Sweet Angel


その3





「あれ?? なあ、ナミ。 サンジ、何処に行ったんだ?? キッチンには、いねえよう

だし・・・・・・・・そう言えば、ゾロもいねえ・・・・」

ルフィは、二人の姿がいないことに気が付いて、ナミにそう聞く。

「・・・ああ、あの二人ねえ・・・・・・・大方、格納庫にいるんじゃないの?? あっ、で

も、ルフィ。 今は、いかない方が、良いわよ。 君子、危うきに近寄らずってね。 

ゾロに斬られたくなかったら、もう少し、待ってた方が良いわ。 終わったら、出てくる

はずよ、今、まだ、昼だし・・・・・・・サンジ君、おやつの時間は、把握してると思うか

ら・・・・・じきに・・・・・」

「ナ〜ミさ〜んvv」

「・・・ほら、ね。」

ナミは、そう言って、笑う。

そして、駆け寄ってくるサンジとの方へ、目を向けた。

サンジの後ろから、ゆっくりとゾロもやってくる。

「お帰り、サンジ君。 ずいぶんと、遅か・・・・・・・って、これは、どういうこと?? 

ゾロ・・・・・あんた、まさか、サンジ君に生ませたんじゃ・・・・・・・・えっ?! じゃあ、

サンジ君、今まで、妊娠してたの??? ええーっ?! !!!!」

さすがのナミも、サンジの腕の中の赤ちゃんを見て、パニクっている。

「何だ、サンジ・・・・お前、女だったのか?? 父親は、誰だ? 俺、父親になっても

良いぞ。」

ルフィは、サンジを見て、平然とそう言った。

「ルフィ・・・・・・・・てめえは、相変わらず、何考えてるのかわかんねえ奴だな・・・・

ナミさん、違いますってば! 俺、男だから産めません! 妊娠もしてなかったです!

ほらっ、この背中、見て下さい! この子・・・・・・・天使なんです!!」

サンジは、そう言って否定すると、天使の背中をナミの方に向ける。

じっと、天使の背中の羽を見つめるナミとルフィ。

「・・・・・・・どうやら、これは、本物のようね・・・・・・でも、何で、この天使が、ここにい

るわけ?? 状況を説明してくれる?」

ナミは、撫でるように、背中の羽を触ると、サンジにそう言った。

「・・・実は、俺とゾロが一緒に風呂に入って・・・・・・あっ、いや、俺が、風呂に入って

た時、急に、風呂場の天井を突き抜けて、でかい卵が、湯船に落ちてきたんです。 

で、卵が割れて、中に、この天使がいて・・・・・・・・・なあ、ゾロ。」

「ああ、急に、上から落ちてきたんだ。」

サンジの言葉に、ゾロは相づちを打つ。

「・・・・・・・・・・つまり、【一緒に】風呂に入ってたところに、卵が落ちてきて、中から、

この天使が出てきた・・・・そういうことね?」

「・・・・/////そ、そうです。」

「ああ、そんなところだ。」

ゾロとサンジは、一緒という言葉をナミに強調されて、ばつが悪そうにそう言った。

「・・・・・・・・それにしても・・・・・この天使、サンジ君に似すぎてるわ。 本当に、心

当たり無いの?? サンジ君。」

ナミが、天使とサンジを見比べてそう言う。

「ナミさん・・・・それって、どういう・・・・俺、天使に親戚いないと思いますけど・・・・」

サンジは、いささか、引き気味にそう言った。

「ふ〜ん。 これ、引っ張っても、抜けねえや。 本当に、背中に生えてんだな。」

ルフィが、そう言いながら、クイッと天使の羽を引っ張った。

「びえ〜んっ・・・・・・・・・しゃんじ・・・・・・・・ロロ・・・・・・・・・・びえ〜んっ!!

