Battle Initiative


その3







「ナミ〜、ウソップ〜、早く行こうぜ〜。」

「じゃあ、サンジ君、ゾロ、行ってくるわね。 留守番、よろしく頼むわよ。」

「じゃあ、頼まれたモン、ちゃんと買ってくるから。」

「いってらっしゃ〜いvv ナミさ〜んvv おい、ウソップ、ルフィ、ナミさんをしっかりお守りする

んだぞ。」

サンジはそう言って、ナミ達を船から送り出した。

「さってと、後片付けするか。」

サンジは、タバコに火を点けキッチンに向かう。

ゾロは、無言のままその後に続いてキッチンに入っていった。

サンジが後片付けの最中、ゾロは、黙ったまま食卓で酒を飲んだ。

「・・・・・ちくしょう。 間がもたねえ。」

サンジは後片付けが済んだシンクの前で、ゾロに背中を向けたままボソリと呟く。

あんなに恋焦がれた相手がすぐ傍にいるというのに、いざとなるとどうしていいのかわからな

いのだ。

「・・・・用が無えなら、出て行けよ。 目障りだ。」

サンジは意を決してゾロの方を振り向くと、そう声を掛ける。

「何処で飲もうが、俺の勝手だ。 てめえに言われる筋合いはねえ。」

ゾロは、そう言ってサンジを睨み付けた。




・・・・・・なんで、こいつなんだろう。




ゾロとサンジは、互いの瞳から瞳が離せなかった。

キッチンに一瞬、沈黙の時間が流れる。

「・・・・・・そうだな。 なら、俺が出て行ってやるよ。」

その沈黙を嫌がるようにサンジはそう言葉を発した。

コツコツと靴音がキッチンに響く。

「・・・・・・そんなに嫌かよ。」

ゾロは、コップを握りしめたままボソリと言った。

「はぁ? 何言って・・・・」

「そんなに、俺と居るのが、嫌なのかよ。」

「当たり前だ! 誰だって、嫌われている奴と一緒にはいたくねえよ。 てめえだって、俺が

いない方が清々していいだろうが!」

サンジは、ドアの前で立ち止まり振り向き様にそう言った。

「誰が嫌われてるんだよ!」

「俺が、だよ!! てめえが、俺を嫌ってるのは知っている。 だから・・・・」

「勝手に決めんじゃねえよ!! 俺は、別にてめえを嫌ってねえ!! 嫌ってるのは、てめえ

の方じゃねえか!」

ゾロは立ち上がると、そう言ってサンジを睨み付ける。

「ざけんなよ!! 日頃あんな態度取っておいて何言ってやがんだ。 嘘・・・・・・吐くんじゃ

ねえ!」

「嘘じゃねえ! 嫌っているのは、てめえのほうだろ。」

「嫌ってねえ!! 嫌ってなんか・・・・・・嫌いになんか・・・・・・」

サンジはそう言うとグッと唇を噛みしめ、俯いた。




・・・・・・もう・・・・駄目だ。

・・・・・・もう・・・・・お終いだ。

・・・・・・もう・・・・・・留められない。




「・・・・好きなんだよ。 好きなんだ。 っ・・・・・てめえが、俺のこと嫌ってても・・・・・好きなん

だよ!!」

サンジは、喉から振り絞るような声でそう叫ぶと、そのままキッチンを飛び出していく。




・・・・・言いたくなかった。

・・・・・言いたくなかったのに。

・・・・・言ったってどうしようもねえのに。

・・・・・・心を・・・・・・・・・・・・・・・留められなかった。




サンジは涙を拭うと、甲板の縁に脚を掛けた。

「おい、待てよ!! クソコック! 待て!!」

背後に追い掛けてくるゾロの声が聞こえる。

それでもサンジは、無視して岸に飛び降りた。

