Sweet Angel


その7





船は、すぐに、リバース島に着いた。

サンジは、テンを抱いて、船の接岸と同時に、島に降り立つ。

林の中から、近づいてくる人影が見えた。

「ゾロ!」

サンジは、その人影に向かって駆け出した。

その人影が、林の中から姿を現す。

「貴様、ロロノアの知り合いか? ・・・・・・・・強かったぞ。 後数年先に、会いたか

った。 ・・・・・・この先に奴は、いる。 手厚く、葬ってやれ・・・・・・・・」

ミホークはそう言うと、そのままサンジの横を素通りし、自分の小船に乗って、島を離れてい

った。

「・・・・・・・・・・・嘘・・・・・・・・・嘘だ・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・ゾロは、約束した・・・・・・・・・・・・・必ず帰ると・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・約束したんだ・・・・・・・・・・・・・・

俺は・・・・・・・・・・・信じねえーっ!!」

サンジは、猛然と林を突き抜けていく。

林を抜けた先の草原に、ゾロは・・・・・・・・いた。

「ゾロ!!」

サンジは、テンを抱いたまま、ゾロの側に駆け寄った。

「ははは・・・・・・・・・・ざまねえな・・・・・・・・・・・すまねえ・・・・・・・・・・・・・・

約束・・・・・・・・・・守れね・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・グッ・・・」

口から血を吐き、誰の目から見ても致命的な傷を負って、それでも、ゾロは、最後の力を振り

絞って、血塗られた手をサンジの頬に伸ばす。

「っ・・・・・ゾロ・・・・・嫌だ・・・・・ゾロ・・・・・・ゾロ・・・・・・・

・・・・・・・・・・剣豪でなくてもいい・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・五体満足じゃなくても良いんだ・・・・・・・・・・・・・ゾロ・・・・・・・・・

