ある日、突然・・・Suddenly


その2.






「・・・ん・・? だぁれ?」

その夜、ラピスは別室で眠っている最中、頭に触れる温もりにゆっくりと瞳を開ける。

そこには、しぃーっと人差し指を唇の前に立てたゾロの姿。

「あ、ローたん・・・・どうしたの? もうかえるの?」

ゼフの家での新年会の最中に、先に眠ってしまったラピスはそう言って身体を起こそうとし

た。

「あ、ううん・・・・・今日は、ここにお泊りだ。 ラピスの顔が見たくなって・・・・・

ここに来たんだ。」

ゾロはそう言ってにっこりと笑い、ラピスに布団を掛ける。

「ラピス・・・・・幸せかい?」

「しあわせ?」

言われた言葉の意味がわからず、ラピスはキョトンとゾロの顔を見た。

「クスクス・・・・・ラピスには、まだわかんないよな。 ・・・・・そうだな、なにか、ローた

んやサーしゃん達にして欲しい事とかあるかい?」

苦笑しながら言うゾロの言葉に、ラピスは暫く考えて・・・・・

「えっとね、ラピス。 きょうみたおとこのこにあいたいの。」

そう言ってニコニコと笑みを浮かべた。

「男の子って・・・・・・ゾ・・・いや、あのビデオの中の?」

「うん。 ラピね、あのことおはなししたいの。 そしてね、いっぱいいっぱいあそん

で・・・・・」

ラピスの心は、既にその子と遊ぶ思いに捕らわれていて、瞳はキラキラと輝いている。

ラピスには、昼間見たビデオの小さな男の子がゾロだと言う認識はないようだった。

やはり小さなラピスには、自分の意図は伝わってなかったかと、ゾロは苦笑しながらも、その

様子に優しい眼差しを送った。

「クスクス・・・・・・わかったよ、ラピス。 もうすぐお前の誕生日だし・・・・・・悪かった

ね、起こしてしまって・・・・。 さぁ、朝までおやすみ・・・・暫くこうしているから・・・・」

ゾロはそう言うと、ラピスのおでこにそっと口付けして、その傍らにしゃがみこんだ。

「うん・・・・・・おやすみなさい・・・・ローたん・・・・・」

「・・・・・・・・おやすみ・・・・・ラピス・・・・」

ゾロの声に安心したのか、ラピスはまたすやすやと眠りについた。





翌日。

「ローたん、ローたん!! あのこ、いつくるの? ラピのらんじょうびにくる??」

朝、目覚めると、ラピスは一目散にゾロたちが眠る寝室に駆け込んだ。

「ふぁ〜・・・・おはよ、ラピス。 今日は早いんだな・・・・・ごめん、サーしゃん達、さっ

き眠ったばかりなんだ。 朝ご飯は、ジィジがもう作ってると思うから・・・・もう少し寝

かせてな・・・・」

明け方まで、シャンクス達に付き合わせれて、サンジは眠い瞳を擦りながら、ラピスにそう言

う。

隣りに眠っているゾロは、全く起きる気配さえ見せていない。

「ねー、ローたん!! あのこ、いつくるの? ローたん!!」

ラピスはそんな二人にお構いなく、ゾロの上に身体を預け、ゾロを揺り起こした。

「あ? ふぁ〜・・・・・おはよ、ラピス。 どうした?」

身体に感じる小さな振動に、ゾロもやっと目を覚まし、ラピスに声を掛ける。

「だから、ローたん。 あのこ、いつくるの? ラピのたんじょうび??」

「あの子?? ・・・・・・サンジ、あの子って誰の事だ?」

ラピスの言葉の意味がわからず、ゾロはサンジの方を見た。

「さぁ?? ラピス、あの子って、一体誰の事なんだ? サーしゃん達にわかるように

言ってごらん?」

「えっとね・・・・きのう、ローたんがいってた。 なんかしたいことあるって・・・・・だか

ら、ラピ、あのことおはなししたいって・・・・」

サンジに言われ、ラピスは懸命に伝えようと言葉を紡ぐが、サンジとゾロには伝わらない。

