ある日、突然・・・Suddenly


その3.






それから、ゾロはチョッパーに診察をして貰い、心身ともに異常も見つからず、かと言って、

一向に身体が元に戻る気配さえ見当たらず、日にちだけが数日と過ぎていく。

会社の方も、ゾロが元に戻るまでは、と在宅勤務が命じられ、ゾロはメル等のやりとりで仕

事をこなす事になった。

そんなある夜・・・。

ゾロが、夜中トイレに起きた時だった。

何気に隣りで眠っているサンジを見てみると・・・・

サンジの目元に涙が浮かんでいた。

何か怖い夢でも見てるのかと、そう心配になり、身体を揺り動かそうとした瞬間、サンジの口

から声が漏れた。

「ッ・・・・・・ゾ・・ロ・・・」

居た堪れなかった。

サンジにこんなに淋しい想いさせていたのかと・・・・・胸が痛んだ。

「サンジ・・・・ごめん。 今の俺には、こんなお前を抱き締めてやれる事さえできやし

ない・・・・・」

ゾロは伸ばしかけた手を戻し、その手のひらをじっと見つめ、夜を明かした。

・・・・・翌日。

「サーしゃん、玄関の電気、切れてたよ?」

そう言ってラピスが、夕食の準備をしていたサンジの元に知らせにやってきた。

「ん? そうか。 じゃあ、換えねえとな。 オーイ、ゾロ! 悪いけど玄関の電球取り

替えてくれねーか?」

「ん・・・・・わかった。」

サンジの言葉に、ゾロはそう返事してリビングの椅子のところへ・・・・・

「ん?? 何を後ろでゴソゴソと・・・・・」

その音に気がつき、サンジが振り向くと、そこには必死に重たい椅子を引き摺って玄関に向

かうゾロの姿。

「ぁあ!! 悪い!!ゾロ! 俺、つい、いつもの調子で・・・・。 俺がやるから・・・」

そう声を掛け、軽々と椅子をゾロの手から取り上げ、サンジは玄関に向かった。

ゾロは、そんなサンジの後姿をただ黙って見つめるだけ・・・

「・・・・・・どうしたの?ローたん? ねぇ・・・・ローたん、あそぼ?」

「うるさい!!」

「ローたん・・・・?」

急にゾロに怒鳴りつけられて、ラピスは怯えた表情でゾロを見た。

その瞳には、薄っすらと涙さえ浮かんでいる。

「・・・・・ごめんな、ラピス。 別にお前に怒鳴った訳じゃ・・・・ごめん。 今日は遊べ

ない・・・」

ラピスの頭を撫で、ゾロは自分の寝室へ向かった。




・・・・・・・なんで、こんなになってしまったんだろ。

何にも出来ない俺・・・。

ずっとこのままのわけないって皆は言うけど・・・・・

その確証が何処にある?

