WISH!


その3





ゾロは、全身に返り血を浴び、さながら、自身が、大怪我をしているように見えた。

「ゾロ、お前、風呂入って来いよ・・・着替え置いてるから。 ・・・その格好じゃ、あん

まりだぞ・・・」

サンジは、ゾロの姿に苦笑してそう言った。

「・・・一緒に、入るか?」

ゾロは、サンジの声で、魔獣モードから意識を戻すと、そう言って、サンジを横抱きにした。

「うわっ!! てめえ、血がくっつくじゃねえか!! 止せって。 コラ、下ろせよ!」

サンジが慌てて身を捩る。

「・・・一人で、敵船、潰したんだ。 これくらいのご褒美は、頂かねえとな・・・」

ゾロは、全く悪びれた様子もなく、スタスタと、サンジを抱きかかえたまま、風呂場に向かっ

た。

「・・・もう、ダメだって!」

サンジは、抵抗は止めたものの、口で、ゾロを制止する。

ゾロは、サンジの言葉などお構いなしに、ワイシャツのボタンをはずしていった。






「サンジ〜!! 腹減った〜!!」

ルフィの本日の第一声が、ゴーイングメリー号に響いた。

「なっ、言ったろ? 悪いな、ゾロ・・・一人で、いい子に入ってな・・・」

サンジは、そう言うと、ゾロの額にチュッと口付けて、脱衣室を出ていった。

「・・・ルフィ・・・後で、絶対に、斬る!! ・・・はあ・・・俺・・・何か、祟られてるの

か? どうしてこんなに上手くいかねえんだ?」

あまりの災難(?)続きに、ゾロは、がっくりと肩を落とし、一人、風呂に入っていった。

やがて、着替えを済ませたゾロが、甲板に戻って来た頃には、サンジは、倉庫で、食料と日

用品の在庫チェックをしてクルクルと、忙しそうに、働いていた。

(・・・・そもそも、皆、サンジに頼りすぎだ。 何かに付け、サンジ、サンジって、サン

ジは、俺のなんだからな! てめえらのじゃねえんだよ!!)

取り付く暇もなく駆け回るサンジに、ゾロのイライラは、ますます募り、重苦しい空気を身に纏

い、ゾロは、鍛錬を始めた。

「・・・いい加減やめんかー!!」

ドコッ!!

