世界で一つだけの・・・。



その5.







あれから、サンジ達は、毎日のようにシュライヤと出掛けているらしい。

一体、お前は誰のモノなんだ?!

俺の、だろ、俺の!!

確かに、多少のことは目を瞑ってくれと頼んだよ・・・。

王子は良い奴だとも言ったよ・・・。

けどなぁ・・・・だからといって・・・。

誰がここまで世話をやけと言った!!

全く・・・・王子も王子だ。

いつまで居る気なんだよ!

さっさと国に帰れよな!




夕食の時間、毎日のようにサンジから今日有ったことを聞かされ、ゾロは、不機嫌さを増して

いく。

聞いているだけならまだしも、自分が加われない話題で盛り上がる夕食の時間が、ゾロには

我慢ならなかった。

ついに、ゾロは、夕食後にシュライヤの部屋を訪れる。

「殿下。 最近、ナコーさんも連れずに、サンジとあちこち出歩いているようですが、

止めていただきたい。」

「ふふん・・。 やきもちは、みっともないぞ、ロロノア・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「確かに、サンジを娶ろうと思ったのは、そのオーラの色と夢を見たためであった。

・・・・しかし、今は違うぞ。 心からサンジを愛しいと思っている・・・。 ずっと傍にお

きたいと・・・。 どんなことをしても、本気で、あれが欲しくなった・・・。 だから・・・

この勝負、絶対に負けぬぞ。 ロロノア・・・。」

「俺だって・・・・絶対に、サンジは譲れない。 例え一国の王子だろうが、重要な取

引先だろうが・・・。 貴方にサンジは譲れない・・・。 ・・・・・失礼します。」

ゾロはシュライヤの言葉に真っ直ぐ瞳を見返してそう言うと、部屋を出ていった。 

それから数日が過ぎ、相変わらずシュライヤはロロノア家に居座り続け、サンジの傍を離れ

ようとしない。

サンジの方も、懐いてるシュライヤにそう悪い気はしなかった。

ゾロがそんなサンジの姿にやきもきしているとも思わずに・・・。

いつものようにシュライヤと買い物に行き、サンジはシュライヤと共にラピスとナコーが待つ家

へと急ぐ。

「あー・・・今日は、少し遅くなっちまったな。 ラピスの奴、いい子にしてたかな。 

今日の夕食、なんにしようかなぁ・・・。 なぁ、シュライヤ・・・なんか食べたい物、

あるか?」

家の前まで着くと、サンジはシュライヤの方を振り向いてにっこりと笑ってそう言った。

隠れゆく夕陽に、サンジの金色の髪がキラキラと輝いて・・・。

シュライヤは思わず、サンジの頬に手を伸ばす。

「?? ・・・・・シュライヤ・・・?」

「・・・・サンジ・・・。 私は、そなたが好きだ。 もうオーラの色などどうでも良い・・・。

そなたに、傍に居て欲しいのだ。 ・・・・私のものになれ・・・サンジ・・・。」

シュライヤはサンジの瞳を真っ直ぐに見つめそう言うと、サンジの身体を抱き締めた。

シュライヤの真っ直ぐな瞳に、サンジの胸はドキンとはねる。

「ちょ、ちょっと・・・。 あ、あのな・・・。」

サンジは、真っ赤な顔をして慌てて身を捩った。

そこへ、スッと黒い車が数台、サンジの背後に停まる。

「シュライヤ殿下ですな。 この方に怪我させたくなかったら、貴方がお持ちの王家に

代々伝わる指輪を渡して貰いましょうか・・・。」

その車から、シュライヤの国の民族衣装を着た男達が二人出てきて、サンジに拳銃を突きつ

けた。

「な、何者だ! 何故、指輪のことを知っている!」

シュライヤは突然の襲撃者にそう叫ぶ。

「ふふふ・・・。 お久しぶりですな、殿下・・・。」