「あのな、ラピス・・・・・ゾロは昨日、ラピスのとこには行ってないよ。 ラピス、夢を見

たんじゃないかな?」

「・・・・・・・・ゆめだったのかなぁ・・・・? ラピ、ローたんとおはなしたんだけどな

ぁ・・・」

そう呟いて首をかしげ、サンジの説明に今ひとつ納得しきれないラピスであっが・・・・

「うん、わかった。 じゃあ、ラピ、ジィジとごはん、たべてくるね。」

そう返事をして、ラピスは寝室を出て行った。

「クス・・・・・ラピスも変な夢を見たもんだなぁ。 あの子って、昨日見た子どもの頃の

ゾロだったりして。 やっぱ、あのインパクトが強すぎたんだな。」

サンジは、昨日のビデオを思い出したのか笑いながら、ゾロにそう言う。

「・・・・ったく、あんなもん見せるなんて・・・・・おふくろにも困ったもんだ・・・」

「クスクス・・・・けど、本当に可愛かったぞ。 プクプクしててさ・・・・ここも・・・・可愛

かった。」

そう言って、サンジがギュッとゾロの下半身に触れた。

どう成長すれば、あの可愛らしい一物が、こうも変わるものか、サンジには理解できない範

疇であったが、それはそれ。

大きさや獰猛さが変わろうと、愛しさには変わりはない。

「わっ! 馬鹿!サンジ!! いきなし触る奴が・・・・・まぁ、良いか。 せっかく眠気

も納まった事だし・・・・・朝だしな・・・・」

スッとゾロがサンジを引き寄せる。

「ヤっとく?」

「当然。」

ゾロとサンジは、二人笑いあって、そのままゆっくりと唇を重ねた。

それから、いつものようにラブラブな夫婦の時間が始まって・・・・

ゼフは、防音工事をしといて本当に良かったと、心からそう思った。







「ふぁ〜・・・・よく寝た。 やっぱ、実家って良いよなぁ。 ゲッ、もう11時じゃん。 い

い加減起きねえと・・・・・」

サンジは慌てて起き上がるとシャツに袖を通し、隣りに見えている緑頭に視線を落とす。

「本当もう・・・・朝から元気なんだからv」

などと、朝からの事を脳裏によぎらせ、寝ているゾロを起こす事にした。

「ゾロ! 朝だぜ? ホレ、起きれ!」

そう声を掛け、一気に布団を引き剥がす。

「ぁあーーーーーーっ!!!!!!」

「ん? どうしたサンジ??」

しかし、ゾロを起こしたのは、布団を剥ぎ取った行為ではなく、サンジの上げた悲鳴に近い

声。

「ゾ、ゾロ??!!」

「あ? なんて声出して・・・・・・俺の他に誰が居るんだよ・・・・」

「だ、だって、ゾロ・・・・・・・か、身体・・・・か、鏡・・・・・」

憮然としているゾロとは対照的に、サンジは言葉さえろくに話せず、置いてある鏡を指差すだ

け。

「なんだよ・・・んな驚いた顔して・・・・んな顔して俺を驚かせようとしても無駄だぞ。」

ゾロは冷ややかにサンジを見つめ、指差された鏡に視線を移した。

「んぁ??!! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぁあ??!!!」

ゾロは、すぐにサンジに視線を向け、鏡の中の自分とサンジを交互に見比べる。

互いにあんぐりと口を開けたまま、言葉も無く首を縦に振り続けた。

「と、とにかく・・・」

「あ、ああ、とにかく・・・・」

「「・・・・・・着替えよう。」」

ゾロとサンジは二人同時にそう呟くと、何事も無かったかのように着替え始める。

「・・・・・・・・サンジ。 俺、やっぱ昨日飲み過ぎたみたいだ。 まだ酔っ払ってるんだ

よな・・・・・どうにも、服が着れな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やっぱ、現実なんだな・・・・これ・・・・」

