Sweet Angel


その8





ロロはそう呟いて、聖剣をアスタロトに向ける。

ロロの身体からまばゆい光が発し、ロロの背中に7枚の羽が現れた。

「!!なっ・・・・・7枚の羽だと?! ・・・・・・・馬鹿な・・・・・・・・・・今、天界に、7枚

の羽を持つ者は、いないはず・・・・・・ 我らの魔王、ルシファー様が、ルシフェルとし

て天界にいた時と同じ7枚の羽を持つだと・・・・・・・・・ありえない・・・・・・・・・・

そんなこと、絶対に・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・言いたいことは、それだけか? ・・・・・・・・最後に、教えといてやる。

・・・・俺とルシフェルは、双子だった・・・・・・・・あのルシフェルの反乱で、俺は、自分

を封印した・・・・・・・・俺とルシフェルは、互いに共鳴するからな・・・・・・・あのままだ

と、俺は、間違いなく、ルシフェルと行動を共にしていたはずだから・・・・・・・・・

そうなる前に、俺は、自分を封印したんだ・・・・・・・・・ただの天使として・・・・・・・・・

それを、お前が、引き金を引いた・・・・・・・・テンを俺から奪ったこと・・・・・・・・・・

未来永劫の闇の中で、後悔し続けると良い・・・・・・・・・」

ロロはそう言って、呪文を唱え、剣をアスタロトに向け、ふるった。

「嫌だー!! ・・・・・・ルシファー様ーっ!!」

アスタロトはそう叫びながら、聖剣の中に吸い込まれていった。

「・・・・・テン。 ・・・・・・・・・すまない・・・・・・・俺がもっと早く覚醒していれ

ば・・・・・・・・・・テン・・・・・・・・ガハッ・・・」

ロロはそう言って、うずくまる。

今までに感じたことのない後悔と、激しい憎悪がロロの身体を蝕んでいく。

「・・・・・・・・駄目だ・・・・・・・・ここは、天界と違って、魔界に近い分、ルシファーとな

ったルシフェルと・・・・・・・・クッ・・・・・・・共鳴していく・・・・・・・・・・嫌だ・・・・・・・・

俺は、ルシフェルとは、違う・・・・・・駄目だ・・・・・・・封印が・・・・・・・・・・間にあわ

な・・・・・・・・」

見る見るうちに、ロロの羽が黒く、くすみ出す。

魔界のルシファーに感応する身体は、その形を聖なるモノから魔なるモノへと変化し始めた。

「・・・・・・・・テン・・・・・・・・・」

薄れゆく意識の中で、ロロは、無意識にテンの名を呼んだ。











「ロロ!! 大丈夫か? 俺が来たから、もう平気だ!! ロロ! おい、しっかりし

ろ!! ロロ、俺を見ろ! ロロ!!」

身体を強く揺さぶられて、ロロは、瞳を開けてその声の方を見た。

そこには、8枚の羽を持つ、金色の髪と蒼い瞳の若い天使がいた。

「・・・・・・・・・・良かった・・・・・・・間に合ったみてえだな。 俺だ、テンだ! ちょっと

成長するのに時間かかっちまって、あの闇を抜け出すのに、手間取っちまった。 

ごめんな。 もう、心配いらねえ。 お前は、俺といる限り、ルシフェルに共鳴なんかし

ねえ。 ・・・・・・・・・・俺は、お前のために、生まれてきたんだから・・・・・・・・・」

そう言って、成長したテンは、ロロを抱きしめ、優しく口付けた。

ロロの羽の色が、元の純白に戻っていく。

「・・・・・・・・・・テン・・・・・・・・・・俺の・・・・・テン・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・そうだ。 てめえの、テンだ。」