このまま成長するのであれば、まだ良い。

待てば大人になれるのだから・・・・・

けど・・・・・・

ずっと・・・・・・・・・

もし、このままだったら・・・・・・・・




「チクショー・・・・・」

そう呟いて、ゾロはグッと唇を噛み締める。

幼い身体が、感情の起伏を制御できず、涙が止まらない。

その日をきっかけに、ゾロの様子が変わってきた。

何をするにも、覇気が無く、食欲も無い。

いつものようにと、サンジが明るく振舞うのだが・・・・・・

それでも、いつものような明るいロロノア家に戻る事は無かった。







それからまた数日が経ち、今日は1月11日、ラピスの誕生日。

ロロノア家には、朝早くからお祝いの品々が届けられ、久しぶりに賑やかな声がこだまする。

「誕生日おめでとうな!ラピス!! ところで、おめえ何歳になったんだ?」

「おめでとう、ラピスちゃん。 はい、これ、あたしたちからのプレゼントよ。」

「ありがとう、ナミさん、ルフィ。 今日は楽しんでいってくださいね。」

「いよう、サンジ、そして、ラピス。 誕生日おめでとう。 俺からは、このハンドメード

のからくりおままごとセットだ。 一杯遊んでくれ。」

「ありがと、ウーたん。 ラピね、こんなの欲しかったんだ。」

「まぁ、皆、上がれよ・・・・・・・ゾロもリビングに居るから・・・・」

お祝いにやってきたルフィとナミとウソップを、サンジはそう言って部屋に招き入れる。

「うおっ!! 本当にチビになってんだ・・・」

「やだぁ・・・・可愛いじゃないの・・・・」

「本当に・・・・・お前、ゾロか? 隠し子とかじゃ・・・・良いんだぞ、本当の事言って。 

俺はちょっとやそっとじゃ驚か・・・・」

「だから、ゾロなんだってば・・・・」

「エーッ!! マジゾロなのかよ!!」

「「一番驚いてるじゃん!!」」

三者三様そう驚きの声を上げ、リビングに居るゾロを見つめる。

しかし、それも一瞬の事で、ゾロの小さな身体のことなど気にもせず、いつものように振舞う

三人。

そんな三人につられたかのように、ゾロの表情も久しぶりに明るくなった。

「お前ら・・・・・・・ったく・・・・今日はありがとうな。 楽しくやってくれ。」

「「「当然!」」」

「じゃあ、このシャンパンで乾杯しよ。 ラピスは、これな。」

タイミング良く、サンジがグラスに飲み物を持って現れる。

「んじゃあ、ここは俺が音頭を取る。 ロロノア家のアイドル、ラピスちゃんの誕生日

に・・・・かんぱーい!!」

「「「「「かんぱーい!!!」」」」」

ウソップの号令に、皆、割れんばかりにグラスを押し付け、ラピスの誕生パーティーは幕を切

って落とされた。

そして、宴もたけなわになった頃、玄関のチャイムが鳴った。

「ロロノアさーん! お届け物でーす!!」

「はーい、今開けます・・・・誰からだろ?」

サンジは、すぐに玄関で荷物を受け取るとリビングへ持っていく。

「誰から?」

「んー・・・・差出人が・・・・美・・・・夜? ミヤって読むのかなぁ? 薄くてよくわかん

ねえんだ・・・・・」

「ミヤか・・・・・俺、知らないな、そんな名前・・・」

「けど、ロロノア・ゾロ様って、宛名はしっかりと書いてあるぜ?」

「どれ見せて? 会社関係の人かなぁ・・・・」

「・・・・・・どっかの女の人だったりして・・・・・ホイ・・・」

サンジは、そう言って箱をゾロに渡す。

その箱は、20cm四方の小さな箱だった。

「開けて見れば?」

そう促され、ゾロが中を恐る恐る開けてみると、そこには、ラピス宛と思われるメッセージカー

ドとビデオが一つ。

『誕生日、おめでとう。 プレゼントは気に入って貰えたかな?』

「?? これって・・・・・ラピス宛だよな? 本当に、てめえこの美夜さんって人に覚え

ねえの?? 今、正直に言えば、許してやっても良いぜ?」

可愛い縁取りのメッセージカードをゾロの前にちらつかせ、サンジはそう言ってにっこりと笑顔

を作る。

が、しかし、その笑顔がすぐに作り物だと誰もがわかるほど、サンジのこめかみはヒクついて

いて・・・・・・誰もが、恐怖した。

「ゾロ・・・・・・悪い事は言わない。 さっさと白状して、謝れ? 誰にだって、一度や

二度、間違いは・・・・・」

「無い!!!絶対に無い!! 変な事言うなよ!!ウソップ!! サンジ!信じてく

れ!! 俺には、ミヤなんて名前に全然覚えがないんだから!」

頭に手を置くウソップの身体を突き飛ばし、ゾロは必死になってサンジに告げる。

「ふ〜ん・・・。 関係ねえ人が、わざわざ子どもの誕生日に、ビデオレターね・・・? 

