サンジでアミーゴ☆


その1







「首領クリーク。 済みませんが、一週間ほどお暇を頂やす。」

「ん?なんだ? どっか行くのか?」

「へい、ちょっと野暮用で・・・」

「しょうがねえな。 さっさと済ませてこいよ。」

「へい、んじゃ、行ってきやす。」

ギンは、クリークと、そう会話して一人小船に乗って海賊団から離れる。

「サンジさ〜んvv 待ってて下さいねvv 貴方の誕生日には、一番でお祝いをしに行きます

からねvv」

はやる気持ちを抑え、ギンは、途中、真っ赤なバラの花束と、プレゼント用にネクタイとネクタ

イピンのセットを買い、ゴーイングメリー号へと急いだ。

大好きな愛しのサンジの誕生日に捧げるべく・・・・






「・・・おい、何か小船が、一艘、ハート飛ばしてやってくるが、どうする?」

見張り台にいるウソップが、丁度甲板を通りかかったゾロに聞いた。

「?? 小舟?」

ゾロはそう言うと、見張り台に素早く上がり、双眼鏡でその小舟を見る。

小舟には、両手を空にブンブンと振り上げ、目からハートを飛ばしたギンの姿があった。

「・・・・チッ。 もう来やがったか。 相変わらず、ストーカーまがいのことばかりしやがっ

て・・・・ウソップ! 格納庫に行って、砲弾でも撃ち込んでやれ! 来られると、厄介だ。」

ゾロは、不機嫌さを隠そうともせず、ウソップにそう告げる。

「えっ?! でも・・・・・別に敵船って訳でもねえし。 ・・・・・無抵抗な奴を攻撃するのはな

ぁ・・・・・」

「ウソップ・・・・・・・てめえ、この船がどうなっても良いんだな。 あいつが来れば、間違いなく

ここは、戦場となるぜ。 俺も、容赦しねえから。」

ゾロは、ウソップの言葉を遮ると、三代鬼徹をかちりと鳴らし、ニヤリと笑った。

ウソップの背筋を冷や汗が伝う。

コレは脅しではない、とゾロの瞳が、ウソップに告げている。




とんでもねえ。 カヤに貰ったこの船が・・・・・

・・・・・ギン、すまん。 俺を恨まないでくれよな。

俺は、お前の鉄球より、ゾロのこの表情の方が・・・・・・怖い。




「わ、わかったから・・・・・・じゃあ、格納庫行ってくるから、見張り、よろしく頼む。」

ウソップは、そう言って見張り台を下りて格納庫に向かった。

「あら?ウソップ、見張りはどうしたの? 一体、何処に?」

途中、ナミに話しかけられ、ウソップは、ナミにギンが来たことを告げる。

「そう。 相変わらず、早いわね。 けど、ウソップ、彼は良いのよ。 あたしが招待したんだ

から。 砲弾撃ち込んだりしたら・・・・・・・どうなるか、わかるわよね?」

ナミは、にっこりと笑ってウソップにそう言った。

また、ウソップの背中に引いたばかりの冷や汗がじわりと流れる。




お、俺は・・・・・・・・ゾロのあの表情より・・・・・

ナミのこの笑顔の方が・・・・・・何倍も怖いと言うことを知っている。




「・・・・・・・・・・わかった。 俺は、このままキッチンに避難する。 ゾ、ゾロが下りてきたら、

男ウソップは、今日一日、砲弾が撃ち込めない病に罹ったと、そう伝えてくれ。」

ウソップは、ナミにそう言いながら、キッチンへと足早に消えていった。

「・・・・・本当に、早いわよ、ギン。 あたしが招待した日は、明日なのに。 これは、一日分

追加料金を頂くわよ。 ・・・・・さて、あいつをどうするかよね。 このまま、事情を話して

も・・・・・無理よね。 あの男が、黙ってるわけ無いもの。 ここは、やっぱり、サンジ君を使っ

て懐柔作戦と行くか・・・・・」

ナミは、見張り台にいるゾロを見上げてそう呟くと、キッチンに向かう。

「サンジ君、ちょっとお願いがあるんだけど、な・・・・・」

「なんですか、ナミさんvv 貴女のお願いなら、このサンジ、どんなことでも叶えましょうvv」

サンジは、瞳からハートを飛ばしながらナミにそう言った。

「実はぁ・・・・・明日、サンジ君、誕生日でしょ。 だから・・・・・・・パーティーを・・・・・ごにょご

にょ・・・・・ねっ?」

ナミは、明日のイベント企画をサンジに話す。

