世界で一つだけの・・・。



その3.







「若ッ!! 若の無謀さにはこのじぃ、心臓が止まる思いをしましたぞ。 全く、ロロノ

ア殿より連絡を受けたとき、どんなにびっくりしたことか・・・。 まさか、供も付けず

に、このようなところにたった御一人で来られようとは・・・。 やんちゃにも程がありま

する! 万が一、若の身に何事かありましたら・・・・先代からお仕えしているこのじぃ

は・・・このじぃは・・・・うっ・・うっ・・・。」

シュライヤの前に傅くナコーはそう言って泣き伏す。

「ああ・・・・すまぬ、じぃ・・・。 心配を掛けた・・・。」

シュライヤはそう言ってばつが悪そうな顔をした。

「ええーーーっ?! じゃあ、シュライヤって・・・・本物の王子だったのか?!」

「如何にも・・・。 古来より、朱雀の末裔と言われる我がソディアック王国王家は、

代々生き神様として、国民に絶大なる忠誠と崇拝を得ておられ、ここにおわします

シュライヤ・アル・ラ・シーラ・ド・ソディアック殿下は、御年18歳・・・。 次代の王座

につかれるべくしてお生まれになられたただ唯一の御嫡子なのです。」

サンジの驚きの言葉に、ナコーはどんと胸を張ってそう説明する。

「あ・・・・・そ、そうなんだ・・・。 凄いんだな・・・。」

ナコーの迫力に押され、サンジは引き気味にそうボソリと返事した。

「時に、ロロノア。 そなた、私にサンジを譲れ・・・。 良いな・・・。」

シュライヤは、ソファーに寝そべったままの格好で、ゾロに向かってそう言う。

「はぁ?? ちょっと、待て!! あれは、冗談じゃないのかよ!!」

シュライヤの言葉に、サンジは慌てて、そう叫んだ。

「フッ。 私は、冗談など言わぬ。 これは、運命なのだ。 我が血族は、代々、王と

なる者のみに与えられた特殊な能力が備わっている。 『気』(オーラ)を見るのもそ

の能力の一片。 白きオーラを纏う者は、神の巡り合わせにより、王たる者の后とな

り、その国に繁栄と栄光をもたらすという。 夢が、私のその者の出現・・・・出逢いが

近いことを告げ・・・。 そして、私達は、出逢ったのだ。 『白き清浄なるオーラの者』

、サンジこそ、我が后にふさわしく、神が私に与えたもうた者なのだ。」

シュライヤは、そう言いきってサンジをじっと見つめた。

シュライヤの視線を感じ、サンジは、ゾロの袖をギュッと掴んだ。

「・・・・・お言葉を返すようですが。 サンジは、すでに私と結婚している身・・・。

その申し出は、いくら殿下と言えども受けかねます。」

ゾロは、シュライヤの言葉に、そう返事を返す。

「なに?! ・・・・断るというのか?」

シュライヤは、ゾロの返事に思わず身体を起こした。

「当ったり前だろっ!! だいたいなぁ、たった一人大事な后を決めるのに、オーラと

かで決めて良いのかよ! そもそも、結婚はしたが俺は、れっきとした男だ。」

ゾロの横で話を聞いていたサンジは、そう言ってシュライヤを睨み付ける。

「別に、后は、一人とは限らんぞ。 父上は、6人の后を娶っておる。 王は、何人で

も、后を娶って良いのだ。 ちなみに、私は、まだ一人も娶っていないがな・・・。 

それに、男であろうと、結婚し、子供もいるではないか。 何の問題もない。」

シュライヤは、サンジを見てにっこりと笑うとそう反論した。

「だったら、尚更、俺じゃなくて他の白いオーラを持つ奴を后にすればいいだろう?

