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その2





・・・・・・翌日。

俺は、いつものように、皆におやつを用意する。

・・・・・また、いつもの癖で、あいつの分を別に作ってしまった。

俺は、思わず、苦笑する。

・・・けど、もう、あいつには・・・・・・・あいつの側には・・・・・・・・・近づけない。




あいつの顔を見ると、泣きたくなるから・・・・・・

もう少し・・・・俺が・・・・俺の心が、強くなるまで・・・・・・

あいつを見ても、平気でいられるように・・・・・




「ナミさ〜んvv 今日は、レモンパイを作ってみました〜vv 紅茶は、カモミールブレ

ンドで〜すvv」

そう言って、俺は、いつものように、ナミさんに、給仕する。

パイの甘い匂いにつられて、ルフィとウソップが、俺のそばに寄ってくる。

「ああ、てめえらの分は、キッチンの中だ。 食って良いぞ。」

俺の言葉を聞くや、ルフィとウソップは、大喜びで、キッチンに入っていく。

「あらっ?! サンジ君、今日は、ゾロの分、持ってないの??」

いつもの皿が、俺の手にのってないのに気が付いたナミさんが、俺にそう尋ねた。

「・・・・ええ、俺、大人になりましたから・・・・・ ・・・・・・もう、あいつのことは、諦め

ました・・・・・・」

俺は、そう言って、にっこりと笑う。

「・・・・・そう、あいつは、ああ言う奴だからね・・・・・ 食べて貰えない物を作るの

は・・・・・悲しい事よ、ね。 ・・・・・サンジ君が、諦めるのなら、別に、あたしが口を出

す事じゃないけど・・・・・ ・・・・・・あいつは、かなり、鈍感よ。 特に、自分にはね。」

ナミさんは、何か言いたげに、俺にそう言った。

俺には、それが、わからない。

とにかく、今は、あいつの顔を見たくねえ。

ただ、それだけだった。










「ナ、ナミッ!! なんかこっちに、近づいてくる船があるぞーっ!!」

見張り台で、レモンパイを頬張っているウソップが、慌ててナミにそう告げた。

「なに? 敵??」

「い、いや、そうじゃねえみてだ。 なんか、小舟に乗って・・・・・手を振ってる。 

あっ、あいつ、どっかでみたような・・・・・・そうだ、『ギン』! 『ギン』の奴だ。 

・・・・何しに来たんだ??」

「???ギン??」

俺は、甲板から身を乗り出して、その小舟の方を見る。

「サンジさ〜んvv 貴方の船が見えたんで、追いかけてきました〜vv」

ギンはそう言って、小舟の上で、ぶんぶんと俺に手を振っている。

「・・・・あいつ・・・・何しに来てんだ?」

俺は、ギンの姿を見てそう呟いた。

程なく、ギンは、船に上がってきた。

「サンジさんvv 会いたかったですっ!!」

船に着くなり、ギンはそう言って、俺に抱きつこうとしやがった。

俺は、サッと身を捩ると、ギンの顔に、片足をめり込ませてやる。

「ひゃんじひゃん・・・・しどい。(サンジさん、ひどい。)」

ギンはそう言いながらも、俺の手を取った。

「・・・・で、何しに、来たんだ、ギン。」

そう言うと、俺は、手を振り払って、タバコに火を付ける。

「嫌だなあ。 サンジさんに会いに来たに決まってるじゃないですか。 

・・・・ついでいうと、飯も食べたいなあと・・・・・・」

ギンは、照れたように俺に向かってそう言った。

「・・・俺は、会いたくなかったよ。 ・・・・飯、食ってくか?」

俺はそう言って、キッチンに向かう。

ギンも俺の後に付いてきた。




腹減ってる奴は、食べさせてやる。

・・・・・たとえ、それが、どんな極悪人だろうと・・・・・

それが、俺の・・・・・・俺とジジイのポリシー。




キッチンのドアの上の蜜柑畑で、ゾロが、こっちを見ていた。

騒ぎに気付いて、昼寝から起きてきたらしい。

一瞬、目が合った。

ドクン

俺の心臓が・・・・・震える。




眩しくて・・・・・・まともに、あいつが・・・・・・見れない・・・・・




俺は、自分から目をそらし、キッチンに入っていった。

そんなこと、一度もなかったのに・・・・・・・・

予想以上にダメージは、大きいみたいだ。

「ほらっ、できたぞ。 食えよ。」

俺は、簡単な料理を作って、ギンの座るテーブルに置く。

「か、感激っす!」