「えっ?! そんな大々的にお祝いしてくれるんですか?? いやあ、ナミさんってば、そん

なに俺のことをvv けど、それになんで、あいつらがわざわざ来るんですか? 俺は、別に

ナミさんやロビンさん達にお祝いして貰えるだけで、充分なんですが・・・・」

サンジは、ナミの言葉に感動しながらも、なんでわざわざギン達が来るのか解らず反対に尋

ねた。




・・・・・・・・うっ。

だって、それは・・・・・お金のため。 そんなこと・・・・・・・

サンジ君の誕生パーティーのチケット、一人20万ベリーで、売ったなんて・・・・・言えないわ。

それも、ギンだけじゃなくて・・・・・・・あと・・・・・・二人・・・・・もいるなんて・・・・

許してね、サンジ君。

あとで、ちゃんと見返りは用意するから。

こんなボロい商売、他にはないの。

あたしの為・・・・・いいえ、この船の渡航費用の為に・・・・・

サンジ君、あなたには、犠牲になってもらうわ。




「そ、それは・・・・・だって、たくさんの人にお祝いして貰った方が、良いでしょ? 年に一度


のことだし。 サンジ君は、この企画、嫌?? ・・・・・せっかく、サンジ君の為を想って考え

たんだけどなぁ・・・・」

ナミは、甘えた声でサンジの耳元でそう囁く。

ナミにそう言われてサンジは、すっかり舞い上がってる。

ウソップは、そんな二人にはぁ〜と深いため息を吐いて呟いた。

「・・・・・サンジ。 少しは、今までの経験から学習しろよな。 そう時のナミは・・・

Σふごっ!!」

「余計なことは言わなくて良い!!」

ナミは、ウソップの言葉に反応してウソップの頭に速攻で天候棒をめり込ませた。

ウソップは、そのまま意識を失ってテーブルに俯す。

「とにかくそう言うことだから。 ギンのことよろしく頼むわ。 あのやきもち剣士と悶着を起こ

さないように、しっかりと見張っててね。 それから・・・・・あと二人、明日来るはずだからvv 

お料理の方も余裕を持ってお願いね。 本当は、あたし達が、料理作った方が良いんだけ

ど、やっぱり、サンジ君の料理には、敵わないものね。 後の準備は、あたし達がするから、

パーティーの料理だけお願いvv」

ナミは、サンジに身体を密着させてそう囁いて、軽くウィンクしてキッチンを出ていった。

「ああ〜vv ナミしゃんの胸が、ムギュッとvv ムギュッとvv 幸せだーっvv」

サンジは瞳をハートにし、完全にナミの術中に填っている。

そんなサンジが、ナミの胸の感触の余韻に浸っていたら、急に甲板が騒がしくなった。

どうやら、ギンが無事到着して、ゾロと一色触発状態になってるらしかった。

「サンジ、カヤから貰ったこの船が・・・・・・なんとかしてくれ。 あの二人を止められるのは、

サンジしかいねえ。 俺からも、頼む。 この船を守ってくれ・・・・・・」

ウソップは、サンジに涙ながらにそう訴える。

「任しとけって。 俺だって、ナミさんの行為を無駄にしたくねえからな。」

サンジは、ウソップにそう言って、サッとキッチンを出ていった。













「てめえ、のこのことよくその面下げてこの船に来れたな。 まだ、わかんねえのか。 てめえ

は、サンジに振られたんだよ! いい加減に諦めろ! サンジは、この、俺のだ!!」

「はん、勝手に自分の呼ばわりされたら、サンジさんが迷惑する!! 第一、俺は、サンジさ

んに振られてもいねえ! サンジさんは、同じクルーのてめえに同情して、それを愛情と勘違

いしてるだけだ! サンジさんは、誰にでも優しいからな。 俺が、サンジさんの本当の愛情

ってものに目覚めさせてやるんだ!! それに・・・・・今回は、俺は立派な招待客だ。 

コレを見ろ!!」

ゾロの言葉にギンはそう反論して、一枚のチケットを取り出す。

それは、ナミから売りつけられたサンジのバースディーパーティーのチケットだった。

「なんなんだよ、その紙切れは・・・・」

ゾロが、そのチケットを見つめそう聞く。

「ふふん。 これはだな、この前、俺が貰ったパーティーチケットだ。 サンジさんの誕生日を

