It serves









 「ナミさ〜〜んvv暖かい紅茶お持ちしましたぁ〜vvv」

 「ナミさんのお好きなパウンドケーキ、焼いてみたんですv」

 「ナミさん、蜜柑畑の整備終わりましたぁ♪」

 「ナ〜ミさ〜〜んvv水汲み上げ完了しました!どうぞ存分に使ってくださ〜いvv」

 アホコックの馬鹿みたいに甘ったるい声が甲板に響く度。
 
 俺のこめかみには青筋がビキッと入る。

 何時もの事だとウソップが呟くのを耳にしたが、何処がだよ!?
 
 何時も以上に、やけにナミの世話を甲斐甲斐しく焼いてるじゃねえか、てめえの目は節穴か!?

 まあ・・・・・・・・・・・んな事気にするのは俺くらいしかいねえが。

 ともかく。

 この二日ばかりのアイツの行動は度を越していやがる。

 俺の事なんて綺麗さっぱり頭の中から抜け落ちているかのように俺の傍に寄っても来やしねえし。

 夜は夜で「悪い、俺疲れたから・・・・・・・・・・・」なんて早々と寝ちまうし。

 そりゃ疲れるだろうよ、昼間あんだけナミにいい様に使われてやがるんだからな。

 ったく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・面白くねえ。

 ハンモックに身体を横たえながら俺は苦虫を噛み潰したような顔でずっと天井を睨みつけていた。

 甲板に出ればあの腹立たしい声を聞かなくちゃならねえし。

 いい加減にしろ、と怒鳴っちまうかもしれねえ。

 アイツのあれは今に始まった事じゃねえし、何時もの事だろ。

 そう考えて____________ふと、思考が止まる。

 何時もと同じ、か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?いや違う、ここ二日は異常なほどサンジはナミにベタベタしている。

 もしかして。

 嫌な考えが脳裏を掠めた。

 まさかな・・・・・・・・・・・とその考えを振り払おうとするけど、一向にその疑問は消えてはくれない。

 心の何処かにずっとあった思い。

 『もしサンジが俺以外の人間に心を奪われたら?』

 俺は、アイツが好きだと言った。

 アイツも、俺が好きだと言った。
 
 その言葉に偽りは無かったと信じてはいる。

 だけど・・・・・・・・・・・・・・・元々があの女好きの性格だ。

 誰かを好きになって、俺に直接言うのが後ろめたくなってナミを使って遠まわしに訴えてる、とか・・・・・・・・・・・

 そんな事を考えちまう自分にも腹が立った。

 馬鹿馬鹿しい。

 俺は目を閉じ、サンジの事を頭から追い出すように寝に入った。




































 「ナ〜〜ミさ〜〜〜んvv今日のおやつは貴方の為に頑張って作りましたぁ♪どうぞvv」

 「あ、ありがとvサンジくん。」
 
 「いえいえvどういたしまして〜vv」

 「でもね・・・・・・・・・もうそろそろいいわよ、私にそんな特別尽くしてくれなくても。もう十分よv」

 「えっ・・・・・・・・・・でも、俺の我侭でナミさんに迷惑掛けちまうんだから、これくらいは・・・・・・・・・・・」

 「その気持ちは嬉しいんだけど、これ以上やられると私があの視線に耐えられそうもないのよね〜。ったく、痛いったらありゃしない。」

 「あ・・・・・・・・・・・ごめんね、ナミさん。嫌な思いさせちゃって・・・・・・・・・・・」

 「ああ、いいのいいの。明日には着く予定だから、その時ちゃんとあの馬鹿に説明してやって、ね?」

 「はい!ありがとね、ナミさん。」

 「そんな改まんなくていいのよ、私達仲間でしょ?それに・・・・・・・・・・・今度は私の方手伝ってもらう事になると思うしね。」

 「それは任せといて!」

































 甲板に座ったナミとサンジが小声でヒソヒソと話しているのが見えた。

 楽しそうに笑い合って。

 思えば・・・・・・・・・・・・・最近サンジのあんな笑顔を俺は見ていない。

 一緒にいる時間が極端に短くなっちまったんだ、当然だろう。

 もう考えるのも嫌になってきた。

 アイツが俺と一緒に居たくねえってんならそれで、もういい。

 嫌がる事をしてまでアイツを自分の所に留めておける権利など、俺には無いんだから。

 甲板に寝転び、右手を上に掲げる。

 思えばこの手のひらにサンジの熱を感じなくなってからもう三日も経つ。

 以前ならば一日と間を空けずに互いの熱を感じあっていたのに。

 そんな女々しい考えをしてしまう自分が情けなかった。

 手のひらをグッと握り締め、額に置く。

 ___________潮時なのかもしれねえ、な。

 考えたくなかった結論に痛む胸に気付かないフリをして、俺は起き上がるとその場を後にした。





































 「・・・・・・・・・・・・・・ゾロ、ちょっといいか?」

 夕飯も終わり、さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返ったキッチン。

 俺は黙ったまま酒を一人煽っていた。

 ここでこうやって酒が飲めるのも最後になるかもしれねえんだから。

 ________と、不意に掛けられた声。

 一瞬身体が緊張した。

 だが平静を装い「・・・・・・・・・・・・・・ああ。」と短く答える。

 どんな事を言われても、怒らずにいようと思った。

 俺が聞いて納得出来る話だったら、黙って身を引こうと。

 そんな俺の心中など知りもしないサンジは、笑顔で俺に話しかけてくる。

 「あのさ、明日急遽島に立ち寄る事になったんだ。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・島?」

 「そ。で、さ・・・・・・・・・・・・・・ゾロ、俺と一緒にその島で行って欲しい場所があるんだ。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 島?そんな話は聞いてねえ。

 そこで別れ話でも切り出す気なのか、コイツは・・・・・・・・・・・・・?