ギンはそう言って、俺の飯を美味しそうに、かきこんだ。




・・・・・こんなに美味そうに食べてくれると・・・・・悪い気はしねえな・・・・・




ついつい嬉しくなって、笑顔が自然と零れる。

ギンが、俺の顔を見て、ポトリとスプーンを落とした。

「なにやってんだよ、ギン・・・・」

俺はそう言って、新しいスプーンをギンに手渡す。

ふいに、周りの景色が揺れて・・・・・・・

気が付けば、俺は、ギンに抱きしめられていた。

「・・・サンジさんっ! 俺、サンジさんのこと、マジで、好きっす! 俺と・・・・俺とオ

ールブルー探しに行きませんか? 俺、サンジさんと一緒だったら・・・・・・何処にで

もついていきます。」

ギンは、真剣な顔で、俺にそう言った。




・・・・なにいってんだ? 

・・・・・こいつは・・・・・・・

・・・・・・俺のことが・・・・・好きだと???




「はあ??」

俺は、突然の告白に、間抜けな声を上げる。

余りの衝撃的な言葉に、蹴りを繰り出すことさえ、忘れていた。

「・・・・・サンジさん・・・・・」

ギンはそう言って、俺をきつく抱きしめると、顔を近づけてきやがる。




ゲッ、マジかよ・・・・・

・・・・・止めろ・・・・・嫌だ・・・・・

・・・・・・嫌だ・・・・・・・

・・・・・・・嫌だ・・・・・・ゾロ・・・・・




こんな時にでも、俺は、ゾロの名を呼んでいた。

俺は、必死になって、ギンの顔を押しのける。

しかしギンは、もの凄い力で、俺の両腕を拘束した。




・・・・・もう・・・・・ダメだ・・・・・・・・




俺が、そう思ったとき、ガチャリとキッチンのドアが開いた。

俺とギンは、ドアの方に瞳を向ける。

中に入ってきたのは・・・・・・・・ゾロだった。

よりによって、一番見られたくない相手・・・・・




・・・・・こんなシュチエーション・・・・・・

・・・・・・言い訳も何もあったもんじゃねえ・・・・・

・・・・・・・いやだ・・・・・見られたくねえ・・・・・・・




俺は、ギンの腕の中で、瞳を伏せた。

「・・・・なんか、ようか? ・・・邪魔だから、出ていってくれねえか。」

そんな俺を観念したと勘違いしたのか、ギンは、あいつに向かって、そう言った。

「・・・・・・け。」

あいつが、ボソリと低い声で言った。

「はあ、何か言ったか?」

ギンは、怯まず、あいつを睨み返す。

「・・・・出て行け・・・・・・俺に殺させたくなかったら・・・・・・・サンジを置いて、今すぐ

でていけ。」

それは、今まで聞いたことのない様な、抑揚のない冷たい声だった。

その声に俺は、驚いて、あいつを見る。

あいつは・・・・・怒っていた。

なんで、そんなに怒るのか、俺には、理解できなかったが・・・・・あいつは、マジで、怒ってい

た。

「・・・・もう一度だけ、言う。 サンジを離して、この船から、出て行け・・・・・・」

あいつはそう言うと、和道一文字をギンの首筋に当てた。

ギンは渋々、俺を離した。

「・・・・なあ、あんた。 なんで、あんたが、俺達のことに、首を突っ込んで来るんだ?

いくら仲間だからって、プライベートだろ? あんたにゃ、関係のねえ事だと思うんだ

が・・・・」

ギンは俺から離れると、あいつに向かってそう言う。




・・・・全く、その通りだ。

・・・・・てめえには、関係ねえだろ・・・・・

・・・・・・俺が、ギンとどうなろうが・・・・・・

・・・・・・・助けてくれるのは嬉しいけど・・・・・

・・・・・・・・これ以上、関わって欲しくねえ・・・・・・

・・・・・・・・・てめえは・・・・・俺を・・・・・・

・・・・・・・・・・俺のこと・・・・・・・拒絶したじゃねえか・・・・・・・・




俺は、床にヘタリこんで、二人の様子をボーっと見ていた。








「・・・・・関係あるぜ。 こいつは・・・・・俺に惚れてるから、な。」

あいつは、そう言って、ニヤリと笑った。

「!!ば、ば、なっ・・・・・」

俺は、あいつの言葉に、心臓が飛び出るぐらい驚いた。

驚きすぎて、声も出ない。




な、何言い出すんだ・・・・・・

・・・・/////確かになあ・・・・・俺は・・・・・惚れてるけど・・・・・・・・

・・・・・そんなこと・・・・・・ここで言うことか??