嫌だ・・・・・・・・・・・・・逝くな・・・・・・・・俺をおいて逝くな!! ゾロォー!!」

サンジは、テンを地面に置くと、ギュッとゾロを抱きしめた。

「・・・・・・・・・・・・泣くな・・・・・・・・・・・・」

ゾロはにっこりと笑って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・静かに目を閉じた。

サンジの頬から、ズルリと、ゾロの手が、力無く離れる。

「ゾロォー!!」

「ロロ!! やーっ!!やーっ!!!!!」


































パシン・・・・・・・・・

テンの声に共鳴するかのように、時が、凍り付いた。

「な、なにが、おこった???」

ゾロの側に降りてきて、その魂を、手中にしていた死の天使ロロは、突然の出来事に、驚

き、辺りを見渡した。

「と、時が・・・・・・・・止まってる・・・・・・・・・・・・・誰だ? 俺の他に、誰かいるの

か?」

そう呟いて、用心深く辺りを見回すロロの腕に、何かが、触れる。

「ロロの・・・・・らめ!  やーっ!!・・・・・・ロロの・・・・バイバイ、らめ!!」

そう言って、テンが、瞳に涙を溜めて、ロロにしがみついていた。

「・・・・・・・・お前・・・・天使?? ・・・・・・・・・・もしかしたら、落っこちた卵から生ま

れたのか?? ・・・・・・・・・・生まれたてで、4枚の羽・・・・・・・

間違いねえ・・・・・・・・・ けど、なんで、こんなところに???」

「ロロの・・・・・らめ!! バイバイ、らめーっ!!」

そう言って、テンは、ロロの手から、ゾロの魂を奪うと、固まって動かないサンジの後ろに隠

れた。

「・・・・あのなあ・・・・・・そんな事言ったって、生きているモノには、全て、俺達と違っ

て、寿命というモノがあるんだ。 それが、神様が決めた自然の摂理、つまり、決まっ

たことなんだ。 わかるか?? なっ、わかったら、その魂、俺に、返すんだ。 第一、

一回出てきた魂は、そう簡単には、元に戻らねえんだぞ。 さあ、おれに、よこせ。」

死の天使ロロは、そう言って、サンジの後ろに隠れたテンを捕まえる。

「やーっ!!・・・・・・・・しゃんじ・・・・・・・・・しゃんじ・・・・・・・・・・・」

テンはそう泣き叫んで、動かないサンジの腕にしがみつく。

死の天使ロロは、そんなテンの悪あがきに、フッとため息を吐いて、後ろを見渡して、こう言っ

た。

「・・・・・・もう、そんなことしても、この空間には、俺とお前しかいねえの。 そいつだ

って、ただの人間だ。 お前を助けることはでき・・・フゴッ!!」

「・・・・・てめえ、なに、テン、泣かせてんだよ!」

死の天使ロロの後頭部に、思いも寄らない衝撃が、くる。

「ッ痛てえ・・・・・ ??なに、何で、お前、動けるんだ?? 時間は、止まってると言

うのに・・・・・・・」

「あん? 何言ってんだ。 こんなにテンを泣かせやがって・・・・・・・・・てめえが、天

使だろうが、テンを泣かす奴は、俺が、きっちり、落とし前つけてやる!」

そこには、動けないはずのサンジに姿があった。

サンジは、すぐに戦闘態勢にはいる。

「・・・しゃんじ・・・・らめ・・・・・・けんか・・・らめ・・・・・・ロロ・・・・・ここ・・・・・・

ロロ、ここ・・・・」

テンが、慌てて二人の間に割って入った。

そして、ゾロの魂をサンジに見せる。

「テン・・・・これが、ゾロなのか?? ・・・・・・まだ、生き返れるのか?」

サンジは、テンからゾロの魂を受け取ると、テンにそう言う。

テンは、コクンと頷いて、死の天使ロロを見つめた。

「な、なんだよ、全く・・・・・・そんな瞳で、俺を見ても、駄目だかんな・・・・・・・・」

「頼む! そこの天使! ゾロを・・・・ゾロを生き返らせてくれ! 必要なら、俺の魂を

持っていって良いから・・・・・頼む!!」

サンジも、蒼い瞳を涙で一杯にして、死の天使ロロを見つめてそう言った。

「・・・・・・・・・・・・・・・・ふぅー、同じ顔して、そんな顔すんなよ・・・・・・・・・・駄目だと

言えなくなるじゃねえか・・・・・・・・・・・駄目だな、俺。 死の天使、失格だ。 

お前らの顔見てると、言うこと聞きたくなっちまった。 ・・・・・・・・・・良いか、良く聞

け。 その魂をもう一度、その身体に戻すには、新鮮で、丈夫な殺しても死なないよう

な、強靱な魂が必要だ。 ・・・・・・どうだ? そんな魂、おいそれとは、見つからねえ

ぞ? わかったら、諦め・・・」

「なんだ、そんなの。 簡単に、見つかるぜ。 俺達の船には、そんな奴ばかりだか

ら・・・・・・・・・・・けど、あいつらの魂は、使えないな。 俺の使えよ。 こう見えても、

俺は、丈夫でしぶといんだ。 なんだったら、天界にある、『命の書』でも、見てみると

良い。 そいつには、全部のことが記されているんだろ? 昔、母親から、聞いたこと

がある。」

「!!お前、何で、『命の書』のことを知ってるんだ? だいたい、こんな時が止まって

る空間で、ただの人間が、動けるハズねえ・・・・・・・・・・・そう言えば、昔、聞いたこ

とがある・・・・・・・神様が作った人間の他に、ルシフェルの斬り落とされた腕から生

まれた人型の生き物の話・・・・・・・・・それは、まだ、ルシフェルが、大天使で、反乱

を起こした時の腕・・・・・・・・・それ故に、魔界には属さず、それでいて、天界にも、

帰依できず、人間界で、さすらう宿命をもつ者・・・・・・・・・・・・・・・・お前は、その一

族の者か??」

「・・・・・・・・俺は、ただのサンジだ。 それ以上でも、それ以下でもねえ。 

とにかく、俺の魂を使ってくれ。 なあ、頼む。」

