ANNIVERSARY


その11






翌日。

ゾロとサンジは、ゾロの母親が作ってくれたペアのトレーナーを着て、チョッパーが待つ病院

へと向かう。

「よう、サンジ。 気分とか、悪くないか? さすがに、これくらいになると、動くのも、

一苦労だからな。 ゾロ、お前が、ちゃんと、手伝わないと、ダメだぞ。 ただでさえ、

サンジの腰は、女の人より細いんだから。 それと、サンジ。 そろそろ、入院準備を

しておいてくれよ。 来週には、大事をとって、入院して貰うから。 それと、出産は、

帝王切開だから。 腹、切るから、覚悟しろよ。 でも、この俺が執刀するんだ。 

傷が残ることはないから、その点は、安心していいぞ。 じゃあ、そこのベッドに横に

なって。 赤ちゃんの様子を見るから。」

そう言って、チョッパーは、サンジをベッドに寝かせ、エコーの準備をする。

サンジは、ゾロに支えられて、ベッドにそっと横になった。

サンジの腹に、エコーがのせられ、中の様子が、画面に現れる。

「ああ、とても、元気のいい赤ん坊だ。 順調だぞ。 この分だと、予定日通りだな。

ほらっ、ゾロ、見えるだろ? これが、お前とサンジの赤ちゃんだ。 このくらいになる

と、目とか、口とかうっすらとわかって、赤ん坊らしいだろ? ところで、本当に、赤ん

坊の性別、聞かないで良いのか? もう、わかるぞ。」

チョッパーが、ゾロに説明して、意見を聞いた。

「ああ、聞かなくても、絶対に、間違えないと思うから、いい。 それより、俺、出産

に、立ち会いたいんだけど、良いか? サンジが苦しんでる時、俺も一緒にいたいん

だ。」

「別に、それは、良いけど・・・・ゾロ。 お前、スプラッタ映画は、好きか?」

チョッパーは、ゾロの申し出に、逆にそう聞く。

「??いいや、あまり見ねえな。」

「・・・・・そうか。 ゾロ、どうしてもって言うなら、別に俺は止めないけど・・・」

「ああ、どうしても、側にいる。」

「・・・わかった。」

チョッパーは、不安げに、ゾロの立ち会いを認めた。

「・・・なあ、チョッパー。 ちょっと、聞きてえことがあるんだけど、良いか?」

サンジが、真剣な表情で、チョッパーにそう言った。

「何だ、サンジ。」

「お、俺さあ、妊娠してるじゃん。 ・・・それって、母、母乳って、出るのかなって、そ

う思って、さ。」

そう言って、サンジが、少し顔を赤らめた。

「う〜ん。 母乳かあ・・・・今まで、こう言うの前例が全くないからなあ・・・・赤ん坊

が、出来るって言うことは、理論上、体内に、女性ホルモンが分泌されているわけ

で・・・出たとしても、不思議はないんだが・・・ サンジ、お前、最近、おっぱいになん

か、変化あるか? 膨らんできたとか・・・」

「いや、別に、そう言うことはねえ。 ただ、先っぽが、敏感になったぐらいかな。」

「そうだな。 俺も確認したが、別にサンジの胸の大きさは、前と変わらなかったぞ。」

そう言って、聞かれてもいないのに、ゾロが横から口を挟む。

「!!・・・////ゾロ! もう、恥ずかしい奴・・・」

サンジは、真っ赤になってゾロを睨み付ける。

「別に、良いだろ? 夫婦だし、本当のことなんだから。」

ゾロは、あくびれもせず、そう言いきった。

「ゴホン・・・ゾロ。 そろそろ、もう、ヤッちゃ、ダメだぞ。 ヤッた弾みで、陣痛が起こ

ることもあるんだから。 これから、3ヶ月はお預けだ。 いいな、これは、サンジと生

まれてくる赤ん坊のためなんだから、絶対に、ダメだぞ。」

ゾロの言葉に、チョッパーは、そう言って、注意した。

「えっ?! 3ヶ月もダメなのか?? 生まれたら、すぐに出来るんじゃなかったの

か?? ・・・わかった。 我慢・・・する。」

ゾロは、サンジと子供のためと言われ、渋々承諾する。

その間、サンジは、顔を真っ赤にして、二人のやりとりを聞いていた。

