Sweet Angel


その5





「ええっと・・・・・情報では、この辺りなんだがなあ・・・・・」

ロロは、ナナから貰った卵に関する情報と、死亡者リストを見ながら、上空から、人間界を見

ていた。

「ん? なに、なに・・・・・ゾロ? 俺の名前と似てるじゃん・・・・・・・・ロロノア・ゾロ

か・・・・・・・・・・こいつ、いつ死ぬんだ? 似た名前の者として、俺が、ちゃんと、魂

を回収してやるからな・・・・・ええっと、時間は・・・・・2日後かあ・・・・・・・・・場所

は、何処だ??」

ロロは、自分の名前と似たゾロに何故か、心引かれて、ゾロの魂の回収をすることにした。



















++++++++++++++++++++++



「さあ、皆! 上陸の用意は、出来てるわよね? サンジ君とゾロは、食材の買い出

しと、日用品の買い出し。 あたしとロビンは、一緒に、テンの洋服選びとベビーグッ

ズ、ね。 ウソップと、チョッパーと、ルフィは、テンのお守りとお留守番、頼むわよ。 

ルフィ、くれぐれも、テンを泣かすことないように・・・ ゾロとサンジ君、船に戻ったら、

ルフィ達と交代して貰える?? そして、親子3人、水入らずで、船番、よろしくvv 

で、残りの人は、宿に泊まりましょう。 じゃあ、解散!!」

ナミの号令で、それぞれ、行動を開始する。

「しゃんじ・・・・ロロ・・・テンも・・・テンも・・・・」

ウソップの腕から飛び出して、テンが、サンジ達の後を追いかけようとする。

「ごめんな、テン。 お前は、連れって行ってあげられねえんだ。 すぐ戻ってくるか

ら、ルフィ達と遊んでてもらえ。 なっ。」

飛んできたテンをしっかりキャッチしたゾロは、そう言って、テンの頭を撫でる。

「いやっー・・・・テンも・・・テンも・・・ヒックッ・・びえぇ〜んっ、え〜ん、え〜ん・・・・」

テンは、蒼い瞳から涙を溢れさせ、大声で、泣く。

まるで、サンジに泣かれているようで・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・わかった。 わかったから、もう泣くな、な。 連れてってやるよ。」

ゾロは、テンの背中を撫でながら、あっけなく、降参した。

「・・・・・・・・・・全く、魔獣とも怖れられる元海賊狩りのゾロも、テンには、形無しだよ

なあ・・・・・・」

「・・・・・・・・何か、言ったか? ウソップ・・・・・」

ウソップの呟きに、雪走を片手に、その切っ先をウソップの鼻に当てるゾロ。

「・・・・・いいえ、別に、何も言ってましぇ〜ん・・・・・」

ウソップは、青ざめた顔で、そう言った。

「もう、ゾロ! テンを抱えたまま、刀なんか、抜くな! もし、テンが触れたりしたら、

どうするんだ!!」

「フゴッ!!」

サンジが、ゾロの後頭部に見事な踵落としを決め、その手からテンを抱き上げた。

「もう・・・・こんなアブねえ父ちゃんは、ほっといて、一緒に、買い物、行こうな。」

サンジはそう言うと、テンを肩車して、さっさと、船を下りていく。

「おらっ!! いつまで、ぐずぐずしてやがる! 来ねえんなら、置いてくぞ! 