「・・・・・・・・・・・わかった。 ・・・・・・・・・・・だが、サンジ、良く聞け。 お前の魂を使

うと言うことは、お前は、人間より遙かに長い寿命を、無くすんだぞ。 こいつと同じ寿

命になるんだ。 それでも、良いのか?」

「ふん、願ってもねえことだぜ。 そいつと、同じしか生きられねえ・・・・・・・・と言うこ

とは、死ぬときは、一緒って事だろ?? 最高じゃねえか。」

サンジは、死の天使ロロの言葉に、そう言って笑った。

「・・・・・・・全く・・・・・・・・・なんて野郎達だ・・・・・・・一人の人間の生き死にに係わ

るなんて・・・・・・・・天界でも、タブーなんだからな・・・・・」

死の天使ロロはブツブツそう言いながら、呪文を唱え始める。

スッとサンジの身体から、魂が抜け、サンジは、その場に倒れ込んだ。

「しゃんじ!!」

慌てて、テンがサンジにしがみつく。

「そう、慌てんなって。 魂を抜いただけだから・・・・・・ほらっ、ここだ。

・・・・・・・・・・やっぱり、俺達と同じ、光を感じる。 さあ、テン。 そのゾロの魂をこっ

ちに渡すんだ。」

テンは、頷いて、死の天使ロロに、ゾロの魂を手渡す。

ロロはその魂を受け取ると、呪文を唱え始める。

「クッ・・・・・俺の呪力では、無理か・・・・・・・・・クソッ、ちゃんと、修行しとけば良かっ

た・・・・・」

ロロがそう呟いて、諦めかけたところに、テンが、サッとロロの手に自分の小さな手を重ね

た。

もの凄い量の呪力がロロの手に伝わってくる。

「!!・・・お前・・・・サンキュー。 これなら、絶対、上手くいく。」

ロロは、最後の呪文を唱えた。

二つの魂は、一つになり・・・・・・・・やがてまた、二つに戻った。

「さあ、後は、この魂を、二人に返すだけだ。」

そう言って、ロロは、ゾロとサンジに魂を戻そうとした。

「ちょっと、待て。・・・・・お前、良いモノ、持ってるじゃないか。 卵を追ってきたら、

良いモノを見つけた。 おい! そこの天使・・・・・・その魂、二つ、俺に渡せ。 

そしたら、見逃してやるから・・・・」

「!!・・・・お前・・・・・アスタロト・・・・・・何故、お前がこんなところに・・・・・・」

「・・・・・ほほう、俺の顔を知ってるのか? だったら、話は早い・・・・・黙って、ここを

去れ! 良いか、これが最後だ。 その魂を置いて、黙ってここを立ち去れば、見逃し

てやるぞ。」

アスタロトは、ニヤリと笑うと、ロロ達にそう言った。

・・・・・・・・アスタロト・・・・・・・四大悪魔の一人・・・・・・・・

・・・・・・・・この俺に、倒せるか?

いや、やらねえと・・・・・・・俺しか、こいつらを守れねえ・・・・・・・・・

「・・・・・すまねえが、そいつは、できねえな・・・・・・・・俺は、こいつらを、助けるっ

て、そう決めちまったから・・・・・・・」

ロロは、メイス(開錠)の呪文を唱え、聖剣を握る。

「ふん、一丁前に、羽2枚の分際で、その聖剣を扱うのか? ふふふ、良かろう・・・・

相手になってやる。 普通の悪魔なら、その剣で勝てただろうが、俺には、勝てぬ

ぞ。 お前には、その聖剣の真の力を引き出す力は、備わっていないのだか

ら・・・・・・・やれっ!」

アスタロトは、そう言って、配下の魔物達に声を掛けた。

一斉に、ロロに飛びかかってくる、魔物達・・・・・・

ロロは、テンを庇いながらも、襲い来る魔物達を、聖剣で斬り捨てていく。

「ふふふ。 なかなか、やるな・・・・・・・これでは、どうだ。」

そう言ってアスタロトは呪文を唱え、氷の刃を雨のようにロロに降らせた。

「クッ。 早い・・・・・駄目だ。 シールドが・・・・・・間にあわねえ・・・・・・」

「ろろっ!!」

テンが、ロロの前に立ちふさがって、シールドをはる。

「ほう・・・・これは・・・・・大天使になり損ねたチビ天使か。 ・・・・・残念だったな。 

あのまま、天界で生まれていれば、もっと早く成長していたモノを・・・・・・

ククク・・・・・出来ることなら、魔界で、生まれて欲しかったぜ。 ・・・・・これでも、持

ちこたえたれるか、な?」

アスタロトはそう言って、呪文を唱えた。

ロロとテンの上空に、巨大な闇の空間が現れる。

そして、ゆっくりと、下がり始めた。

ロロとテンに、押しつぶされそうなほどの重力がかかる。

「・・・・テン・・・・ろろ・・・・大事・・・・・・・しゃんじとロロと同じ・・・・・・テン・・・・

守る!」

テンはそう言うと、その闇の空間に身体を投げ出した。

「!!馬鹿! 止めろ!! 止めろ!テンーッ!!」

ロロの伸ばした手も空を掠め、テンは、そのまま、闇の中に姿を消した。

闇は、光を発し、その空間を静かに閉じた。

「テーンッ!!!」

ロロの手のひらに、1枚の羽が、そっと舞い落ちてくる。

「・・・・・・・・・テン・・・・・・・・」

ロロはその羽をギュッと握った。

テンが腕に触れたときと同じ暖かなぬくもりが、ロロに伝わる。

「・・・・・・・・許さねえ・・・・・・お前だけは・・・・・・・絶対に、許せねえ・・・・・・・・」







  
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<コメント>

ハイハイ・・・・・長かったですねえ・・・・・
やっとクライマックスを迎えます。
始めの話・・・・・覚えてる??(笑)
次回、ロロの秘密が、暴かれます。
あと、1ページ。 皆さんが思い描いた終わり方になっているのか・・・・
テンチャン、良い役でしょ? まさしく、天使!
ああ、ルナにも、こんな天使が、舞い降りてくれないかしらvv
って、それって・・・・・やばくない(笑)
では、次に・・・・