LOVE ME×ラブミー


その2






ゾロは、サンジとウソップが、その場から居なくなっても、動こうとしなかった。

いや、正直なところ、身体が、動かなかったのだ。




・・・・・・あいつのことだから・・・・・・絶対・・・・・

・・・・・・絶対、泣くって・・・・・・泣き喚いて・・・・・・・

・・・・・・俺のこと罵って・・・・・・

・・・・・・逆上して、蹴りを繰り出してくる・・・・・・・そう思ったのに・・・・・・

・・・・・・あいつは・・・・・・・・

・・・・・・あいつの顔は・・・・・・・・

・・・・・・綺麗な顔で・・・・・・・笑ってた・・・・・・・

・・・・・・泣くって・・・・・・泣くと・・・・・・そう思ってたのに・・・・・・

・・・・・・胸が・・・・・・痛てえ・・・・・・・

・・・・・・目の前で泣かれたときより・・・・・・・

・・・・・・なんでか・・・・・・辛れえよ・・・・・・・

・・・・・・泣かれるより・・・・・・・・

・・・・・・あんな顔の方が・・・・・・

・・・・・・辛れえ・・・・・・

・・・・・・どうしたんだ・・・・・・俺・・・・・・

・・・・・・胸が痛くて・・・・・・・息ができねえ・・・・・・

・・・・・・考えろ・・・・・考えるんだ・・・・・・

・・・・・・なんで、こんなに辛れえのか・・・・・・・

・・・・・・なんで、こんなに胸が痛むのか・・・・・・

・・・・・・考えろ・・・・・・俺・・・・・・・・・

・・・・・・自分自身のこと・・・・・・・

・・・・・・サンジのこと・・・・・・

・・・・・・なんで、食べねえと言えなかったのか・・・・・

・・・・・・なんで、サンジを抱きしめていたのか・・・・・

・・・・・・考えろ・・・・・・・・自分の本当の気持ちを・・・・・・

・・・・・・自分の気持ちを・・・・・・・見つめ直せ・・・・・・




「・・・・・甘めえ・・・・・・」

ゾロはそう言って、甲板に落ちたグシャグシャのショコラを口に入れた。





「ゾロッ!! 海軍だ!! 海軍の奴らが・・・・・早く来てくれっ!」

暫くして、船頭で、ウソップの叫び声がした。

「チッ。 ・・・・・・もう少しで、わかりかけてたところなのに・・・・・」

ゾロはそう呟きながら、船頭へ向かう。

甲板は、海軍の連中が乗り込んできていて、ルフィ、ナミ、ウソップ、サンジが、それに応戦

していた。

「遅せえぞっ!」

サンジが、ゾロにそう言った。

しかし、ゾロには、何故か釈然としない。




・・・・・・何だ、この違和感は・・・・・

・・・・・・何かが、足りねえ・・・・・・

・・・・・・なんだ・・・・・何が、足りねえんだ?




