POWER OF LOVE

その1





ここは、グランドライン。

春島が近いのか、このところ、気候が安定して暖かい。

昼食も終え、メリーゴーランド号ののクルー達は、それぞれ自由気ままな時間を過ごしてい

た。

ナミは、甲板のテラスで、次の島迄の予想航路の確認と、この地域の海図づくり。

ロビンは、ナミの隣で、ポーネグリクに関する本を読んでいる。

ルフィは、メリーの頭に上で、たわしを餌に釣れもしない釣り糸をたれ、ウソップは、甲板で、

改良型火薬星の作成中だ。

チョッパーは、キッチンで、ドクトリーヌから学んだ薬を調合している。

そして・・・サンジは、船尾で、鼻歌を歌いながら洗濯物を干し、そのすぐ近くで、ゾロが、ミカ

ンの木を背にして眠っていた。

いや、性格には、寝たふりをしているといった方が良い。

(サンジの奴、やけに今日は、上機嫌だな。 何歌ってんだ? まあ、ここで話しかけ

て、せっかくの眺めを台無しにしたくねえし・・・もうちょっと、寝たふりしとくか・・・)

ゾロは、わからないように、薄く目を開けて、サンジの様子を眺める。

「ラ、ラ、ラ、ララ〜」

サンジは、バラード調のメロディを口ずさみ、にこやかな表情で、次々と皆の洗濯物を干して

いく。

陽に透けて、キラキラと輝く金色の髪。

海と同じ色をした蒼い瞳。

袖をまくった細い腕の白さが、ゾロの瞳を釘付けにした。

(触りてえ〜。)

ゾロは、眉間にしわを寄せ、その衝動を何とか、押さえ込んだ。

洗濯物を干し終えたサンジは、籠を片手に抱え、銜えていたタバコをもみ消すとゾロの方に

近づいてきた。

(ゲッ、やべえ!!)

ゾロは、あわてて目を閉じた。

「ゾォ〜ロ!! 俺の歌、聞きてえ?」

サンジは、ゾロの顔を覗き込むと、華のような笑顔でそう言った。

「・・・・・・・・(ばれてる??)」

ゾロは、内心冷や汗を掻きながらも、黙って寝たふりを決め込んだ。

「ゾロ!! 俺が、てめえの視線に気付かねえとでも思ってんのか?!

バレバレなんだっちゅうの!!」

サンジは、クスクスと笑いながら、ゾロの唇に軽く触れるだけのキスをした。

「・・・・バレてたか。」

ゾロは、ばつが悪そうに、笑顔でサンジの身体を抱き寄せた。

「とーぜん!!」

サンジは、なすがまま、ゾロの胸に頭を付けて両腕を背中に廻した。

「ゾロ、今、ここが、ドキドキしてる・・・」

サンジは、笑いながら指で、ゾロの胸を指すと、顔を上げ、ゾロの額に自分のおでこをつけ

た。

「てめえのせいだ。 責任とれよ。」

ゾロは、そう言うと、抱きしめる腕に力を込め、サンジに優しく口付けた。


「サンジ〜!! おやつ〜!! 腹減った!!」

今にも伸びてきそうな勢いで、ルフィの声が船内に響きわたる。

「チッ。」

ゾロは、渋々サンジを離した。

「しゃーねえな。 続きは、夜に・・・なっ?」

サンジは、ゾロの耳元でそう囁くと、宥めるように、ゾロの頭をポンポンと叩き、そのまま、キ

ッチンに向かった。

(ルフィの奴・・・わざとだ・・・わざとに違いねえ・・・)