え〜ん!え〜ん!ひっくっ・・・・しゃんじ・・・・・・ロロ・・・・・・・」

そう言って、天使が、大きな声で、泣き出した。

その声は、凄まじく大きく、ゴーイングメリー号に響きわたる。

サンジとゾロは、慌ててルフィの手を払い、天使の背中を撫でた。

「な、なんだ??? 何の声だ???て、敵襲か?」

「赤ん坊の声だぞ??? なにかあったのか??」

「何、どうしたの、皆!」

ウソップ、チョッパー、ロビンが、その泣き声を聞いて、それぞれ、部屋から飛び出して

きた。

「「「ルフィ!!!」」」

「ゲフッ!!」

サンジ、ゾロ、ナミから、ルフィに蹴りと鉄拳が下された。

「・・・・・・・・・もう・・・しましぇん・・・・・・・」

ルフィは、床に倒れ込んだままそう言う。

「・・・・全く、ろくなコトしないんだから・・・・・それより、この子、ゾロとサンジ君の名

前、言ってたわよね? あなた達が、教えたの??」

「いいや、勝手に、こいつが、喋ったんだ。」

「そうです、ナミさん。」

「・・・・・・そう。 でも、この天使、サンジ君とゾロに慣れてるみたいだし・・・・・・

あっ、そうだ。 確か、卵が割れて、一番初めに見たのが、あなた達だったのよね? 

それって、鳥のヒナみたいに、初めに見たあなた達を、自分の親と思ってんじゃない

かしら・・・・・・きっとそうね。 ・・・・・でも、そのまま放っておくというわけにもいかな

いし・・・・・・・よし! 今日から、サンジ君、あなた、この子の母親よ。 ・・・・・・それ

と、ゾロ。 あんたが、父親、ね。 二人で、この天使の面倒を見ること! わかっ

た?? そして、皆! サンジ君、色々と忙しいから、皆も、この子の面倒、頼むわ

ね。 ゾロだと、ちょっと、頼りにならなそうだし・・・・ 皆、OK??」

「おう・・・何で、この子がいるのかよくわかんねえが、とりあえず、赤ん坊用のイス

と、ベッド、作らねえと・・・・・・」

そう言って、ウソップは、倉庫に入っていく。

「あっ、俺も手伝う!」

そう言って、チョッパーが、ウソップを追いかけた。

「じゃあ、私は、赤ちゃんの洋服を急いで、作るわ。」

ロビンも、女部屋に入っていく。

さすがに、いくつかの信じられないような修羅場を迎えたことのあるクルー達は、冷静に、対

処した。

「あっ、俺、俺が、父親になるぞ。 サンジの赤ちゃん、俺が、父親になる!」

「ルフィ! てめえ、喧嘩、売ってんのか? サンジの子供は、俺の子供と決まってん

だよ! 俺が、父親に、決まってるじゃねえか!!」

「この船のキャプテンは、俺だ! だから、俺が、父親になるんだ!」

「そんなへりくつで、決めるな!!」

バキッ!!   ドコッ!!

