ。 なあ、サンジ・・・頼む

から、俺には、隠さねえで・・・くれよ。 俺達、そういう仲、だろ?」

そう言ってゾロは、後ろから俺を抱きしめる。

俺は、何も考えられなくなって・・・・

心のままに言葉にしてた・・・・・

「っゾロ・・・ゾロ・・・俺・・・見ちまったんだ。 てめえが、海軍のレディと一緒に、仲良

さそうに、街を歩いているところ・・・ 後ろから見てても凄くお似合いのカップルで・・・

・・・ゾロは、心から嬉しそうに・・・笑ってるように・・・見えた。 そんなの見てたら・・・

俺・・・辛くなって・・・やっぱりさあ、ゾロも、男の俺なんかよりはってさ・・・ ・・・それ

に、あのレディ、てめえの親友のくいなちゃん、そっくりなんだろ? ・・・それって・・・

運命じゃねえかって。 ・・・運命なら、いくら、俺があがこうが・・・・無駄なんじゃねえ

かって・・・・ヒック」

俺はそこまで言うと後が言えなくなって、子供みてえに、泣きじゃくった。

ゾロは、俺を見てポカンとしていたが、そのうち、嬉しそうに、にっこりと笑った。









何がそんなに、おかしいんだよ・・・

てめえには、そんなに、面白い話だったのか・・・

・・・馬鹿にしてんのか・・・

俺は、泣きながら、ゾロを睨み付ける。

「サンジ・・・ごめん。 こんな時、不謹慎だけど・・・俺・・・すっげえ、嬉しい・・・嬉しく

て・・・顔が緩んじまう・・・ てめえが、そんなことぐれえで、俺に、やきもち妬いてく

れるなんて、思ってもみなかったから・・・やきもち妬くのは、俺の方だけだと、そう思

ってたから・・・すっげえ、嬉しい。 サンジ、初めに言っただろ? 俺は、てめえのも

んだって。 その気持ちは、今でも変わらねえ。 くいなは、くいなだ。 てめえとは、

違う。 てめえだけなんだ。 俺の心臓がドキドキうるさくなったり、胸が、軋んだり、

自分の身体なのに、自分の思い通りにいかねえんだ。 あー、俺は、何が言いてえ

んだろ。 言葉じゃ、上手く言えねえ・・・」

ゾロはそう言って、頭をガシガシと掻くと、不意に俺の頭を胸に抱き寄せた。

ドクドクと力強く心臓の音が聞こえる。

・・・・少し早いような気がするのは、俺の気のせい、か?

「・・・聞こえるだろ? 俺の心臓の音。 俺は、いつもてめえのこと考えるだけ

で・・・・・触れるだけで、こうなっちまう。 ざまぁ、ねえよな・・・・・・剣士たるものいつ

何時も冷静さを失わずって、そう戒めても・・・・・・自分じゃ、どうにも押さえきれね

え・・・・・・・サンジ・・・・・・苦しいんだ・・・・・・俺・・・・・・まるで、病気したみてえ

に・・・・・・」

そう言って、ゾロは、俺の顔を覗き込んだ。

優しい深緑の瞳に、俺が映ってる。







・・・・・・そうなんだ・・・・・・・

いくら感情を表にださねえと言っても、ゾロだって、俺と同じ、19・・・・・・・

考えることは・・・感じることは・・・・きっと・・・・・同じ・・・・・

・・・・俺は・・・俺は、また・・・・独りよがりな考えをして・・・・・

・・・・・・忘れてた・・・・・・・ゾロだって・・・・・・・同じだって事・・・・・・・・

・・・・・ごめん、ゾロ。

・・・・・これからは・・・・・思ってることは、全部・・・・・・

・・・・・全部、言葉にする・・・・・

・・・・・独りよがりにならないように・・・・・・・・

・・・・・すれ違いにならないように・・・・・・・

・・・・・それが・・・・・俺達の・・・・・・仲だよ、な。








俺は、ゾロがしたように、ゾロの頭を自分の胸にぐいっと、くっつける。

「ゾロ・・・・・・聞こえる? 俺も、一緒、だ。 ゾロのこと考えると、ドキドキして、胸が

苦しくなるんだ・・・・ ・・・・俺も、病気になったみてえだ。」

俺はそう言って笑った。

















++++++++++++++++++



俺は、サンジの笑う顔に思わず見とれてしまった。

なんで、こう、こいつは、俺の理性とやらをあっさりと、蹴散らせてくれるんだろう。

・・・・・しかも、この状況は・・・・かなり、美味しいかも・・・・

そう考えて、次の行動に移ろうとした瞬間、

「サンジ〜!! 飯は、まだか〜!! 俺、腹減って動けねえ・・・」

そう言って、ルフィが、キッチンに入ってきた。

・・・そう、それだけならまだ、許せる・・・・

・・・しかし、あいつときたら、サンジの細腰に腕を回しやがった。

・・・許せん・・・サンジの身体に触れて良いのは・・・この俺だけだ・・・

「ルフィ! てめえ、その腕、離せよ! サンジが、嫌がってるだろうが!!」

俺は、そう言って、引き剥がしにかかった。

「???何でだ、ゾロ? 別に、いいじゃん。 サンジ、別に嫌がってねえゾ? 

