世界で一つだけの・・・。



その4.







「ちぃち〜・・・・ちち〜・・・・ろこぉ〜・・・・。」

「シュライヤ〜。 どこだーっ!!」

サンジとラピスは、家から駅までの周辺を探し回る。

「・・・・本当に、手間が掛かる王子だな・・・。」

ラピスを抱き抱えながら、周囲を見渡すサンジの瞳に、シュライヤの衣装が瞳に映った。

駅の前の広場の階段で座り込んでいるシュライヤ・・・。

「あっ、いた! シュ・・・」

「シュライヤ・アル・ラ・シーラ・ド・ソディアック殿下!!」

サンジが、シュライヤに呼びかけようとした時、突然、そう叫んで数人の人々が、シュライヤ

の前に跪いた。

「・・・・・なんだ、お前達は?」

「わ、私達は、ソディアック王国の者達です。 たまたま、観光に来ておりました。

ま、まさか、このような場所で殿下とお逢いできるなんて・・・。 ところで、殿下。 

お付きの方々は、如何されたのですか?」

「ん・・・・少々訳有りでな・・・。」

「そうなのですか・・・。 しかし、このような異国で・・・しかも、このように間近に拝

顔、お声まで掛けていただけるとは・・・。 この感激、生涯忘れませぬ・・・。 今日

は、人生で最良の記念すべき日になりました。」

その人達は、シュライヤの前にひれ伏し、涙を流さんばかりに感動を身体で表現していた。

「うむ、そうか。 では・・・。」

シュライヤは、その人々ににっこりと微笑み掛け、腰の剣を抜く。

「ソディアック王国王子シュライヤ・アル・ラ・シーラ・ド・ソディアックの名において、

その方達の旅の安全を約束するぞ・・・。」

シュライヤは、剣をその人々の肩に置いて、そう宣言した。

「はは〜・・・。 ありがたき幸せ・・・。 光栄でございまする。 シュライヤ・アル・ラ・

シーラ・ド・ソディアック王子に未来永劫の栄光と崇拝を・・・!!」

その人々は、そう言って地面に3度頭を擦りつけるようにお辞儀をし、感激にむせび泣きなが

らその場を去っていった。




はぁ〜・・・。

まさに、あの人達には、シュライヤは、『生き神様』そのものなんだろうな・・・。




サンジは、その人達とシュライヤとのやりとりを見てそう思った。

「ちぃち〜・・・!!」

ラピスがシュライヤを見つけて、サンジから降りるとそう言ってシュライヤに駆け寄る。

「おお、ラピスか・・・。」

シュライヤは、駆け寄ってきたラピスににっこりと笑うとその身体を抱き上げた。

「おっす! ナコーさん、心配してたぜ・・・。 帰るぞ・・・。 さっきの人達は、王国

の?」

サンジもそう言ってシュライヤの元に歩み寄る。

「うむ。 観光できていたと申しておった。 ・・・・良いな、あの者達は・・・。 ・・・・・・

どこまでも、自由だ・・・。」

シュライヤはそう言ってサンジににっこりと微笑み掛ける。




・・・・・・本当に、優しい顔で笑うんだな・・・。

ゾロとは全然違うけど・・・・嫌いじゃねえ・・・。

・・・・・・憎めない奴だよな・・・。




「・・・・・なんか見てて、納得した。 生まれてからずっと、あんな風に崇め奉られて育

ってきたんだよな・・・。 シュライヤが、タカビーになるのも仕方ねえな・・・。」

「ふん。 タカビーではない。 気高いと言え、気高いと・・・。 ・・・・一人になって道

行く人々を眺めて・・・私なりに考えた。 少し、サンジの言ったことが解るような気が

する。 『虎穴にいらずんば虎児を得ず』と言う諺もある。 私も、サンジの育ったこの

国に、慣れ親しみたいと思う。 私なりに、努力しようと・・・。」

「・・・・シュライヤ・・・。 その諺は、ちょっと違うと・・・。」

「まあ、聞け。 この私に、あのような意見を申したのは、サンジ、そなたが初めてだ

ったぞ。」

「ククク・・・・嫌になったか? そうそう、俺みたいな奴には、后なんか・・・・」

「いや? 私は・・・・私の命令にただ従うだけの者より、自分の意見を正直に言える

人間の方が良い。 ・・・・・・サンジに出逢えて、そう思った。 やはり、そなたに傍に

いて欲しい・・・・そう思った。」

「・・・・ふ〜ん・・・。」

シュライヤの優しい真摯な瞳に見つめられ、サンジは、少しドキリとする。