そう言って、一台の車の中から若い男が現れた。

「叔父上!! 何故、貴方が?! 実の兄とも慕い、共に良き国のために力を合わ

せようと言っていた貴方が・・・。」

シュライヤは、現れた若い男を見て愕然とする。

「ふん・・・。 そんな昔のことは忘れたよ。 なぁ、知っていたか、シュライヤ・・・。 

王になれるのは、嫡子だけじゃないんだ。 その指輪をはめ神殿で王位継承した者

が、王になれるんだ・・・・王族の男子で有れば、誰でも、な・・・。 そこまで言えば、

意味解るよな・・・。」

その男は、そう言ってニヤリと笑った。

「あの指輪は、代々王となる者の朱雀の守護の証・・・。 真の王にしか与えられない

物だ。例え叔父上であろうと渡すわけにはいかぬ。」

「ククク・・・強がっていられるのも、今の内だ。 シュライヤ、日本での君を良く観察さ

せて貰ってたぞ。 君は、たいそうこの人にご執心と見える。 今も素敵なラブシーン

を見せて貰ったばっかりだしな。 さて、どちらを選ぶ? 証の指輪か・・・この人の命

か・・・。」

その男はそう言って、サンジの喉元にナイフをあてる。

「ダメだ! シュライヤ! 絶対に渡してはいけない!」

「・・・・・けど、お前には代えられぬ・・・。」

シュライヤは、サンジの言葉にそう言うと、にっこりと笑って指輪に手を掛けた。

「シュライヤ!!絶対にダメだっ!! お前は、良い王になる! こんな奴を王にした

ら、ソディアック王国は、ダメになる! お前は良い王になると誓ったんだろ? だっ

たら、俺一人のことより、まず国のことを考えろ!! それがお前に課せられた義務

だ!!」

指輪を外そうとしたシュライヤに、サンジはそう叫んだ。

「チッ。 うるさい奴だ・・・。 こうすれば少しは大人しくなるか・・?」

その男はそう呟いて、サンジの首筋に刃先をあてる。

ツーッと赤い血が細い線を作って、サンジの白い肌に流れた。

「止、止めろーっ!! 今、渡す! 渡すから止めてくれ!!」

シュライヤは、そう叫んで、自分の指から指輪を抜き取り、その男に差し出した。

「フッ。 最初から素直にそうすれば面倒なく済んだものを・・・。」

男はそう言って、サンジから離れるとシュライヤに近づいてくる。





「ん?? ・・・・なんだ、あの黒い車は・・・。 おい、ゾロ! お前んちの前でなんか

物騒なことやってる連中がいるぞ。」

ゾロと共に家に遊びに来た社長のシャンクスが車の窓からその様子を見てゾロに伝えた。

ゾロは言われるままに、その視線を家の方へ移す。

そして・・・・ゾロの瞳の端に映ったのは、サンジが拳銃を突きつけられている姿。

「社長・・・。 コレ、借りていきます・・・。」

ゾロは静かな声でシャンクスにそう言うと、木刀を片手に車から降りて自宅前に走った。

「お前達、これは、間違いじゃないんだな・・・?」

「ん?なんだ、お前は。 関係ないなら引っ込んでいた方が身の為だぜ?」

男達はゾロに拳銃をちらつかせ、そう言ってニヤリと嗤っている。

ヒクッとゾロの眉がわずかに動いた。

「生憎、ここは俺の家なもんでな。 それに・・・・・返して貰おう。」

ゾロは、そう言うが早いかサンジに拳銃をあてていた男達を一撃で伸していく。

それを見ていたシャンクスもベンと共に車から降りると、車からゾロゾロと出てくる襲撃者達に

応戦し始めた。

見る見るうちに、地面に男達が伸され、襲撃者達に焦りの色が浮かぶ。

「クッ。 引き上げるぞ!」

形勢不利と見たシュライヤの叔父は指輪をシュライヤから奪うと、その場から逃げようとし

た。

すると、握られた指輪が急に発光し始めた。

