ジャパネスク ふたたび −平安時代編−


その4







「クソッ! なんでこんなに、入り組んだ庭になってんだ・・・・・それに・・・・・・なん

だ、このすえた匂いは・・・・・空気が、よどんでいる。 ・・・・・一体、なにが、あるとい

うんだ・・・・」

ゾロは、すっかり荒れ果てた庭で、サンジと浚われた姫君たちの居場所を探っていた。

ふと耳を澄ますと、ガヤガヤと人の話す声と足音が、近づいてくる。

ゾロは慌てて、草むらに身を潜めた。

「本当に、親分も、モノ好きだな。 いくら外見が良くったって、俺は、男相手には、

できねえよ。 ま、あいつも一人でこんなとこに来たのが、運の尽きだな。」

「・・・・けどよ、本当、綺麗な顔だちしてたよな。 男にしとくのもったいねえよ。 

俺も、見張りじゃなくて、ヤリたかったぜ・・・・・」

「・・・・最後くらいには、ヤラせてくれんじゃねえの?? 上の方が、ヤリ飽きた頃に

は・・・」

「ククク・・・・違いねえ・・・・・」

数人の男達が口々にそう言って、屋敷の奥の部屋(座敷牢)に向かう。

「・・・・・男? ・・・・一人? まさか・・・・・・・・」

ゾロは、草むらの中でそっと呟いた。

その言葉からして、サンジは、男と言うことがばれてその男達に捕まったらしいことが容易に

解った。

そう、男達の慰み者として・・・・・・・

幼少の頃から、辛い思いばかりしてきて、やっと身分相応な生活を送ることが出来たという

のに、また、その過去を抉るような目に遭わせてしまった。

それが腹立たしくて、ゾロは、その話を耳にして、全身が、怒りに震わせた。

生まれて初めて、本気で、人を殺してやりたいと、そう思った。

鞘を握りしめる手に力を込め、立ち上がろうとしたとき、ルフィが、やっと、姿を現した。

「ルフィ、お前は、姫君たちを先にお助けしろ。 俺は・・・・俺は、サンジを助けに行

く。」

「わかった。 気を付けて行けよ。」

「お前も、抜かるなよ・・・・」

「任せとけって!」

ゾロは、そう言ってるフィと別れると、先程の男達が出てきた部屋に向かった。











「へへへ・・・・なかなかに、青ざめた表情もそそるもんがあるよな。 ん??がたがた

と震えてよ・・・・・ククク・・・・可愛いねえ・・・・・初めてか? だったら、尚のこと、

可愛がってやるからな・・・・」

フルボディはそう言って、両手足を縛られたサンジの上の覆い被さった。

過去の出来事が、サンジの脳裏にフラッシュバックする。

卑下た笑い声・・・・・

まるでおもちゃを見るような見下した目・・・・・

ゾッとするような全身をなぶる視線・・・・

あがらえない力・・・・・

好色な息づかい・・・・

過去何度か、こう言う経験はしてきた。

ただ、持って生まれた強運なのか、今まで、一度たりとも、身体を汚されることはなかった。

しかし、今回ばかりは、自分で死を選ぶことも、ましては、叫び声一つ上げることが出来ない


のだ。

声を出せなくては、ゾロやルフィに助けを求めたくてもどうにもならない。

助けはきっと来ない・・・・・

サンジは、瞳を閉じて、自分の身に起こる悪夢の時間が過ぎるのをじっと耐えようと決めた。

小袖の中に差し込まれた手が、サンジの身体を撫で回す度、サンジは、全身に鳥肌を立た

せ身震いした。

そのうち、すっと小袖の紐が解かれ、サンジは、覚悟を決めた瞬間、いきなり、フルボディ

が、サンジの上に倒れ込んできた。

びっくりしたサンジは、思わず、瞳を開けた。

「はぁはぁ・・・・・・・大丈夫か?」

