Let's swim!


その2





「ただいま〜。」

ゾロはそう言って、家のインターホンを押した。

だが、家の中は、しんと静まり返っている。

(・・・そうだった。 今日は、ナミ姉の奴、大学でなんかあるっていってたよな・・・)

ゾロは、ランドセルの中の予備の鍵を取り出して、玄関のドアを開けた。

「あ〜、喉渇いた・・・」

ゾロはそう呟くと、ランドセルを玄関に放り出して、冷蔵庫に向かった。

冷蔵庫の扉に白い紙が貼ってある。

(なんだ?これ?)

ゾロは、その白い紙を取って見た。

『ゾロへ。 学校から帰ったら、さいしょに、手をあらって、うがいすること。 手もあら

わないで、れいぞうこの中のジュースのんだりしたら、おこるからね。 おやつは、テ

ーブルの上に、おいてあるから、クイナといっしょに、食べるのよ! 遊びに行っても

いいけど、五時には、家に帰ること。 ナミ姉より。』

(チッ、ナミ姉の奴、よんでやがったな。 ・・・仕方ねえ、手、洗ってくるか。)

ゾロは、ナミの言いつけを守ってうがいと手洗いをして、冷蔵庫のジュースを飲んだ。

(さてっと、暇だな・・・なにしようかな・・・ そうだ、この周りを探検しよ。 まだまだ、

行ったことないとこが、たくさんあるんだよな・・・)

ゾロは、テーブルの上のマフィンを1つだけ、口に頬張ると、急いで、外に出ていった。





(ええっと、ここは・・・体育館?? どんなの、やってんだろ??)

ゾロは、受付に書いてあるスポーツ教室の種目を見てみた。

「月曜は、バスケットかあ。 火曜は、バドミントン。 ・・・あっ、今日は、剣道やって

る。 何時からだ? 夕方、5時かあ。 母さんに聞いてみようかな・・・入っても良い

か・・・ 道具、持ってきたけど、近くにあるのか、ちょっと不安だったんだよな。 

よし、他のとこにも行ってみようっと。」

ゾロは、そう呟いて、その他の施設を、色々と廻る。

ふと、ゾロは、思い出したように、スイミングスクールの前で、立ち止まった。

(・・・そう言えば、あいつ、今日、スイミングだっていってたよな・・・ ちょっと、覗いて

みるか・・・)

そう言って、ゾロは、スイミング教室を見学する事にした。

「あっ、いた。 ・・・へえ、あいつ、結構やるじゃん。」

そう呟いたゾロの視線の先には、今日、友達になったばかりのサンジの姿があった。

ただでさえ、人目を引くその容姿は、たくさんの生徒の中から、真っ先にゾロの目に留まっ

た。

サンジは、金色の髪の毛をスイミングキャップの下から覗かせながら、綺麗なフォームで、泳

いでいく。

(まるで、魚のようだ。 いや、キラキラしてるから、熱帯魚だな・・・)

ゾロは、暫くサンジの泳ぐ姿に見とれていた。

そのうちに、スイミングの時間が終わり、ゾロは慌てて、その場を後にした。

(いけねえ・・・ナミ姉に、5時までに帰って来いって言われてたっけ・・・)

只今の時刻は、4時55分。

ゾロは、猛ダッシュして家に帰った。

「ただいま〜。」

「お帰りなさい、ゾロ。」

ゾロが、そう言って玄関を開けると、いつもは、帰宅の遅い母親が、ゾロを出迎えてくれた。

「あっ、母さん、帰ってきてたの? ちょうど良いや。 ねえ、母さん。 俺、今日、体

育館で、剣道の稽古があるのを見つけたんだ。 入部しても良いかな?」

ゾロは早速、母親に入部の打診をした。

「あらっ、そう。 良いわよ。 せっかく続けてきたんだものね。 じゃあ、母さんと今か

ら、手続に行ってみようか?」

「うん!」

ゾロは、笑顔でそう言って、母親と一緒に、入部の手続に行った。




・・・金曜日の学校・・・

「なあ、明日、大丈夫だったか? お父さん、許してくれたのか?」

ゾロは、サンジに、心配そうにそう言った。

サンジは、お坊ちゃんみたいだし、もしかしたら、ダメだと言われたんじゃないかと、ゾロは不

安だった。

「うん! 良いって。 でもね、子供達だけだと危ないからって、ジイやがついてくるこ

とになったんだけど、ゾロ、それで良い?」

「ああ、良いぜ。 でも、怖いじいさんじゃないだろうな。」

「大丈夫。 ジイやは、顔は怖いけど、すごく優しいんだ。 ゾロも、平気だと思うよ。」

サンジは、そう言って笑った。

「じゃあ、スイミングスクールの前で、待ち合わせな。 時間は、10:00。 遅れんな

よ。」

「うん。 ゾロの方こそ、お、遅れん・・・なよな。」

ゾロの言葉に、サンジは、生まれて初めて、乱暴な言い方を真似する。

サンジは、何だか照れてしまって、顔が赤くなってしまった。

(へへ・・・ゾロの真似して、言っちゃった。 こんな言い方初めてして、ドキドキしちゃ

った。 おかしくなかったよね・・・)

