「すいません。 家族の者ですが、デザイナーのロロノアを呼び出して貰えません
か? 急用なんです。」「はい、かしこまりました。 少々お待ち下さい。」
俺は、あるオフィスビルの受付で、お袋を呼びだした。
第三の関門・・・それは、俺のお袋だ。
あの人に限って、反対することはねえとは思うんだが、事情が事情だしな・・・
「今、こちらにいらしゃるそうです。」
受付嬢が、そう言って、5分もしねえうちに、お袋はやってきた。
「あらっ、ゾロ。 どうしたの? 珍しいじゃない。 あなたから、私を訪ねてくるなん
て・・・ ここじゃ、話できないわね。 いいわ、26階の私のオフィスに行きましょう。」
そう言って、俺は、お袋と一緒に26階に向かった。
「さあ、何。 何かあるんでしょ?」
お袋は、目を輝かせて、俺の話を促した。
「実は、俺、結婚したい奴が出来た。」
「ええっ!! 誰?誰? 私の知ってる子? もしかして、あんた、子供が出来たって
言うんじゃ・・・」
「・・・できた・・・」
「きゃあっv で、相手は誰? ナミちゃん? それとも、クイナちゃん? 意表をつい
てビビちゃんとか・・・お母さんは、やっぱり、ナミちゃんとか良いと思うわよ。 なんて
ったって、あの経済観念が素晴らしいわ。 是非、家の会社に入って貰いたいのよ
ね・・・」
お袋は、案の定、一人で舞い上がって話を作っていく。
「・・・あのなあ・・・勝手に話、作んなよ。 今話すから・・・俺の結婚する奴は、サン
ジだ。 子供も、サンジが出来た。 話は、それだけだ。 じゃ、俺、帰るから・・・」
俺は、それだけ言うと、席を立った。
「・・・ちょっと、待ちなさいよ、ゾロ。 サンジって、あのサンジ君? あの子、男の子
じゃなかったけ? それで、何で、子供が出来るの? ちょっと、ちゃんと、順を追っ
て、母さんに解るように話してみてよ。」
お袋は俺の腕を掴んで、無理矢理に席に着かせる。
俺は、今までのことを順を追って話して聞かせた。
「ふ〜ん。 そうだったの・・・じゃあ、サンジ君が、あなたのお嫁さんになるのね?
良かったじゃない、初恋の人と結ばれるなんて、そんなこと、今時、ないわよ。
おまけに子供まで出来るなんて、これって、もう、神様に祝福して貰ってる証拠じゃな
い・・・ っで、結婚式は、いつするつもりなの? 今4ヶ月だから、安定期に入る6、7
ヶ月がちょうど良いわね・・・あっ、そうそう、日本じゃ、まだ同姓同士の結婚って認め
られてないから、式は、海外が良いわね。 アムステルダムなんかどうかしら?
オランダって、確か、同姓の結婚を認めてたわよね・・・ウェディングドレスは、まかせ
といてね。 腕によりをかけて、サンジ君のためにデザインするわ。 あの子、色が白
いし、綺麗だから、きっと、似合うわよ・・・そうそう、あちらの家にも、ご挨拶に行かな
きゃね・・・いつが良いかしら・・・今度の大安なんてどうかしら・・・ゾロ、ちゃんと向こ
うのお父様に、話し通しといてね・・・ええっと、それから・・・結婚式場は・・・招待客と
か何人ぐらい呼べばいいのかしら・・・ああっ、お母さん、とっても嬉しいわ。 あんな
可愛くて綺麗な子が息子になるのよね・・・赤ちゃんも、あの子に似ていたら、それは
もう可愛いに決まってるし・・・ベビー用品もデザインしないと・・・ああ、もう、こんなと
ころにいる場合じゃないわ!! ゾロ、じゃあ、母さん、暫く家に帰らずに、こっちでデ
ザイン考えるから・・・それと、式場とか、母さん、色々とあたっとくからね。 じゃあ、
気を付けて帰るのよ、ああ、忙しい・・・」
お袋は、一方的に話しまくって、さっさといなくなった。
これだから、話したくなかったんだ・・・
あの人、昔から、何かある度に大騒ぎして・・・はあ・・・
とりあえず、サンジと結婚するのは、反対してなかったみてえだし・・・
これで良しとするか・・・
何か、気が重いなあ・・・
でも、何で、お袋、俺の初恋が、サンジだって知ってるんだろ??
なんでだ?