「うわっ!! 熱っ!! 指輪が・・・指輪が・・・・。」

シュライヤの叔父はそう言って指輪を地面に叩き落とす。

地面には、真っ赤になりゆらゆらと炎に包まれた指輪が、音を立てて転がった。

「やはりな・・・。 叔父上、貴方はご存じ無かったのかも知れないが、この指輪は、

主人を選ぶのだ。 選ばれない者は指輪に触れることさえ、叶わない。 ・・・朱雀の

守護の力は王のためだけある。」

シュライヤはそう言うと、燃えさかる指輪をこともなげに拾い、その指にはめた。

指輪は、シュライヤにやけど一つ作ることなく、元の輝きに戻る。

「あわわ・・・・何と言うことだ・・・・。 あの伝説は本当だったのか・・・。 とりあえ

ず、引けっ!」

シュライヤの叔父は、目の前の奇蹟に圧倒されながらも、そう言って車に乗り込んでその場

を去っていった。

「な〜んだ・・・。もう帰っちゃったのか。 つまんねえの・・・。」

シャンクスはそう呟いて、携帯で何処かに連絡を始める。

遠くで警察庁のヘリの音がした。

「ゾローッ!!」

襲撃者達が去って、サンジは、ゾロの傍に駆け寄って抱きつく。

「サンジ、怪我は?」

「うん、大丈夫だ。 ・・・怖かったよ・・・ゾロ。 あ、ダメだ・・・。 今頃になって震え

がきた・・・。」

サンジはそう言って、ゾロの腕の中でがくがくと震える。

「・・・・サンジ、もう大丈夫だから。」

ゾロは、そんなサンジをギュッときつく抱き締めて支えた。

「・・・・殿下。 貴方に責任は無くても、サンジにもしもの事が有れば、俺は、貴方を

一生許さなかった。 例えソディアック王国と戦争になるとしても・・・。 貴方には、白

いオーラの人が他に見つかるかも知れないけど・・・。 俺には、サンジだけだか

ら・・・・サンジしかいないから・・・。 本音を言えば、貴方に限らず、サンジに近づく

奴は、全て排除したい。 誰の目にも触れさせたくない。 俺は、みっともないやきも

ち妬きなんですよ。 殿下・・・。」

ゾロはそう言って、シュライヤを真っ直ぐ見た。

「・・・・つまり、どうあっても、サンジを譲る気はないと?」

「ええ、毛頭ありません。」

「では・・・・・私と決闘しろ。 ロロノア・・・。 先程の剣捌き、見事であった。 その命

を賭け、私と勝負してみよ。」

シュライヤは、ゾロの瞳を真っ向から受け止めてそう告げた。

「な、何言い出すんだよ! シュライヤ?!」

シュライヤの言葉に、サンジは慌ててゾロとシュライヤの間に割って入る。

「おおっ! 決闘すんのか? 決闘?!」

「シャンクス・・・あんたって奴は。 ・・・煽ってどうすんだよ。 止めろよな・・・。」

シャンクスとベンはそう言って、三人の様子を静観した。

「私が負ければ、サンジは潔く諦めよう・・・。 但し、勝ったら、文句無しにサンジを

国に連れていく。 この『申し出』、ロロノア、受けるか?」

「・・・・わかりました。 お受けします。」

「では、この剣を貸そう・・・。」

シュライヤはそう言って、腰にさしてある剣のうちの一本をゾロに手渡す。

「ゾロ?!」




ダメだよ、ゾロ・・・。

こんな決闘・・・。

いくら、ゾロが剣道強いからって・・・。

相手は、あんな指輪に守られてるような奴なんだぞ。

朱雀に守られてるシュライヤを相手に・・・・。

それに、剣術に実践馴れしてるシュライヤに勝てるかどうか・・・。

木刀じゃないんだぞ・・・。

さっきの指輪から出る炎に灼き尽くされてしまうかも知れないんだぞ。

怪我じゃ・・・・・済まないんだぞ・・・。

ゾロにもしものことがあったら・・・。

そんなの、絶対に嫌だ!!