ゾロは、息を弾ませてながら、サンジにそう声を掛ける。

サンジが辺りを見回すと、十名ほどいた男共が、全て、床に伏して倒れていた。

ゾロは、サンジの口から紐をはずすと、ギュッとサンジを抱き締める。

「・・・・・ごめん。 また、辛くて怖い思いをさせた。 あんな思いには、もう二度とさせ

たくないと思ってたのに・・・・ごめんな。」

ゾロは、そう言って、サンジの髪を撫でた。

ふわっと、ゾロがいつも焚きしめている梅花香の香りが、サンジを優しく包む。

サンジの身体から、震えが止まった。

「・・・・・・もう良いって。 俺、何もされてないから・・・・それに、てめえが、謝る必要

はねえ。 俺が、勝手に先走って、捕まっちまっただけの事。 それより、姫君たち

は、どうした?」

サンジは、苦笑しながら、ゾロにそう尋ねる。

「それなら心配はいらない。 今頃、ルフィが、うまくやってるさ・・・・」

ゾロは、そう言って優しく笑った。

「・・・・じゃあ、ここ、出るぞ。」

ゾロは、そう言って、倒れている男達を紐で縛り、柱にくくりつけると、サンジと共に、庭に降

りた。

すると、フッとなま暖かい風と共に、ゾロが先程感じたすえた匂いが、辺りに漂い始めた。

「・・・・・・ゾロ、気を付けろよ。 ・・・・・・なにか、いる!」

サンジが、サッと辺りを見渡す。

「ああ、俺もそう感じた。 ・・・・・得体の知れない何かが、ここには、いる。」

ゾロはそう言うと、刀を構えた。

サンジは、髪を掻き分けると、いつもは隠している左目で、もう一度、見渡す。

「・・・・・・いた。 ゾロ、あの木の下・・・・ てめえの左側から来る!! 俺が、叫ん

だら、刀で斬れ!」

サンジは、小さな声でゾロにそう言った。

「・・・・斬れったって、俺には、何も見えないぞ。」

「良いから、てめえは、俺が言ったら、刀を振るうだけで良い。」

「・・・・・わかった。」

「来るぞ!! 今だ!! 叩き斬れ!!」

サンジの言葉に、ゾロは、空を斬った。

「ギャアァァァ・・・・おのれ・・・・・またしても・・・・・金色の・・・このままにはしておか

ない・・・・・きっと・・・・」

人間ではない声が庭に響く。

そこには、何も見えていないのに、確かに手には、何かを斬った感触だけが残っていた。

「・・・・・・一体、何だったんだ、今のは・・・・・ なんでお前には、見えたんだ?」

ゾロは、不思議な感覚にとまどってサンジにそう聞いた。

「・・・・・こいつのおかげだ。 俺の母親譲りのこの瞳の、な・・・・」

サンジは、そう言って、左目をゾロに見せた。

いつも見せている右目とは違う蒼味がかった金色の瞳。

「・・・・・こいつは、見えないモノを俺に見せてくれる。 だいたいが、気色の悪いモノ

ばかりで・・・・・俺は、この瞳が、大嫌いだった。 この瞳のせいで、嫌な思いも、

怖い思いも辛い思いもたくさんしてきた。 ・・・・・けど、今度ばかりは、この瞳に感謝

だな・・・・」

サンジはそう言って寂しそうに笑った。

「・・・・俺は、この瞳、好きだぜ。 お前と俺を守ってくれたこの瞳が・・・・」

ゾロはそう言うと、にっこりと笑ってサンジの頭をポンと叩く。

サンジは、そんなゾロの言葉にポカンと口を開けたまま、ゾロの顔をじっと見ていた。

「・・・・サンジ? どうした。 なんか俺についてるか?」

「う、うるせえな!! てめえに好きだって言われても、ちっとも嬉しくなんかね

え!!」

サンジは、そう言って慌てて俯く。

月明かりでも、サンジの頬が赤らんでいるのが、ゾロにはわかった。

