始まりは、ジャパネスク


その4





(ルフィは、サンジをモノにすると言った・・・言ったからには、きっとそれを実行に移す

だろう・・・それがルフィだ・・・この前は、不意打ちを食らって、あの様だが、ルフィは

元々、俺と互角の武術に秀でた男だ。 この前の俺のように、簡単にサンジを組み敷

くことは、可能だろう・・・)

俺は、サンジが、ルフィの組み敷かれてる姿を想像してしまった。

心が、ざわざわとざわめいて、落ち着かない・・・

(・・・馬鹿な・・・俺は、決して、すみれ族などではない・・・絶対に、姫の方が良いに

決まっている・・・でも・・・この胸のざわめきは一体・・・なんだ? なんで、あいつな

んかに・・・)

ゾロは、自分の心に育っていく感情に、とまどいを覚えていた。


















(うわーっ、昨日は、びっくりしたなあ・・・まだ、ドキドキいってるぜ。 しっかし、この

時代の野郎ってば、皆、ああ手が早いのか? ルフィといい、昨日の奴といい、マ

ジ、この時代のレディ達に同情するぜ・・・)

サンジは、昨夜の出来事を思い出して、はあーっとため息を吐いた。

「まっ、昨日のことで、あいつもルフィも、俺が男だとわかっただろうし・・・あんな事

は、もう起きねえと、思うが・・・ ・・・一応、用心しておくか・・・」

サンジは、一人そう呟くと、

「ナミさ〜んっv ちょっと、相談が有るんですけど〜、聞いて貰えますか?」

そう言って、なにやら、ナミと二人、楽しそうに話をした。




その夜・・・・

皆が寝静まった、子の刻・・・

サンジのいる部屋に、怪しい人影が現れた。

「サンジ〜、俺の妻になれ〜!!」

その人影は、そう叫ぶと、几帳を押しのけ、寝床めがけて飛び込んできた。

「?????」

しかし、布団には、サンジの姿はない。

その時、部屋の明かりが、パアッと灯って、棍棒を持ったナミと、袴姿のサンジがしてやった

りという顔をして、ルフィを見ていた。

「やっぱり、来たか・・・いつの時代でも、ルフィはルフィだな・・・用心しといて良かっ

たぜ。ルフィ・・・はっきりといっとく・・・俺は、男だ。 それに、れっきとした、ノーマル

だ。 てめえの嫁になる気も、ましては、襲われる気もサラサラねえ。 ・・・今度、こ

んな事やってみろ・・・てめえ、一生、外遊びできねえ様な身体にしてやる・・・良く、

覚えとけ!」

サンジは、そう言うと、ルフィの後頭部に、思いっきり、踵落としを食らわせた。

「ウガアッ!!」

ルフィは、そのまま布団の上に気絶した。

ナミは、少しもあわてず、女房を2、3人呼ぶと、ルフィを部屋から抱えて連れていった。

(・・・全く・・・こんなんじゃ、おちおち寝てもいられねえな・・・どうしたもんかなあ・・・)

サンジは、一人ため息を吐いて、空の月を眺めていた。

「ガサッ!!」

不意に、庭に人の気配がした。

「誰だ!!」

サンジは、その気配の方向に目を向けた。

今は、十二単のような堅苦しい姿ではない。

これだったら、夜盗でも、逆に、締め上げることが出来る、そう考えたサンジは、いつでも、蹴

りが出せるような体制を取った。

「・・・・・すまん・・・俺だ・・・」

そう言って、月明かりに照らし出された人影は、昨夜逢った、ゾロだった。

「・・・ゾロ。なんで、てめえが、ここにいるんだ? ・・・まさか、てめえ・・・」

「い、いや、違うって! ルフィの奴が、こっそり、こっちに行ったのが見えたから・・・

ちょっと・・・気になって・・・決して、お前を襲おうなんて、思って・・・・ない・・・」

ゾロは、緊張した面もちで、サンジにそう言った。

「・・・そうか。 ならいいんだ。 悪かったな、疑ったりしてよ。」

サンジは、そう言って笑った。

「・・・・・」

(うっ・・・・やっぱり・・・・綺麗だよなあ・・・・はあ・・・ルフィの気持ち・・・わかる気が

する・・・ 俺って・・・どうしたんだろう・・・)

ゾロは、月明かりに照らされて笑うサンジの顔に、思わず見とれていた。

「・・・あっ、そうだ。 ゾロ、お前、確か、近衛少将だったよな? じゃあ、腕は立つよ

な? ・・・じゃあさ、悪いんだけどさあ、俺のボディーガードしてくれねえ? 毎晩じゃ

なくていいからよ。 ルフィが、いる間だけで、良いんだ・・・ダメか?」

サンジは、ニコニコして、ゾロにそう言った。

「・・・・わかった・・・」

(はあ、ダメだ・・・俺・・・やっぱり・・・男だとわかっていても・・・それでも・・・やっぱ

り、サンジのこと・・・ルフィには、悪いが・・・誰にも、渡したくねえ・・・)

