いつか、王子様が。 その4. |
「痛い!! 痛えって言ってるだろ!! 離せよ!ギン!!」 「いいえ、離しません。 ここで逃げられたら、元も子も無いですから・・・」 サンジ姫はギン王子に腕を捕られたまま、城の来賓の間に入る。 「・・・・・・・姫、すまない。 この国の為・・・お前に無理を承知で頼む。 クリーク王国 サンジの父でもあるゼフ王はそう言ってサンジ姫に頭を下げる。 「・・・・・・父上、頭をお上げください。 仮にも一国の国王が、自分の子に頭など下げ サンジは、先程とは打って変わった王族としての毅然たる態度で、クリーク王とギン王子にそ 「・・・・・・貴方がまた逃げないと言う保障は?」 「そこまでお疑いなら、見張りでも何でも付ければ良い。 私はもう逃げも隠れもしな ギン王子の言葉に、サンジ姫は冷ややかな態度で王子を睨み返した。 「察しの良い姫様だ。 さすが、私が見初めただけはある。 では、一週間後、迎えの ギン王子はニヤリと笑うと、そう言ってサンジ姫の手の甲に口付ける。 「では、我が花嫁。 暫しの間、お別れです。 じゃあ、参りましょう、父上。」 「うむ。 ・・・・・では、ゼフ国王。 この婚礼により、ますます貴国も繁栄の一途を辿る ギン王子とクリーク王は、そうサンジ姫とゼフ王に告げて、城を出て行った。 「くっそぅ、あの野郎。 どさくさに紛れて俺の手にチューしやがった!! 汚え・・・・・ サンジは侍従にそう命じて、自分の手を消毒する。 「・・・・・本当、悪かったな、チビナス。 俺がもっとしっかりしてたら・・・・あんなクリー 「気にするなよ、父上。 国力が劣っているのは父上のせいじゃねえし。 ここ数年、干 ゼフ王の言葉に、サンジ姫はそう言うとフッと淋しそうに微笑んだ。 「・・・・・・てめえ、この二日でなんかあったのか?」 「なんで?」 「いや・・・・なんだか大人になったと言うか・・・・・・表情が変わった。」 ゼフ王は、サンジの顔を見つめながらそう呟く。 「おう。 俺、一杯いろんな体験した。 蜘蛛って気色悪い虫も見たし、足にまめが出 初めは笑顔で答えていたサンジ姫は、途中から泣き出してしまった。 「お、おい、チビナス! どうしたんだ? どっか痛いのか? おい、医者を呼ぶか?」 「うん・・・・・ヒック・・・・・父上・・・・・胸が・・・・・・痛え・・・・・」 ポロポロと泣きながらそう訴えるサンジ姫を目の当たりにしたゼフ王は、慌てて衛兵に医者を 「・・・・して、どのようなお気分ですか?サンジ姫?」 「ん・・・・・なんか胸が苦しいんだ。 痛くて息苦しくて・・・・・泣きたくなる。」 「それは、いつ頃から? どういった場合に起こりますか?」 主治医は、ベッドに寝かされたサンジ姫の脈を取りながら、そう尋ねる。 「えっと・・・・昨日からかなぁ。 どういった時ってのはなくて・・・・ゾロの事考えた時と 「・・・・・・・サンジ姫。 ちなみにお伺いしますが、それは心臓がドキドキしたり、訳も 「そう!! そうなんだ!! めちゃくちゃドッキンしたりさ、ゾロの顔見てたら恥ずかし 主治医の言葉に、サンジ姫は瞳を輝かせて、逆にそう聞いた。 「・・・・・サンジ姫、残念ながら、これは病気ではありません。 サンジ姫、貴方は、恋 「恋?! 俺がゾロに恋?! このバクバクって感じや、キュンってするのは、俺がゾ 「御意にございます。」 主治医はそう言ってサンジ姫の腕から手を離す。 「・・・・・・・・・・これが・・・・・・・・・・恋。 けどよ、俺、恋をするなら王子様とって・・・・ 「恋は、いつ誰にどういった風に起こるのか、誰にもわかりません。 ドキドキとしたそ いまいち賦に落ちないサンジ姫に、主治医はそう言って優しく微笑んだ。 サンジ姫は、居ても経っても居られなくなってベッドから飛び起きると、ゼフ王の元に向かう。 「おう、チビナス。 気分はもう良いのか?」 「あ、うん。俺は大丈夫だ。 病気じゃなかったから。 それより、父上。お願いが・・・」 心配そうに声を掛けるゼフ王にサンジがそう言って話を切り出そうとすると、玉座の間に衛兵 「何事じゃ、騒々しい。 せっかくチビナスと親子の語らいをしておったとこなのに・・・」 ゼフ王は、不満げにそう言う。 「申し訳ありません、王様。 実は・・・・・・見慣れぬ風貌の男が、サンジ姫は戻ってい 「そのような者、すぐに叩き出せば良いであろうが・・・一々、ここに報告に来なくとも良 「それが・・・・・滅法強くて・・・・・・・・」 ゼフ王の言葉に、兵士はもごもごと口ごもるようにそう呟いた。 「王様ーっ!! お逃げくださ・・・・ガハッ!!」 その矢先、急に入ってきた衛兵がそう言って床に伏す。 「なんだ、今度は!!」 そう言って広間の全員が、その扉へ視線を移すと、そこにはある男が立っていた。 「ゾロ!!」 サンジ姫は思わずそう叫んで、ゾロに駆け寄る。 「姫、大丈夫だったか? なにもされてねえか?」 ハァハァと息を切らしながら、ゾロはサンジ姫にそう尋ねる。 「うん、大丈夫だ。 ギン王子達はもう帰って行ったから。 それよか、ゾロの方が大丈 サンジ姫は、ゾロの腕から流れる血を見とめて、慌ててハンカチで拭った。 「・・・・・チビナス、そいつが、ゾロなのか?」 サンジ姫の後ろから、ゼフ王がそう声を掛ける。 「あっ・・・・・申し訳ありません、ゼフ王。 どうしても自分の瞳で、サンジ姫の無事を確 ゾロは、ゼフ王の前まで歩み寄ると、そう言って深々と頭を下げた。 「・・・・・・まぁ、皆、殺された訳でもなく・・・・・と言うか、よくぞまぁ、ここまでこれたも ゼフ王はマジマジとゾロを見つめて、感心したようにそう尋ねる。 「そうだよ!! ゾロ!この国の剣士になれよ! そしたら、俺・・・」 「身に余る光栄なお話ですが、それはお受けできません。 あなた方が国を愛するよう サンジの嬉しそうな言葉をを遮って、ゾロが真剣な表情でそう返事した。 ゼフ王は、そう言って自分の寝室へと戻って行く。 「・・・・・風呂はこっちだ、ゾロ。」 サンジ姫はそう言って、ゾロを浴場まで案内した。 |