ロロとテンは、もう一度、口付けをかわす。

「あっ、いけねえ・・・・・サンジとゾロ、忘れてた。 早く、魂を戻さねえと・・・・・」

テンはそう言って、二人の魂を取り出すと、呪文を唱えて、ゾロとサンジの身体に戻した。

「これで、良しっと。 おい! ロロ、なに、いつまでも、ボーっとしてやがるんだ。 

さっさと、天界に戻るぞ。」

テンは、そう言って、ボーっとしてテンを見つめるロロの腕を引っ張った。

「いやあ・・・・・あの可愛かったテンが・・・・・・・・どうしてこう、口汚い奴になったの

か、それがわからねえ・・・・・」

「ああ?! あたりまえじゃねえか。 育ての親が、こいつらなんだから・・・・・・・・

俺の口汚さは、親譲りだ。 さあ、行こうぜ。」

ロロの疑問に、テンは、当然と言った顔をして、にっこりと笑った。

「なあ、このまま、何も言わずに、別れんのか? 別れの挨拶ぐらいしたほうが・・・・」

「ああ、良いんだ。 あいつらのテンは・・・・・・・もう、どこにもいねえか

ら・・・・・・・・・・ それに、俺は、会おうと思ったら、いつだって、あいつらに会える

し・・・・・・ほらっ、行くぞ。 時間が、流れる・・・・」

「・・・・・・・・そうだな。」

ロロとテンは、そう言って、天界に戻っていった。


























++++++++++++++++++++++



ゾロとサンジの世界の時間が、動き出した。

「うっ・・・・・・俺は、一体・・・・・・・どうしたんだ?」

サンジは、ゆっくりと身体を起こす。

「!!そうだ! ゾロ! ゾロは・・・・・どうなったんだ・・・」

サンジは、慌ててゾロの側に駆け寄ると、身体を抱き起こした。

そして、そっと、血だらけの胸に耳を当ててみる。

トクン、トクンと、ゾロの心臓の音が聞こえる。

よく見ると、先程まであった、致命的な太刀傷が、胸の上から、消えている。

「・・・・・・・・・良かった。 成功したんだ。 テン! ゾロ、生き返ったぞ。 おい、テン??」

サンジは、さっきまで、側にいたはずのテンの姿を探した。

しかし、その草原には、ゾロとサンジの二人だけしか、いなかった。

「・・・・・・・・テン・・・・・・・・・もう、天界に帰っちまったのか? ありがとうって、礼ぐ

らい言いたかったのに・・・・・ あの天使も、水くせえよな。 俺達に、黙って、いっち

まうなんて・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・しかし、あの天使の顔、一度、ゾロに見せたか

ったよなあ・・・・・・まるっきり、ゾロだものなあ・・・・・・・・・・ピアスと、背中の羽がな

きゃ、どっちがどっちかわかんなかったぜ。 ・・・・・・・でも、天界に、俺達そっくりの

天使かいるって、考えただけでも、面白いよなあ・・・・・・・ あっ、もしかして、ナミさ

んやロビンさん達みたいな可愛くて、綺麗な天使もいるのかなあ・・・・・・・・一度、お

目にかかりだいぜvv 死ぬときのお迎えは、是非、ナミさんそっくりな天使に、きても

らいたいよなあvv・・・・・・・・」

ゾロが、生き返ったとわかったサンジは、そんなことを考えて、目からハートを飛ばしていた。

ナミ似の天使を思い浮かべて、思わず、ゾロを抱きしめる腕に力が入る。

「・・・っ痛っ! ・・・・・・・・・・何、人を抱きしめて、ラブコックに、なってやがるんだ?

ああ?? ・・・・・・・・・・俺、生きてんのか? ・・・・・・・・・・・俺、確かに、鷹の目の

黒刀で、致命傷を負って・・・・・・・ ところで、サンジ。 テンはどうした? さっきか

ら、姿が、みえねえようだが・・・・・」

ゾロは、サンジの抱きしめた痛みで、意識を取り戻し、サンジにそう言うと、辺りを見渡した。

「・・・・・・・・・・テンは、別の天使に連れられて、天界に帰っていった。」

サンジは、ゾロが生き返ったいきさつは一切言わず、それだけ言うと、タバコに火を付ける。

その仕草は、暗に、これ以上、話すことはないと、ゾロに告げていた。

「・・・・・・・・そうか。 すまねえな、サンジ。 俺、約束、守れずに・・・・・・・・・

俺、もっと修行して・・・・・・・・・・・・・今度こそ、鷹の目に、勝つ・・・・・・・

・・・・・・テンから貰ったこの命に賭けて・・・・・・・・・・・・・・サンジ・・・・・・・・

・・・・・・今度は、てめえも、俺の側で、俺が、鷹の目に勝って、大剣豪になるのを、

その瞳で、見ていてくれ・・・・・・・・テンと一緒に・・・・・・・・・・・」

ゾロは、何があったのか薄々感じてはいたが、敢えてそれには触れず、サンジを抱きしめ

る。

「おう、俺とてめえは、一心同体だ。 ・・・・・・・・・・死ぬときは、一緒だ。」

そう言って、サンジは、にっこりと笑った。

「歩けるか?」

「ああ、なんともねえ。」

ゾロとサンジは、並んで、ナミ達が待つ、ゴーイングメリー号へと向かった。

林を抜け、船に近づくと、他のクルー達は、皆、一様に、甲板からこっちを見つめていた。

「「「サンジーッ!! ゾローッ!!」」」

ルフィー達が大声でサンジ達を呼んでいる。

「サンジ君! ゾロ!! ・・・・・・何だ、心配して、損しちゃった。 あれ?? 