ゾロは、その答えを見つけきれず、無言のまま、戦闘に入る。

さすがは、海軍の手練れと言うこともあって、皆、苦戦を強いられていた。

「あっ、ナミさん、危ねえーっ!」

ゾロの背後で、そう言うサンジの声と共に、銃声が、耳を劈いた。

ゾロが、その音に反応して振り向くと、そこには、ナミを庇って、肩口に、銃弾を受けたサンジ

の姿があった。

肩を押さえ、指の先から、血を流しながらも、サンジは、懸命に、近寄ってくる海軍を蹴散らし

ている。

しかし、その表情は、険しく、血の気が引き始めているのか、青ざめていた。

「なに、ボーっと突っ立ってんだっ! 俺なら、全然平気だ。 さっさと片づけねえと、

夕食に間に合わねえぞ。」

サンジは、肩で息をしながら、ゾロに、そう怒鳴る。

ゾロは、サンジの顔をじっと見て、さっきの違和感の答えを見つけた。




・・・・・・そうだ・・・・・顔だ・・・・・・

・・・・・・あいつの顔に、表情がねえんだ・・・・・

・・・・・・いつものほっとするような・・・・・あの表情が・・・・・ねえんだ・・・・・・

・・・・・・俺の・・・・・せい・・・・・か・・・・・・




さっきまで、あんなに表情豊かだったサンジの顔が、まるで別人のように、ゾロには感じた。

ゾロは、バンダナを頭に巻いて、三刀流の構えで、海軍に向かう。




・・・・・早く、サンジの野郎、手当しねえと・・・・・・

・・・・・すまねえ、サンジ・・・・・・・てめえを傷つけてしまった・・・・・・

・・・・・謝って済む問題じゃねえけど・・・・・

・・・・・俺・・・・謝るから・・・・・・・・・・謝るから・・・・・

・・・・・そんな顔で、俺を見ねえでくれ・・・・・・




ゾロの活躍もあってか、海軍は、ほぼ全滅の痛手を負って、ゴーイングメリー号から、離れて

いった。

「サンジ、てめえ、怪我、大丈夫なのか?」

戦闘が終わり、ゾロは、真っ先にサンジに、そう聞く。

「ああ、平気だ。 しかし、危なかったな・・・・・さて、食事の用意しねえと・・・・・」

サンジは、そう言って、何事もなかったかのように、階段を下り始めた。

ゾロは、そんなサンジの様子にほっとして、刀の手入れをしようと、船尾に歩く。

ドサッ!!

「サ、サンジくんっ!!」

甲板に何かが落ちる音と、ナミの悲鳴にも似た声が、船に響く。

ゾロが、慌てて階段に駆け寄ると・・・・・・・

階段の下で、サンジは、うずくまるように、倒れていた。

ゾロの記憶に、あのクイナの忌々しい記憶が、甦る。

「サンジーッ!!」

ゾロは、そう叫んで、誰よりも早くサンジの側に駆け寄って、その身体を抱きしめた。

血の気のない顔・・・・・・

ぐっしょりと血で濡れたジャケット・・・・・




・・・・・俺は・・・・・・

・・・・・俺は、また・・・・・・失うのか・・・・・・

・・・・・やっと気付いたのに・・・・・・・

・・・・・やっと気付いたばかりなのに・・・・・・・

・・・・・俺は・・・・・・・・

・・・・・俺はまた、繰り返すのか・・・・・・

・・・・・あの悲しみを・・・・・・・

・・・・・あの絶望を・・・・・・・

・・・・・俺は・・・・・・

・・・・・気が付いたんだ・・・・・・

・・・・・いつの間にか、てめえのこと・・・・・・・

・・・・・そう、初めから、嫌じゃなかった。

・・・・・言葉ほど、俺の心は、嫌がってなかった。

・・・・・てめえに先に好きだと言われて・・・・・・

・・・・・それにあぐらを掻いて・・・・・甘えていた・・・・・

・・・・・いつも俺に見せるあの顔が、いつの間にか、当たり前になってた・・・・・

・・・・・いつも、俺は、気付くのが遅くて・・・・・・

・・・・・気が付いたら・・・・・・・・これかよ・・・・・

・・・・・俺は、また・・・・・・失うのか?