大きく溜息を吐き、ゾロは恨めしげに自分の身体を見た。

「ああ・・・・・・・やっぱ、現実だよな。 ゾロのちんこが・・・・・物語ってる・・・・」

サンジもまた、視線をゾロの身体へと向ける。

「話をちんこからはなしてくれ・・・」

半ば呆然として、ゾロとサンジはゾロの身の上に起きた出来事をようやく把握した。

サンジの瞳の前に・・・・・・・・昨日のビデオと同じ大きさのゾロが居る。

外見3歳、実年齢2?歳の、ロロノア・ゾロが・・・・。

「さてと・・・・こうしていても、埒が明かない。 サンジ、俺の着替えをなんとかしてく

れ。」

素っ裸でベッドに立つゾロが、サンジを見て偉そうにそう言う。

「あ、ああ。 ・・・・・・プッ!! クスクス・・・・・なんか凄え変な感じだ・・・」

3歳の幼児が妙に大人びた口調で話す違和感に、サンジは堪らず笑い出した。

「なに笑ってんだよ!! ったく・・・・なんでこんな目に・・・・・・俺が一体何をしたって

言うんだよ・・・・」

額に手を置き、ゾロは瞳を閉じ眉間に皺を寄せる。

「きゃははは!! あはは!! ゾロ!!最高!!そのポーズ!!」

中身がいつものゾロと変わらないチビロロに、サンジは笑いながら、ラピスの服をゾロに与え

た。

「笑いすぎだぞ、サンジ・・・・・・とにかく、皆の居るリビングへ・・・。 こうなった理由

を誰か知ってるかも知れないからな。」

ラピスのトレーナーとジーンズを穿き、ゾロは部屋のドアを開ける。

「あ、待ってよ、ゾロ!!」

楽しげにゾロを見つめていたサンジも、あわててゾロの後を追って、部屋を出て行った。

 

 

