それから、俺達は、サンジが作った弁当を、二人と一匹で、仲良く食べた。
久しぶりに食べたサンジの料理は、以前と全然変わってなかった。「・・・卵焼き・・・甘くなかったか?」
そう言って、俺にお茶を注ぐサンジ。
こう言うとき、サンジは、決まって自信がないものの感想を俺に聞いてくる。
「別に、このくらいでちょうど良いんじゃないか? 俺はこのくらいの方が好きだぞ。
美味かった。 ごちそうさん。」
俺がそう言ってやると、サンジは、にっこりと笑った。
「そっか。 良かった。」
この顔を見るためなら、俺は、どんな不味い物でも、食ってやる自信がある。
・・・でも、サンジの料理は、本当に美味いよな・・・
ホント、ずっと食っていたいよな・・・
俺は、サンジの笑う顔を見ながら、遠い未来を夢見た。
またこうやってサンジと海に来て・・・
その時に一緒に来るのは、さんじじゃなくて、サンジによく似た俺達の子供・・・
仲良く、手を繋いで海辺を走って・・・
サンジの作った弁当を仲良く三人で食べる・・・
・・・そんな未来が・・・
「おい! ゾロ! ゾロって!! ゾロ!!」
ゲシッ!!
サンジの右足が、俺の後頭部を襲った。
「痛ってえ・・・何すんだよ、サンジ・・・」
俺は、突然の衝撃に顔をしかめて、頭をさすった。
「・・・てめえ・・・本当に、大丈夫か? 今、どっか、違うとこに、ぶっ飛んでたろ・・・
てめえも、一回、病院で、精密検査して貰った方が良いぞ。 でも、てめえ、何考えて
たんだ? すっげえ、幸せそうな顔してたぞ、ん?」
サンジは、ニコニコして、俺にそう言った。
そ、そんなこと・・・言える訳ねえ・・・
あ〜、俺は、何て事考えてんだ・・・
あんな恥ずかしいこと・・・
・・・終わったな・・・俺・・・
あんまり、そんなに、見ないで欲しい・・・
俺は、照れくさくなって、サンジの身体を自分の胸にぐいっと引き寄せる。
「・・・お前のこと・・・考えてたんだ・・・」
そう言って、抱きしめる腕に力を込めた。
++++++++++++++++++
サンジは、10月中旬になると、大学に行けるようになった。
もう、すっかり、元通りだ。
俺もまた、寮を出て、自分の家に戻った。
・・・だが、現実は、厳しい・・・
俺は、2年生、しかし、サンジは、1年生のままだった。
もう、同じ講義を受けることは出来ない。
俺の方も、大学をさぼっていたつけがたまってて、単位を落とさないようにするので、精一杯
だった。
それでも、お昼休みだけは、必ず、サンジの弁当を二人で仲良く食べた。
俺は、この時間を過ごすためだけに大学に来ていると言っても過言ではない。
・・・しかし・・・
講義が全て済んだら、サンジは、すぐに店に帰る。
なんでも、外国から、ゼフの親友の凄い料理人が来てて、料理を教わったり、前以上に繁盛
している『バラティエ』の手伝いで、色々と大変らしい。
俺も、大会が近くなって、その稽古に追われたり、後輩の指導をしたりして、俺達は、ゆっく
り会う暇がなくなった。
11月11日・・・実は、今日は、俺の誕生日だ。
いや、それも、もう後、30分で終わる。
時計は、今、23時30分・・・
いつもと同じ様に大学でサンジと別れて、俺は、剣道部の先輩達に無理矢理のみに誘われ
て、この時間に家に帰ってきた。
ん?! 玄関のポストに何か挟んである。
俺は、その紙を手に取った。
『HAPPY BIRTHDAY ゾロ。』
そう書かれている字は、紛れもなくサンジの字。
あいつ・・・知ってたんだ・・・俺の誕生日。
俺、一度も言ったことなんか無かったのに。
・・・すっげえ、すっげえ嬉しい。
俺、サンジに、今すぐ、会いてえ・・・
俺は、その紙を大事にポケットにしまい込んで、サンジの家に向かった。
絶対に、今日中に、サンジに会う!