・・・・・かけがえのない友を亡くしたように・・・・・・・

・・・・・かけがえのない愛する者を・・・・・失うのか・・・・・・




ゾロは、ただ黙ったまま、サンジの身体を抱きしめる。

「ちょっと、ゾロ! そこどいて!」

ナミが、ゾロを一喝して、サンジの状態を診る。

「ゾロッ! 冷蔵庫から、氷をたくさん持ってきて! それとウソップとルフィ!あたし

の部屋から、消毒液と包帯とタオル、ありったけ持ってきて! 早く、急いで!!」

ナミは、皆に大声でそう叫んで、サンジの服を脱がせ始めた。

そして、持ってきた氷を脇の間に挟み、消毒液で、肩を綺麗に消毒し、止血を試みる。

それから、止血が上手くいくと、肩に包帯を巻き、ゾロに、サンジを部屋に運ぶように指示し

た。

ゾロは、サンジをソファーベッドに横たえると、そのまま、ベッドの脇に腰を下ろす。




・・・・・・良かった・・・・・

・・・・・・失くしたと・・・・・・そう思った・・・・・

・・・・・・本当に・・・・・良かった・・・・・・

・・・・・・本当に・・・・・・




「・・・・・・・もう、ダメかと思った。」

ゾロは、自分の手に付いたサンジの血を眺めて、そう呟く。

暫くして、ナミが、様子を見にやってきた。

ナミは、サンジの容態を診てから、ゾロの方を見てにっこりと笑う。

「もう、大丈夫よ。 弾は、貫通してたようだし、血も、もう止まったわ。 顔色も、だい

ぶん良くなってきたし、もう少ししたら、気が付くはずよ。 ふふ、でも、さっきのゾロの

顔、サンジ君に見せてあげたかったわ。 どっちが、怪我人だかわからないくらい、

真っ青になって・・・・・その様子じゃ、やっと、自分の気持ちに気が付いたってとこか

しら。 本当は、サンジ君が、傷つく前に気が付いて欲しかったけど・・・・・ さて、

お邪魔虫は、退散するわ。 あっ、それから、今日は、この後、熱が出ると思うから、

この薬、飲ませて上げてね。 じゃあね、ゾロvv」

ナミは、にっこりと笑ってそう言うと、ゾロに薬を渡して、部屋を出ていく。

ゾロは、何とも気まずい顔をしてその薬を受け取った。




・・・・・・ナミの野郎・・・・・いつから気が付いていやがった・・・・・・・

・・・・・・あなどれん・・・・・




暫くして、サンジが、目を覚ました。

「あっ、俺・・・・・ッ痛っ・・・」

サンジはそう言って、身体を起こそうとする。

「まだ、無理だ。 もう少し、これ飲んで眠ってろ。」

ゾロはそう言って、サンジの頭を優しく撫でた。

「・・・・ごめんな。 俺・・・・・また、ゾロに迷惑・・・・・・掛け・・・・ちま・・・・った。」

サンジは、ゾロから顔を背けて、そう呟く。

震える肩が、サンジが泣いていることを物語っていた。

「・・・・・サンジ・・・・俺の方こそ・・・・・すまない。 ・・・・俺、気が付くの遅く

て・・・・・てめえを傷つけてしまった。 ・・・・本当にすまねえ。 俺、何度でも、

てめえが、気の済むまで、謝るから・・・・・」

「い、いいよ、もう。 ・・・・俺が、勝手に、自分の気持ちを押し付けてたんだか

ら・・・・・・ゾロのせいじゃねえよ。 ・・・・だから・・・・そう謝んな・・・・・・余計に辛

く・・・・なる・・・から・・・・・」

サンジは、ゾロの言葉を途中で遮って、精一杯の笑顔を、ゾロに向ける。

ゾロに迷惑を掛けないと決めたサンジが、作り出した精一杯の笑顔・・・・

しかし、ゾロには、泣いてるよりも、悲しげに映った。

「・・・・すまねえ・・・・俺が、てめえにそんな顔させた。 ・・・・もう、そんな顔すんな。

俺が、ずっと側にいるから・・・・・・ もう絶対に、てめえを泣かす様なことは、しねえ。

・・・・だから・・・・・だから・・・・・そんな顔、すんな。」

ゾロは、優しくそう言って、サンジの頬に触れる。

ポトリと、サンジの瞳から、涙がこぼれ落ちた。

「フッ・・・・・ダメだよ、そんな優しい事言っちゃ・・・・・俺・・・・・・また、勘違いしちゃう

とこだっただろ? ・・・・俺は・・・・・大丈夫。 ・・・・・だって、こんなに仲間思いの奴

が、この船には、いるから・・・・・・」

サンジは、慌てて涙を手で拭うと、にっこりと、あの時と同じ、綺麗な顔で笑う。

ゾロの胸が、キューッと締め付けられる。

「・・・・良いんだよ。 勘違いしても、良いんだ。 ・・・・サンジ、俺は、仲間だから心

配してるんじゃねえ。 もっと・・・・俺にとって、かけがえのねえ奴として、心配してん

だ。 好きだ、サンジ・・・・・・俺は、てめえのことが、好きなんだ。」

ゾロはそう言って、サンジの頬に流れる涙を手で拭う。

その言葉を聞いて、サンジの顔が歪む。

「フッ・・・クッ・・・・ゾロ・・・・本当に? ・・・・・・嘘じゃない? ・・・・・・・本当の

本当? ・・・ヒックッ・・・・ゾロ・・・・・ふぇ・・・・ゾロ・・・・ひぃ・・・・っく・・・・」

サンジは、顔を涙でぐしょぐしょにしながら、ゾロの名を呼んだ。

「・・・・・チョコレートケーキ、美味かった。 ・・・・でも、俺、正直、甘いモノは、苦手な

んだ。 作ってくれるのは良いけど、今度からは、甘くねえのにしてくれねえか。」

「うん・・・うん、ゾロ・・・・・ありがと、ゾロ・・・・・・俺・・・・・やっぱり、ゾロの事好き

だ! 大好きだーっ!! ッ痛っ!」

サンジは、肩の怪我も忘れて、ゾロに抱きつく。

「お、おい! てめえ、肩、怪我してんだぞ。 良いから、これ飲んで、寝てろって。」

ゾロは、慌てて、サンジをベッドに寝かす。




・・・・・・てへへ・・・・・

・・・・・・もしかして、俺って、凄く、愛されてる??