「じゃあ、なんかあったら、すぐに、俺に連絡してくれ。 来週の月曜日、入院できるよ

うに準備しててくれ。」

「「わかった。」」

ゾロとサンジは、チョッパーの病院を後にした。

「チェッ。 これから、3ヶ月も、我慢しねえといけねえのかあ・・・・出来るかなあ・・・」

ゾロは帰りの車の中で、ブツブツと呟いていた。
























翌週の月曜日・・・・

サンジは、チョッパーから言われたとおり、入院の準備をして、病院を訪れる。

今日は、仕事で来れないゾロの代わりに、ゼフが付き添ってきてくれた。

「・・・なあ、サンジ。 こんな汚ねえ病院で、本当に大丈夫なのか?? もっと、施設

の整った大きい病院の方が、良くねえか?」

ゼフは、初めて訪れた病院の貧相さに、サンジにそう耳打ちをする。

「大丈夫だって。 ここは、見た目は、ボロいけど、ちゃんと、最新設備はあるんだ

ぜ。 それに、チョッパーは、IQ300もある天才医師だ。 俺も信頼してる奴だから、

何にも心配はいらねえよ。」

「・・・わかった。 てめえが、これでいいのなら、なんにもいわねえ。 だが、食事だ

けは、俺が、毎食、作って運んでやる。 それで、いいな。」

「ああ、チョッパーに、そういっとく。 それと、夕飯は、ゾロの分と二人分にしてくれる

か? あいつ、一人じゃ、ろくなもん、食わねえから。」

「・・・わかった。」

ゼフは、サンジからそう言われて、自分が食事を作ることを条件に、承知した。

ゼフは、サンジが、食事を自分に任せてくれることに同意したので、とても嬉しかった。

なぜなら、それは、食事を運ぶという名目で、毎日、赤ん坊が生まれてからも、病院に来れ

ると言うことで、ゼフにとっては、願ってもない、口実になったからだ。

チョッパーに診察を受けて、サンジの出産予定日は、来週の1月15日の木曜日と決まった。

「じゃあな、サンジ。 明日、また、来る。」

そう言って、ゼフは、サンジを病室まで送ると、帰っていった。

病院を後にしたゼフは、その後、店には戻らず、本屋に行き、『最新の出産前後の栄養食』、

『頭のいい子を作る離乳食』、『産後の食事ベスト100』などの、料理の本を買い込むと、

一目散に家に戻り、研究を重ねた。

全ては、可愛い一人息子のため、生まれてくる赤ん坊のため・・・・










その日の夕方。

会社から帰ってきたゾロは、そのまま、病院へ直行する。

「サンジ、いよいよだな。 がんばれよ。 15日、俺も、しっかり立ち会うから・・・」

「ああ、ゾロ。 大丈夫だ。 俺とてめえの子供だからな。 心配すんな。 チョッパー

も、今日から泊まり込みで、俺の側にいてくれるって言うし。 ゾロこそ、朝、寝坊し

て、遅刻したりすんじゃねえぞ。 俺、もう、暫く、家にいねえんだからな。 夜ご飯

は、親父に頼んでここに、二人分持ってきて貰うことになってるからさ、一緒に食おう

ぜ。 そろそろ、親父、くるから・・・」

サンジがそう言ってたときに、ちょうど、ゼフが、食事を持ってきた。

「おう、ロロノア、早えな。 サンジ、飯だ。 さあ、二人とも、熱い内に食えよ。」

そう言って、ゼフは、研究した料理を二人に出した。

「あれ? 親父・・・料理方法、何か、変えたのか? いつものと、違う・・・」

「・・・本当だ。 いつものと、少し違う・・・」

ゾロとサンジは一口食べて、いつものゼフのとは違う料理に、そう言った。

「ああ、出産前後には、こういう料理の方が良いと思ってな。 たまには、こう言うのも

悪くねえだろ?」

ゼフは、少し照れながら、二人にそう言った。

「親父・・・サンキュー。 美味しいよ、これ。 今度、俺にも教えてくれ、な。」

「おやっさん、ありがとうございます。」

ゾロとサンジは、ゼフの心遣いに、心から感謝した。