こんなサンジを目の前に、断れる人間がいたら、お目にかかりたい・・・

ゾロは、本気でそう思った。

こうして、ルフィがいる間、ゾロは、毎晩、サンジの部屋で、宿直(とのい)をした。



御簾越しに聞こえてくる安らかな寝息・・・

その寝息に混じって、時々聞こえる甘い吐息・・・

この御簾を上げて、サンジを欲望のまま、この腕の中に抱きしめようか・・・そう何度、思った

ことか・・・いや、サンジは、自分を信頼して、安心して眠っているのだと、その度に、ゾロは、

いい知れないジレンマを抱え、当然、眠ることなど出来ず、悶々と夜を過ごした。








それから2日間、何事も起きず、平穏に時は過ぎていった。

その夕刻。

「サンジ〜。 京に一緒に行くぞ〜! 一緒に暮らそうぜ〜!!」

ルフィが、部屋中に響くような大声話しながら、サンジの部屋にやってくる。

それから、少し遅れて、ゾロは部屋にやってきた。

「サンジ。 さっき、権大納言殿より、京の都に、戻ってきてくれと、連絡が来た。

 ・・・俺達にも、勤めがある・・・ずっと、ここにいるわけもいかない。 ・・・俺達は、明

日、京の都に帰る・・・だが、お前は・・・ ・・・言うことは、それだけだ・・・」

ゾロは、そう言うと、その場から動こうとしないルフィの襟首を掴むと、有無を言わさず、一緒

に連れて部屋を出ていった。

「・・・・・・」

(・・・ルフィ達が、京に行く・・・清々して、良かったじゃねえか・・・どっちみち、俺、自

分の時代に帰るんだし・・・・でも・・・)



その夜、いつもの通り、ゾロが宿直をしにサンジの部屋にやってきた。

いつもなら、サンジが、この時代のことなどを、ねほりはほり聞きまくって、ゾロが、ぼつりぼ

つりとそれに答えていくといったパターンなのに、今日のサンジは、ただ、黙って、物憂げに

ため息ばかり吐いている。

「・・・どうした?」

ゾロが、ボソリとサンジに言った。

「ん?! ああ・・・別に・・・ただ、ちょっと・・・いつになったら、俺、自分の世界に戻

れるのかなあって・・・な・・・」

「自分の国に戻りたいのか?」

「・・・まあな。 俺は、ここの人間じゃねえし・・・そりゃあ、ナミさんも、てめえも、大納

言のおっさんも優しくて、親切だけどさあ・・・やっぱ、俺は、ここにいるべき人間じゃ

ねえよ。 それに、この格好も洒落にならねえだろう??」

そう言って、サンジは、袖を広げ、わざとおどけて見せた。

「・・・そうか・・・早く、戻れると・・・良いな・・・」

ゾロは、そう言いながら、ぐっと己の拳を握った。

言葉でそう言ったものの、ゾロの胸中は、穏やかではない。

(・・・サンジは、この国の者じゃない・・・いつかは、ここからいなくなる・・・

それが、サンジにとって一番良いことだってわかってる・・・だけど・・・だけど・・・

俺は・・・俺は・・・このまま、こいつに、ここに・・・この国にいて欲しい・・・俺の側

に・・・)

ゾロは、サンジの顔をじっと見つめた。

吸い込まれそうな蒼い瞳・・・

キュッと引き締まった唇・・・

化粧もしていないのに、透き通るような白い肌・・・

見つめれば見つめるほど、押さえきれない、込み上がってくる感情・・・

(・・・いっそ・・・このまま、欲望のままに、行動してしまおうか・・・)

ゾロが、黙り込んで、そんな葛藤を繰り広げていた頃、サンジもまた、自分の心に芽生えか

けた感情に、とまどいを感じていた。

(な、なんだよ・・・人の顔、じっと見つめやがって・・・なんか、ドキドキしてくるじゃね

えか・・・あの瞳を見てると・・・なんか・・・俺・・・変だ・・・ドキドキして、そわそわして

落ちつかねえ・・・ もうすぐ、俺、自分の時代に帰るんだぞ・・・変なこと考えてる場

合じゃねえだろ・・・あんま、こっち見るなよ・・・ああ、顔が熱くなってきた・・・

・・・やめい・・・)

「おい・・・あんま、こっちみるな。」

サンジは、黙って見つめるゾロに向かってそう言うと、真っ赤になって俯いた。

「あっ、・・・すまない・・・」

サンジの顔にハッと我に返ったゾロは、あわててサンジから目を離し、静かに瞑想を始めた。






翌日・・・

ルフィと、ゾロは、サンジに出立の挨拶をしに部屋にやってきた。

「・・・・・・・じゃあ、そろそろ・・・行くか・・・・元気で・・・な・・・」

「おう、また来るからな。 チェッ、一緒に行けると思ったのによ・・・」

ゾロとルフィはそう言うと、部屋を出ていった。

「・・・・・・・・」

部屋に一人残されたサンジは、フーッと深いため息を吐く。

(・・・仕方ねえよ・・・仕方ねえんだよ・・・)

サンジは、何度も、何度もそう繰り返して・・・いつのまにか自分が、泣いていることに、気が

付いた・・・

(・・・なんでだよ・・・何がこんなに悲しいんだよ・・・なにが・・・)

思い出すのは、昨日のこと・・・

ゾロのあの瞳・・・

あの瞳を思い出すだけで・・・胸が・・・きしむ・・・

(連れて行け・・・そう言えてたら、こんな想いなどしなかったのかな・・・)

サンジは、そう呟くと、脇息に凭れかかって、目を閉じた。







 
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<コメント>

ゾロ・・・完全に落ちましたね・・・サンジに・・・(笑)
サンジは???どうなるんですかねえ・・・
それにしても、ゾロ・・・耐えてますね・・・
さすが、平安ゾロ。育ちが違います!!(笑)
あっ、でも、ルナ、これでも、ゾロリストなんですよ、マジ。
ところどころにそれ出てませんか? あ?出てない??
・・・・逃走・・・・