彼の上機嫌、彼氏の不機嫌

その3





「あんにゃろー!!」

サンジは、人垣をかき分けて、男達の前に飛び出た。

っと、サンジより一瞬早く動く男があった。

その男は、素早く男達の中に飛び込むと、華麗な剣捌きで、次々と、男達を倒していった。

そして、最後の一人となったところで、今まで倒れていた男の一人が、急に立ち上がり、女

性の首に、ナイフを突きつけた。

「よう、兄ちゃん。 刀、捨てな。 形勢逆転だな。」

そう言って、勝ち誇ったように、男に言い放った。

「下衆が!!」

暫く、傍観を決め込んでいたサンジは、男の影から、スッと空高く飛び上がると、ナイフを持っ

た男の頭に、強烈な踵落としを食らわせた。

勝負は、一瞬で、ケリが付いた。

「おぼえてろ!!」

男達は、お決まりの捨てぜりふを残して、その場から、這々の体で逃げ出した。

「ありがとうございました!!」

女性は、サンジ達にお礼を言うと、人混みの中に、消えていった。






「お前、なかなかやるな。サンキュー、助かったぜ。」

そう言って、刀をしまい、男は、サンジに笑いかけた。

「ああ、てめえもな。」

そう言って、サンジは、初めて男の顔を見た。

「「!!!!!」」

「サ、サンジか?」

「てめえ、シュウ!シュウじゃねえか!!」

サンジとシュウは、偶然の出会いに驚いた。


この【シュウ】と言う男・・・

昨日、サンジが、ゾロに語って聞かせた、3つ年上のバラティエで、兄弟のように育った男な

のだ。

そして、5年間、一緒に修行して、サンジが16歳の時、急に、バラティエからいなくなった。

サンジは、その理由を知らないが、オーナーのゼフには、その理由を告げてから、出ていっ

たらしく、別段騒ぎ立てることもなく、年月だけが、過ぎていった。

「お前、どうしてここに?」

「そりゃあ、こっちの台詞だ!」

シュウとサンジは、久しぶりの対面に互いの肩を抱き合った。

バラティエを出たシュウは、方々を旅して、昨年、ここに店を構えていた。

バラティエでの5年の修行で、シュウの料理の腕は一流で、店も、順調に、繁盛していた。






「お前、本当に、夢、叶えてんだなあ。」

サンジは、シュウの店にはいると、改めて、シュウにそう言った。

子供の頃に語り合ったお互いの夢・・・

俺は、オールブルーを見つけて・・・・

シュウは、自分の店を持って・・・

必ず叶えると、互いに誓ったあの頃・・・

「ま、そういうことだ。 ああ、そこにかけて待っててくれ。今、俺の料理、食わせてや

るから・・・」

そう言って、シュウは、調理場へ入っていった。






【EVER BLUE】と書かれた、リースで飾られた手作りの看板・・・

落ち着いたカントリー調の内装・・・

全てが、手作りで、暖かみが感じられる・・・

(本当に、良い店構えだな・・・)

サンジは、店を見回して、そう思った。

「待たせたな。ここの名産のムール貝を使った料理だ。さあ、食って、感想を聞かせ

てくれ。」

そう言って、シュウは、テーブルの上のいくつかの料理を並べた。

「うん。 旨えよ。 てめえ、バラティエにいた頃より、ずっと料理の腕、上がってんじ

ゃねえか。 おっ、これ。最高級のオリーブオイル使ってんな。後、隠し味に・・・チョウ

ザメの卵か?」

サンジは、一皿ずつ、料理を味わった。

「おい、シュウ。 何で、お前、俺に黙って、店やめちまったんだ?」

「あ?・・・ああ・・まあ、あん時は、俺も精神的に修行が足りなかったというか、子供

だったというか・・・ま、いいじゃねえか、そんなこと。 ところで、サンジ。今、何やっ

てんだ? それと、お前、良くあの店出る気になったな。オーナーがいる間は、絶対

に離れないと思っていたのによ。何が、お前を変えたんだ?!」

「ああ、ちょっとな・・・今、俺は、海賊船のコックをやってるんだ。 皆、気の良い連中

ばかりだ。 ああ、そうだ! 明晩、ここに連れてきても良いか?紹介してやるよ。」

サンジは、シュウの質問に、一瞬、ゾロの顔が浮かんだ自分に苦笑すると、シュウに向かっ

て、そう言った。

「・・・・本当、お前、変わって無いなあ。」

(本当、ずっと、昔のままだ・・・いや、何か綺麗になったというか、艶があるという

か・・・俺が好きだったあの頃、いやそれ以上に成長している・・・参ったなあ・・・

せっかく、忘れられたって思ってたのに・・・忘れようと、あのレストランから去ったの

に・・・やけぼっくりに何とかか・・・でも、今の俺なら、もしかして・・・サンジが、どうし

ても、オールブルーを探しに行くというのなら・・・今の俺なら、一緒に行ってやれ

る・・・一緒に夢を叶えてあげられる・・・ずっと、このまま危険な海賊船のコックやら

せておく必要なんか無い。料理と共に、剣の修行だってずっと、怠りなく続けてきたん

だ。そこいらの海賊にだって、ひけは取らないはずだ・・・勇気を出すんだ。あの頃、

あいつの隣にいることを諦めるしかできなかったあの頃の俺とは、もう違う。サンジだ

って、俺に少なからず好意を持っていてくれたはずだ。ここで言わないと、俺は、一

生、後悔するかも知れない・・・とりあえずは、その、海賊というサンジの仲間って奴

を見定めてみるか・・・)

シュウは、そう、自分の気持ちを固めると、

「ああ、良いぞ。 明晩だな。 空けといてやるよ。 それと、ちょっと、話が有るんだ。

明晩、食事が済んだら、飲みに出かけないか? 良い店、知ってるんだ。」

と、サンジに話した。

「明晩か。 ちょうど良い。あさってには、出航するから、二人だけのお別れ会ってとこ

か。」

シュウの思惑など、夢にも思っていない、サンジは、笑顔でそう、シュウに返事した。

「じゃあ、俺、今日、船番だから。」

そう言って、サンジは。店をあとにした。






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<コメント>

このシュウって言うオリキャラ・・・
良い奴なのか、悪い奴なのか・・・
実は、今の段階で、考えあぐねております・・・
どっちだと思いますか?
あと、2回ぐらいで、終わらせたいなあ・・・
と、思って入るんですけど・・・
何故に、キリリクで、こんなに長く書くのか・・・
はあ・・・