テンは? テンは、どうしたの??」

二人が、テンを抱いていないことに気が付いたナミは、ゾロとサンジにそう聞いた。

「ああ、ナミさん。・・・・・・・・・・・・テンは、仲間と一緒に、天界に、戻っていちゃいま

した。」

「・・・・・・・・・・テンが、俺を、助けてくれた・・・・・・・・・・・・・皆、すまねえ。

・・・・・・・・・・・・・俺・・・・・・・・・・・」

「何、言ってんの! あんたが、謝ることなんか、これっぽっちもないわ。 あんたは

ね、テンから、もう一度、チャンスを貰ったのよ。 ・・・・・・・・・・今度は、そのチャン

ス、生かしてよね。 ・・・・・・・・・・・・・けど、あたし達は、その時も、近くで、待ってる

から・・・・・・・・・そのくらいさせなさいよ! ・・・・・・・・・・・・・・仲間でしょ? 

あたし達。」

「・・・・・・・・・・・・ありがとう、ナミ、皆。」

ゾロはそう言って、頭を下げる。

「・・・・・・・・・・・・ナミ・・・・・・・・・お前、本当は、良い奴だったんだな。」

隣で、話を聞いていたウソップが、しみじみとナミにそう言った。

「・・・・・・・ウソップ!! 何か言った??」

「いえ、何も、言ってましぇ〜ん・・・・・・」

「よおし! ゾロも帰ってきたんだ! 皆で、パーティーしようぜ。 ゾロ、そんな怪我、

肉食えば、すぐ治るぞ。 サンジ〜、今すぐ、作ってくれ!! 俺、腹減った!!」

「ゾロ、俺にちゃんと、傷診せてみろ。」

「こんなの、寝たらすぐに治る。」

「駄目だ。 ちゃんと消毒しとかないと、早く治らないぞ。 治らないと、俺は、鍛錬す

るの、許可しないからな。 良いのか、それで。」

「・・・・・・・・・わかった、チョッパー。 お前の言うとおりにするよ・・・」

ゾロは苦笑して、チョッパーの後について部屋に入っていった。




















パーティーも、済んで、クルー達は、それぞれ、部屋に戻っていった。

ゾロとサンジは、テンが眠っていたベッドや、買ってきた洋服等をを格納庫にしまう。

「・・・・・もう、このベッドも使うことねえな・・・・・・・ それに、この洋服も・・・・・・・

ははは・・・・・・・参った。 ゾロ・・・・・・・・・俺、自分で思ってたより、あいつのこと、

愛してたのかもしれねえ・・・・・・・・・ ックッ。 つれえよ・・・・・・・・・・・・・・・・

今でも、ふわっと、俺の腕の中に、あいつが、飛んできそうな感じがし

て・・・・・・・・・・・・まだ、あの感触が・・・・・・・・・・残ってるんだ。 

・・・・・・・・・ゾロ・・・・・ゾロ・・・・・・・・ックッ・・・・」

サンジはそう言って、ゾロにしがみついて、泣いた。

パーティーの席では、誰一人、テンのことを口にする者はいなかった。

サンジも、敢えて明るく振る舞い、何も気にしてない素振りをとっていた。

「・・・・・・・・サンジ。」

ゾロは、思いは同じだと口には出さず、サンジの頭を優しく撫でる。

「・・・・・・・いつか、会えるさ。 もしかしたら、今も、俺達のこと、天界から見てるかも

しれねえ・・・・・・・」

そう言ってゾロは、ギュッとサンジを抱きしめた。










   
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<コメント>

どうですか?? ロロの正体・・・・
以外だったですか? それとも予想通り??
今回は、少し物語風に、天界と人間界、二つの世界を
ゾロサン風味でお送りしています。
次回で、いよいよ最後です!
えっ?! まだあるの??・・・ほっとけ・・・・(笑)