Let's swim!


その3





その翌週の月曜日・・・

サンジは、学校を休んでいた。

そして、次の日も、そのまた次の日も・・・・

サンジは、学校に来なかった。

さすがに、気になって、ゾロは、担任のたしぎ先生にサンジの家の住所を聞いた。

「・・・たぶん、家には、サンジさん、いないと思うわよ・・・」

「??何でですか?」

「・・・それは・・・行ってみたら、わかるかな・・・」

そう含みのある言い方をして、たしぎは、ゾロにサンジの住所と地図を書いた紙を手渡した。

(なんか、あったのかな??)

ゾロは、たしぎの言葉に不安を感じて、学校が終わって家にランドセルを置くと、急いで、紙

に書いてあるサンジの家に急いだ。





マンション地区のはずれに、大きな屋敷が見えてきた。

地図によると、その屋敷が、サンジの家らしい。

ゾロは、その屋敷に急いだ。


門が、固く閉ざされていて、子供のゾロでは、ビクともしない。

ゾロは、少し後ろから助走をつけて、門扉に飛び上がると、そのまま根性で、よじ登った。

山で育ったゾロには、このくらい造作もないことだった。

そのまま門を乗り越え、屋敷の玄関に向かう。

「誰かいませんか。」

ゾロは、玄関のドアを思いっきり叩く。

しかし、いくら待っても、その扉が開くことは・・・なかった。

(なんでだよ・・・なにがあったんだよ・・・サンジ・・・どこにいるんだ・・・何で、俺には

何も言ってくれなかった・・・)