 んな回りくどい事しなくなって、今ここではっきり言えばいいだろう。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺は行かねえ。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゾロ?」
 
 驚いたような顔で俺を見つめる。

 「言いたい事があんなら今ここで言え。何言われたって平気だ、覚悟は出来てるんだからな。」

 「は?・・・・・・・・・・・・・・・お前、何言ってんの??」

 この後に及んで誤魔化すつもりなのか?そんなに言いにくいなら俺が言ってやるよ。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・別に俺は・・・・・・・・・お前が考えて決めた事なら仕方ねえと思う。」

 「?」

 「正直、痛えが・・・・・・・・・・気持ちばかりは俺にはどうする事も出来ねえからな。」

 「??」

 「だから・・・・・・・・・・・遠慮せずに、俺が嫌いになったんならそう言え。」

 「???」

 「俺だって馬鹿じゃねえんだ、ちゃんと聞く耳くらい持って・・・・・・・・・・・」

 「ちょ、ちょっと待て、ゾロ。」

 慌てて俺の言葉を制止するサンジ。

 「何だ?」

 「お前、さっきから何言ってんだ??ってか、何で俺がお前を嫌いになるんだ??」

 「何でって・・・・・・・・じゃあ聞くが、ここ最近てめえずっと俺を避けてたろ?ナミと楽しそうに話込んでたり。俺が嫌になったんで

 ナミに乗り換えたんじゃねえのか!?」

 つい勢い余って口から出てきてしまった言葉。

 だけど言ってすぐに俺は後悔した。

 ____________サンジが、酷く傷ついた顔をしたから。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな風に思ってたのかよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「?お、おいサンジ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「人の気も知らねえで、てめえは・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、そうかよ、わかったよ。・・・・・・・・・・・・・っつ・・・・・・・・・・・・・・・」

 背を向けたサンジの肩が微かに震えている。

 胸が締め付けられるような気持ちになった。

 腕を腰に回して抱き締める。

 「は、なせ・・・・・・・・・・・・・・・・」

 涙声。

 「悪かった・・・・・・・・・・・・・ここ二、三日お前ずっとナミと一緒に居て俺を避けてると思っちまったから・・・・・・・・・・・・・・・・・

 お前が俺を嫌いになっちまったのなら、仕方ねえと思って・・・・・・・・・・・・・・でも、違うんだな?」
 
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 黙ったまま答えない。

 「サンジ・・・・・・・・・・・・・」
 
 「じゃあ、ゾロは!」

 目尻に溜まった涙が振り返りざまに零れ落ちる。

 「俺が別れようって言ったら別れるのか?俺が死ねって言ったら死ぬのかよ!?何でろくに確かめもしねえで・・・・・・・・・・」

 サンジの言いたい事が分かった俺は、静かに諭すように話掛ける。

 「もし、お前が本気で俺と別れたいと思ったんなら・・・・・・・・俺は、それに従う。お前が望む事なら、何だってしてやる。

 お前が笑顔でいる事が、俺の最高の喜びなんだから。まぁ・・・・・・・・・死ねって言われるとちょっと困るがな。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「お前が心の底から願った事を、叶えてやりてえんだ。・・・・・・・・・・・我ながら甘いとは思うがな。それだけ、俺はお前に本気で惚れてる。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゾ、ロ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「一つ聞いていいか?今回の事は俺と別れたいとかじゃねえんだな?」

 「・・・・・・・・・・・・・そう言ってるだろ。」

 「・・・・・・・・・・・そっか・・・・・・・・・・・・・や、悪い。俺今本気で嬉しいわ。」

 安心し切って笑顔をサンジに向けると、サンジも輝くような笑顔を返してくれた。

 「俺も・・・・・・・・・・ゾロがそんな事思っててくれたなんて、知らなかったから・・・・・・・・すっげ、嬉しい。」

 未だ残る涙の粒を唇で拭ってやる。

 「でもな、ゾロ。俺だって・・・・・・・・・・お前が望む事なら、何だってしてやる。お前に負けねえくらい俺だって本気でてめえに惚れてるんだからな。」

 「そりゃ有り難えな。」

 顔を見合わせると、クスクスと笑うサンジの頬にそっと口付ける。

 「あ、そう言えば・・・・・・・・・・・・・明日どっか一緒に行ってくれって言ってたよな。何処行くんだ?」

 「ああ、あれは・・・・・・・・・・・・・明日の、お楽しみだ。それより今は・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 上目遣いで俺を見るサンジの艶っぽい表情に。

