ANNIVERSARY


その10






「ゾ〜ロvv 起きろよ! もう、いつまで経っても変わらねえんだから・・・ おいって

ば・・・ いい加減にしねえと・・・ うりゃっ!!」

サンジは、今日も、ゾロの腹に、見事な蹴りを入れる。

「フグッ! ・・・・いやだ・・・アレがないと、起きれねえ・・・」

ゾロは、目を閉じたまま、蹴られた腹を撫で、そう呟いた。

「!!・・・////もう・・・てめえが、そんなに、甘えただとは、知らなかったぜ・・・ 

しょうがねえな、1回キリだぞ。 いいな。」

サンジは、諦めたように、そう言うと、ゾロの唇に軽くキスをする。

スッと、ゾロの腕が、サンジの背中にまわり、サンジは、ゾロの胸に倒れ込んだ。

「おはよ、サンジ。 んっ」

ゾロは、やっと目を開けて、目の前のサンジの唇を奪った。

「!!・・・////ほらっ、早く飯食わねえと、会社に遅れるって。 今日は、大事な取

引先とあうんだろ? もう、毎日こうじゃあ、生まれてくる赤ん坊に笑われるゾ。」

サンジは、ゾロの眉間に、ビシッとデコピンして、ゆっくりと、ゾロから離れた。

「ウオッ! いけねえ・・・そうだったんだ。 シャツ、シャツっと・・・・」

ゾロは慌てて飛び起きると、大急ぎで、背広に着替えた。

そして、二人で、サンジが作った朝食を食べる。

食卓には、ゾロが大好きな、卵焼きとししゃも、野菜の含め煮、大根のみそ汁などの和食が

並ぶ。

元々、サンジは、洋食屋の息子であるため、洋食に関しては、一流料理人と大差ない実力

の持ち主ではあるが、和食となると、勝手が違うのか、いつも、料理の本と格闘して新婚妻

らしい雰囲気を醸し出す。

ゾロとしては、早起きして、サンジのそんな姿が見てみたいと常々思ってはいるのだが、そ

れを実行すると、せっかくのサンジのモーニングキスを貰う手段が無くなってしまう。

実は、ゾロは、毎朝、サンジが腕の中からこっそりと出ていく気配で、目を覚ましていた。

それを、サンジが起こしに来るまで、じっと、ベッドの中で、今か今かと待ち受けているのだ。

そして、甘んじて、サンジの愛のキックをその身に受ける。

それもこれも、皆、あのキスのため・・・・

・・・恐るべし、ロロノア・ゾロ・・・・

ロロノア家の朝は、こうして始まる・・・・











「じゃあ、行って来ます。 いい子にしてろよ。」

ゾロはそう言って、サンジのお腹を撫で、サンジに軽くキスをすると、会社に向かった。

「全く・・・毎朝、こうなんだから・・・・ てめえのパパは、甘えん坊で、困るぜ。」

そう言って、サンジは、ゆっくりとお腹を撫でた。

しかし、真剣に困ってる様子は、微塵もない。

いや、どちらかといえば、この様子を楽しんでいるのかも知れない。

ナミやウソップが見ていたら、どれだけ砂に埋まったことだろう・・・

まあ、無理もない・・・

ロロノア家は、新婚2ヶ月も経ってないのだから・・・

そんなこんなで、ロロノア家は、冬に入ったというのに、全くそれを感じさせないほどの熱々

ぶりを披露していた。

「さて、今日は、天気もいいし、久しぶりに布団でも干して、店にでも顔を出すか・・・」

サンジはそう呟いて、掛け布団をベランダに干す。

「はあ・・・羽毛布団でも、このくらいお腹が大きくなってくると、結構きついなあ。」

サンジは、お腹をさすりながら、フーッとため息を吐いた。

それから、この前ナミに選んで貰った、ピンクのフリフリのマタニティのジャンパースカートと、

白のニットのタートルネック、キャメルのムートンコートを羽織って、店に向かった。

久しぶりだよなあ・・・一人で外出すんのって。

初めは、男であるが故に妊婦服に抵抗を感じていたサンジではあったが、実際、着てみる