祝う大事なプラチナチケット。 コレがある限り、俺は、パーティーに参加する資格が有るんだ

よ!! サンジさんの愛情たっぷりのディナーが味わえるなんて、20万ベリーでも安いぐらい

だ。」

ギンは、堂々と胸を張ってゾロの瞳の前にチケットをちらつかせた。

「・・・・・・・・あの守銭度魔女が。」

ゾロは、そのチケットの出所がナミだと気づき、歯ぎしりして悔しがる。

「ふふん、どうだ。 コレがある限り、てめえがいくら、俺を追い出そうとしても無駄無駄。」

ギンは、そう言ってフンと鼻を鳴らした。

「・・・・・・じゃあ、そのチケットが、無くなれば良いんだな・・・・・」

ゾロはそう言って、三代鬼徹を鞘から抜き、ギンの持っているチケットめがけて振り下ろす。

ドカッ!!

激しい音と共に、ゾロの身体が甲板に沈んだ。

「止・め・ろ!!」

サンジはそう言って、ゾロの頭に振り落とした脚を除けた。

「サンジしゃんvv」

瞳からハートを飛ばしサンジを見つめるギンを後目に、顔をしたたかに打ち付け、ゾロは、

サンジを睨み付け、ゆらりと起きあがる。

「・・・・っ・・・痛てえ!! サンジ、てめえ・・・・・・」

いつものことと解っていながら、ゾロは、言葉より先に脚が出るサンジを魔獣さながらに睨み

付けてそう言った。

「なんだ? 文句があるのか?? ギンは、正式に俺のパーティーに呼ばれた客人だ。 

その俺が良いと言ってるんだ。 てめえに文句を言う権利も、ましては、その客人を追い出す

権利は全然ねえんだよ。 それともなにか?? この俺の誕生パーティーを台無しにしよう

と、そう考えてんのか、てめえは。 そんなチャチな野郎だなんて、俺は、知らなかったぜ。 

これは、色々と考える余地がありそうだな。」

サンジは、そんなゾロを一瞥し、紫煙を揺らしてそう告げる。

こんなつまらないことで一々妬くんじゃねえよと、その瞳はゾロにそう告げていた。

「・・・・・・勝手にしろ!!」

ゾロは、きつくサンジを睨み付け、そう言って船尾に歩いていく。

「・・・・・・困ったもんだね、あいつにも。 そんなに俺が、信用できねえかね・・・・・・ったく、ガ

キが。」

サンジはタバコを揉み消すと、ゾロの背中にそう呟いた。

「サンジさん、俺、ずっと会いたかったです!! あっ、コレ、プ、プレゼントっす!」

ギンはそう言って、来る前に買ったバラの花束とプレゼントをサンジに手渡す。

しかしバラの花束は、先程のゾロとのやりとりでその半分が散りかけてしおれていた。

「ああっ、バラの花が・・・・・・サンジさん、すみません。 俺、また買って来直して・・・・・」

ギンはそう言って、小舟に飛び乗る。

「ギン!! 良いって!! 俺は、コレで充分だ。 わざわざ買い直しに行ってくれなくても。」

サンジは、小舟を動かそうとしていたギンにそう言ってにっこりと笑った。

「サンジさん・・・・・・俺・・・俺・・・・」

ギンは、見上げたサンジの笑顔に胸がキュンとして言葉が詰まる。

「わかったら、さっさと上がって来いよ。 ゲストには優しくしねえとな。 それから・・・・・

これは、明日、俺にくれ。 今日は、まだ普通の日だから。」

サンジはそう言って、先程ギンが寄越したプレゼントをもう一度ギンに返す。

「あ、ありがとうvvサンジさ〜ん・・・・・やっぱり、俺・・・・サンジさんのこと、好きっす! 

大好きだーっ!!」

ギンは、サンジの言葉に感激して甲板に着くなり、サンジを抱き締めようと飛びついた。

「・・・・・・それを止・め・ろって、いつもそう言ってるだろ。 気色いんだよ!てめえは!!」

サンジは、飛びついてくるギンの顔に脚をめり込ませ、そう言う。

「そんなつれないサンジさんも・・・・・好きだ・・・・・」

ギンは、鼻から血を流しながらそう呟いて、甲板に倒れていった。

「・・・・ったく、少しはまともな奴は、いねえのかね。 おい、ギン。 もうすぐしたら飯だから、

それまで自由にしてて良いぜ。」

サンジはギンにそう言って、キッチンに向かった。










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