「・・・・・・・・で、いつからこんな状態なんだ?」

眉間に皺を思い切り寄せ、ゼフはサンジにそう尋ねる。

「んとな・・・・さっき起きた時には、もう・・・・」

「その前は? なんか変わった事はなかったのか? こうなる兆しとかさ・・・」

「いや?全然。 普通にエッチして・・・・その時は、いつものゾロだったし・・・・その時

のちんこも・・・・・」

「サンジ!!」

呆れた様子のゼフにサンジは臆面も無く今朝の出来事まで詳細に語りだしそうになって、

ゾロは慌ててサンジを制した。

「ゴホッ! んまぁ・・・・そのナニだ。 その後眠ってから、起きたらこうなってたと・・・

そういう事なんだな?」

「おう、そうなんだよ、オヤジ。 どう思う? こんな事、普通有り得ねえだろ?」

やや赤くなったゼフを気にする素振りも無く、サンジはゼフに反対にそう聞く。

「まぁ・・・・・有り得ねえがな、確かに。 けどよ、てめえが男の癖してラピスを産んだ

って事自体が有り得ねえ事だったからなぁ。」

そう言ってゼフは苦笑しながら、ゾロを見つめた。

「たっだいま〜! 今、帰りまちたよ、ジィジ〜。」

そんな最中、シャンクスがそう言って、ラピスを抱き抱えたまま部屋に入ってきた。

「いやぁ、参ったね。 道行く人が皆、俺達を振り返っちゃってさ。 俺、志緒さんと夫

婦に間違われちゃった。 ラピスも俺の子どもだって聞かれてさ・・・・鼻高々だったん

だぜ、俺・・・・。 なんだ、なんだ?? 正月早々、なに辛気臭い顔で話してんだ?」

「ただいま、ゼフ、サンジ君。 あら?ゾロは? 相変わらず寝坊スケさんなのね・・・」

「ただいま戻りました。」

シャンクスに続き、志緒とベンも部屋に入ってきた。

「俺なら、ここにいるだろ・・・。」

サンジの横に腰掛けていたゾロがそう言って椅子に立ち上がった。

「あ?」

「は?」

「ま?」

「あー・・・・あのこだぁーっ!!」

一声発して唖然としているシャンクス、ベン、志緒に対し、ラピスはするりとシャンクスの腕か

ら降りると、真っ直ぐにゾロの傍に駆け寄った。

「ねーねー・・・いま、きたの? ラピとあそぼ。 ラピね・・・ずぅっとまってたんだ

よ・・・。」

瞳を輝かせ、ラピスはニコニコしてゾロにそう言う。

「あ、あのな、ラピス。 俺はローたんだ。 ラピスのパパのローたんなんだよ。」

「なまえ、ローたんっていうんだ。 ラピのパパとおなじだね。 ラピのパパ?? ラピ

のパパは、もっとおとなだよ? ローたんとはぜんぜんちがうよ。 それよりね、あそ

ぼ。 ラピね、サーシャンごっこがいいな・・・」

ゾロの言っている意味がわからず、ラピスはそう言って腕をぐいぐいと引っ張った。

「クスクス・・・・・ゾロ、ラピスにわからせる方が無理だよ。 俺達だって理解できてね

えんだから。 とにかく様子を見ようぜ。 せっかくだし、ラピスと一緒に遊んでやれ

ば?」

「・・・・本当、他人事だと思って・・・・」

サンジが事の次第をあまり重要視して無いように思えて、ゾロは深く溜息を吐く。

「ねぇ・・・・はやくいこう。 こっちだよ。」

「ああ、わかった。 じゃ、遊ぶか、ラピス・・・」

尚も、自分の腕を引っ張り愛らしい笑顔を向けるラピスに、ゾロは観念したようにそう告げ、一

緒に部屋を出て行った。

「・・・・で、サンジ君、ゼフ。 あの子、一体どうしちゃったの? ハッ、まさか、悪の秘

密結社かなんかから、薬を・・・」

志緒がそう言って悲痛そうな顔で口元を押さえる。

「・・・・志緒さん、それ漫画の見すぎです。 ゾロは普通のサラリーマンですよ。 

何処に悪の組織との関連が・・・・・・・・・なぁ、シャンクス?」

サンジはその様子に苦笑しながら、シャンクスに同調を求めた。

「ハハハ・・・・・・まさか、あのシンジケートが逆恨みして、ゾロをあんな目に・・・・」

そんなサンジの言葉に、シャンクスは大げさに空笑いをし、神妙な顔つきでそう言い返した。

「「えっ?」」

シャンクスの言葉に、サンジと志緒の表情が一瞬で変わる。

「オイオイ、こんなところで妙に信憑性のある冗談を言ってる場合かよ。 サンジ、

志緒さん、嘘だからな? 大体、あのシンジケートってどのシンジケートなんだよ。

・・・・本当、この人は・・・・・」

「まったくだ・・・。 てめえの胡散臭さは昔からだからな。 どんな組織と関わりあって

いても不思議ねえんだから・・・・」

ベンとゼフがそう言って、シャンクスに呆れたような視線を向けた。

「うっわぁ・・・・お二人さん、言うねー。 一応、俺、ちゃんとした会社の社長よ、社

長。 今年一部上場ともなる企業の社長が、んな胡散臭い訳あるかってんだ・・・・。 

もっと俺を信じなさい。」

二人の厳しい視線に、シャンクスはヘラヘラしながら、そう切り返すが・・・・・

「「「「胡散臭すぎる。」」」」

と、全員から見事にツッコまれてしまった。

「志緒さんまで、そんな〜・・・」

「クスクス・・・・ごめんなさい。 けど、貴方のお名前、いろんなとこで伺ってるか

ら・・・・・」

「どんなとこでですか? いやぁ・・・・もてる男は辛いですな・・・・」

「ウフフ・・・・・秘密v」

いつの間にか、ゾロの話題はそっちのけで話をしてる二人。

ゾロに起こった出来事があまりにも突飛過ぎるせいなのか、集まっているメンバーの性格の

故なのか、サンジもまた、自分があまり沈痛な面持ちで考えてない事に苦笑した。

「んなこと、誰も言ってねえし。 っつうか、本当に、シャンクス。 てめえ、覚え、ねえ

んだろうな? ゾロの件について・・・・」

「ああ、俺にはねえ。 んな悪の組織なんかあったら、俺がぶっ潰してるよ。」

シャンクスは、サンジの瞳を真正面から見て、そう言い切る。

「サンジ、今の言葉は信用して良いぜ? 俺達は、この件には一切関わってない。」

「ん・・・・・ベンがそう言うなら・・・・」

「って、ベンが言ったからかよ!!」

サンジの言葉に、シャンクスはほとほと参ったという顔つきでそう言い返した。

「とにかく・・・・・ゾロがああなった以上、ここは様子を見るしかなさそうだな。 突発で

起きた事なら、突発で解決するって事も有り得るし・・・・。 とりあえず、身体の体調

に変化がねえか、医者に診せて、暫く様子をみようぜ。」

シャンクスが真面目に言った言葉に、部屋にいた皆は一様に頷いて・・・・・

サンジ達は、普段と変わりなく生活することにしたのだった。






<next>    <back>


 


 


<コメント>

チビロロは可愛いよね〜v
小さくなっても、頭脳は大人・・・・どっかで聞いた台詞だなぁ・・・(笑)
次できっと終わる筈・・・新年だし・・・・(意味無)
笑う角には福来るってね☆
では★(笑)

閉じてお戻りください。