ANNIVERSARY


その3





俺が、今の現実に向き合おうとサンジのいる街に行った夏休み。

医者も諦め、ゼフも覚悟を決めかけたその夏。

俺は、何となく、そう何となく、サンジに見せてやりたいとあの猫を抱いて病院に行った。

そして・・・奇跡は起こった。

俺は、今でも、あの猫が、奇跡を呼んだって思ってる。

まっ、こんな事言ったって、誰にも信じてくれないがな。

でも、サンジの瞳が、また俺を見たんだ。

また、俺の名を呼んだんだ。

・・・それだけで、充分じゃないか。

他に、何を望むことがあるだろう・・・




あの後、俺は、ナースセンターに駆け込んで、ゼフに連絡を取って、また、大急ぎで、サンジ

の待つ病室に走った。

「あっ、ゾロ・・・あのな・・・俺さ・・・・その・・・なんだ・・・あの・・・・」

サンジは、何かモジモジしていて、何か俺に言いたそうなんだが・・・

はっ、まさか、さっき、さんじ(猫)から引っかかれたのが、痛むのか?

「どうしたんだ、サンジ。 さっき、さんじからひっかかれたあとが痛むのか?」

「そうじゃねえよ・・・あ〜、どう言ったら良いんだ。 クソッ。・・・」

サンジは、今度は、イライラして、一人で、ブツブツと言いだした。

そこに、血相を変えたゼフと医者が、揃ってやってきて、サンジを見て、驚いた。

「サンジッ!!」

ゼフはそう叫んで、サンジを抱きしめた。

わかる・・・わかるぜ、その気持ち・・・

「???不思議だ。 なぜ、いきなり、意識が戻ったのか、全くの謎だ。 脈拍、心電

図、脳波、全て、正常だ。 但し、長期の入院で、身体の方が、かなり衰弱している。

暫く、リハビリと療養が必要だな。 ・・・それにしても・・・こんな事例は、見たことも

聞いたこともない・・・どうなってるんだ?」

医者は、サンジの身体を診察して、しきりに首を傾げていた。










それから、俺は、夏休みが終わっても、大学の寮にも帰らず、つきっきりで、サンジのリハビ

リに付き合った。

食事は、毎食、ゼフが届けてくれる。

ゼフ曰く、『病院食では、サンジの身体は、早く元に戻らねえ。』だそうだ。

愛されてるよな、全く・・・

サンジは、日に日に元気になっていって、1ヶ月ほどで、病院の入院生活にピリオドを打っ

た。

さすがは、サッカーで鍛えた身体だ。

医者も看護婦も、その回復力に驚いていた。

「・・・サンジ、お前、退院したら、最初は、何処に行きたい? やっぱ、大学か?」

俺は、退院する前の日、何気なくサンジに聞いた。

「・・・そうだな。 俺、海、行きてえ。 だって、去年も、今年も、海、行けなかったもん

な。 今からだと、泳げねえが、海・・・見てえな。」

サンジは、にこっと笑って、俺にそう言った。

「・・・わかった。 皆で行こう。 ウソップや、ナミやルフィも、呼んで、皆で、楽しも

う。」

・・・本当は、二人っきりで、行きたいけど、そりゃ、無理だろうな・・・俺、振られてるし・・・

俺は、明るく、そう返事した。

「・・・なんで? 二人だけで行っちゃいけないのか?」

サンジは、キョトンとした顔で俺に言う。

なんで?って・・・

やっぱり、振られた方と振った方が、二人だけで、行くのは、おかしいだろうよ、どう考えて

も・・・

・・・それに、お前、俺と二人っきりになるの、入院する前、避けてたじゃねえか・・・

・・・もしかしたら、俺に告られた記憶が、なくなってるのか?

