ある日、突然・・・Suddenly


その1






「えへへ・・・今年一年も、ゾロと・・・そして、ラピスと幸せに暮らしていけますよう

に・・・」

サンジは、お祈りをしながら、そっと隣にいるゾロとラピスを見る。

横から見える二人の表情がそっくりで、サンジはクスッと思わず笑ってしまった。

一年間という長期のアメリカ出張から、やっと日本に戻り、初めての年越し。

ラピスは、今月の11日で、満3歳。

年齢の割にはおしゃまさんで、よく気がつく・・・・・・自他共に認めるロロノア家のアイドルだ。

サンジ譲りの金色の髪(ゼフに言わせると自分似だと言う)に、ゾロそっくりのきりっとした眉。

くりくりとした瞳の色は濃い蒼色で、サンジと連れ立って歩いても、その愛らしさに、だれか

れと無く振り向かせる。

「さぁてと・・・初詣も済んだし、ジィジんとこに、新年の挨拶にでも寄ってみるか・・・」

「うん!! ジィジ、似合うって言ってくれるかな?」

「ああ、きっと凄く可愛いって、そう言ってくれるぞ。」

初めて着た晴れ着にウキウキとしながら、ラピスがゾロの首にしがみつき、ゾロが優しく抱き

抱える。

当然、ラピスが着ている晴れ着も、ゾロやサンジが着ている着物も、ゾロの母親志緒がデザ

インしたもの。

目立たないわけが無い。

そんな周囲の羨望の瞳にも、気付かず、ゾロとサンジとラピスは、ゼフの待つ家へと向かっ

た。









「いよう・・・・遅えぞ。 先にやってたぜ・・・」

「社長?! 部長?!」

「シャ、シャンクス?! それと・・・ベン??」

「ああ、やあ・・・・お邪魔してるぞ、ロロノア・・・」

サンジの実家で出迎えてくれたのは、ジィジゼフではなく、シャンクスとベン。

「まっ、そんなとこで、ボーっとしててもなんだ。 さっさと上がれよ・・・・ラピちゃん、

綺麗だね〜、おじちゃんと一緒に行こうv」

「うん! あけましておめでと、シャン! ベン!」

唖然としているゾロとサンジを尻目に、シャンクスは、ゾロの腕からラピスを抱き抱えると、そ

のままリビングに消えて行った。

「・・・・・悪いな、ロロノア。 あの人、行くってきかなくてな・・・」

苦笑しながら、ベンがそう言って中に入るよう促す。

「あ、ああ・・・・・・」

「ったく、シャンクスってば・・・・」

ベンに促されて、ゾロとサンジもその後に続いた。

「おう、待ってたぞ。」

「おやっさん、今年もお世話になります。」

「オヤジ、あけましておめでとう。」

リビングで、ラピスを抱き上げご満悦のゼフが、満面の笑みで二人を出迎える。

「おう、おめでとさん。 しっかし、ラピスは本当、日に日にてめえに似てくるなぁ。 

フッ・・・・確か、てめえがこん位の時だったか、初詣に行った帰り、写真でも撮るかと

近くの写真屋に寄ったんだ。 そしたらさ、どうしてもこれを着るって・・・・・・晴れ着を

な。 ハハハ・・・・本当に女の子のようで、参ったぜ。」

「嘘だ・・・・そんなの。 俺、覚えねえぞ。」

「ククク・・・・・んな疑うなら、そこの箪笥に入ってる記念写真、見てみろ?」

焦るサンジに、ゼフは苦笑して顎で箪笥を指し示す。

「あっ・・・・・・本当だ。 ラピスそっくしじゃねえか・・・フハハ・・・」

真っ先に箪笥をあけ、目当ての写真を見たシャンクスがそう言って笑い出す。

「見、見るんじゃねえ!!」