「なぁ、ゾロ! お願いだから止めろよ! わかってんのか? 剣道の試合じゃないん

だ! 怪我じゃ済まねえんだぞ!!」

「邪魔だてするな、サンジ! これは、命を賭けた闘い(プライド)なのだ・・・。」

「・・・・サンジ。 危ないから退いてろ。 怪我するぜ・・・。」

サンジの呼びかけにも、二人はそう言って一歩も引かない。

剣を構えた二人の間に、緊迫した時間だけが流れる。

「ばっか野郎!! 何がプライドだ! 何が、命を賭けるだ!! そんなことしたって

なぁ、俺の気持ちはどうなるんだよ! ふざけるのもいい加減にしろよな! 俺は、景

品じゃねえ! ちゃんと意思を持った一人の人間なんだよ! シュライヤ! 例え、

てめえが勝っても俺は、てめえの后にはならねえよ。 俺が傍にいたいって思うの

は、ゾロだけだ! 世界でたった一人だけ・・・。 ロロノア・ゾロ以外、俺が愛する奴

はいねえ!! それでも決闘してえなら、その剣で俺を殺せよ! ゾロがいないとこ

で生きていく気はねえんだから!!」

サンジは堪りかねてそう叫ぶと、二人の間に立ちふさがった。

「・・・・サンジ・・・。」

スッと、ゾロがそう呟いて剣を下げる。

サンジの必死に自分を守ろうとする姿に、ゾロの心から闘争心が消えていった。

そんなゾロとサンジの様子を見て、シュライヤの心にどす黒い感情が湧き出る。

「・・・・・・ならば、望み通りにしてやる!! 覚悟は良いな、サンジ!!」

シュライヤはそう叫んでサンジに剣を振り下ろした。

「!!サンジ、危ないっ!!」

ゾロは剣を捨て、とっさにサンジを抱いてシュライヤの剣に背を向ける。

その瞬間、まばゆい光のオーラが抱き合った二人を優しく包み込む。

「?!!!!!」

シュライヤは、瞳の前の光景に瞳を疑うように凝視し、その剣先を留めた。












「ええい、止めた!止めた!! 全く、そんなに見せつけられては、闘う気も削がれ

る。 ・・・・・仕方がない。 この勝負、サンジに免じて、不戦勝にしてやる・・・。 

命拾いしたな、ロロノア・・・。 ありがたく思え。 ・・・・サンジ、腹が減ったぞ。 さっ

さと支度せよ。 じぃ、じぃはおるか! 国にすぐに連絡を!!」

シュライヤは剣を収めるとそう言って、何事もなかったかのように玄関のドアを開けた。

「殿下・・・・。」

「シュライヤ・・・・・ありがとう・・・。」

ゾロとサンジは互いにシュライヤの背中に、そう呟く。

「さっ、俺達も家に帰ろう。」

「ああ。」

サンジに腕を引っ張られ、ゾロはサンジと共に家へ向かった。

「なんだ・・・。 決闘も無しかよ・・・。 見物だったのにな・・・。」

「「勝手に見せ物にすんじゃねえよ!! ったく・・・。」」

残念そうに呟くシャンクスの言葉にゾロとサンジは振り向いてそうツッコミを入れ、バタンと玄

関を閉める。

それを見たシャンクスとベンは、慌てて玄関に急いだ。

「あっ、おい、ちょっと、待てよ・・。 せっかく遊びに来てやったのに・・・。 なあ、サン

ジ、今日の夕食何にするんだ? 俺、ローストビーフが良いなvv 俺、サンジの作る

飯、大好きなんだよなぁ・・・。」

「知るかよ、んなもん!!」

「・・・・・すまんな、ロロノア・・・。」

シャンクスとベンはそう言いながら、我が物顔でロロノア家のリビングに入っていった。








<next>     <back>




<コメント>

はぁ〜vv やっと終わりを迎えます・・・。
書き出すと、長いよね・・・これ。(-_-;)
別に出さなくても良いんだけどさっvv
シャンクスとベンvv 出しちゃいましたvv
大好っっっっっっきなのさvv この二人。
けど、ルナ的には、シャンクスがあの後、
何処に電話してたのかが、非常に気になるところ・・・。(笑)
ハイ、ラスト1ページ!! いくぜ!!(何処へ?・笑)