「ところでさあ、ゾロ。 てめえ、名前、もう、決めたのか??」

サンジが、食べながらゾロにそう言った。

「ああ、今、決めた。 名前は、『零(ゼロ)』だ。 ゼフから一字貰って、俺の名前と組

み合わせた。 それだけじゃねえぞ。 『ゼロ』は、始まりの数字・・・そこから、始まる

って言う意味もあるんだ。」

ゾロは、サンジにそう説明する。

「・・・でもよ、女の子だったら、どうするんだ? 女の子で、『ゼロ』はまずいだろう。」

「その時は、お前が考えてる名前で良いじゃねえか。 ところで、お前が考えた名前

って、どんなのだ? 俺、まだ、聞いてねえゾ。」

「・・・それは、生まれてきてからのお楽しみだ。 男の子だったら、『零(ゼロ)』でい

い。 親父も、それで良いか?」

「あ、ああ、それでいい。 ありがとうな、ゾロ。 じゃあ、俺、帰るわ。 食い終わった

ら、皿、そこのテーブルに置いとけよ。 明日、朝食ん時に、片付けるから。」

そう言ってゼフは、満足げに病院を後にした。

それから、ゾロとサンジは、消灯の時間まで、色々と話をして、二人の時間を過ごした。

「じゃあ、サンジ。 俺も、もう帰る。 なんかあったら、携帯に電話しろよな。 おやす

み、サンジ」

「うん。 おやすみ、ゾロ。」

そう言って、二人は、軽く唇を合わせた。











誰もいない電気のついてない家に、帰ってきたゾロは、フーッと、深いため息を吐く。

「まいったなあ・・・・こんなに、一人が寂しいなんて・・・・ 1日目からこれじゃあ、しょ

うもねえな。 あっ、チョッパーから借りたビデオでも見るとしようかな・・・」

ゾロはシャワーを浴びて、缶ビールの栓を抜くと、ビデオをセットした。

題名は、『死霊の○○』・・・・・スプラッタ映画だった。

「グァッ、エグい・・・・・こんなもん、よく見れるよな。 ・・・俺、気分悪くなってきた・・・

何だよ、あの血塗れの胎児は・・・ ひでえ・・・ダメだ・・・おれ・・・もう、みれん・・・」

ゾロは、半分も見ないうちに、ギブアップした。

「ううぅ〜、もう、寝る・・・」

ゾロは、映画の内容を忘れようと、早めに、眠った。

それから、しばらくは、穏やかな日々が続いた。

サンジの体調も、良く、予定日まで、順調に運ぶかと思われていた。







1月10日、土曜日。

今日は、ゾロの会社も休みで、ゾロは、朝から、サンジの病室に来ていた。

いつものように、たわいのない会話をする二人。

「ッ痛っ!」

サンジが急に、腹を押さえてかがみ込む。

「!サンジ、大丈夫か? ナースコールは、どれだ。 あった! チョッパー、すぐに、

来てくれ! サンジが、大変なんだ!」

ゾロは、焦ってチョッパーを呼ぶ。

「わかった、今すぐそっちにいく!」

ゾロの慌てた声に、チョッパーが、急いで駆けつけた。

「ちょっと、診せて・・・・・これは・・・・ゾロ! 急いで、総合病院の主治医を連れてき

てくれ! 急いでな。 サンジ、ちょっと我慢するんだぞ。 急いで、ゾロ!」

「わかった!」

チョッパーは、サンジを診ると、ゾロにそう言って、看護婦達と一緒に、サンジを手術室に運

んだ。

ゾロは、チョッパーの言葉に従い、総合病院に主治医を呼びに病院を出ていった。





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<コメント>

いよいよ緊迫のシーンになりました。
でも、ゾロに引き続き、ゼフも、何か、いっちゃってますねえ。(笑)
さて、無事に生まれることが出来ますか・・・
っていうか、ゾロ・・・あんた、立ち会いできんのか??
男の人って、血に弱い人が多いとか。
多量出血に、慣れてないからねえ・・・・(笑)
今回の『零(ゼロ)』と言うお名前は、ビリーさんの提供です。
ありがとうvvビリーさん!
では、続き、いってみますか・・・