探せば、どっかに必ずいるさ。」

「それは、ならぬ! そなたには、特別な何かを感じたのだ。 私の直感に間違いは

ない!! これは、運命なのだ。」

「俺は、全然そんなの感じねえよ!! 誰が何と言おうと、俺の旦那様は、ゾロだけ

なの! ゾロ以外と結ばれるなんて、絶対に有り得ねえ!!」

サンジは、そう言ってギュッとゾロの腕にしがみつく。

「ふん・・。 それは、そなたが、私を良く知らぬからだ。 よしっ! 決めた!! 暫く

ここに滞在するぞ・・・。 ・・・サンジ、そなたも私を知れば、必ず、ロロノアより私を選

ぶであろう・・・。」

「わ、若ッ!!」

シュライヤの言葉に、ナコーは真っ青になってそう叫んだ。

「っざけんな!! 誰がてめえなんかと一緒にっ!!」

サンジも慌てて口を挟む。

しかし、シュライヤは、サンジの言葉を無視して言葉を発した。

「じぃ、そうと決まれば、他の者は国に帰らせよ。 それから、国にいる父上にもその

旨をお伝えせよ。」

「若ッ!! お戯れにも程がありますぞ! 貴方様は・・・」

「黙れ!じぃ! ならば、私は、身分を放棄し、王位も継がぬぞ! それでも良いの

かっ!」

「若ッ!!」

「私は、本気だ・・・。」

「う゛っ・・・・。 ・・・・・・仰せの通りに・・・。」

結局、ナコーはシュライヤに押し切られる形で命令に従った。

「・・・・と言うわけで、今日より、私とそなたは『恋敵』(ライバル)だ。 覚悟しておけ

よ、ロロノア・・・。」

シュライヤは、自信満々でゾロにそう言いきる。

「・・・・・・もしもし・・・? 俺の話・・・聞いてる・・・? なぁ・・。」

サンジは、予想も付かない方向へと進んだ話に呆然とし、頭を抱えた。













「全く・・・・何の因果で、一国の王子と一緒に暮らさなきゃならねえんだ・・・。 

ゾロの周りって変な奴多くねえ?」

「まっ、そう言うな。 ああ見えて、人は良いんだぜ、あの王子。 多少のことは目を

瞑ってやってくれよ。 シャンクスからも頼まれてるしさ・・・。」

「ん・・・。 ゾロがそう言うなら、そうしてやるけど・・・。 ・・・・・暫くは、コレで我慢だ

な・・・。」

サンジは、そう言ってゾロの唇に触れる。

「・・・・・なるべく早く帰って貰おう・・・。」

ゾロは、そう言って苦笑すると、今度は自分からサンジの唇を軽く塞いだ。






翌日・・・・。

「すみませんな、サンジ殿・・・。 王子のいる場所には、この国旗を御印として立て

ておかねばならないのです。」

「はぁ・・・。」

ナコーの言葉に、サンジは、屋根に取り付けられた風にはためく国旗をじっと見つめ、それか

らシュライヤに視線を移す。

「ラピス・・・私は、庭で、象をペットで飼っているんだぞ。 その他に、らくだや孔雀な

ども、飼っておる。」

「ぞお?? くぢゃ・・く?? らくら?? ・・・・・・・サーしゃん、ラピも・・・ぞおたん、

ほちぃ〜!! ねぇ〜、ぞおたん、かお〜・・・。」

「いや、それはね・・・。 ここじゃ・・・・はぁ・・・。」

そう言うラピスのおねだり攻撃に閉口するサンジであった。

「・・・・この家は、召使いも雇えぬ程、貧しいのか?」

キッチンでサンジが食事の用意をしていると、そう言ってシュライヤが側に来た。

「・・・・別にぃ。 好きな人の世話は、自分でしたいから・・・。」

「おお、そうか。 では、サンジ。 喉が渇いた。 飲み物をもて・・・。」

サンジの言葉にシュライヤは、にこにこ顔でそう言う。

「あのなぁ・・・王子・・・。」

「サンジ、そなたには、特別に『シュライヤ』と呼ぶことを許してやろう・・・。」

「じゃあ、シュライヤ・・・。 ・・・・・・もう、良い。 ・・・・・・オレンジジュースで良い

か・・・?」

そのあまりの無邪気さに、文句を言う気力も削がれ、サンジは言われるままに飲み物を

シュライヤに手渡した。

「サンジ! サンジ!」

「ハイハイ、今度はなんだよ・・・。」

シュライヤに呼ばれ、サンジは部屋に駆けつける。

「サンジ・・・そなたへのプレゼントだ。 受け取れ・・・。」

そこには、金銀の宝飾品が山積みされていた。

「・・・・・・・・・こんなのいらねえよ。」

「気に入らぬのか? では、欲しいモノを申してみよ。 そなたには、ロロノアが一生

掛かっても出来ないほどの贅沢を・・・・私なら、させてやれるぞ。 サンジ・・・。」

「・・・・そうじゃねえんだよ・・・。 ったく、どう言えばわかんだよ・・・。」

ニコニコ顔でサンジに接するシュライヤにサンジは、ほとほと参っていた。