「はいはい、あんた達は、あてにしてないから・・・この子を、泣かす真似だけは、止め

てね・・・・」

「おらっ、そこ・・・・・勝手に、てめえらで、盛り上がってんじゃねえ・・・・・ 

だいたい、俺の子じゃねえだろうが!」

ナミとサンジは、ルフィとゾロに鉄拳と蹴りを入れて、そう言った。

「・・・・・しかし、名前がないと、不便よねえ・・・・なんか、良い名前、ないかし

ら・・・・」

「にく!! 『にく』にしようぜ!!」

「・・・・・『たろう』。」

ナミのため息混じりの声に、ルフィとゾロは、そう答える。

「・・・ハイハイ・・・・・・・あんた達に、聞いてないわよ。 サンジ君、何か、良い名前、

ないかしら?」

ナミは、もう一度、深いため息を吐いて、気を取り直したように、サンジに聞いた。

「・・・そうですね・・・・俺が、サンジだから・・・・『ヨジ』とか。 サンジ、ヨジ・・・・

なんて、面白い・・・・」

「・・・・サンジ君・・・・・・もっと真剣に考えてくれるかしら・・・・別に、お笑い芸人の芸

名付けろなんて言ってないんだから・・・・」

ナミは、そう言って、引きつった笑みを浮かべる。

「あっ、すいません、ナミさん。 そうですね・・・・・・・『テン』というのは、どうでしょう。

天使という言葉から取った、安直な名前ですが、凝った名前よりも、こっちの方が、呼

びやすいし・・・・・・」

サンジは、ナミの表情に慌てて考えると、そう言った。

「・・・そうね。 下手に凝った名前よりは、『テン』の方が良いかも。 よし、今日か

ら、あんたの名前は、『テン』よ。 『テン』!」

そう言って、ナミは、テンを抱き上げた。

「・・・・テン・・・・・・・にゃみ・・・・・・・ウフィ・・・・・・」

テンは、にっこりと笑って、舌足らずな声でそう言った。

「うふふ・・・・にゃみじゃなくて、ナミよ。 ・・・・まあ、可愛いから許してあげるわ。

それにしても、流石、天使。 賢いわね・・・」

ナミはそう言って、テンのほっぺに、チュッとキスをする。

「ああっ、ナミさんの唇が〜!! 良し、俺も!」

そう言って、ナミから、テンを返して貰うと、サンジは、ナミの口付けた頬に、チュッとキスをし

た。

「「お、俺も!!」」

その様子を見ていた、ルフィとゾロが、競うように、テンにキスをする。

「・・・・しゃんじ・・・・・・にゃみ・・・・・ロロ・・・・・・ウフィ・・・・・・」

テンはそう言って、キャッ、キャッと、笑った。

「・・・さて、俺は、今から、仕事だ。 父ちゃん、よろしく、頼むな。」

「おう、まかせろ!」

ゾロはそう言って、サンジから、テンを受け取り、サンジは、キッチンに向かった。

「テン! 俺とも、遊ぼうぜっv」

ルフィが、すかさず、テンに近づく。

「じゃあ、あたしは、この海域に、買い物できそうな島がないか、調べてみるわ。 

洋服は、ロビンが作ってる間、ゾロのシャツで我慢してね。 じゃあ、二人とも、テン

のこと、頼んだわよ。」

そう言って、ナミは、部屋に戻っていった。





++++++++++++++++++



「・・・・ロロ、ウフィ・・・・・しー・・・・しー・・・・・・」

船尾で、テンが、遊んでいる途中、ゾロとルフィにそう話しかけた。

「「・・・なんだ?テン・・・どうかしたのか??」」

「・・・・ロロ、ウフィ・・・・・テン、しー・・・・しー・・・・・」

テンは、そう言って、パタパタと落ち着きなく、うろうろする。

「テン?? ・・・もしかして、小便か??」

ゾロが、テンに向かってそう言った。

「・・・ロロ・・・・テン、しー、しー・・・」

テンは、そう言って、コクンと頷いた。

「こ、こっちだ・・・・ いや、こっちでいい・・・」

ゾロは、慌てて、船の手すりにテンをのせる。

しゃあぁぁぁ〜

「ふう、間一髪だったぜ。 えらいそ、テン。 良く、教えたな。」

そう言って、テンの頭を優しく撫でた。

・・・・・本当に・・・・・・・サンジそっくりだ・・・・・・・・・

・・・・・・・・・まるで、サンジの子供の頃、見せて貰ってるようで・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・何か・・・・・・変な感じだ・・・・・・・・・・・

・・・・・ふわふわっとしてて・・・・・・・・・・

・・・・・・・・こんな感じも・・・・・・・・・悪くねえ・・・・・・・・

・・・・・・・けど、テンは、天使・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・いつまでも、ここには、いられない・・・・・・・・・

一体、いつまで、一緒にいられるんだろう・・・・・・・・

「・・・・・・・ずっと、一緒に、いれたら、いいな・・・・・・・・」

ゾロは、テンを優しく見つめ、寂しそうに、呟いた。

「ゾロ〜、テン〜、おやつ、出来たぞ〜!!」

サンジがそう言って、二人を呼びに来た。

「ほらっ、ロビンさんが、作ってくれた服だ。 ちゃんと、後ろを、ホックで留めるように

してある。 これだと、羽は、邪魔にならねえからな。 さっすがは、ロビンさんvv」

サンジはそう言って、テンにロビンが作ってくれた服を着せた。

オレンジ色のカボチャブルマに、背中開きの同色のシャツ。

襟は、ギザギザの緑のフェルトで作ってあって、さながら、蜜柑のコスプレのようだ。

「ククク・・・・可愛いぞ、テン。 よし、皆に、お披露目といくか。」

サンジに着替えさせて貰ったテンを肩車して、ゾロは、サンジと共に、キッチンに向かった。








  
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<コメント>

ハグッ!! 全然進まない・・・・・
本当に、申し訳ない!
次から、急展開・・・・・の、予定・・・・・なんだけど・・・・
だいじょうぶかなあ・・・・・(-_-;)
本当に、ごめんなさい・・・・
暫く・・・続くかも・・・・・・(汗!)