「あ、あのさ、ソディアック王国って、どんなとこだ?」

サンジは、話題を変えようとそう聞いた。

「いわゆる『秘境』と言われるところにある小さな国だ。 数年前までは国交さえない

ほどの小さな・・・。 幾重にも連なる高き山々に囲まれ、神秘なる生命の源の湖を持

ち、大地の守り深き国・・・。 国民は皆、純朴で礼儀正しく、慈愛に満ち、誇り高い

民族だ。」

「・・・そうか。 シュライヤは、本当に自分の国が好きなんだな・・・。」

「当たり前だ。 大いなる慈悲と真実なる心を持ち、国民に、常に自由と繁栄と平穏

の日々約束し、守るのが、王たる者のつとめ。 私の義務なのだ。」

シュライヤは、サンジの言葉にそう言って胸を張る。

「クスッ。 ・・・・なんか、今の台詞は『格好良かった』ぜ? さっすが、王子様、だ

な。」

サンジは、そう言ってにっこりと笑った。

「そ、そうか・・・。」

「おっ、照れてんのか??」

「そ、そうではない・・・。」

「ククク・・・照れない、照れない・・。」

「ち、違うぞ!サンジ、断じて、私は・・・。」

「クク・・・ハイハイ、そういうことにしとくか・・。」

「サンジ!!」

シュライヤとサンジは笑い合いながら、そう会話して家に帰った。










「ただいま〜。 今帰ったぞ・・・。」

「お帰りなさい、ゾロvv お疲れさま。」

「ローたん・・・かえり・・・ちゃい。」

「待ちかねておったぞ、ロロノア・・・。」

玄関で聞こえたゾロの言葉に、サンジとラピスとシュライヤはそう言って出迎える。

「ん? ・・・・どうしたんですか?殿下。 その格好は・・・。」

ゾロは、サンジに鞄を渡しながら、シュライヤの格好に驚いた。

「あ、いや・・・。 サンジの勧めもあってな。 ロロノアと同じ服装に着替えてみた。

民族衣装ばかりでもつまらぬし・・・。」

「えへへ・・。 俺のでも良かったんだけど、サイズがね。 っで、ゾロのにしたんだ。 

結構似合ってるだろ?シュライヤも・・・。 俺の見立てが良いからな〜。」

「ちち〜・・・にあう〜・・・ちち〜・・・。」

「ふふふ・・・愛い奴め・・・。」

シュライヤもサンジもラピスも皆そう言って、互いに、にこにこして笑っている。

その微笑ましい状況に、ゾロは一人疎外感を隠せない。

「ええ、結構似合ってますよ、殿下・・・。 サンジ、飯・・・。」

ゾロは、素っ気なくそう言ってリビングに向かう。

「あっ、はいはい。 ちょっと待ってて。 今すぐ、用意するから・・・。」

ゾロの言葉に、サンジは、慌てて夕食を用意した。

「・・・・でさぁ・・・ゾロ? なぁ、ゾロ、聞いてる??」

「あ、ああ、なんだ、サンジ・・・。」

ゾロは、先程の微笑ましい光景が忘れられずにボーっとしていた。

「もう、話、聞いてなかったな。 シュライヤがな、色々と街を見てみたいんだと。 

明日、ゾロも、会社休みだろ? だから皆で・・・」

「悪い、明日も、レセプション入ってて・・・休みじゃないんだ。」

「ちぇっ。 なんだ、つまんねえ。 仕方ないなぁ。 じゃあ、俺達だけで行くか・・・。 

んじゃさ、シュライヤ、どんなとこ見てみたい??」

「サンジの行きたいところで良いぞ。」

「そうだなぁ・・・じゃあ・・・」

サンジはゾロの言葉にそう言って、シュライヤと楽しそうに談笑し始める。

そんなサンジの姿を見て、ゾロの胸にチリッと焼けつくような痛みが走った。

しかし、相手は重要な取引先・・・・面と向かって文句を言うわけにはいかない。

ましてや、たかがこれくらいのことでやきもちを妬いていることをサンジには、知られたくなか

った。

「ご馳走様・・・。 俺、明日の資料作らなきゃならないから、先に部屋に入ってる。」

ゾロは、早々に食事を切り上げて自分の書斎に向かう。

「おう、じゃあ、後で、コーヒー持っていくから・・・。」

サンジはそれだけ言うと、またシュライヤ達と談笑し始めた。








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<コメント>

ゾロVSシュライヤvv 好きさっ!!
ゾロの胸中はかなり複雑・・・。
そんなゾロを気にもせずときめきモードのサンジ君・・・。
はてさて、どうなることやら・・・。(笑)