所詮、王子は王子・・・下々の常識などわかるはずもない。

「サンジ! サンジ!」

「何だよ、今度は・・・。 どうせ大した用じゃねえんだろ? 俺は、忙しいんだ。 後に

してくれ・・・。」

洗濯物を取り込みながら、サンジはそう言ってシュライヤの言葉を無視することにした。

「サンジ!! 私が呼んだら、すぐに来るのだ!! 何事に於いても、私を最優先し

ろっ! これは、王子としての命令だっ!!」

シュライヤは、一向に来ないサンジに痺れを切らし、自分からサンジの側に来るとそう言って

怒鳴る。

それまで、ゾロのためにと必死で我慢していたサンジは、その言いぐさにプチンとキレた。

「王子だかなんだか知らねえが・・・俺は、ソディアックの国民じゃねえ! てめえの

言うことを一々聞いてられるかってんだ! ゾロの取引先だからって我慢してりゃいい

気になりやがって・・・。 だいたい、王子ってだけで甘やかされ放題で育ってきたん

だろうけどな・・・ここは、日本だっ!! 国じゃ『生き神様』かも知れねえが、ここじゃ

『ただの人』なんだよ!!」

サンジは、日頃の鬱憤を晴らすかのようにそう捲し立てる。

スッと、シュライヤの表情が険しく変わった。

「この・・・・無礼者めがーーっ!! この私にそのような口を利くとは・・・。 いくら白

いオーラを身に纏う者であったとしても容赦せぬ!! 手討ちにいたすーーっ!!」

シュライヤは、怒りを露わにしてサンジに抜刀する。

「お、お待ち下さい!若ッ!!」

ナコーが慌ててサンジの前に飛び出してきた。

「そこを退け!じぃ!!」

「退きませぬ!! なにとぞ、気をお鎮め下さいませ。 サンジ殿も、口が過ぎます

ぞ。 さっ、若にお謝り下さい。 私も一緒に謝ります故・・・さっ、早く・・・。」

ナコーは、必死でサンジを庇う。

「嫌だっ!! 確かに、口は悪かったかも知れねえけど・・・。 傲慢な我が儘王子な

んて格好悪い!! 最低だっ!!」

「この・・・・・退け!!じぃ・・!!!」

サンジの言葉に、シュライヤはナコーと突き飛ばし、剣をサンジの頭上に振り上げた。




・・・・・・ごめん。 ゾロ・・・俺・・・・・。

ラピス・・・先に逝くサーしゃんを許せ・・・。




「・・・・・・・・・・。」

サンジは、無言で瞳を閉じる。

しかし、予想していた痛みは、いつまで経っても訪れることはなかった。

「????・・・・・?」

サンジは、恐る恐る瞳を開ける。

「ふん・・・。 本気で斬る訳無いだろう・・・。愚か者が!!」

そこには、剣を寸前で留めているシュライヤの姿があった。

「本当に、お前は、この私に望まれながら拒否したのみに関わらず、無礼な暴言の数

々・・・許し難い奴だ!! 私は、どのような地にあろうとも、唯一無二の存在、この

世界の『絶対』なのだ!! そして・・・一番許せないのは・・・この私を最低だと・・・

格好悪いと侮辱したことだっ!! サンジ!!お前の目は節穴だ!!」

シュライヤはそう言って、家を出ていく。

心なしかシュライヤの頬は赤みが差していた。




・・・・・あいつ・・・・・格好悪いと、俺が言ったことを気にしたのか?

・・・・・なんだ、結構可愛いとこあるじゃんか・・・。




「ククク・・・あいつ、可笑しい・・・。」

危うく殺されそうになったというのに、サンジは、なんだかシュライヤの態度が可笑しくてそう

言って笑った。

「・・・・・サーしゃん・・・? じぃ・・・・どちたの・・・?」

ラピスがそう言ってサンジの洋服を引っ張る。

「ハッ、そうだ! ナコーさん?! しっかりして!! ナコーさん・・・?!」

サンジは、気絶していたナコーをそう言って揺さぶった。

「え・・あ・・・。 若はっ?! 若は、如何なされた?!」

気が付いたナコーは、そう言ってシュライヤの姿を目で探す。

「あ・・・・・出ていったみたい・・・。」

「で、では、急いでお探ししなければ・・・。」

サンジの言葉にナコーはフラフラと立ち上がり、玄関に向かう。

「わかった、わかったから・・。 そんな身体じゃ無理だ。 俺達で探してくるから・・・。

ナコーさんは、部屋で休んでて・・・。」

サンジは、慌ててナコーを引き留めると、ラピスを抱えてシュライヤを探しに家を出た。 









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<コメント>

良きにはからえ・・・の心境。(笑)
長いなぁ・・・。 後どれくらいで終わるかなぁ・・・。(-_-;)
コメントも・・・・あは・・・。
では★