・・・もう1年経つしな・・・そうかもしれねえ・・・

・・・・・・それなら、その方が良い。

「・・・わかった。 じゃあ、あさって、行くか?」

「おう! 俺、久しぶりに、弁当作るな。」

「おい、おい。 退院したばかりで、そんなに、無理すんな。」

「ばっか。 こっちは、やりたくてウズウズしてんだよ。 一年間も料理してねえんだ。

いい加減、こっちのリハビリもしねえと・・・ てめえだって、俺の夢知ってんだろ?」

そう言って笑うあいつの顔が、少し、俺には、眩しかった。








「うわあ・・・・久しぶりだなあ・・・うん、この香りだ・・・海のにおいがする。」

サンジは、海岸に着くなり、そう言って走り出した。

「ゾロッ、早く来いよ〜。」

サンジは、誰もいない静かな浜辺で、大きく、手を振って、俺を呼んだ。

「おい、あまりはしゃぐと、アブねえぞ。お前、まだ、元通りって言う訳じゃないんだか

らな。」

俺は、荷物とバスケットを抱え、サンジの元に、急ぐ。

「なに、もう、平気だって・・・わっ! ぷっ。」

「・・・全く、何がもう平気だ・・・風邪ひくぞ、ほらっ。」

俺は、荷物の中から、タオルをとりだし、サンジに、投げる。

思いがけない波を、身体に受けて、サンジが、ズボンを濡らして、波打ち際で、しゃがみ込ん

でいた。

「冷てえ・・・でも、気持ち良い・・・」

サンジは、笑ってタオルを受け取ると、首に巻いて、そのままの格好でいる。

良かった・・・サンジが元気になって・・・

1ヶ月前までは、こういう風に、一緒に海に来れるなんて、思わなかった。 

サンジが、こういう風に、笑って、俺の側にいるなんて、思わなかった。

「全部、お前のおかげかもな・・・」

俺は、そう呟いて、荷物と一緒に、持ってきたバスケットの中の、すやすやと眠っている猫の

さんじの頭を、そっと撫でた。

「はあ、楽し〜。 やっぱ、海って、俺、好きだわ。」

サンジは、そう言って、俺の隣に座った。

サンジの服は、波を被ったせいで、ところどころ濡れている。

「馬鹿だな・・・濡れたままだと、風邪ひくぞ。 ほらっ、これに着替えろよ。」

そう言って、俺は、ゼフが用意してくれた着替えをサンジに渡した。

さすがは、親子だ。

サンジの性格を良く見抜いている。

「おう! サンキュー。」

サンジはそう言って、俺の隣で、着替えだした。

ドクン・・・・俺は心臓が飛び出すかと思った。

白くて傷一つない身体を惜しげもなく、陽にさらして・・・

俺は、整理したはずの気持ちが、また、こみあげてきそうで・・・

これ以上望まない・・・そう思っていたのに・・・

俺の心は、まだ、こんなにも熱い・・・

ダメだ・・・諦めきれねえ・・・

・・・でも・・・もう、言えねえ・・・

「うわっ! サンジ、こんなとこで、着替えんなよ。 車の中で着替えてこいよ。」

その言葉は、自分のために言った言葉。

これ以上見ていたら、俺、また、繰り返しちまう・・・

「別に良いじゃんか・・・誰が見てるわけでもねえし・・・」

サンジは、唇を尖らせて、俺に文句を言う。

「お前が良くても、俺がよくね・・・」

俺は慌てて言いかけた言葉を飲み込んだ。

・・・しまった・・・つい、言っちまった。

・・・馬鹿だな、俺。

「・・・・ゾロ。 お、俺、てめえに、言わなきゃ行けねえ事が有るんだ。 聞いてくれる

か?」

サンジは、急に真面目な顔をして俺を見る。

俺に話って、何だろう・・・

そんなに重要なことなのか?

「なんだ?」

俺は、静かな声でそう言った。

「あのさ・・・お、俺・・・その・・・つまり・・・なんていうか・・・こういうの生まれて初め

てで・・・何て言ったらいいか・・・・ああんもう! あのな、俺、・・・・・お前のこと好き

だ!」

サンジはそう言うと、真っ赤な顔をして俯いた。

はあ?

俺、幻聴が聞こえだしたのか?

何言ってるんだ、サンジは・・・

ああ、友達として好きだっていったのか。

そんなこと、わざわざ言わなくても良いのに。

海に連れてきた感謝の気持ちか?

俺の好きとこいつの好きとは、違うもんな。

「・・・そうか。」

俺は、複雑な気分でそう答えた。

「てめえ!!・・・俺の最初で最後の告白を、そうか、だと?! 確かになあ、1年も

前の返事を今する俺も馬鹿だが、仕方ねえだろ? 俺、てめえに伝える手段無かっ

たんだから・・・ ・・・それとも、今頃になって言うのは・・・迷惑か?」

サンジは、始めは怒鳴りながら、そしてだんだん声が小さくなっていく。

!!!そ、それって・・・

それって、俺がサンジを好きなように、サンジも俺のこと好きだって事か?