「サンジーッ!! 戻ってこい!!」

ひときわ大きく叫ばれたゾロの声にサンジは、ぴたりと立ち止まる。

「・・・・・・ずりいよ。 ずりいよ、クソ剣士。 こんな時に・・・・・・・俺の名前・・・・呼ぶんじゃね

えよ。」

サンジは、ボソリと呟いて、ゾロのいる甲板を振り返る。

ゾロの姿は涙で滲んでぼやけていた。

「・・・・・逃げるな。 サンジ、戻ってこい。 俺から、逃げるな。 サンジ・・・・・」

ゾロは、穏やかな声色でサンジにそう言う。




・・・・・・そうだな。

・・・・・・俺には、逃げることさえ出来ねえよな。

・・・・・・自分の気持ちさらけ出した俺に。

・・・・・・もう怖いモンなんてねえよな。

あいつが・・・・・・・俺の名前、呼んだ。

・・・・・・それだけで、充分だ。




サンジは、ゾロの声に誘われるままに甲板に戻った。

溢れる涙を袖で拭い、サンジは、ゾロの前に立つ。

「・・・・・戻ってきてやったぜ。」

サンジはそう言って、真っ直ぐにゾロを見つめる。

「言い逃げすんなよな。 てめえは、それで済むだろうが、残された俺はどうなる。 てめえに

先越された俺は、馬鹿みてえだろうが。」

ゾロはそう言うと頭をガシガシと掻いた。

「えっ?!」

「だーかーら・・・・・・・・わかんねえ野郎だな。 俺も、好きなんだよ! 俺達は、めでたく両

想いって訳だ。 わかったか、このラブコック!」

ゾロは、キョトンとして動かないサンジを抱き締める。

「・・・・・・嘘。」

「嘘じゃねえって!」

「だって・・・・・」

「あーもう、何度も言わせるな! 俺は、てめえが好きなんだよ。 いい加減、信じろよ。」

ゾロは、サンジの頭をグイッと肩に寄せた。

ゾロの腕の温かさが、サンジの心に浸みていく。

サンジは、ゾロの肩口に顔を埋めたまま、スッと背中に腕を廻した。

「・・・・・・サンジ・・・・」

ゾロは、サンジを抱き締める腕に力を増す。

「っ・・・痛てっ! てめえ、痛てえんだよ! 俺のスレンダーな身体が壊れる!!」

サンジは、先程と打って変わってそう言うと、ゾロを睨みつけた。

「・・・・・てめえなぁ。 なんでそう言う口の利き方しかできねえのかね。」

「はん、悪かったな。 今更、変えられるわけねえだろ。 だいたいなあ、あんなとこで、初め

て俺の名前を呼ぶなんて、反則も甚だしいんだよ! まりもの癖に・・・・・」

「・・・・・本当、ムカつく口だな。 閉ざすしかねえな。」

ゾロは、ため息混じりにそう言うと、サンジの唇に顔を寄せる。

「はぁ? なに・・・・んんっ・・・・」

サンジの唇は、言葉の途中でゾロの唇で塞がれた。

「ただいま〜、サンジ君、ゾロ。 ・・・・・・・・あんた達、そこでなにやってんの・・・・・」

ナミの声が、サンジの背後から聞こえた。

ゾロとサンジがギョッとしてその声の方を見ると、甲板の縁から顔だけ出したナミとウソップ

の姿があった。

「あ、ナミさん。 いや、これは、その・・・・・ち、違うんだ。 これは・・・・」

サンジは、慌てて身を捩り、ナミに向かってそう言う。

「・・・・・・その状態の何処がどう違うって言うのかしら? どうやら、あたし達、お邪魔みたい

ね。 今日は、宿に泊まる事にするわ。 ウソップ、荷物、ここに置いてさっさと行きましょ

う。 ったく、甲板ですることないでしょ・・・・・・・」