「おっと・・・・ホレ、ゾロ。 見てみろよ。 可愛い女の子ちゃんがおすまし顔で映って

るから。」

取り上げようと手を伸ばしたサンジを軽く避け、シャンクスはゾロにその写真をゾロに投げた。

熊のぬいぐるみを抱き抱え、綺麗な晴れ着ににっこりと満面の笑顔の小さなサンジがそこに

いる。

「クク・・・・・・本当、ラピスそっくりなんだな。 可愛い・・・・」

「か、可愛いって言うなーっ!!」

ゾロにも笑われて、サンジは真っ赤な顔をしてそう言い返した。

「・・・・・・これ・・・・サーしゃん?」

「おう。 ラピにそっくしだろ?」

「うん! サーしゃん、可愛い・・・・・けど、ローたんは? ローたんは、何処?」

小さなサンジの写真を見て、ラピスが写真の中にゾロの姿を探す。

「ああ・・・・俺は、ここには、いないんだ。 まだこの時には、知り合っても無かったか

ら・・・」

「あら? まぁ、やっぱ、サンジ君は、この頃から可愛かったのねぇ・・・」

ゾロが不思議そうなラピスにそう話していると、急に後ろから聞きなれた声がした。

「お、おふくろ?! どうしてここに?!」

「あらぁ・・・新年の挨拶に決まってるじゃない。 貴方達より早く来て、ジィジのご馳

走頂いてたわよ。 ねっ?ゼフ。」

ゾロの驚いた顔に、にっこりと笑って志緒はそうゼフに同調を求める。

「ああ。 珍しく志緒さんも仕事無えって言うし、だったら、皆で楽しくやろうって話にな

ってな・・・」

「ったく・・・ジィジってあんたが言うなよ。 どうせあんたが押し掛けてきたんだろ。

・・・・・すみません、おやっさん。 お袋まで世話掛けて・・・」

ゼフの言葉に、恐縮したようにゾロが再びゼフに頭を下げた。

「いいって事よ。 さあ、てめえらも、こっちでゆっくりとしねえか。 ラピもな、ジィジの

デザートでも食うか?」

「うん! ラピ、ジィジの作るおやつ、だーい好き!!」

ゼフの言葉に、ラピスは、ゾロから降りてキッチンに居るゼフの元へ急ぐ。

「相変わらず可愛げがないわね、ゾロ。 皆の前では志緒さんって言いなさいってそう

言ってるでしょ? 昔はあんなに可愛かったのに・・・・一体誰に似たのかしら・・・

顔はそっくりなのに・・・・・あの人は、こんなじゃなかったわ・・・・」

あんた呼ばわりされ、志緒はムッとした表情で聞こえよがしにそう言った。

「志緒さん、あの人って・・・・・ゾロのお父さんですか?」

「ええ、あの人はね。 キリッととしてて・・・・けど、凄く優しくて・・・温厚で・・・。 

顔も、こんな不機嫌面してなかったわ。 いつもにこにこしてて格好良くって・・・・・

お日様のような人だったわ。」

サンジの言葉に、志緒は昔を思い出すように語りだす。

「ヘイヘイ・・・また始まったよ。 志緒さん、それ語りだすと長いんだぞ。 サンジ、適

当に聞いとけ・・・」

ゾロはそんな志緒を見て、苦笑ながらサンジにそう言った。

「また、あんたはそんな憎まれ口を・・・・顔は似てるけど、全然、あんたは、あの人と

は違うわね。 ったく・・・・・そんな事ばっか言ってると、昔のあんたの恥ずかしいビデ

オ、皆に公開しちゃうんだからね。」

「痛ぇ!!」

ピンとゾロのデコを指で弾き、志緒はそう言って意味ありげに笑う。

「え? ゾロの昔のビデオ?!」

サンジの発した言葉と同時に、部屋に居た皆の視線が志緒に移った。

「フフフ・・・・あら? 皆、そんなに興味ある? だったら、見せてあげましょうか? 