ゾロは、殺気を身にまとい、刀に手をかけると、船頭にいるルフィを睨んだ。






「あれっ? ノートに書いてあるように、調合したのに・・・何でだ?! 色は、もっと黄

色っぽくなるはずなのに・・・失敗だ!」

チョッパは、キッチンのテーブルの上で、透明な液体の入ったビーカーを見て、がっくりと肩を

落とした。

「チョッパー、そう落ち込むな。失敗は成功の素ってな。 今度は、きっと旨くいくさ。

そのくれえで、いちいち落ち込んでたら、ウソップなんか、とっくに人間やめってっぞ。

っで、一体、何の薬、作ってたんだ?」

サンジが、おやつのピタパンの焼き具合を見ながら、チョッパーを慰める。

「ああ、これか? これは、麻酔用の薬だ。 ドラム島から、結構持ってきてたんだけ

ど・・・もう、少ししか残ってなくて、調合してたんだよ。」

チョッパーが、気を取り直して、調合材料を片づけ始めた。

そろそろ、皆が、キッチンに、おやつを食べにやってくる頃だ。

チョッパーは、失敗した薬が入ったビーカーを、流しに運んだ。

「チョッパー、それ、そこに置いてていいぞ。 皿と一緒に洗っちまうから。 

それより、外にいる奴ら、呼んできてもらって、良いか?」

サンジは、焼き上がった、ピタパンを半分に切ると中に、色とりどりの具を詰めながらチョッパ

ーに頼んだ。

「うん。わかった。 俺、呼んでくるよ。」

チョッパーは、そのまま、流しの横に、失敗作の入ったビーカーを置くと、キッチンを出ていっ

た。







「ルフィ、てめえ・・・・」

ゾロが、刀に手をかけて、ルフィのところに歩いていく。

「ああ? ゾロー? お前、起きてたのか? 何だ、珍しいなあ。 もうすぐ、サンジの

おやつができあがるぞ。 ゾロも、食うのか?」

ルフィは、ゾロの様子にかまうことなく、平然と、メリーの頭から飛び降りると、ツカツカとゾロ

の側により、真顔で、こう言いきった。

「サンジのおやつは、おいしーぞー。 なんせ、俺の(選んだ)コックだからな。」

【俺の】が、やたら強調されて、ゾロの耳に届く。

「てめえ、上等だ!!」

ゾロが、刀を鞘から抜いたその瞬間、

「どかーーんっ!!」

ルフィの後ろにいたウソップの改良型火薬星が、爆発し、三人を直撃した。

甲板が、白い煙で包まれる。

その爆発の衝撃で、ゾロとルフィとウソップは、床に倒れ込んだ。

いち早く反応して、パラソルをハナハナの能力で盾にした、ロビンとナミだけは、無事だった。

「ケホッ、ケホッ、ケホッ。 なんなの?・・・・また、ウソップね。 あんた、火薬の量、

間違えたでしょう。 いつか、この船、木っ端みじんになるわよ。暫く、船の上での火

薬星の作成は中止よ、中止! わかった?? それと、そこ、ちゃんと、修理しときな

さいよ。」

ナミは、天候棒で、ウソップの後頭部を一撃すると、そう言った。

「ふふ。 本当、この船は、退屈しないで良いわ。」

ロビンは、目を細めて、静かに微笑んだ。

「おい! 今、凄い音したぞ?! 何か、あったのか?・・・・・・ゾロ、ルフィ、ウソッ

プ・・・・お前ら、大丈夫か??」

全身、煤で汚れた3人が、甲板の上に倒れている。

チョッパーは、あわてて3人のところに、駆け寄った。

「おい!!大丈夫か? しっかりしろ!!」

そう言って、チョッパーは、3人を交互に揺さぶった。

「「「いってえ〜!! 死ぬかと思った!!」」」

3人の声が重なった。

「おう、チョッパー、何か用か?」

ルフィが、チョッパーに話しかける。

「どうしたんだ? お前ら、身体中真っ黒だぞ?」

そう質問したチョッパーに、ウソップが胸を張って、こう言った。

「これは、だな。 必殺黒煙星と言ってな、敵を、こういう風に、真っ黒に汚して不快感

を与える武器だ! どうだ、すげえだろ?」

「「嘘、つくなっ!! バキッ!!」」

左右にいた、ゾロとルフィから思いっきり、顔面パンチを共に、ツッコミが入った。

「・・・・・・あっ、そうだ! サンジが、皆をキッチンに連れて来いって言ってた。 おや

つ、もうすぐ出来るからって。」

チョッパーは、白目をむいて倒れているウソップに同情しながら、サンジからの伝言を皆に伝

えた。




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<コメント>

ごめんなさい。 思いっきり、ショートで終わるはずが、
めちゃ、長くなります・・・
だって、まだ、序盤なんですもの。。。
ショボイ癖に、だらだら・・・(逃)