本当なのか?

「・・・それは、俺がお前を好きなように、お前も俺のことが好きと言うことか? 

俺の聞き違いじゃないんだな。」

俺はサンジの腕を掴んで、確かめるよう、そう言った。

「ああ、そうだ。 何度も言わすなよ!」

サンジは、顔を真っ赤にして、俺を睨み付ける。

ああ、逆ギレしちまった。

・・・そんな顔も、可愛いよな。

けど、ホントかよ・・・マジ、嬉しい・・・

嬉しくて・・・嬉しくて・・・

クソッ、 顔が緩む・・・ダメだ・・・しまんねえ。

けど・・・俺、今、すっげえ、サンジとキスしたい。

「・・・サンジ、キスして良いか?」

俺はサンジを引き寄せると、サンジの肩に顎をのせて、そう言った。

「ば、馬鹿・・・そんなことは・・・自分で考えろよ。 ・・・いちいち聞いてくんな、恥ず

かしい奴・・・ 
・・・良いに決まってんじゃん、馬鹿ゾロ・・・

サンジはそう言って、ギュッと、俺のシャツを掴んだ。

クーッ、可愛い。

・・・こんな仕草が、また、可愛いんだよな・・・

俺は、絶対に言葉に出来ないようなことを考えながら、サンジの頬に、両手を添える。

「・・・ゾロ・・・」

サンジは、そう言って、俺にふわっと微笑んだ。

「・・・サンジ・・・好きだ・・・」

俺はそう言って、サンジに口付けた。

柔らかな感触に、俺の心臓の音が、早くなる。

暫くして、唇を離すと、サンジの瞳がうるうるしてて・・・

俺は、高ぶる感情のまま、もう一度、サンジの唇を塞いだ。

サンジの唇を舌で割り、歯列をなぞる。

「んんっ・・・・ん・・・」

サンジが息苦しさから、わずかに口を開き、俺は、そのまま舌を口内に侵入させた。

そして、縮こまっているサンジの舌をからめ取り、吸い上げる。

「んんっ・・・・んっ・・・ふ・・・ん・・・・ん・・・・んん・・」

サンジの口から甘い吐息が漏れ聞こえ、俺は、ますますその行為に、のめり込んでいく。

・・・やばい。

・・・自分が、止められない・・・

頭の中で、サンジの吐息が、俺の理性を消していく。

サンジの口内を、俺は、余すとこなく舌で堪能して、また舌を絡ませる。

「ふん・・・んんっ・・・・んんん・・・・・んっ・・・」

サンジが、ドンドンと俺の胸を叩いた。

見開かれた蒼い瞳は涙で溢れ、顔は上気して、ピンク色に染まっている。

口の端からは、飲み込めなくなった唾液が、流れている。

「んっ・・・」

サンジが、瞬きした時、涙が一滴、頬を伝う。

俺は、名残惜しくて、ゆっくりと唇を離した。

「はあ、はあ、ばっかやろ!! てめえ、俺、病み上がりだぞ? 殺す気か?! 

それに、いきなり、初心者に、あんなディープキスするなんて・・・てめえ、反則・・・」

「・・・すまない。 ・・・でも・・・止められねえんだ。 ・・・キスすんの・・・嫌か?」

俺は、サンジの身体をギュッと抱きしめて、そう呟く。

「べ、別に、嫌とは言ってねえだろ・・・//// ・・・手加減しろって言ってんだ・・・

・・・おれは、てめえみたいな、体力馬鹿と違って、繊細に出来てんだよ! 

わかったか!/////」

サンジはそう言って、俺に噛みつくようにキスをした。

本当に、可愛い奴・・・

可愛くて、綺麗で、素直じゃなくて・・・それでいて優しい奴・・・

俺は、もう、お前を放さない・・・

・・・もう・・・離せない・・・

俺達は、暫く、触れるだけのキスを繰り返した。

「ニャ〜ン。」

さんじが、俺の足にすり寄ってきた。

「おっ、起きたのか? なんだ? 腹減ってるのか。 よし! ゾロ! 弁当、食おう

ぜ。 俺も、腹減ってきた。」

サンジは、しゃがみ込んで、さんじの頭を撫でると、俺にそう言った。





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<コメント>

【サンジ★サンジ】からのリンク続きです。
なんか見にくいですかねぇ・・・・
いろいろと考えてはみたんですが。(汗)