ゾロは悔しくて、悲しくて、グッと、唇を噛んだ。







「ゾロ、お帰り。 遅かったのね。 今日は、あなたの好きな、肉じゃがよ。 早く手を

洗ってらっしゃい。」

「・・・いらねえ!」

ナミの言葉に、ゾロはそう返事して、自分の部屋に閉じこもった。

「・・・ゾロ・・・なにか、あった? ナミ姉にも、話せないこと? ・・・・入るわよ。」

ゾロの態度に心配して、ナミは、ゾロの部屋をノックしてそう言った。

「こっち、くんな! ・・・くんなよ・・・」

そう言って、ゾロは、真っ暗な部屋で、電気もつけずに、ベッドの上で、枕に顔を埋めていた。

「・・・・ゾロ・・・・悲しいときには、声を出して泣いて良いのよ。 子供は、我慢なんて

しなくていいの・・・わかった?」

ナミは、そう言って、ゾロの頭を優しく、ポンポンと叩いた。

「泣いてなんかない! ・・・俺は、泣いてなんか・・・泣いてなんか・・・っく・・・」

ゾロはそう言うと、枕に顔を埋めたまま、泣いた。

「お腹空いたら、降りてらっしゃい。」

ナミは、それだけ言うと、そのまま部屋を出ていった。







どれくらいの時間が経ったのか、ゾロはそのまま眠っていた。

「・・・ロ・・・・ゾロ・・・」

不意に、窓の外からサンジの声が聞こえたみたいな気がして、ゾロは、慌てて窓から外を見

た。

そこには、サンジの姿があった。

「サンジ!!」

ゾロはそう叫んで、外に飛び出した。

ハア、ハアと息を切らして、ゾロはサンジの前に立つ。

「サンジ、どうしたんだよ! いきなり、学校に来なくなって・・・俺、俺、心配したんだ

ぞ!」

ゾロはそう言って、サンジに食ってかかった。

「・・・ごめんね、ゾロ。 ・・・急に引っ越すことになっちゃって・・・ ぼ、俺、外国に行

くことになっちゃったんだ。 俺・・・本当は、ここにずっといたかったんだけど・・・

ゾロと一緒に、ずっといたかったんだけど・・・ ・・・おじいちゃまが、倒れたんだ・・・

・・・おじいちゃまの家族・・・俺しかいなくて・・・それで・・・それで・・・」

「すぐに帰って来るんだろ? なあ、サンジ。 外国ったって、すぐに帰ってこれるんだ

ろ?」

ゾロの声に、サンジは、黙って首を横に振った。

「・・・わからない・・・ たぶん・・・帰ってこれない・・・かも・・・ でも、俺、俺、ゾロの

こと、絶対に忘れない・・・ あの海のこと、絶対に・・・忘れない・・・ ・・・だから・・・

ゾロも、俺のこと・・・俺のこと・・・忘れな・・い・・で・・・忘れ・・・」

「忘れるもんか! 絶対に、忘れるわけない! 約束だ。 10年後、10年後の夏。

あの海で、10:00。 良いな、約束だからな。 俺、絶対に待ってるから・・・サンジ

が来るの、待ってるから。」

ゾロはそう言って、サンジを抱きしめた。

ただ、抱きしめたかった。

サンジのぬくもりを忘れないように・・・

サンジを忘れないように・・・

「うん。 ゾロ、忘れない。 絶対に忘れない・・・だから・・・待ってて・・・俺、10年後

に、戻ってくるから・・・必ず・・・約束だ。」

そう言って、サンジもゾロを抱きしめる。

「坊ちゃん、時間です・・・お名残惜しいお気持ちはわかりますが・・・もうこれ以上

は、飛行機の時間に間に合いません・・・・ ・・・ゾロ君、本当に、ありがとう・・・

あなたのおかげで、坊ちゃんは、以前のように明るくなられた。 本当にありがとう。」

ジイやはそう言って、ゾロに頭を下げた。

サンジは、ジイやと一緒に車に乗り込んだ。

「サンジ、約束したからな!!」

ゾロは、サンジを乗せた車にそう叫んだ。














+++++++++++++++++



・・・・・10年後・・・・・

イーストブルーニュータウンの街並みは、変わった。

ナミは、結婚して、子供もいて、近くに住んでいる。

今や、世界的に有名な、海洋学者だ。

クイナは、ナミの大学に通っている。

・・・彼氏は、まだ、いないらしい・・・

サンジが住んでいたあの屋敷も、今は、もう無い。

俺は、17歳になった。

友達もたくさん出来た。

女友達も、それなりに出来た。

剣の腕も上がった。

高校生になってた。

だけど・・・決して忘れることはなかった。

忘れるどころか、昨日のことのように鮮明に、今でも覚えている。

あれ以来、あの海だけは、一度も、誰とも行ったことはない。

どんなに誘われようと・・・あの海だけは、行かなかった。

だって、あの海は・・・あの海は、約束の海だから・・・・

夏休みに入って、俺は、部活もそっちのけで、毎日、10:00になると、海に来ていた。

ただ、ずっと、あいつを待っていた。

「・・・今日も、来なかった・・・な・・・ やっぱり、覚えてる方が、おかしいよな・・・」

俺はそう呟いて、時計を見る。

もう、12時だ。

部活に戻らねえと・・・

そんな日が、1週間、2週間と続いた。

それでも、俺は、戻ってこないあいつを待った。







「・・・今日で、20日かあ・・・ 今日も、また、無駄足かあ・・・」

俺は時計を見て、砂浜に寝ころんだ。

じりじりと焼け付く日差しが顔に降り注ぐ。

「だぁ〜!! あち〜!!」

俺は堪らず、海に飛び込んだ。

そこで、俺は、ふと、不思議なことに気が付いた。

今は、夏・・・

ここは、浜辺・・・

なのに、この静けさは、何だ?

何で、この浜辺には、誰もいないんだ?

そういえば、この周りだけ、柵がしてある・・・

なんでだ??

そう考え込んで、海の中で、腕を組んでいたら、誰かの笑い声がしてきた。

「クスクス・・・・ゾロ・・・お前、全然、変わってないな・・・」

「サンジ!!」

俺は、その声に、反射的にそう叫んだ。

浜辺を見ると、子供の頃そのままの笑顔で、サンジがいた。

「ゾロ、待たせたな。 俺、約束守ったぞ。」

そう言って、サンジは、ゾロの側に駆け寄った。

「ただいま、ゾロ。」

そう言って、サンジは、ゾロの頬にキスをした。

「!!////な、なにして、おま・・・」

ゾロは顔を真っ赤にして、頬を手で押さえた。

「??別に、挨拶じゃん、こんなの・・・ あっ、それとも、唇が良かったか??」

サンジは、そう言って、いたずらっぽく笑った。

「!!////ば、馬鹿か、お前・・・」

そう言って、ゾロは、サンジを抱きしめた。

まったく・・・どうしたら、あの内気なサンジが、こういう風に変わるんだ・・・

・・・けど・・・そう、このぬくもりだ・・・・

ずっと、待ってた・・・

ずっと、探してた・・・

やっと、帰ってきた・・・

やっと、捕まえた・・・

「・・・お帰り、サンジ。」

ゾロはそう言うと、サンジの唇を塞いだ。

「もう、離さない。」

「もう、離れない。」

十年越しの抱擁は、いつの間にか、大人の抱擁に変わっていた。














++++++++++++++++++++



「ク、クイナちゃん! ゾロは?? ゾロ見なかった??」

ナミが、慌てた様子で、ゾロの家に入ってきた。

「・・・ゾロなら、きっと、また、あの海にいると思うわよ。 夏休み中、ずっと昼まで、

なにしてんだか、ボーっと海見てんだから・・・ それより、ナミ姉、なんかあったの?

血相変えて飛び込んでくるなんて・・・」

「そうなのよ!! これ見て!」

ナミが、鼻息も荒く、女性週刊誌の記事を指さして、クイナに見せた。

「なに? ええっと、【北欧の某国のプリンスが、お忍びで、日本に留学・・・関係者の

話だと、『完全なプライベートなので、これ以上申し上げられません。』 ・・・これは、

花嫁探しの可能性大!!】 えーっ!! 王子様が、花嫁探しに来てるって?! 

本当!! 是非、会ってみたいものだわ!!」

「でしょう?! それだけじゃないの! この写真見た? これって、ゾロの小学校の

友達のサンジ君っていう子にそっくりなのよ!! 年もぴったり当てはまるし・・・ 

だから、ゾロに聞いてみようと・・・」

「「海に向かうわよ!!」」

そう言って、ナミとクイナは、慌てて、家を出た。





「・・・申し訳ありませんが、これ以上先は、私有地になりますので、お入りにはなれ

ません。」

ゾロのいる浜辺に向かおうとしたナミとクイナは、そう言って浜辺への入り口を警備する老人

に制止された。

「「ええーっ!! なんで〜?!」」

ナミとクイナの声は、海までは、届かなかった。

(ぼっちゃま、このジイが、誰にも近づけさせませんから、どうぞ、ごゆっくり・・・)

ジイやは、海の方を見て、そっと微笑んだ。





 <END>





  
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<コメント>

ははは・・・笑うしかない、こんな落ち・・・(-_-;)
そう、プリンスなのよ!プリンス!!
アイドルだけでは、飽きたらず、本当にプリンスにしてしまいました・・・・
この続きも・・・皆さんが、やっても良いと思って下さるなら・・・
お言葉甘えて、作ろうかな・・・と。
あっ、そこ、思いっきり、引かないで下さい!(^O^)
所詮、ルナは、こういうのしか書けないのさっ!!(開き直り!!)
で、でも、ジイやって、一体、誰??
逃走・・・