POWER OF LOVE


その2





「おやつ〜、お、や、つ〜!!」

ルフィは、一目散に、キッチンへ駆け出していった。

「おい、ルフィ! ・・・ま、いいか・・・」

ゾロは、気分をそがれて、刀を鞘に収めると、ルフィに続いて、キッチンに向かった。

「・・・ウソップ・・・大丈夫? ・・・立てる?」

チョッパーが、心配そうに、ウソップに声をかける。

「・・・・な・・・ん・・と・・・か・・・・」

ウソップは、意識を取り戻すと、そう返事して、チョッパに支えられて、キッチンに向かった。

「てめえ!! 手ぐらい洗って来やがれ!!」

キッチンに入り、すぐさま、テーブルの上のピタサンドに手を伸ばそうとしたルフィは、

即座に、サンジから、キッチンの外に、蹴り出された。

「いってえ! いいじゃんか、手えぐらい洗わなくても・・・」

「何か、言ったか? ルフィ!!」

ブツブツ言っていたルフィが、サンジの一言で、もうダッシュして、洗面所に駆け込んだ。

ここで、サンジの機嫌を損ねたら、間違いなくおやつは、無しになってしまう・・・

ルフィの、判断は、早かった。

「ほら! てめえも早く、手え洗って来い!」

サンジは、キッチンの入り口で、何故か、満足げにルフィが蹴り出されるのを見ていたゾロに

向かって、そう言った。

「ヘイ、ヘイ。」

ゾロは、そう返事して、洗面所には行かず、流しの方へ向かった。

「?! て、てめえ、そんなとこで、汚え手、洗うんじゃねえ! 全く、何度言って

も・・・」

サンジは、言っては無駄と思いながらも、振り向き様に流しで、手を洗うゾロに、文句を言っ

た。

そこには、チョッパーの、例の失敗作が入ったビーカーを手に持ち、口を付けたゾロの姿があ

った。

「ばっ、ゾロ!! 駄目だ!! それ!!」

サンジはあわてて、ゾロに駆け寄り、手にしていたビーカーを叩き落とした。

「ガシャ−ン!!」

手から叩き落とされたビーカーが、床に落ちて、粉々に砕け散った。

「ゾロ!!ゾロ、これ・・・飲んじまったか?! 飲んじまったのかって、聞いてんだ

よ!!」

サンジは、ゾロの胸ぐらを掴むと、必死の形相で、ゾロに確認した。

「なんだ?! これ、飲んじゃまずかったのか? 一口飲んだが、別に何ともねえ

が・・・」

ゾロは、事情がわからず、訝しげにサンジを見た。

それでも、掴みかかってきたサンジの腰に腕を廻すのを忘れない。

「良かったー!!」

サンジは、ゾロの様子に何の変化もないので、ほっと胸をなで下ろした。

「コホン!・・・お忙しいとこ悪いんだけど・・・・あれ、止めなくて、良いの?」

ナミが、抱き合った状態の二人に、聞こえるような大きな咳払いを一つして、テーブルの上

のおやつを口一杯に頬張るルフィを指さした。

すでに、テーブルの上のピタサンドは、半分近くの数しか無く、それでも、ルフィの食べるペ

ースは、一向に落ちる気配を見せない。

それどころか、ますますペースが上がっているようにも見える。

「ルフィ!! てめえは!!」

サンジは、真っ赤になりながら、ゾロの腕から、スッと身を翻すと、ルフィにアンチマナーキッ

クをお見舞いした。

それでも、口に頬張るのを止めないルフィを猫のようにつまみ上げると、キッチンの外に放り

投げた。

それから、他のクルー達の分をとりわけ、残りのピタサンドをバスケットに手際よく詰めると、

追い出されて、シュンとしていたルフィのところへ行って、

「てめえのは、これだけだ。」

と、バスケットを渡した。

「おう!!」

ルフィは、にかっとサンジに笑顔を向けると、お気に入りの船頭に座って、ピタサンドを食べ

始めた。

(・・・ったく、いつまでも・・・・)