俺は、全速力で走った。
途中の赤信号が、やけに遅く感じて、俺は、焦る。
・・・あと20分・・・
ふと、信号を待つ俺の瞳に、何かが映った。
向こう側で信号待ちをしている人混みに、見慣れた金色の髪。
「サンジーっ!!」
気がついたら、俺は叫んでいた。
金色の髪が、振り返って・・・
俺達は、走り出した。
互いの距離を縮めるために・・・
俺達は、雑踏の中で、互いの存在を確かめあった。
「・・・良かった。 今日は、もう、無理だと思ってた。 明日じゃ意味ねえもんな。
『ゾロ、誕生日、おめでとう!!』」
サンジは、そう言って、笑った。
「ありがとうな、サンジ。」
俺は嬉しくて、サンジを抱きしめる腕の力を込めた。
「あっ・・・でも・・・ごめん。 俺、プレゼント、何も用意してないんだ。 今日だって、店
終わったの凄く遅くて・・・本当に、ごめんな。」
サンジは、ばつが悪そうに、俯いた。
「いいや、俺は、これで、充分だ。」
そう言って、俺は、サンジの髪を掻き上げる。
「・・・ゾロ・・・」
サンジはそう呟いて、最高の笑顔を俺に向けた。
俺は、その顔に近づいて、サンジの唇をそっと奪った。
「ば、馬鹿。 こんなとこで、いきなり・・・////」
「プレゼント、くれるつもりだったんだろ? じゃあ、今、俺が一番欲しいもの・・・くれ
ねえか。」
俺は、サンジの耳元でそう囁いた。
「・・・わかった。 ッで、何が欲しいんだ? 俺、あんまり、お金持ってねえぞ。
高い物は勘弁な。」
「これ・・・」
俺は、サンジを指さす。
「へっ?! どれ??」
サンジは、俺の言ってる意味が解らないようで、俺が指さした自分の後ろをキョロキョロと探
した。
「・・・だから・・・てめえだよ!」
全く・・・相変わらずの激ニブ野郎だぜ。
俺は、サンジの髪をクシャッと触った。
「!!!・・・/////」
サンジは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
まずかったかな・・・やっぱ、早すぎたか。
でも、男なら、やっぱり、好きな奴のこと、抱きてえのは当然で・・・当然の・・・
!!!ちょ、ちょっと待て・・・サ、サンジも、男だよなあ・・・
って言うことは・・・サンジも俺と同じ事考えてても、不思議ねえよな・・・
ウガッ! って言うことは、俺・・・カマ掘られる??
それ、あり?か??
嫌だ・・・いくらサンジでも、俺・・・それは、嫌だ・・・考えたくもねえ・・・
サンジを抱きたいとは思うけど・・・掘られるのは・・・絶対に嫌だ。
じゃあ・・・サンジも・・・・・嫌だよ・・・な・・・
俺は、新たなる問題に直面した。
「・・・・・・わかった。 ・・・行こう。」
俺が、新たな問題に頭を抱えて、頭を悩ませていた頃、サンジは、急にそう言って、俺の腕
を掴んで、歩き出した。
「お、おい! サンジ。 どこにいくんだ?」
俺の問いかけにも、一言も返さず、サンジはどんどん歩いていく。
だんだん人通りの少ない道に入っていって、気がつけば、そこは、ラブホテル街だった。
サンジは、一番近いホテルの中にはいると、素早く部屋を選んで、部屋に入っていく。
その間、俺は、子供のように、ただ、サンジに腕を引っ張られ、ついて行くだけだった。
部屋に入って、サンジはやっと、俺の腕を放した。
「お、俺、こんなとこ、初めてなんだかんな。 ヤ、ヤルのも、初めてなんだから・・・
でも・・・俺、俺、ゾロに任せる・・・ で、でも・・・なるべく・・・痛く・・・
痛くしねえでくれ・・・よ・・・」
サンジはそう言って、震える指で、俺の身体を抱きしめる。
「!!・・・つまり・・・それって、俺が、ヤって良いって、ことか?」
俺は、思わず、思っていたことをそのまま口にした。
「・・・/////そんな、はっきり言うなよな・・・だって、てめえがさっき言った事って、
こう言うことなんだろ? ・・・それとも・・・違うのか?」
今度は、サンジが俺に聞いてきた。
全く、問題NOTHING!!
俺は、心の中で、叫んだ。
俺は、自分の考えが取り越し苦労になって、心底、ほっとした。
サンジの天然さに、心から感謝した。
「サンジッ!!」
俺は、サンジをガバッと抱き上げると、そのまま、ベッドの上に倒れ込んだ。
「あっ、ちょ、ちょっと、待てって。 なあ、ゾロ・・・ こういうとき、風呂に入るんじゃな
いのか? 俺、風呂入りてえ・・・」
サンジはそう言って、俺の身体を押しのけようとする。
まあ、それもいいか・・・
一緒に入るのも、良いよな・・・
俺の心はもう、あっちのことでいっぱいだ。
俺は、サンジから身体を離した。
サンジは、そそくさと風呂場に向かう。
俺は、サンジの後に続いて脱衣所に入った。
「うわっ!! てめえ、何しに来てんだよ! 俺は、今から風呂に入るんだよ。
なんで、てめえ・・・」
「なんだ、お前、知らねえのか? ラブホの風呂は、二人用にできてんだぞ。
だから、二人で入って良いんだぜ。」
俺は、ニヤリと笑ってサンジにそう言った。
「・・・そうなのか?って、俺、騙されねえぞ! ダメだ、今日は、俺一人で入るんだ!
ほらっ、さっさと出て行けよ。 出ていかねえんなら、俺が・・・」
「・・・わかったよ、サンジ。」
サンジがあまりに捲し立てるので、俺は、今日のところは、サンジの言うことを聞いてやるこ
とにした。
あいつ、確か、『今日は』って言ったよな・・・
それって、今度は、一緒に入っても良いって事か?
俺はそんなことを考えながら、ベッドに座って、備え付けの冷蔵庫から、缶ビールを取り出し
た。
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