サンジでアミーゴ☆


その2







その日の夕食、ゴーイングメリー号は、かつて無いほどの異様な雰囲気であった。

「美味いvv 美味いっす、サンジさんvv 俺も、毎日こんな料理が食いてぇ〜vv ああ〜vv 

幸せっすvv」

一口サンジの料理を食べる毎に絶賛して、ハートを飛ばしまくるギン。

その斜め前で、黙々と不機嫌そうに料理を食べ続けるゾロ。

陰と陽が入り交じる食卓は、有る意味、見事に調和していた。

「ねぇ、ウソップ。 この人、だぁれ??」

チョッパーが小声で隣の席のウソップに聞く。

「ああ、チョッパーは初めて逢うんだったな。 こいつは、ギン。 クリーク海賊団の斬り込み

隊長でな。 鬼神と言われるほどの恐ろしく強い男だ。」

「ふ〜ん。 そのギンが、なんでここにいるの?」

「それはだなぁ。 明日、ほら、サンジの誕生日だろ? それで、ナミが一儲けしようと企ん

で・・・・」

「・・・・ウソップ!!」

ウソップの言葉に、ナミは食卓の下でウソップの臑を思いっきり蹴り上げた。

「っ痛て!! い、いや、ギンが、サンジに惚れてるからな。 それで一日早くお祝いに駆け

つけたと、そう言うわけだ。」

ウソップは、ナミの視線に気が付き、慌ててそう言い直した。

「えっ?! ギンも、サンジが好きなのかーっ??」

チョッパーは、思わず驚きの声を上げる。

カシャンとフォークが音を立てて、ゾロの手から落ちた。

同時に、シンクにいたサンジの口から、タバコがポトリと落ちる。




チョッパー・・・・・お前、見事に地雷、踏みつけてるゾ。

俺は知らない、何も聞いてない・・・・・俺は・・・・・関係・・・・・・ない・・・・・・




ウソップは、その言葉に青ざめて固まった。

「はは、何言い出すんだ、チョッパー。 そんなこと、冗談に決まってるだろ・・・・」

サンジが、その場の雰囲気を察して笑いながらチョッパーにそう言う。

「チョッパーさんと言いましたか。 それは、本当なんですよ。 俺は、サンジさんがマジ好き

っす。 この想いは、誰にだって、負けません。」

ギンは、チョッパーに真剣な顔をしてそう言いきった。

「・・・・・・・・・・。」

ゾロは、無言でサンジを睨み付けると、そのままキッチンを出ていく。

「おい! まだ、食事残ってる・・・・・」

「いらね。」

サンジが慌ててゾロを呼び止めようとしたが、ゾロはそれだけ言うと勢い良くキッチンのドアを

閉めて出ていった。

その様子に呆然とするクルー達の間で、ルフィとギンだけが、料理を美味しそうに口に運ん

だ。

「チッ。 あの馬鹿・・・・」

サンジは、そう呟いてゾロの食べ残しの皿をフォークを手に取る。

「俺の・・・・俺の料理を途中で投げ出すなんざ、マナーがなってねえ! ナミさん、ロビンさ

ん。 俺、ちょっとあのクソ野郎にマナーを躾けに行ってきますから。 気にせずに、食べてい

て下さいねvv ・・・・ウソップ、明日のパーティー料理は、キノコ入れるからな。」

サンジは、ナミとロビンにそう言ってにこやかに笑い、ウソップをキッと睨み付けキッチンを出

ていった。

「なんで、俺ばっか・・・・・言ったのは、チョッパーだろうがよ・・・・・」

ウソップは、涙ながらにそう呟く。

「ウソップ。 俺、なんかか不味いこと、言ったのかな・・・」

「別に・・・・あんたのせいじゃないわよ。」

ウソップにそう言ったチョッパーの声に、ナミはそう言ってにっこりと笑った。













皿とフォークを持ったサンジが船尾に向かうと、ゾロはいつものように脚を投げ出し、両手を

頭の下にして瞳を閉じていた。

「・・・・・まだ残ってる。 ちゃんと残さずに食えよ。」

サンジはそう言ってゾロの口元にフォークに差した料理を運ぶ。

「いらねぇ、とそう言っただろが。」

ゾロは瞳を開け、差し出されたフォークを手で払った。

フォークは、かちりと音を立てて甲板に料理ごと落ちる。

「・・・・・・・このクソ剣士・・・・・・食べ物を粗末にするたぁ・・・・・いい度胸してるじゃねえか。」

サンジは、こめかみをヒクつかせながらゾロを睨み付け、フォークをもう一度手に取った。




・・・・・・・ヤバい・・・・・・・蹴りが来る。




ゾロは、そう直感して、それに備えるべく、身体に力を入れる。

「ざけんなよ!! コラァ・・・・」

サンジはゾロにそう言って、料理を口に入れると、そのままゾロに口付けた。

予想外のサンジの行動にゾロは、呆然としている。