サンジは、ルフィに甘い自分に苦笑しながら、キッチンへと戻った。

キッチンに扉に手をかけ、中に入ろうとしたとき、あわてた様子のウソップと、かち合った。

キッチンの様子も、騒がしい。

「ん? どうした? なんかあったのか?」

サンジは、ウソップに言った。

「おお!! サンジ! 大変だ! ゾロが、ゾロが、倒れた! そいで、今、お前を呼

びに行こうとしてたところだ! チョッパーが、今、診察してる。」

ウソップが言い終わるのも待たず、サンジはあわてて、ゾロの側に駆け寄った。

「ゾロ!! オイ!ゾロ!!」

床に倒れているゾロを抱きかかえて、思いっきり揺らす。

「サンジ。 揺すっても駄目だよ。 さっきから、何をやっても、起きないんだ。 ・・・意

識が、戻らないんだ。 ・・・原因が、わからない。 別に、外傷は無いみたいだ

し・・・」

チョッパーは、変形して大きくなると、ゾロを揺さぶるサンジを後ろから抱きしめて止めた。

「んなっ!! さっきまで、全然、元気だったじゃねえか!! 何でまた、急に・・・

!!!もしかしたら。 ・・・チョッパー!!」

サンジは、チョッパに、ゾロがビーカーの中の液体を一口飲んだことを話した。

「それだ!! あれは、元々麻酔用に調合したモノ。 原因が分かったら・・・お、俺、

今から、中和剤作るから!!」

チョッパーは、急いで男部屋に戻ると、薬の調合に取りかかった。

「サンジ君。 早く、ゾロをこっちのソファに移してやって。」

一部始終を見ていたナミは、ゾロの横で、呆然としているサンジに声をかけた。

ロビンが、てきぱきと、ハナハナの能力でソファをベッド型に変え、シーツを敷き、簡易ベッド

を作る。

サンジは、意識のないゾロを背負うと、静かにベッドに横たえた。

規則的な寝息。

・・・いつも昼寝しているときと変わらず・・・・
 
・・・違うのは・・・これが、あの薬のせい・・・・

サンジは、自分を責めた。

何で、皆が来る前に処分しておかなかったのか・・・

自分さえ、きちんと片づけてさえいれば・・・・

急に、とてつもない不安が、頭をよぎる。

・・・もし・・・・このままだったら・・・・・

・・・このまま目覚めることがなかったら・・・・

サンジは、ゾロの側で、俯いたまま、キュッと唇をかみしめ、ゾロの腹巻きを握りしめた。

「サンジ君、大丈夫よ。 もうすぐ、チョッパーが薬を持ってきてくれるわ。 そしたら、

すぐに起きるわよ。」

「後は、名医に任せましょ。」

ナミとロビンが、青ざめたサンジを優しく慰める。

「お、おう。サンジ。 もうすぐだ。 チョッパーは、なんだかんだ言ってもすんげえ名医

だぜ。そんな薬の100や200,アッという間に作ってるに違いねえ。 俺、ひとっ走

りして、薬持ってきてやるよ。」

そう言って、ウソップは、キッチンを出ていった。

1時間後、キッチンは、まだ、重苦しい雰囲気に包まれていた。

ソファの側で、一人、サンジが、ゾロの顔を見つめている。

他のクルー達は、気を利かして、それぞれ、キッチンを出ていった。

微動だにしない身体・・・・

それでも、規則的な呼吸が、サンジの耳に届く。

「・・・ゾ・・・ロ・・・ねえ・・・ゾロ・・・起きろよ・・・」

サンジは、震える声で、振り絞るように、そう呟いた。

「ばたんっ!!」

勢い良く、キッチンの扉が開いた。

「サンジー!! できたぞ!! すぐ注射するから。 もう、これで、大丈夫だ。」

チョッパーが、急いで、ゾロのもとへ駆け寄った。

そして、ゾロの腕に、中和剤を注射した。

「・・・なんにも、起こんねえぞ?!」

サンジは、焦ったように、チョッパに詰め寄る。

「今、注射したばかりだからだよ。 後5分もしたら、体内の薬も中和されて、意識が

戻るはずだ。 もう少し待って、サンジ。」

サンジとチョッパーは、些細な反応も逃さないよう、ゾロの様子をうかがった。

「・・・・うっ・・・・」

大量の汗と共に、ゾロのからだが、身じろいだ。

「「ゾロ!!」」

チョッパーとサンジは、二人同時に呼びかけた。



<next>  <back>  <kiririki−top>


<コメント>

ゾロの腹巻きを掴むサンジ・・・何となく笑えるのは・・・私だけですか・・・
・・・シリアスな場面のつもりだったんですけどね・・・
まだ、まだ続きます!!