じゃあ、持ってくるわね・・・」

「馬鹿!! おふくろ!! んなもん持ってくるな!! おふくろ!! 志緒さん!!」

焦って止めようとしたゾロをあっさりと振り切って、志緒は部屋を出て行った。

「・・・・・・・・サンジ、ラピ、すぐ帰るぞ。」

ゾロは、真っ青な顔をしてサンジとラピスにそう言う。

「えーっ!! ラピ、まだジィジのおやつ食べてないもん・・・」

「クスクス・・・・そんなに慌てなくても良いじゃんか。 滅多に見れるもんじゃねえし

・・・・・それに、俺、昔のゾロ、見てえな・・・?」

「あっはっはっは!! まぁ、良いじゃねえか、正月だし。 俺達もそのビデオとやら、

見てみてえしな・・・」

「・・・・・悪いな、ロロノア。 心情察するぜ。」

「クク・・・・・てめえ帰るなら、一人で帰れ?」

ゾロの言葉に、皆、一様にそう言って笑う。

「ったく・・・・・・人の気も知らねえで・・・・」

ゾロはハァーッと深い溜息をついて、クラスに注がれていたビールを飲み干した。

「お待たせ〜!」

5分も掛からないうちに、志緒が手にビデオを持って部屋に現れた。

「おふくろ! いや、志緒さん! 家に取りに戻ったんじゃねえのかよ?!あんた・・」

そのあまりの早さに、ゾロは思わずビールを噴出しそうになる。

「ウフフ・・・・・マスターテープは、家にちゃんと保管してるけど、ダビングした奴は、

車に積んであるの。 ほら、そうすればいつでも見れるし・・・・・」

「・・・・・・見んなよ・・・・んなもん・・・・」

「あらぁ、だって・・・・・・この中にはあの人が生きているんだもん。 あたしの生活の

糧なんだから・・・・いつも肌身離さず・・・・・オフィスにだって置いてるわよv」

呆れ顔で自分を見つめるゾロを気にもせず、志緒はそう言ってチュッとビデオに口付けを落と

した。

「凄く素敵な人だったんですね、ゾロのお父さんって・・・・お逢いしたかったな・・・」

そんな志緒の様子に、サンジはそう言って淋しく微笑む。

「ウフフ・・・・ええ、あの人は素敵よ〜v このあたしがメロメロだったもの。 あの人に

逢うと、サンジ君、貴方も虜になっちゃうかも。 ゾロなんか目じゃないんだから・・・」

「目じゃないって・・・・・あんたも充分、失礼だ。 大体、サンジが親父に惚れるわけ

がないだろ。」

「いや、それはなんとも・・・・・」

「そりゃ、どう言う意・・・・」

「あはは・・・・サンジ君、そんな事言ってると、後が怖いわよ〜。」

サンジの返答に不機嫌さを増したゾロに、志緒は笑いながらそう言う。

「あの人も・・・・・・凄いやきもち妬きだったの・・・・・・一途で・・・宥めるの大変だった

んだから・・・・・・そこは、そっくりね。」

ヒソヒソとサンジに耳打ちしながら、志緒は軽くウィンクしてみせた。

「さあて・・・・・じゃあ、華麗なるロロノア・ゾロ君の可愛いビデオの上映会と致しまし

ょうか?」

志緒はそう言って、リビングのビデオにテープを入れる。

『ぱぁぱー・・・・・・ちっこでたぁ・・・・』

満面の笑みを浮かべ、キューピー人形のような小さなゾロが画面一杯に現れる。

ぶっぷりとしたお腹。

一糸纏わぬその姿は、愛らしい天使そのもので・・・・

「クク・・・・・本当、可愛いな、ゾロ・・・・・」

「あはは・・・・ちんこ、小せえ!!!」

「・・・・・・本当だ。」

「うるせーっ!! 誰だって、そうだろうが!!」

サンジとシャンクスの指摘に、ゾロは真っ赤な顔をして反論する。

『おう、偉いぞ。 ちゃんと一人で出来たんだな。』

そう言って自分の方へ歩いてくるゾロを見知らぬ人が抱き上げた。