俺は、とりあえず、第三関門を突破した。
それから俺は、サンジの待つ家へと戻った。
俺が、サンジの家に着いたとき、サンジは、まだ眠っていた。
やはり、かなり無理していたのだろう。
それに、今日は、精神的ににも色々とありすぎた。
俺は、サンジの髪を鋤きながら、今日一日を振り返る。
本当に、色々ありすぎて・・・
・・・でも、皆、祝福してくれた・・・
俺達は、恵まれてんだなあ・・・
あながち、あの泉の伝説は、嘘じゃねえのかもしれねえ。
結果的に、俺とサンジは、結婚することになったのだから・・・
「ロロノア・・・ちょっと良いか・・・」
いつの間にかゼフが帰ってきてて、俺は、リビングに呼び出された。
「今日のこと・・・俺は、心底驚いた。 いや、今更反対する気はさらさらねえ・・・
ただ、学生同士で、早すぎるんじゃねえかって、最初、怒鳴りつけようと思ったんだ。
おまけに、子供が出来た、だろ? それで驚かねえ親が何処にいる。 ましてや、サ
ンジはれっきとした、男だぜ。 男に子供が出来るなんて誰が想像する、よ。 俺は
正直言って、てめえを蹴り倒そうと思った。 ・・・でもよ・・・サンジの奴が、サンジの
奴が、あんなに怯えた瞳で俺のこと見てたんだ。 きっと、俺がキレるって、思ってや
がったんだな・・・ ただでさえ、最近、具合が良くなかったんだ。 あの場面で、俺が
キレてたら、サンジは、どんなに心を痛めるだろうってな。 俺は、あいつの泣き顔
は、苦手なんだよ・・・ わかってくれるか・・・ロロノアよ。」
「・・・わかりました。」
「わかったら、絶対、サンジを泣かすことだけは、するんじゃねえぞ。 ところで、てめ
え、大学止めて、本当に働くつもりなのか? だったら、やめときな。って素直に聞く
たまでもねえか・・・ これは、俺が結婚を認める条件として聞いて欲しい。 まず、て
めえは、ここに就職してくれ。 ここの会社は、今急成長しているところで、会長は、
俺のダチだ。 今日、たまたま、お前の話をしたら、会長が是非に、てめえに来て欲し
いんだと。 あと、住居は、ここから、半径3キロ内にしろ。 てめえが留守の時に何
かあっても、すぐ、駆けつけられるように。 この2つが、俺の条件だ。」
「・・・感謝します。」
俺は、それだけ言うのがやっとだった。
この人は、本当に、サンジのことを愛していて・・・
俺なんか、太刀打ちできねえ位、強い人だよな・・・
本当に、俺達は、すごい人に守られてるんだな・・・
俺は、ゼフの愛情の深さに感動した。
「・・・でよ。 今日、てめえの母親から電話あったぞ。 なんでも、あさって、挨拶に来
るとか何とか。 その時に、結婚式の日取りとか決めるって言ってた様な・・・ 何か、
ガーッと、話されてよ、後は良くわかんなかったんだが・・・ あさって、来るのか?
じゃあ、店、予約しとくか。」
ゼフは、俺にそう言った。
「・・・すみません。 お袋、言い出したらきかないもんで・・・」
俺は、すごくばつが悪くて、ゼフに頭を下げた。
もう・・・お袋の奴・・・一人で突っ走るんだから・・・
もっと静かに愛情を注いでくれよ・・・
俺は、ハア〜と、ため息を吐いた。
「まあ、いい人じゃねえか、明るくて・・・ それより、今日はどうするんだ? 家、泊ま
っていくか?」
「ああ、じゃあ、そうさせてもらいます。」
俺は、ゼフの申し出を喜んで受けた。
「じゃあ、サンジの部屋の隣、空いてるから、使って良いぞ。 じゃあ、明日の仕込み
で、店に戻るから・・・」
ゼフはそう言うと、店に出かけた。
それから、翌々日。
俺達は、『バラティエ』で、両家の初顔合わせをして、俺のお袋が取り仕切る中、アッという
間に、ウェディングプランができあがった。
結婚式は、俺の誕生日の11月11日。
場所は、オランダ、アムステルダム。
披露宴では、ゼフとピエールが腕を振るうことになった。
現地へは、飛行機をチャーターして、皆で、行くことになった。
もちろん、師匠、クイナ、ルフィ、ウソップ、ナミ、エース達も一緒に出席して貰うことにした。
当然、チョッパーと主治医も一緒だ。
俺達は、『バラティエ』と、ゼフの家から、2キロ離れたところに新居を構えた。
俺は9月から、ゼフの友人の会社に、就職した。
とてもユニークなシステムの会社で、俺には、ぴったりの会社だった。
俺達は、多くの人たちに見守られて、日々を過ごした。
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そして、今日・・・
親しい友人・知人、多くの人に祝福されて・・・・
俺達の結婚式が執り行われる。
俺は、白いタキシードに身を包み、緊張して、あいつがやってくるのを待っている。
もうすぐ、あいつがやってくる。
ほらっ、足音が聞こえる・・・もうすぐ・・・
ここが、俺達の新しいスタートライン・・・
<END>
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