ゾロは、何で、サンジが照れているのか解らずに、キョトンとしたが、サンジの顔を見てるうち

に、何だか、ゾロの方まで、顔が赤くなってしまっていた。

「と、とにかく、明日、10:00な。 じゃあ。」

「うん。」












+++++++++++++++++



「うわあ、サンジ・・・見てみろよ。 海だぜ。 本物の海だ。 すっげえ・・・」

ゾロは、生まれて初めて見る海に、興奮して、サンジを呼ぶ。

「・・・本当、久しぶりに来た。 ・・・久しぶりに・・・」

サンジはそう言って、口をつぐむ。

「なんだ? どうしたんだ? 急に、静かになって・・・・」

その様子を不思議に思って、ゾロはサンジに聞いた。

「・・・ううん、別に。 ただ、この前来たときは、母様と一緒だったなあと思って、ちょっ

と、寂しくなったんだ。」

「・・・そうか・・・ 俺、知らなくて・・・ごめんな。」

「ゾロが謝ることないよ。 僕、ううん。 俺、また、海が見れて嬉しかったんだか

ら・・・」

そう言って、サンジは、にっこりと笑った。

ドキン・・・

ゾロはびっくりした。

(笑っているサンジの顔を見ると、走ってもいないのに、ドキドキする。 

なんでだろ・・・)

ゾロは、サンジの顔がまともに見れなくて、そっぽを向いた。

「ゾロ? どうかした? 僕が、『俺』って言うの変? ゾロの真似してみたかっただけ

なんだけど・・・変なら、止める。」

「ば〜か。 そんなことじゃないよ。 サンジが、あんまり、綺麗に笑うから・・・照れた

だけ・・・だ。」

ゾロは、頭をガシガシと掻きながら、そう言った。

「・・・/////ありがと・・・////」

「・・・/////サンジ、遊ぼうぜ!!」

ゾロはそう言って、サンジの手を繋ぐと、波打ち際でバシャバシャと水しぶきを立てた。

「うわっ、止めてよ、ゾロ。 濡れちゃうよ。」

「今日は、暑いから、このくらい平気だよ。 すぐ乾くって。」

そう言って、ゾロとサンジは、仲良く、波打ち際で遊んだ。

ジイやは、その光景に、目を細めながら、優しい表情で、じっと二人を見ている。

(本当に、坊ちゃん、楽しそうだ。 言葉遣いが悪くなるのは頂けないが、まあ、大目

に見て上げますか・・・)

「坊ちゃん、そろそろ、お昼にいたしましょう。 ゾロ君も、さあ、こちらに・・・」

ジイやは、そう言って、二人に声をかけた。




「ふーっ。 腹減った・・・」

「お腹、ぺこぺこだ〜。」

二人は、駆け足で走ってきて、臨時に作ったテラスのイスに腰掛けた。

「さっ、こちらが、坊ちゃん手作りのお弁当ですよ。 どうぞ、召し上がってみて下さ

い。」

「うん。 ゾロ、食べてみてよ。 ジイやに教わりながら、作ったんだ。 あんまり、自

信ないんだけど・・・」

「すげえな。 これ、全部、サンジが作ったのか? 家のナミ姉や母さんより、上手だ

ぞ。 いただきま〜す!」

ゾロは、かきこむように、弁当を食べ始める。

サンジは、その様子を見て、ジイやと顔を見合わせて笑った。

「???何か、変か??」

「ううん。 ゾロって、すごく美味しそうに食べるんだなあって。 何だか、嬉しくなっち

ゃって・・・」

「・・・そうですね。 そのように食べていただけると、作りがいがあるものですね、坊

ちゃん。」

そう言って、ジイやとサンジは、また、クスリと笑った。

「ああ、美味しかった。 ごちそうさまでした!」

「どういたしまして。」

「サンジ、あっち行ってみようぜ。」

「ああん、ちょっと待ってよ。」

食事を済ませた二人は、また、浜辺に遊びに出かけた。







「今日は、楽しかったね。 また、今度は、来年の夏に、泳ぎに来ようよ。」

サンジは、夕日に染まった海を見ながら、ゾロにそう言った。

「・・・うん。 そうだな・・・来年の夏に、また来よう。」

(・・・絶対に、泳げるようになるぜ!!)

ゾロは、心に誓いを立てて、サンジにそう言った。

「坊ちゃん達。 そろそろ、日が暮れてしまいます。 戻りましょう。」

「「は〜い。」」

ゾロとサンジは、ジイやの声にそう返事して、海を後にした。






 
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<コメント>

大人のゾロサンを期待した方・・・ごめんなさい。
今回は、子ゾロ&チビナスが、メーンのため、
ラスト1ページにしか、登場しません。あしからず・・・
ラブと言うには、幼すぎて・・・
ああ、ルナは、一体何が言いたいのでしょう??
自分でも、??? フッ、所詮・・・
逃走!!