ゾロ!!」

「・・・・・・・・・・くそっ、サンジの野郎・・・・・後で、絶対、啼かせてやる・・・・・・・・」

ゾロはそう呟くと、一目散にサンジとテンを追いかけた。

「・・・・・・・・はあ・・・・・ゾロ。 あんた、完全に尻に引かれてる旦那そのもの

よ・・・・・」

「ふふふ。 でも、あの3人、本当の親子みたいね・・・・・違和感が全然ないじゃな

い。」

「本当、何か、幸せそう、ねvv」

そう言って、ナミとロビンは、ふふふと笑いあった。

「じゃあ、3人とも、お留守番、頼むわね。 サンジ君達が、帰ってきたら、後は、自由

行動よ。」

ナミは、そう言って、ロビンと一緒に、船を下りていった。

「あ〜、せっかく、テンと、思いっきり、遊ぼうと思ったのに・・・・・・ゾロの奴・・・・・」

ルフィが、ブツブツと残念そうにそう言う。

「まあ、仕方ねえじゃねえか。 あそこまで、懐かれたんじゃ・・・・ましては、サンジそ

っくりだし・・・・・・あそこで泣かれちゃ、な。」

「・・・でも、良いな・・・・・テン・・・・・俺も、父ちゃんと母ちゃん・・・・・欲しい・・・な。」

3人仲良く、歩いていく姿を見て、チョッパーが、ぽつりと呟く。

「なに? お前、父ちゃんと母ちゃんが欲しいのか?? よ〜し! 良いこと思いつい

た! これから、家族ごっこしようぜ。 俺が、父ちゃんで、ウソップが、母ちゃん

だ!! 俺、ゾロのジジシャツと腹巻きしてくっから、ウソップ、ナミんとこから、何か、

衣装、借りてこいよ!」

ルフィは、そう言って、男部屋に向かった。

「ナミから借りるのか?? えーっ?! ヤダよ、俺・・・・・・けど・・・・・」

そう言いながら、ウソップは、ナミ達の部屋に向かっていった。

「・・・・・・ルフィ、ウソップ・・・・・・その気持ちは、嬉しいんだけど・・・・・なんか、違

う・・・・・」 

その場に一人残された、チョッパーは、空を見上げて、そっと、呟いた。














+++++++++++++++++++



「きゃああvv これなんか、可愛いデザインだわ。 テンに似合いそう。 ああ、こっち

も・・・・ う〜ん、本当、ベビー服って可愛くて、どれにしようか、迷っちゃうvv」

「本当、テンチャンって、可愛いから、どれでも似合いそう・・・・・ふふふ。 でも、海

賊やってて、ベビー服を買うなんて・・・・・私、この船に乗って、良かったわ。 本当、

こんなに楽しい時間を過ごせるなんて、思ってもみなかったから・・・・」

「ふふふ。 それもこれも、皆、テンチャンのおかげよ。 あの子は、皆の天使なんだ

から・・・」

ナミとロビンは、テンの洋服を選んで、同じモノを、後ろあきタイプで、特注した。




一方、食材の買い出し中のサンジとゾロ。

ゾロの腕の中には、テンの姿。

テンは、見たこと無い風景に、興味津々で、見渡している。

「親父、これ、2箱、くれ。 それと、こっちのも、1箱・・・・」

「はいはい、いらっしゃい。 おや、可愛い子だねえ・・・・ママ、そっくりだ。 今日は、

皆で、お買い物かい?」

店主は、テンの姿を見てそう言った。

テンが、店主の視線に気付いて、にっこりと笑う。

「・・・/////よおし! これは、坊やに、サービスだ。 ママに、美味しいもん、一杯

作って貰うんだぞ。」

そう言って、店先に置いてあった、リンゴを籠ごとテンに差し出した。

「・・・・悪いな。 じゃあ、後で、一緒に船に運んで貰っても、良いか?」

いつもなら、『俺は、ママじゃねえ!!』と叫んで、蹴りの一つでも入れているはずのサンジ

が、なぜか、嬉しそうに、店主にそう言った。

店主は、その笑顔にまた見とれて、二つ返事で、配達を了解する。

「旦那! 綺麗な奥さんと可愛い子供に、恵まれて、果報もんだよ、あんた!」

そう言って、ゾロの背中をバシンと叩く。

「っ・・・・まあな・・・・」

ゾロも、そういった店主の無礼にも、笑って応対した。

一事が万事、こんな風で、サンジ達は、予算をかなり残して、買い出しを終えた。

「しゃんじ・・・・ロロ・・・・・ふわ・・ふわ・・・・」

船への帰り道、急に、テンがそう言って、店を指さす。

その店には、綿菓子が、たくさん置いてある。

「なんだ? テン。 あれ、欲しいのか??」

「ん・・・テン・・・・ふわふわ、ちゅき・・・」

サンジの声に、テンは、頷いて、そう言った。

「おっさん、二つ、くれ!」

「へい、まいど!」

サンジは、そう言って、綿菓子を買うと、テンに一つ、渡す。

「ん? それ、どうすんだ??」

「これか?? これは、船で、留守番してる奴のお土産だ。」

ゾロの問いかけにサンジは、ニヤリと笑ってそう言った。

「・・・・・・なるほど。 あいつにか・・・」