と、その着心地の良さと、機能性に、すっかり、填ってしまっていた。

ましては、ゾロの母親のデザインだ。

それを着ないわけにはいかなかった。

はあ・・・足のところが、スースーするのは頂けねえが、妊婦服は楽でいいや・・・

俺、そのうち、出産した後も、スカート、マジ履くかもしんねえ・・・

そんなことを考えながら、サンジは店の裏口から、厨房を覗く。

「いよう、サンジ。 久しぶりだな。 今日は、どうしたんだ? もうすぐだったよな、生

まれんの。 男か女か、もうわかってるのか?」

レストランの最古参のコックが、サンジにそう話しかける。

「いや、チョッパーの話だと、わかってるらしいんだが、俺もゾロも敢えて聞かねえん

だ。 だって、楽しみが一つ減るじゃねえか。 それに、俺達は、どっちでも良いから

な。」

そう言って、サンジは、にっこりと笑った。

「おう、サンジ、来てたのか。 どうだ?体調の方は。 まさかてめえ、天気が良いか

らって、布団干してきたりしてねえだろうな・・・ 腰に負担かかるようなことはしたら

ダメだと、医者に言われてるだろ?」

サンジの性格を知り尽くしているゼフが、そう忠告する。

「ああん・・・わかってる・・・してねえ・・・よ・・・」

サンジはそう曖昧にごまかした。

「ところで、やっぱ、年末だから、忙しそうだな・・・ 俺、手伝ってやろうか?」

サンジはそう言って腕まくりする。

「馬鹿言うな。 てめえ、あと、20日ぐらいで、赤ちゃん生まれるんだろうが・・・ 

そんなことより、ちゃんと、入院準備は、出来てんだろうな。 年明け早々に入院する

んだから、ちゃんと、準備しとけよ。 それから、赤ん坊の物で、足りねえもんとか無

いのか?」

ゼフは、そう言い返した。

「ああ、大丈夫だ。 細かいモノは、ゾロの母さんが用意してくれたし・・・ベビー服も、

この前買ったやつで充分だ。 なかなか、元気だぜ、こいつ・・・きっと男だな。 

ほらっ、親父も触ってみるか? さっきから、腹の中で蹴り上げてんだぜ。」

サンジは、そう言って、ゼフの手をお腹に当てた。

ゼフの手に、赤ん坊の胎動が伝わる。

ゼフの髭が、へにょんと、だらしなく下がる。

「・・・/////ジイジだ。 わかるか? 元気に生まれてこい。」

ゼフは、小さな声で、サンジのお腹にそっと呟いた。

「くっくく・・・ジイジだって・・・くく・・」

「・・・あの顔で、ジイジ・・・くくく・・・」

厨房に、コック達の忍び笑いが聞こえる。

「・・・////てめえら、グダグダ話してねえで、さっさと片付けやがれ!!」

「「「・・・へ〜い。 ククク・・・」」」

顔を真っ赤にして照れたゼフが、コック達に向かって怒鳴った。

サンジはその様子を見て、クスクスと笑った。

この子は、何て幸せな子なんだろう。

こんなにも、皆から愛されて、育まれて、この世に生を受けることが出来る。

・・・そして、俺も、こんなに幸せだと感じることは、今まで無かった。

無理だと思っていた好きな奴と結婚して、一緒に暮らせて、当然、諦めていた愛する人との

子供を、自分で、生み出せる幸せ。

それは、皆、自分を取り巻く、この環境のおかげだと、サンジは、改めてそう思った。

俺は・・・俺達は、世界中で一番幸せで、恵まれた家族だ。

「・・・そう言えば、サンジ。 てめえ、赤ん坊の名前、もう、決めてんのか? 男だろう

が、女だろうが、生まれる前に考えていた方が良いぞ。 ・・・////何なら、俺が、考

えて・・・」

ゼフが、サンジにやんわりとそう切り出した。

「ああ、名前、な。 ゾロが、この前、色々と姓名判断の本とか買ってきてたみてえだ

が、いまいち、ピンとこなくてな。 親父、考えてくれてるのか? だったら、聞かせて

くれよ。」

・・・親父・・・考えてくれてんのか?