・・・・・・あいつ・・・・・・何考えてんだ・・・・・・・

・・・・・・・けど、俺、一度だって、好きだとか言ったことねえぞ・・・・・・

・・・・・・・・だいたい、何でそんなこと、てめえが、知ってんだよ・・・・




俺の中で、あいつの言った言葉が、グルグルと回って、俺は、恥ずかしくて、卒倒しそうだっ

た。

「フッ。 サンジさん、こいつ、阿呆だ。 そんな天地がひっくり返っても起きねえ事言

って・・・・ ??サンジ・・・さん??・・・・・どうしたんですか?」

ギンは、ゾロの言葉を鼻で笑って、座り込んで動かない俺の肩を揺する。

「・・・・そいつに、触るなと言ったはずだ。」

ゾロはそう言って、ギンの喉元に刃を当てた。

チリッとギンの首に赤い線ができる。

「くそう、今日のところは、これで引く。 サンジさん、また来ますから。 

・・・・てめえ、覚えとけよ・・・・」

ギンはそう捨てぜりふを残して、キッチンから出ていった。

カチャリと、刀が、鞘に収まる音が聞こえる。






「・・・・サンジ・・・・・」

ゾロはそう言って、俺を抱きしめた。




・・・・・俺・・・・・なんで、ゾロに抱きしめられてんだ?

・・・・・・これは・・・・・夢か?

・・・・・・・俺の作り出した・・・・・・幻想か?




俺には、いまいち実感が湧かなかった。

こんなことになるなんて、思ってもみなかったから・・・・・

手を伸ばせば・・・・・ゾロが消えてしまいそうで・・・・・・・・

身体が・・・・・動かなかった。

「・・・・・・・・・心臓が・・・・・・・・・止まるかと思った。」

あいつはそう言って、俺の顔を見つめる。

「・・・・なんで・・・・・・・ゾ・・・・・ロ・・・・」

俺は、それだけ言うのが、やっとだった。

「やっと・・・・やっと気付いたんだ。 ・・・・俺は・・・・・てめえが、好きだ。 

・・・・たぶん、ずっと前から・・・・ でも、俺は、認めたくなくて・・・・・気付かねえよう

にしてた。 ・・・・俺は、てめえに、嫌われてると、そう思ってたから・・・・・ 昨日、

てめえが、抱かせてやる、そう言ったとき・・・・・俺は・・・・・身体だけの関係でもっ

て・・・・・そう考えたりした。 ・・・・けど・・・・・嫌だった。 性欲処理の道具には、

なりたくなかったから。 ・・・・そんな関係には、なりたくなかった。 ・・・・だから、

てめえが、昨日、泣いたのを見て・・・・これじゃいけねえって・・・・そう思った。」

ゾロはそう言って、ギュッと抱きしめる腕に力を込める。




・・・・・・・・・泣いてたの・・・・バレてた・・・・・・

・・・・・・・・・けど・・・・・・・本当に?

・・・・・・・・・嘘じゃ・・・・・・・・ねえ?

・・・・・・・・・俺・・・・・・・この腕の中に・・・・・・・・いても・・・いい?

・・・・・・・・・俺・・・・・・・この腕を掴んでも・・・いい?

・・・・・・・・・もう・・・・・・逃げ出さなくても・・・・・・いい?




「っ・・・ゾロ・・・・ゾロ・・・・俺も・・・・・俺も、ずっと・・・・・ずっと、好きだった。」

俺はそう言って、ゾロを抱きしめ返した。




・・・・・そう・・・・ずっと、こうしたかった。

・・・・・・こうされたかった。

・・・・・・・ゾロ・・・・・好きだ。

・・・・・・・・てめえ以外何もいらねえ。

・・・・・・・・・この腕の温かさがあれば・・・・・・・

・・・・・・・・・・他には何もいらねえ。




「サンジ・・・・好きだぜ。」

あいつはそう言って、俺の唇を塞いだ。

なんでか、あいつからのキスは、酸っぱいレモンの味がした。









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<コメント>

はい、こんなんでましたけど〜って、感じですね。(蹴)
初め、ここで、終わる予定でした。
でも、ここで、終わると・・・・・間違いなく皆さんから、『コンカッセ』
を食らうでしょう・・・・確実に。(笑) ルナ、まだ死にたくないし・・・・・
今回は、ギンを登場させてみましたvv
ストーカーが一番似合う男・・・・その名は、ギン(笑)
さて・・・・・ラスト、いってみますか!!