まっ、見てみりゃ、わかるよな?」

「サンジ〜・・・・頼むから信じてくれよ・・・・・」

そう言い縋るゾロを一蹴し、サンジはビデオをセットした。

ゴクリと、皆の喉がなる。

一斉にそのビデオに皆の視線が注がれた。

『なぁ、ゾロ。 大きくなったら何になりたい?』

もやがかる浴室で、誰かが小さなゾロと一緒に風呂に入っている。

『んとね・・・・・ぼく、おおきくなったら、ぱぱみたいなつよいおとこになるんだ。 

そしてね・・・かいじゅうさんやわるいやつらをやっつけるの。 ぼーんって!!』

『クスクス・・・・・そうかぁ。 ゾロはパパみたいになるのかぁ。 うん、なれるぞ、きっ

と。 さて・・・・もう上がろうか?』

『うん!!』

ざばぁと湯船から立ち上がり、二人は浴室の前で、身体を拭いている。

「・・・・・・これってさぁ・・・・・ゾロの小さい頃のビデオ?」

「ああ・・・・・そうみたいだな。 っつうことは・・・・・・贈り主は、おふくろか・・・」

「ん・・・・けど、なんだって、美夜だなんて・・・・」

「さぁ? あの人の考えてる事はわからない事あるからな。 ったく、人騒がせな・・」

とりあえず、自分の濡れ衣が晴れた事にホッとしたゾロ。

サンジもまた、自分の憶測が否定されて同じくホッとしていた。

ビデオは、まだ回っている・・・・

『ぼくも、ぱぱみたいにおおきくなる?』

『ああ、パパとママの子だからね。 きっと大きくなるよ。』

ゾロの父親は、優しく小さなゾロの身体を拭きながら、そう返事をする。

『んじゃ、ちんちんもぱぱみたいにおおきくなる?』

「「「「ゲホッ!! ガハッ!! なんて事を・・!!!」」」」

「やだぁ・・・・ゾロってば・・・・」

ビデオから、聞こえた小さなゾロの台詞に、ラピスを除く全員が一気に飲み物を噴出した。

『あー・・・・・ちんちんかぁ・・・・。 ん・・・そうだな・・・・たぶん・・・・・』

返答に困り、ゾロの父親も苦笑している。

「アハハ!! 面白えな!このビデオ!! ところでよ、実際、大きくなったのか

よ?!」

「いやだもう・・・ルフィってば・・・・下品なんだから・・・・」

「いやそれはもう、充分すぎるほど・・・・」

「サンジーッ!!!」

「・・・・・・・充分を越えてんのかよ・・・」

それぞれいろんなコメントをしながら、リビングは笑い声で包まれた。

そこで、ビデオがザーッと途切れる。

「あー・・・本当、笑わかして貰ったぜ。 けど、なんで、これがラピスのプレゼント

に??」

「んなの、知るかよ。 さっさと取り出してしまっとけよ。 んなもん、二度と見せない

からな。」

「ん・・・・・」

サンジがそう返事して、ビデオに手を伸ばそうとしたら、いきなり、映像が映し出された。

そこには、優しそうに微笑むゾロの父親の姿。

『ゾロ・・・・・・幸せかい? まぁ、その様子じゃ幸せなんだろうけど。 ・・・・本当に良

かった。 クスクス・・・・・ごめんな?』

ビデオは、それだけで、また途切れた。

「・・・・・・・なんだったんだろ・・・・あの映像・・・・」

ポカンと狐に包まれた気がしながら、サンジはビデオを取り出して、ゾロの方を振り向く。

「あっ!! あっ!! ぁあっ!!!」

口をパクパクさせながら、サンジは思わずへたり込んだ。

「ん? どうした?サンジ??」

怪訝そうにゾロは返事をして、サンジに近づこうと身体を動かした。

ビリビリと布が破ける音がする。

「うわっ!! 俺、元に戻ってるじゃないか! 俺、元に戻ったんだ!! やった!」

大喜びで、サンジに駆け寄るゾロ。

「・・・・・・・見なくていいもの、見ちゃったわね。」

「ああ・・・・・見た。 サンジの言葉どおりだった・・・」

「・・・・・・立派に、あのチビゾロの願いは一つ叶ったって訳だ、うん・・・」

元に戻ったゾロとサンジを見つめながら、ナミ、ルフィ、ウソップの三人は、冷静にその不思

議さを見留めて、苦笑した。

「ローたんが・・・・・ローたん?? ローたん・・・・・ローたん、おかえりなさーい!!」

目の前で起こった出来事に不思議そうな顔をしながらも、ラピスも久しぶりに現れたゾロに

嬉しそうに駆け寄る。

「おう、ラピス。 ただいま!」

そんなラピスをサッと抱き上げて、ゾロはその頬に軽くキスをした。

「ところで、ローたん、なんで、はだかなの? おふろはいってた?」

ラピスからそう指摘され、ゾロはやっと自分の格好を思い出す。

「うわっ! ヤバッ! ちょっち着替えてくる!!」

慌てて近くにあったクッションで前を隠し、ゾロは大急ぎで寝室へと向かった。

「フッ・・・・今更、よね・・・初めに気がついて欲しかったわ。」

「おう、しっかりと見たもんな、ゾロのちん・・・痛ぁ!! ナミ、なにすんだよ!!」

「子どもの教育上、良くないでしょ? まったく・・・」

「お、男は大きけりゃ良いってもんじゃ・・・・・・チクショー・・・負けた・・・・」

「アハハ!! 皆ってば、もう・・・・」

サンジを始め、他の皆も一斉に笑いあった。

それから、着替えたゾロもリビングに戻ってきて・・・・

楽しい時間は、夕方お開きになるまで続いた。











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<コメント>

えっとぉ・・・・ええっとぉ・・・・・・(汗)
なんつうか・・・・その・・・・・
結局はちんこ話を書きたかったとか・・・・いや、そういうことじゃ・・・(笑)
次で終わりです。
ええ、夫婦の時間書いたら・・・・書ききれなくなっちゃったの。(爆)
んじゃ、いきましょう♪