まあ、その名前付けるかどうかは、別にして、聞いておいても良いよな・・・

サンジは、ゼフの考えている名前を聞くことにした。

「おう、俺の考えた名前はだな。 ズバリ、てめえが産むのは、きっと男の子だろうと

考えて、『幸太』(こうた)だ。 幸せを運ぶ子供だからな。 幸せの『幸』に、男の子を

表す、『太』。 あと、『周助』(しゅうすけ)とか、『国光』(くにみつ)、『リョーマ』、『英

二』(えいじ)とかもあるぞ。 どうだ?」

ゼフは、ニコニコしてサンジにそう言った

「・・・親父・・・それって・・・なんか、誰かの趣味に走ってないか・・・暗黙に、その意

図が、みえみえなんだが・・・ まあ、ありがとうな。 参考にさせてもらうぜ。 あっ、

俺、そろそろもう帰るわ。」

「じゃあ、これ、もってけ。」

「いつも、わりいな。」

サンジは、ゼフに、野菜を貰ってそう言うと、店を出ていった。

・・・本当に、皆、良く、生まれてもない赤ん坊の名前なんて考えられるよなあ・・・

ゾロの母さんなんて、『和音』(かのん)とか、『拓斗』(たくと)、『綺羅羅』(きらら)、『紫苑』

(しおん)とか、少女漫画に出てきそうな名前ばっかだったもんな・・・

俺としちゃあ、もっと、名前自体に意味があるもんの方が良いんだけどなあ・・・

『幸太』かあ・・・結構、いけるかもしれねえ・・・

サンジは、そんなことを考えながら、家路についた。

今日は・・・と、キャベツがあったから、ロールキャベツと、山芋とオクラのしゃきしゃきサラダ。

あとは、酒の肴になるように・・・たこのマリネでもするかなあ・・・・

サンジは、夕飯の献立を考えると、干していた布団を部屋に運び入れた。

「さて、夕飯の用意には少し早いし・・・何しようか・・・」

そう呟いて、テーブルにひじをつき、新聞の広告を眺める。

ふと、広告の写真に目が止まった。

『あなたに幸運を呼んでくれる蒼い石・・・ラピスラズリ』

・・・ラピスラズリかあ・・・・

・・・・幸運の石・・・

・・・結構いけるかも・・・・

サンジは、一人、そう考えた。
























「ただいま〜。 今日も、なんともなかったか?」

そう言って、ゾロは、帰ってくるなり、サンジを抱きしめ、キスをしようとする。

「ダメだ。 ちゃんと、手を洗って、うがいをしてこい。 てめえから、風邪移されたら、

困るのは、俺だけじゃねえんだから、な。」

サンジは、ゾロの口を両手でブロックしながら、そう言った。

「はいはい、そうでした。」

ゾロは、サンジに言われるとおりに、手を洗い、うがいをする。

「ただいま、サンジ。」

「お帰り、ゾロ。」

そう言って、二人は、抱き合い、チュッと触れるだけのキスをした。

それから、ゾロは、着替えて、風呂場に行って、バスタブを洗う。

お腹の大きいサンジの負担を少しでも減らそうと、ゾロが、進んでやっているのだ。

風呂の掃除も終わり、バスタブにお湯を入れた頃、サンジから、食事を告げる声が聞こえ

た。






「なあ、ゾロ。 産まれてくる子供の名前のことなんだけどよう、てめえ、何か決めて

る名前とか、あるのか?」

食事をしながら、サンジは、ゾロに聞いてみる。

「ん、ああ。 実はなあ、色々と考えて入るんだが、なかなか決められねえでいるん

だ。 これ、どう思う?」

ゾロは、背広のポケットから、紙を取り出して、広げて見せた。

「なになに・・・零(ゼロ)、リュウ、光(ひかる)、豪(ごう)、一(いち)、響(きょう)、

命(みこと)、海(カイ)・・・・なにこれ、全部男の子の名前じゃん。 てめえ、もし、女

の子だったら、どうすんだよ。」

サンジが、その紙を見ながら、そう言う。

「いや、絶対に、男だ。 俺とお前の子だから、そうに決まってるだろ。」

ゾロは、ビールを飲みながら、自信ありげにそう言った。

「・・・てめえなあ・・・・ じゃあ、女の子だったら、俺が、名前付けて良いか? 

俺、今日、思いついた名前があるんだ。 それと、親父が、『幸太(こうた)』は、どう

だって、言ってたぞ。 親父なりに、色々と考えてくれてるわけだし・・・てめえの母さ

んが、考えた名前も、一応、検討しねえと、な。 ・・・それと、明日、会社、休めるの

か?」

「ああ、明日、妊婦検診だったよな。 ちゃんと、休むって言ってきたから、大丈夫だ。

俺も、ちゃんと、立ち会うからな。 色々と聞いとかねえと。」

「えっ?! てめえ、立ち会うのか?? マジかよ・・・ 結構、エグいらしいぜ。 

途中で、具合悪くなったりすんなよな。」

「・・・・おう。 たぶん、・・・・大丈夫、だ。」

サンジの『エグい』発言に、ちょっと不安を覚えたゾロであった。





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<コメント>

お待たせしました。 いよいよ、出産編、始まります!
ゾロ・・・もう、ルナの口からは、何も言うことは、ありません・・・(-_-;)
こんな壊れきったゾロは、もう、このサイトでしかお目にかかれないと。(笑)
ここまで、熱々じゃなくても良かったんですが、ね。
いや、ルナが、書きたかっただけで・・・すいまそん・・・
全体的に、こんな感じで、話は、続いていくかと・・・
せつな系では、絶対にないです!(ドォ〜ン・笑)
では、続きをどうぞ!