なあ、サンジ。」

「ん? ああ、別に慣れてるから今更なんともねえが、でも、男にしがみつかれても、

いい気はしねえな、確かに。 いい加減、離れろ、てめえ・・・」

サンジは、いつものことと受け流しながらも、ルフィの腕をほどく。

それでもしつこくまとわりつくルフィに、俺は、キレた。

「てめえ! 離れろって言ってんのが、わかんねえのか!」

俺は、雪走を鞘から抜いて、ルフィに構える。

キッチンは、一触即発のムード。

「はい、そこまで。 ルフィ・・・てめえ、出ていかねえと、今晩の食事は、抜きだ。」

サンジがそう言って、二人の間に割って入った。

「えー!! なんでだよ・・・わりいのは、ゾロじゃんかよ〜」

ルフィは、自分だけ出るように言われ、ブツブツと不満を口にする。

「・・・何か言ったか? ルフィ・・・・」

サンジの額に青筋が浮かぶ。

「・・・いえ、なんでもありましぇ〜ん・・・」

ルフィは、渋々と諦め、キッチンを出ていった。

さすが、サンジだぜ。

それでこそ、俺の・・・俺の・・・・???

・・・・何か、怒ってる???

怒ってるような・・・・

いつまで経っても額から青筋が消える様子はない。

俺は、ちょっと、焦った。

「・・・サンジ??」

俺は、宥めるように、サンジに声を掛ける。

「・・・てめえも、さっさと、出て行け・・・きっちんで、刀振り回すなんざ・・・良い度胸し

てるじゃねえか・・・ 一歩間違えば、俺の聖域は、木っ端微塵だったんだぜ? 

これが、怒らずにいられるかっていうんだ。」

サンジは、そう言って、俺を睨んだ。

「す、すまん、サンジ。 でも、ルフィの奴が、てめえにあんまり、くっつくから・・・」

「そんなの、いつものことだろ? そんなつまんねえ事言ってんじゃねえよ。 ほらっ、

行った、行った。」

サンジは、俺の言葉を遮ると、俺をキッチンから追い出した。

あの野郎・・・やっぱり、わかっちゃいねえ・・・

俺が、ルフィに嫉妬するのは、当たり前だろうが・・・

全く、あいつときたら、一度気を許すと、とことん、甘えんだから・・・

見たか? さっきのルフィの瞳・・・・・・

ありゃあ、俺に対する挑戦だ。

やっぱり・・・・気のおけねえ野郎だぜ・・・

しかし、サンジの野郎・・・・

さっきまで、あんなに可愛かったのに・・・・・・

これはもう、今夜、身体に言い聞かせるしかねえ、な。

俺は、今回のリベンジを今夜、実行することに決めた。











(・・・・ゾロ・・・・あんた、言葉少ない割に、サンジ君のことに関しちゃ、考えてること

が、顔に出過ぎ!! ・・・サンジ君・・・・本当に、心から、同情する、わ・・・・・・

今夜、耳栓して、早く寝なきゃ・・・・)

ナミは、ゾロの顔を見て、深いため息を吐く。

「・・・・・俺は、知らない・・・・何も見てない・・・・何も聞こえない・・・・」

ウソップは、ゾロの様子に、ただ、ブツブツと、自分に言い聞かせていた。








  
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<コメント>

相も変わらずの二人・・・今回は、たしぎと出会ったゾロ編
というところでしょうか・・・・
何となく、サンジが嫉妬するとこ書きたかったんですが・・・・・挫折気味。(-_-;)
うちのゾロ・・・本当に、サンジの尻に引かれてるよ、ね・・・
ごめんなさいね。こんな情けないゾロで・・・
他人と自分には厳しいんだけど、サンジには、形無しって言うのが、
このサイトのゾロです!(ドォ〜ン・自信満々)(笑)
でも、久しぶりに書いたなあ・・・
本当は、ね。 ここで、終わろうと思ったのよ・・・(真剣!)
でも、最近、また、エリョ書いて無いなあと思ってさっ。
(↑何を規準に「最近」なんだろうね??)
って、そりゃ、ルナが聞きたいね。(笑)
と、言うわけで、次、ゾロのリベンジ編、
おこちゃまは、ここまでにして、ね。
では、逃走!!