・・・・・・夢みたいだ・・・・・・・

・・・・・・ゾロが・・・・・ゾロが、俺のこと・・・・・・・・好きだって・・・・・・

・・・・・・好きだって言ってくれたんだ・・・・・・

・・・・・・こんな怪我なんて・・・・・

・・・・・・いっぺんで治っちゃいそうな、気分だ・・・・・・

・・・・・・嬉しい・・・・・・嬉しい・・・・・・・幸せだーっ!!




サンジは、ニコニコと笑って、ゾロの方を向いて、あ〜んと、口を開ける。

「??なにしてんだ、サンジ??」

ゾロは、薬を手にして、不思議そうにそう聞いた。

「・・・・だって、薬、飲むんだろ? だから・・・・・あ〜ん・・・」

サンジは、そう言って、ゾロが、薬を飲ませてくれるのを待っている。

その様子は、まるで餌付けされているヒナのよう・・・・・・




・・・・・・・こいつは・・・・・・・・

・・・・・・・本当に、俺とタメか??

・・・・・・・お子ちゃまかよ、全く・・・・・・・




ゾロは、激しい虚脱感に見舞われた。

「・・・・・仕方ねえ・・・・ほらよっ!」

ゾロはそう言って、薬と水を口に含み、サンジの口に流し込んだ。

ゴクリ・・・・

サンジの喉が鳴って、薬は、飲み込まれた。

「!!・・・/////なっ・・・・なっ・・・・」

サンジは、突然のゾロの行動に、びっくりして声が出ない。




・・・・・・ククク・・・・・こいつ・・・・・・面白れえ・・・・・・




「なに、驚いてんだよ。 てめえが、飲ませろって、言ったんだろ?」

ゾロは、笑いを堪えて、平然とした顔でそう言う。

「言ったけど・・・・言ったけど、あんな飲ませ方、するなんて・・・・・・・そんなの・・・

俺・・・/////」

サンジは、耳まで真っ赤にして、そうゾロに言う。




・・・・・・ククク・・・・・本当に・・・・・・可愛い奴だな・・・・・こいつ・・・・・




「・・・・嫌なら、もうしねえよ。」

ゾロはそう言って、サンジの頭をポンと叩いた。




・・・・・そう、今はな・・・・・・

・・・・・これ以上したら、俺の身が、もたねえし・・・・・・




「えっ?! ・・・・・それは・・・・・・
嫌だ。

サンジは、俯いたまま、そう呟く。

「ん? 何か言ったか?」

ゾロは、サンジに声を掛けた。

「ううん、なあ、ゾロ・・・・・・もう一回しよ?」

サンジはそう言って、ゾロのシャツを引っ張った。

「・・・・・てめえなあ・・・・・肩、怪我してんの忘れてるだろ? いいから、寝ろって。」

ゾロはそう言って、慌てて毛布を掛けてやる。




・・・・・・くはあ・・・・俺を・・・・煽るんじゃねえよ・・・・・・

・・・・・・ただでさえ、上半身、裸で、目のやり場に困ってると言うのに・・・・・

・・・・・・このまま、触れるだけのキスで終われるほど、俺は、枯れてねえんだよ・・・・




「・・・・・ダメ??」

サンジが、上目遣いで、コクンと首を傾げてゾロを見る。

それは、ゾロの理性をうち砕くのには充分すぎた。

「っ・・・・知らねえぞ、どうなっても・・・・・」

ゾロは、ガバッと立ち上げると、そのままサンジに口付けた。








    
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<コメント>

やっと、自分に気持ちに気が付いたゾロvv
ふう・・・今回は、ゾロの気持ちがいっぱい書けて、ちょっと、すっきり・・・・
サンジ大怪我してるし・・・・まだ、告白したばかりだし・・・・・・
エロは、止めようと、正直、思いました。(告白!)
だって、大怪我してる奴を襲うなんて・・・・そんな鬼畜な事・・・・・
でも、ヤッちゃいましょうvvこの際!
って、ももぬいさん(リク提供者)が、ももぬいさんが〜・・・・
いやね、ルナは、止めたんですよ・・・って、嘘、ぴよ〜ん♪
(・・・・・いい加減、この性格を、どうにかしろよ・・・-_-;)
次は・・・・・Hだ〜vv