「お前ら・・・・・・そう言う関係だったんだな。 俺・・・・知らなかった・・・お前ら・・ホモ・・・」

ナミは呆れ顔でウソップは青ざめた表情でそう言うと、荷物を甲板に置き、そのまま街に向

かい、船を下りていった。

「あ、ちょっと、ナミしゃん、ウソップ・・・・・・・このクソ剣士!! てめえのせいで誤解されたじ

ゃねえか!」

サンジは、顔を真っ赤にしてゾロの腕の中で暴れた。

「誤解? 誤解じゃねえだろ。 これは冗談でも、ふざけてんでもねえ。 少なくても、俺にと

っちゃマジだ。 それとも、てめえは、これを冗談にしてえのか?」

ゾロは、そう言ってサンジを見つめる。 

ゾロの真っ直ぐな瞳に、サンジの心臓がドクンと震えた。

「そんなこと・・・・出来ねえよ。 出来るわけねえだろ。 ・・・・もったいなくて出来ねえよ!」

サンジは、そう言うとにっこりと笑った。

「じゃあ、問題ねえな。」

ゾロはそう言って、サンジの唇に口付ける。

「ちょ、ちょっと、待てって! なぁ、ここ、甲板だぞ。」

「問題ねえ。」

ゾロは、そう言うとまたサンジに口付けて、シャツの下から手を差し入れた。

「うわっ!! てめえ、俺を抱く気か?? ちょ、ちょっと、待て! 誰が、てめえに抱かれると

言った! 対等な立場だろ? おかしくねえか、それ。」

サンジはそう言って、慌ててゾロの手を掴む。

「・・・・・俺は、てめえを抱きてえ。 けど、抱かれるのは真っ平だ。」

「お、俺だって、抱くより、抱きてえよ。 てめえが、俺に抱かれろよ。」

「冗談じゃねえ。 なんで俺がてめえに抱かれなきゃならねえんだ。 体格の差は歴然だろ。

てめえが、俺に抱かれろ。」

「冗談言うなよ! このエロ剣士!! 抱くのは俺だ!!」

「てめえこそ、ここまできて何言ってやがる。 嫌なら、腕ずくでこい。」

「うげっ!! 汚ねえぞ、このクソまりも! 俺を好きならてめえから抱かれやがれ!」

「それとこれとは別だ。 てめえこそ、俺が好きなら観念するんだな。」

「観念できるか!んなもん!! あ、やだ・・・・・んーっ・・・・んんっ・・・・・」

ゾロは、ジタバタともがくサンジを甲板に組み敷くとその唇を塞ぐ。

それから上下の唇を舌で舐め上げ軽く甘噛みし、サンジの口内に舌を割り入れた。

「んっ・・・ふ・・・・んんっ・・・・ん・・・」

甘い吐息が漏れると共に暴れていたサンジの身体が静かになる。

ゾロは、そのままサンジの舌を絡ませ、余すとこなく口内を貪った。

ピチャピチャと互いの口から淫猥な音が漏れ聞こえ、飲み込めなくなった雫が口の端を伝う。

「んんっ・・・ん・・・あ・・・あ・・・はぁ・・・・・ん・・・」

サンジの身体から抵抗の感が消えたところで、ゾロは、サンジの耳元でこう囁いた。

「・・・・・抱くぜ。」

「ん・・・・」

ゾロの言葉にサンジはコクンと頷き、ゾロの背中に腕を廻す。

ゾロは、サンジのシャツのボタンに手を掛け一つ一つはずし、その白い肌に手を這わせた。

「あっ、やっぱ、待って。 ちょっと・・・・」

自分の身体に触れる手の感触にサンジは、慌てて身を起こす。

「待てねえよ。」

ゾロは、サンジの言葉を無視して唇を首筋に押し当て、胸へと手を滑り込ませた。

ビクンとサンジの身体が震える。

「あっ、ヤァ・・・・・違うって・・・・・せめて、ソファーに・・・・・//////」

サンジは、それだけ言うとギュッとゾロにしがみついた。








<next>     <back>