ゾロも、その言葉を理解して、そう呟く。

ふと、ひそひそと話す漁師らしき男達の声が聞こえてきた。

「おい! 知ってるか?? あの、鷹の目のミホークが、この近くの島にいるそうだ

ぜ。」

「ああ、あの無人島だろ? 何で、また、あんな人気のない島に・・・・」

「知、知らねえよ、そんなこと・・・・・ とにかく、あそこの近くは、通らない方が、

良いぜ。」

「ああ、そうする。 まだ、死にたくねえからな・・・」



「その島は、どこにある!!」

ゾロは、テンをサンジに預けると、その漁師達の中に飛び込んでいった。

「!!なんだ、あんた。 まさか、鷹の目に会いに行こうと思ってんじゃねえだろうな。

止めとけ。 あんたが、敵う奴じゃないよ。」

「いいから、早く、その島の場所、教えろ!!」

「ヒッ!!!」

ゾロは、今にも、斬りかかりそうな形相で、漁師達から、その島の場所が載っている地図を

奪った。

漁師達は、ゾロの尋常ではない様子に、慌ててその場を逃げ出す。

ゾロは、黙って、その地図を凝視していた。

「・・・・・・・・ゾロ。 てめえ・・・・・やっぱ、行くのか・・・・・・・」

その様子を見ていたサンジが、そう、ゾロに声を掛ける。

「・・・・・・ああ。 一度決めたことだし、願ってもねえ、チャンスだから、な。 

・・・・・そんな顔するな。 大丈夫だ。 俺は、死なねえよ。 てめえが、側にいる限

り、俺は、死なねえ・・・」

ゾロはそう言って、サンジの頭を、ポンポンと宥めるように、叩く。

しかし、サンジの瞳からは、涙が溢れて・・・・・

「びえぇ〜ん、え〜ん、え〜ん・・・・・しゃんじ・・・・・」

テンが、サンジの不安を察知したように、泣き出した。

ざわざわと、人が、その泣き声につられて、集まってくる。

「なに? 夫婦喧嘩?? あんな綺麗な奥さんと可愛い子供、泣かせて・・・・・

何て奴・・・・・」

「本当、そんな奴、別れちゃいなさいよ。」

「きっと、あの人、やざくれ亭主よ・・・・綺麗なのに、苦労してるわね、

あの奥さん・・・」

ひそひそと、それでいて、ゾロの耳には、しっかりと届く声で、周りが騒ぎ出す。

「あ〜、もう。 ・・・・・サンジ、行くぞ!」

ゾロは、サンジの手を引っ張って、人垣を掻き分け、その場を後にした。

「ごめ・・・・ごめん、ゾロ・・・・・・俺、泣くつもりなんてなかったのに・・・・うっくっ・・・」

サンジは、ゾロに手を引っ張られながら、ポロポロと涙を流す。

「・・・・・・サンジ、泣くな。 そんなに、俺の言うこと、信用できねえか?」

「っ、違うッ! そんなんじゃねえ・・・・」

「だったら、泣くな。 俺は、絶対に、死なねえから・・・・・・・・・・生きて・・・・生きて、

大剣豪になって、サンジのとこに、帰ってくる! 必ずだ!」

ゾロは、サンジの頭を引き寄せると、サンジの額に自分の額をくっつけ、そう言った。

「・・・・・しゃんじ・・・・泣く・・・らめ・・・・テンも・・・・泣く・・・・」

テンは、瞳に涙を溜め、そう言って、濡れているサンジの頬に、手を伸ばした。

「ほらっ、テンも、泣くなって、そう言ってる。 てめえが、泣きやまねえと、テンの奴、

また泣き出すぞ。」

そう言ってゾロは、笑った。

「ん・・・・・・・テン、ごめんな。 ・・・・・もう、泣かねえから、な。」

サンジはそう言って、涙を拭った。
















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「たっだいま〜vv ナミさんvvロビンさんvv」

「あらっ、結構、早かったのね? もう少し、ゆっくりしてくるかと思ったのに・・・・・・

お帰り、テンvv あなたに似合うモノ、いっぱい買ってきたからねvv さあ、お着替え

しましょうねっv」

ナミは、そう言って、サンジから、テンを奪う。

「・・・・ナミ。 ちょっと、話がある。 皆も、聞いてくれ・・・・・」

ゾロが、部屋に入っていこうとしたナミを呼び止め、そう言った。

その声は、いつになく真剣で、皆、思わず、息をのんだ。

「・・・・・じゃあ、ナミさん。 俺が、テンを着替えさせてきますね。」

サンジはそう言って、ナミの手からテンを抱き上げると、部屋の中に入っていった。

ゾロは、それを黙って見つめていた。







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<コメント>

・・・なにやら、重苦しい雰囲気になってきました・・・(^_^;)
天界と人間界がやっと繋がって来ました。
あと少しかな・・・・・・さて、どうなるんだ?? ゾロ・・・・
次回、緊迫の場面(?)です!
いざ!!