Here I am その2. |
「・・・・・・・どうだ?」 食事の最中、サンジはそうゾロに尋ねる。 「あ? なにが?」 「だから、飯だよ、飯! 美味いのか不味いのかどっちなんだよ!」 自分の意図が上手く伝わらず、サンジはいらただしげにそう言った。
「・・・・・・別に? いつもとかわらねえし・・・・てめえの作るもんで不味い訳無いだ ゾロは、何故サンジが唐突にそう聞いたのかわからなかった。 「あ、いや・・・・いつも、何にも言わねえから、確認したくなっただけだ。別に深い意味 サンジは、いつものような口調でそう言い返しながらも、ゾロの返答にホッと胸を撫で下ろす。 「サンジ? おい、サンジって?」 「あ? ああ、ごめん、ゾロ・・・。 俺・・・・先に休んでも良いか? ちょっと疲れた。」 サンジは、ゾロの言葉にそう返事して、キッチンを出て行く。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 ゾロは黙ったまま、その背中を見送った。 「・・・・・・・・あの馬鹿・・・。」 ゾロは、誰もいなくなったキッチンでそう呟くと、手早く食事を済ませ、キッチンを出る。 「・・・・・ちょっと出てくる。」 ゾロは、サンジのいる男部屋にそう声を掛け、船を下りた。 暫く、ボーっと天井を見つめていたサンジは、気を取り直してキッチンを訪れる。 「・・・・・・おかしいな・・・? 何処にもいねえ・・・。 ・・・・・船下りたのか?」 サンジはそう呟いて、甲板の縁に座り込む。 「・・・・・・・味覚のねえコックだなんて・・・・・・・笑えねえよ・・な・・・。」 火をつけた煙草の味もわからなくなったサンジは、そう言って自嘲気味に微笑んだ。 「・・・・・・・・どうすんだよ、俺・・・・。 このままだったら・・・・・・どうすんだよ・・・。」 ガクガクと身体の震えが止まらない。
「・・・・・・・料理人じゃなくなった俺は・・・・・・・・どうすれば・・・・良い・・・? サンジはそう呟いて、船の縁に足を掛けた。
「ゾロ・・・・・・・ゾロ・・・・・何処に行っちまったんだよ・・・。 居てくれよ・・・・・ここ ガックリと膝を崩し、サンジは甲板に精神的なショックで、気を失って倒れてしまった。 暫くの後、チョッパーを連れてきたゾロは、甲板で眠るサンジにそう声を掛け、抱き上げる。 「ゾロ・・・・・・・何処に行ってたんだよ。 ・・・・・・俺・・・・・俺・・・・・。」 抱き上げられる感触で瞳を覚ましたサンジは、そう言ってゾロにしがみついた。 「・・・・・・大丈夫だ。 俺はここにいるから・・・。 チョッパーを連れてきた。 診て貰 ゾロは、優しくそう言うと、サンジをソファーに横たえる。 「サンジ、ゾロから聞いた。 頭を殴られたんだって? ちょっと診せてね・・・。」 チョッパーは、そう言うとサンジの後頭部を触診し始めた。
「・・・・・別に、打撲だけのようだけど・・・・サンジ、なんか変わったことない? 例えば 一通りの診察を終え、チョッパーがサンジにそう尋ねる。 「・・・・・あるんだね、自覚が・・・。 なに?教えて・・・・サンジ・・・。」 チョッパーは、サンジの顔を見つめてもう一度尋ねる。 「待て・・・。 ・・・・・・・ゾロ・・・・行くな・・・・ここにいて・・・・・くれ・・・よ・・・。」 搾り出すようなサンジの言葉に、ゾロは、サンジの顔を見る。
「・・・・・・・・俺さ・・・・・・味、わかんなくなっちまった。 はは・・・・・笑えるだろ・・・? サンジは、笑みさえ浮かべて飄々と言葉を続ける。
「なぁ、ゾロ。 おっかしいだろ・・・? 俺、味わかんねえんだぜ・・・? コックの癖
「サンジ・・・!!ざけてんじゃねえぞ! まだ決まった訳じゃねえだろ!! 勝手に諦 ゾロは、悲痛なサンジの言葉を遮るようにそう叫んで、チョッパーに同意を求めた。
「え?!あ、ああ、そうだよ。 サンジ、悲観過ぎだよ。 一時的な味覚障害だ。 暫く チョッパーは、ゾロの言葉にハッとして、すぐさま、サンジに薬を渡す。 「・・・・・・サンキュー、チョッパー・・・。 ・・・・・そうだよな・・・すぐに治るよな。」 サンジは力なくそう呟くと、チョッパーに言われるままに薬を飲み、横になった。 「・・・・・・・ゾロ・・・・ちょっと来て・・・・。」 サンジから寝息が聞こえたのを確認して、チョッパーは、ゾロを部屋の外に連れ出す。
「ゾロ・・・・・サンジには、ああ言ったけど・・・。 確証がある訳じゃないんだ。 いつ味
「チョッパー・・・・それ以上言うな。 俺は信じてる。 あいつの意志の強さを・・・。 悲観的なチョッパーの言葉に、ゾロは、はっきりとした口調でそう言い返す。
「うん、そうだよね。 サンジなら、絶対に自分で治すよね。 えへへ、不思議だ。 チョッパーは、にこやかにそう言うとキッチンに向かっていった。 「よろしくな、チョッパー・・・。」 ゾロはチョッパーにそう声を掛けると、また部屋に戻り、サンジの顔を覗き込む。 「・・・・・・サンジ・・・・大丈夫。 俺は、ずっと傍にいるから・・・・。 一人で苦しむな その夜、ゾロは一睡もすることなく、サンジの苦しげな寝顔を見つめ続けた。 |