「ククク・・・・やっぱり、お前、可愛いわ・・・・俺、ますますお前のこと好きになった。」

ゾロはそう言って、サンジを抱き締める。

「うわっ!! 止めろって!! 俺は、好きじゃねえって、何度もそう言ってるじゃねえ

か!! まだ、わかんねえのか!! 止めろって・・・・

・・・本当・・・・馬鹿だな、てめえって・・・・」

サンジは、最後の言葉を静かに呟くように言うと、サッとゾロの腕からすり抜けた。

「さっ、こんなとこ、ぐずぐずしてねえで、早く出ていこうぜ。」

サンジはそう言って、にっこりと笑う。

ゾロは、その表情をじっと見つめ、フッと優しく微笑んだ。




・・・・・・初めて見せてくれたな・・・・・・笑顔・・・・

・・・・・・ちょっとは、進展したと思って良いのかな・・・・・・




「ああ、ところで、お前、今日、何処に泊まるんだ?」

「あ、そうだな・・・・・・やっぱ、ルフィんちで良いか・・・・」

「・・・・・じゃあ、俺も、泊まる・・・・」

「え゛っ?!・・・・マジ・・・・」

「何だよ、その瞳は・・・・・ もう、夜這いなんかかけねえよ。」

「当ったり前だ!! そんなことしたら、即、オロす!!」

「ふ〜ん・・・・オロすだけで済ませてくれるんだ・・・・」

「ば、ばっかじゃねえの!! てめえ・・・・・そんだけで済むわけねえだろ!!」

「はいはい、そうですか・・・・」

ゾロとサンジは、そう言い合いながら、ルフィの待つ二条院へと帰っていった。




















翌朝、二条院に避難していた姫君たちは、皆、迎えの車に乗って、それぞれの屋敷に戻っ

ていった。

実際には、姫君たちには、被害にあった者もなく、皆、ホッと胸を撫で下ろしていた。

それから、ゾロは、シャンクスの命で、先々左大臣の屋敷に兵を向けた。

しかし、屋敷の中には、昨晩柱に縛り付けていたフルボディ他の男達が、真っ青な顔をして

いるだけだった。

先々左大臣縁の者は、誰一人、住んでいなかった。

そして、取り調べてみれば、皆、一様に、覚えていないと繰り返すだけ。

自分達は、太秦(うずまさ)の方で、墓荒らしを専門とする盗賊だったという。

そこで、見知らぬ墓を暴いていて、気が付いたら、柱にくくりつけられていたという。

サンジを襲ったと言うことも、姫君たちを浚ったと言うことも、一切覚えていなかった。

ゾロは、一瞬、あの断末魔の叫び声を思い出した。




・・・・・・あの声は・・・・・確かに言っていた。

『・・・・・・またしても・・・金色の・・・』、と。

・・・・・・・・サンジに何か、関係が有るんだろうか・・・・・・




結局、この事件は、原因がうやむやのまま解決し、人の噂もいつの間にか、なくなった。









  
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<コメント>

ここで、第一部終了といった感じでしょうか・・・・
全然なんにも起きてないじゃん!!・・・お叱りはごもっとも。(笑)
くそぅ、可愛いサンジにしとけば、ここらで、ラブ落ちしてたのに・・・・
今回さすがに、手強いですな・・・・・後もう一押し、きっかけが掴めれば・・・
加えて、サンジの気持ちを書いてないので今ひとつ掴めないですよね。
あとで、まとめて書こうかと・・・・(殴)
まあ、これは、ゾロが主役だからなあ・・・
ラブラブHのシーンは、遠いなあ・・・いつになることやら・・・
次から、また新展開へ・・・・・
オカルトもの・・・・・入れなきゃ良かったかな・・・・・(汗)
何の考えも無しに入れた自分が・・・・懺悔!! 忘れてくれい。