サンジは、そんなゾロの様子を気にするでもなく、口の中の物を舌でゾロの口に移しかえ・・・

ゴクリとゾロの喉が鳴って、料理はゾロに呑み込まれた。

「・・・・・そんなに俺のことが信用できねえか。 少しは、わかれよ。 こんな事を俺からする

のは、てめえだけ。 ゾロ、てめえにしか、こんなことはしねえ。」

サンジはそう言って、もう一度触れるだけの口付けをしてから、ゾロの口にフォークを銜えさ

せ、皿をゾロの手にのせる。

「・・・・・ちゃんと、残さず食えよな。」

サンジは、呆然としたままのゾロにそう言うと、キッチンに向かった。

「・・・・・・やられた。」

ゾロは銜えさせられたフォークを手に取るとそう呟いて、残りの料理を口に運ぶ。

「・・・ククク・・・・・・ったく、世話のかかる奴。 甘いなぁ、俺も。」

サンジは、キッチンのドアの前でそう呟いて、苦笑した。















次の日。

ゴーイングメリー号に、大きなガレオン船が近づいていた。

その甲板には、見たことのある人影・・・・・

「今度は、誰だ?? あーっ!! シャンクス??」

ルフィは、メリーの頭の上でそう叫ぶ。

「「「なっにーっ?!」」」

ルフィの声に、ゾロとサンジとギンは、一斉に叫んでその船を見つめた。

「よう! ルフィ。 久しぶりだな。 元気だったか?」

シャンクスはルフィにそう言って、ゴーイングメリー号に飛び乗る。

「シャンクス、どうしてここに??」

ルフィは、シャンクスに抱きついてそう尋ねた。

「ああ、今日はサンジの誕生日だとそう聞いてな。 暇だったし、チケット買わされたんでちょ

っと寄ってみたんだ。」

シャンクスは、ルフィの麦わら帽子を手に取り、そう言って笑う。




・・・・・ナミさん、残りのゲストって・・・・・・・こいつだったんですか・・・・




サンジは、恨めしそうにナミの顔を見つめ、こそこそとその場から離れようとした。

「おう!チビナス。 本当に久しぶりだな。 前会ったときは、まだまだガキんちょだったの

に。 すっかり一人前じゃねえか。」

シャンクスは、そう言ってサンジに近づく。

「チビナスって言うんじゃねえよ!! それに、いつまでも、ガキ扱いするな!!」

シャンクスにチビナスと言われ、サンジは、不機嫌さをありありと滲ませてそう怒鳴った。

「あれ? シャンクスってサンジの知り合いか??」

ルフィが、不思議そうにシャンクスとサンジを見てそう言う。

「ああ、知ってるもなにも。 こいつが寝小便してた頃から知ってるぜ。 なぁ、チビナス?」

シャンクスは、平然とそう言うとサンジの肩を抱き寄せた。

ピクッとゾロの眉間に皺が寄る。

「チビナス、チビナスってうるせえな!! それに、俺は寝小便はしてねえ!! 嘘を吐くな、

嘘を!!」

サンジは、顔を真っ赤にしてシャンクスから離れようと身を捩った。

ゾロとギンの周りに不機嫌なオーラが渦を巻き始める。




・・・・・・・・ふ〜ん。 

・・・・・・・そう言うこと、ね・・・・・・・




シャンクスは、それを見てニヤリと笑った。

「またまたー、照れるなって。 童貞だったてめえが、ちゃんと筆降ろし出来たのは誰のおか

げだ? ん? 俺が、教えてやったからだろ?」

シャンクスはそう言うと、ゾロをちらっと見て、サンジの頬に軽く口付ける。

カシャーン!!

火花散る金属音がゴーイングメリー号に響きわたった。

ゾロが抜いた和道一文字が、シャンクスのサーベルと重なる。

「小僧。 そんなに熱くなるなって。 ちょっとした冗談じゃねえか。 てめえもまだまだガキだ

な。 こんくらいで、冷静さを欠くようじゃ、鷹の目なんか倒せねえぜ。」

シャンクスは、こともなげにゾロの剣をかわすと、そう言ってサンジのそばを離れた。

「チッ。」

ゾロは、舌打ちをして刀を鞘に収める。

「さて、パーティーまでまだ時間があるようだし、それまでルフィ、色々聞かせてくれよ。 

てめえらの冒険をよ。」

「おう、いいぜ、シャンクス。 俺も、シャンクスの話、聞きてえ。」

シャンクスはそう言って、ルフィ達と話を始めた。

ゾロとサンジは、恨めしそうにナミを見つめる。

「さ、さあて、あたし達も、そろそろ用意をしなくちゃね。」

ナミは、そう言って逃げるように、そこから自分の部屋へと去って行った。











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