ナミの天候棒が、ゾロの後頭部にヒットした。

「いっ!! て、てめえ、何しやがる・・・ ・・・今の俺に、いい度胸してるじゃねえ

か・・・」

ゾロは、魔獣さながらにナミを睨み付ける。

「あー、もう、うるさい! あんた、いい加減にしなさいよ! 少しは、周りの迷惑、考

えてよね・・・ もう、チョッパーなんて、怯えてびくびくしてるじゃない・・・ いい? こ

こは、船の上。 何処にも逃げ場がないんだから、仲間を怯えさせてどうするの

よ!! あんたの気持ちも解らないではないけど、もう少し、大人になりなさい。 

わかった?」

ナミは、平然とゾロを見返して、そう忠告した。

「・・・すまない・・・」

さすがに、自分の思ってることが子供っぽいと気付いたゾロは、素直に、ナミの忠告を受け

取った。

「・・・わかればいいのよ、わかれば・・・ もうすぐ、予定だと、次の島に着くわ。 

・・・ゾロ、1日だけ、サンジ君、ゾロに返してあげるわ・・・ だから、それまで、我慢し

てね。」

「・・・お前・・・何、企んでる?」

いつもと違うナミの態度に、ゾロは、つい、思ってることを口にした。

「し、失礼ね!! 人がせっかくサンジ君に頼まれて、仏心出してそう言ってやってる

のに・・・ ・・・そんなに言うんだったら、あんた、一人で、船番しときなさい! 全

く・・・」

「??サンジが???」

「そうよ! サンジ君が、私に1日休暇くれって、さっき、そう言って頼んできたわ。

このところ、嵐だとか、敵襲だとかいろいろあったから、あたしも、サンジ君に悪いな

あと思ってOKしたのに。 ああそう、サンジ君には、ゆっくりと、【一人】で、のんびり

して貰うわ。 じゃあ、船番、お願いね・・・」

ナミは、ヒラヒラと手を振ってゾロから離れようとする。

「ナ、ナミ!! ちょっと待て! 俺が悪かった・・・すまん。 謝るから・・・」

ゾロは、慌ててナミを引き留め、謝った。

「わかればいいのよ・・・ところで、ゾロ、あんた、宿代持ってるの? 持ってるわけな

いわよね? いい? これは貸しよ! 本来なら、あたしを疑った罰として、5倍で返

して貰いたいところだけど・・・今回は、可愛いサンジ君のため、特別に、倍返しで良

いわ。 はい、ここにサインして。」

(・・・それが、目的か・・・魔女が・・・)

ゾロは、口から出かかった言葉をグッと飲み込むと、ナミの借用書にサインして、お金を借り

た。

「・・・ナミ、これ、ちょっと多すぎやしねえか?」

「・・・馬鹿ね・・・せっかくのプライベートだもの・・・一番良い部屋、取っててあげるわ

よ。 サンジ君、たまには、喜ばせてあげなさいよ。」

ナミは、そう言って、ゾロにウィンクしてその場を離れた。

「・・・ナミ・・・お前って、良い奴だったんだな・・・」

ゾロは、初めてナミの粋な計らいに、感謝した。













船は、ナミの言うとおり、昼過ぎには、島に着いた。

「あれ?? ナミ、サンジは??」

チョッパーが、サンジの姿が見えないことに気がついて、ナミに聞いた。

「ほらっ、あそこよ。」

ナミは、街に向かう道に小さく見える二人を指さすと、チョッパーにそう言った。

「えっ?! もう下りたのか?? 俺、サンジと買い物しようと思ったのに・・・」

チョッパーは、少し寂しそうに、そう呟く。

「ごめんね、チョッパー。 サンジ君、最近、色々と忙しかったから、ゆっくりさせてあ

げようと、お休みをあげたの。 チョッパーも、わかってあげてね。」

ナミは、優しくチョッパーにそう言った。

「・・・うん。 そうだな、サンジは、いつも忙しそうだもんな・・・ ・・・でも、何で、ゾロ

と一緒なんだ?」

チョッパーが不思議そうに首を傾げる。

「ふふ。 さあね。 それは、二人が帰ってきたら聞いてみると良いわ。 それより、チ

ョッパー、買い物があるんなら、あたし達と一緒に、街に行く? あたし達も、今から、

ちょうど、街に行くところだから。」

そう言って、ナミは、にっこりと笑った。

「い、良いのか?? うん! 俺、ナミとロビンと一緒に、買い物に行く!!」

そう言って、チョッパーは、嬉しそうに笑った。















「サンジ、ちょっと、待っててくれ。」

ゾロはそう言うと、店先にサンジを残して、中に入っていった。

見たところ、ただの洋品店のようだ。

(???なんだ? こんなところに、ゾロ、何の用事があるんだ??? ここは、刀鍛

冶の店じゃねえゾ??)