今のゾロとそっくりな優しく笑うその人が、ゾロの父親なのだろう。

見ている志緒の瞳にうっすらと涙が滲んでいる。

『ぱぁぱ・・・・ぱんちゅ・・・』

『おう、自分で穿いてみ?』

『うん!!』

父親にそう促され、小さなゾロは、床にしゃがみこんで一生懸命にパンツを穿こうとしている。

『で、できた!!』

『ん? 出来たか、偉いぞ。 ・・・・・クク・・・・ゾロ、後ろ前だぞ、それ・・・』

そう言ってゾロの父親が笑いながら、小さなゾロのパンツを引っ張った。

『ちがうもん! これでいいんだもん!!』

真っ赤な顔をしてそういい返す小さなゾロ。

自分でもなんか変だとは思っているらしい。

『ククク・・・・・ハイハイ、それで良いよ。』

『ぷん! ぱぱなんかきらい!! ぼく、あっちいく!!』

父親の傍からそう言って離れ、小さなゾロは見えなくなった。

ビデオはその小さなゾロを追いかける。

『うんしょ・・・・・』

ごそごそと、小さなゾロが座り込んでなにかをやってる。

それをズームして見ると・・・・・

先ほど指摘されていたパンツを穿き替えているところだった。

「だーはっはっは!! 情けねーっ!!」

「クスクス・・・・・ゾロってば、可愛い!!」

シャンクスとサンジが、テーブルをバシバシと叩きながら、腹を抱えて笑っている。

「うるせえ!! 笑うな!そこ!! 笑いすぎだ!!」

「まぁまぁ・・・・子どもの頃の事だし・・・・まっ、飲んどけ?」

「くそう・・・・・志緒の馬鹿・・・・・」

ベンに宥められながら、ゾロは渋々酒を煽る。

そのビデオには、生前のゾロの父親が家族と共にたくさん溢れていた。

誰が見ても、幸せそのものの家庭で・・・・・

この数年後、その父親が居なくなるなど、微塵も感じさせない、素敵なビデオだった。

「俺・・・・・・志緒さんが、このビデオ持ち歩くの・・・・わかる気がする。」

ビデオ上映会が済んで、サンジがしんみりと志緒にそう告げる。

「フフフ・・・・やーね、サンジ君。 そんなにしんみりしないで頂戴。 笑う角には福来

るってね・・・・・新春早々、笑って貰おうと思って持ってきたんだから・・・・」

「おう!! メチャクチャ笑ったぜ。 まさか、こいつにこんな可愛い過去があるなんて

な。 俺、ますますこいつが可愛くなったぜ。」

志緒の言葉に、シャンクスはそう笑いながら。ゾロの肩を引き寄せる。

「俺は社長の玩具じゃないですからね。 可愛がってくれなくても結構です!」

そう言って、ギュッとゾロが自分の肩においてあるシャンクスの手を抓った。

「イテテ・・・相変わらず、冷たい奴だなぁ。 けどま、今年もいろいろと面倒掛けるつ

もりだから、よろしく頼むぜ、ゾロ。」

「「掛けるつもりなのかよ!!!」」

飄々とそう言い切ったシャンクスに、ゾロとサンジはそうツッコミを入れ・・・・

「まっ、今日は飲んで騒いで・・・・・楽しく過ごそうぜ?」

「「「「「おう!!!」」」」」

ゼフの家での新年の挨拶は、新年会に様変わりして・・・・・

夜遅くまで、楽しく行われた。








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<コメント>

ロロノア家・・・・本当久しぶりですよね。
書き出すと長いのは、まっ、仕方ないです。
本題には全然入ってないですから、ここまで・・・(;一_一)
さて、ここまでは新年のご挨拶と言う事で・・・(笑)
続きも早々に仕上げるつもりではいますが・・・・・
どういう展開になるかは・・・・
ダッシュ!!(脱兎)

では★(笑)

閉じてお戻りください。