いつも同じ格好をして、ファッションセンスのかけらもないゾロが、こんなしゃれた店に入って

いくなんて、サンジは、この状態が信じられず、思わず、頬をつねった。

「痛てっ! これは、夢じゃねえようだ・・・それにしても、何してんだ?ゾロの奴・・・

 ・・・遅せえよ・・・」

サンジは、いつまでも出てこないゾロに痺れを切らして、店のドアを開けた。

どんっと、ドアを開けた途端、誰かにぶつかった。

「おっと、すまねえな、わりい。」

サンジは、そう言って、その男の脇を抜けようとした。

「何処行く気だ、サンジ。」

その男は、サンジの腕を掴むと、そのまま店の外に出た。

「って、なにすんだよ!! へっ?! ・・・ゾ・・・ロ・・・ どうしたんだ? その格

好?? おい! いつもの腹巻きはどうした?? ジジシャツは??」

サンジは、動揺して、大声で叫んだ。

通りを歩いている人々が、サンジの言葉に皆振り返る。

「・・・サンジ・・・少し静かにしろよ・・・そんな大声出さなくても、ちゃんと聞こえてるか

ら・・・」

ゾロは、ため息混じりにサンジにそう言った。

「ん、な事言ったって・・・ゾ・・・ロ・・・違う奴みてえじゃん・・・//////」

黒のワイシャツに黒のズボン、そして、銀のチェーンの飾りのついた丈の短い黒のジャケット

を着こなすゾロが、サンジの前にいる。

シャツのボタンが上から二つ目までハズされてて、そこから、均整のとれた肉体が覗く。

(うわあ・・・いつもあのジジシャツと腹巻き姿しか見てねえから・・・さすがに・・・

・・・クソッ、格好いいよな・・・薄々感じてはいたんだが、さすがにこんな格好、目の

前で見ると・・・照れて・・・目が合わせられねえ・・・ドキドキして・・・とまらねえ・・・

こんなことで、う、うろたえるな・・・俺・・・)

サンジは、いつもと違うゾロに、ドキドキして、まともに顔が見れなくて、俯いたままだ。

「・・・これ・・・似合わねえか?」

ゾロは、サンジの反応に、少しがっかりしてそう言った。

「ち、違う!! 似合いすぎて・・・格好良すぎて・・・俺、まともに、顔見れねえ・・・

//// まあ、俺の次ぐらいだけどな。」

サンジは、ドギマギしている自分を隠そうと、照れ隠しにそう言った。

「ハッ、そりゃあ、最高の誉め言葉だ。 ありがとうな、サンジ。」

そう言って、ゾロは、サンジに笑いかけた。

「っ・・・//////」

サンジは、思わず、ゾロに見惚れてしまった。

「??どうかしたのか??」

「いや、なんでもねえ・・・それより、今日、何処に泊まるんだ? 俺、金、少ししか持

ってねえぞ? それとも、船に戻るのか?」

サンジは、ごまかすようにゾロに聞いた。

「いや、今日の泊まるところは、もう決めてある。 そのために、この服を買った。」

「???何で???」

「良いから・・・ついてくればわかる・・・」

ゾロは、不審がるサンジの手を引っ張って、大通りを真っ直ぐに歩いていく。

すれ違う人々が、皆、二人を見て、なにやら、耳打ちしている。

(クッ、何か、見せ物みてえな感じだよな・・・やっぱり、いつもの格好じゃねえと落ち

つかねえ・・・)

(・・・レディ達が、皆、ゾロが格好良いって騒いでる・・・当然だな・・・・でも、ごめん

よ、レディ達・・・こいつは、俺のだから・・・ ・・・今日だけなんだぜ・・・ いつもは、

ジジシャツと腹巻きしてんだから・・・ でも、それでも充分、格好良いんだぜ・・)

二人は、無言のまま、街で一番のホテルの前に来た。

「・・・すっげえ・・・まさか、ゾロ・・・ここに泊まんのか??」

「・・・そうだ・・・」

ゾロはそれだけ言うと、ホテルのフロントに向かって歩き出した。

「・・・ゾロ! おい、待てって。 金は、有るのか??」

慌ててゾロの後ろからついてきたサンジは、心配そうにゾロに聞いた。

「・・・心配するな・・・今日予約していた、カルバップだが・・・」

「はい、カルバップ様ですね。 お待ちしておりました。 こちらが、キーでございま

す。 只今、ボーイに案内させますので、暫くお待ち下さい。」

フロントの男性は、そう言ってゾロに丁寧に応対すると、ベルボーイを呼んで、二人を案内さ

せた。







 
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<コメント>

クッ。やはり、1回で、終わりきれなかった・・・
ごめんね・・・次こそは、絶対・・・
【カルバップ】って、わかった?? 本当、あほなネーミング・・・
ルナは、別の意味で、自分の才能が怖い・・・(笑)
では、いよいよ、例のシーンに突入です!!
では★