 何も言わず答える。

 三日ぶりに感じる体温を楽しみながら、俺達は互いを貪りあった。































 翌日、船は小さな島へと着岸した。

 港から続く石畳の道沿いには店が立ち並び、島の大きさの割にはかなりの人で賑わっている感じを受ける。

 この島には大きな市場といったものは無く、欲しい商品をそれぞれ店に行って仕入れなければならないらしい。

 その分種類も豊富で、滅多にお目にかかれない食材も多々入手可能らしかった。

 野菜を売る店、肉を売る店、魚を売る店_________
 
 そのどれもの店先にきちんと揃えて並べられているまだ見ぬ食材に目を奪われつつ、歩いていく。

 多分この為にこの島に寄ったんだろうな・・・・・・・・・・

 俺はサンジのすぐ後ろをついて行きながらぼんやりとそう考えていた。

 前回島に立ち寄ったのはほんの2日前。

 食材補給も十分にしたし、何よりナミは次の島まで一週間は掛かると言っていた。

 だがサンジはきっと何処かでこの島の事を聞いたんだろう。
 
 だからナミに無理言ってここに寄って貰ったって感じなんだろうな。

 それでここ最近のサンジの態度にも納得がいく。
 
 だが・・・・・・・・・・・それならそうと、何故一言言ってくれなかったのか、って事は未だに疑問だが。

 そんな事を思っていた俺は、どうやら歩調がゆっくりになっていたらしい。

 サンジとの距離が結構開いてしまい、後ろを振り返ったアイツに怒鳴られちまった。

 「おいこらゾロ!てめえちゃんと付いて来いよ!!只でさえ迷子になっちまうんだから・・・・・・・・・・・」

 怒った口調でそう言いつつも顔は笑顔のままで。

 「ああ、悪かった。」
 
 だから俺も素直に謝れる。

 陸に下りてまで無駄な言い争いはしなくねえし。

 何より、あんな誤解があった後、揉め事を起こさないのに越した事はない。

 そう思い、少し足早にサンジの元へと歩み寄った。

 「そうそう、それでいいんだ。もうちょっと歩くと思うから、ちゃんと付いて来いよ?」

 「わかったよ。・・・・・・・・・しかし、何処まで行くんだ?この通りじゃねえのか?」

 「ああ、ちょっと街外れにあるんだよ。いいから黙ってついて来い!」

 上機嫌極まりない。

 そんなに珍しい食材でもあるのかねぇ・・・・・・・・・

 ま、サンジのこんな笑顔が見られるのなら何処にだって着いて行ってやるがな。

 そう思い、そっと微笑んだ。




























 「えっと・・・・・・・・・・・・・こっちのはずなんだけど・・・・・・・・・・・」

 「おい・・・・・・・・・・・・・・・・大丈夫か?どんどん薄暗い森の中入って来てるぜ?こんな所に目当てのモンがあんのかよ・・・・・・・・・・・」

 船を出てからもう軽く2時間は経っている。

 最初は笑顔で進んでいたサンジも街中を抜け島の中心部を抜けた辺りから不安そうな顔に変わってきていた。

 街中はあれほど人で溢れかえっていたのに、ここには人の気配など全くと言っていいほど感じられない。

 まさか・・・・・・・・・・・

 「・・・・・・・・・・・・・・おいサンジ・・・・・・・・・・・・・お前迷子に・・・・・・・・・・」

 「だ〜〜〜〜〜〜!!!!言うな、それを言うな!!迷子じゃねえ、絶対にねえ!こっちであってるはず・・・・・・・・なんだ。」

 そんなムキになって否定しなくったって・・・・・・・・・・・

 俺の不満を余所にサンジはブツブツ言いながら手元の雑誌のようなものを覗き込み、場所を確認し出した。

 そっと後ろから近づいてその雑誌の中身を見ようとしたんだが、寸での所で阻止される。

 「見るな!!!」

 えらい剣幕で怒るので、つい俺も喧嘩腰になっちまった。

 「んだよ、何を探してんのかくらい教えてくれたっていいだろうが!そんな大事なモンなのかよ!?」

 「そ、それは・・・・・・・・・・・・・」

 口篭り、下を向いてしまう。

 責めるつもりじゃなかったのに、つい声を荒げてしまった事を反省した。

 「・・・・・・・・・・・・・・悪かった、別に怒ってる訳じゃ・・・・・・・・・・・・・」

 項垂れているサンジの肩に手を置こうとしたその時。

 「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 俺の後ろを指差し大声で何事か叫びだした。
 
 「んな、何だ、どうした??」

 「あった、ゾロあそこ!!!」

 サンジの指差す方向に目をやると、一軒の古ぼけた小さな小屋が目に入る。

 「ほら早く早く!!」

 「お、おい!?」

 急に元気を取り戻したサンジに腕を引かれ、俺達はその小屋へと走って行った。

 ドアの前までやってきた俺は、そこに掲げられている看板を仰ぎ見た。

 そこには何か文字が書かれているのだが、消えかかっていてよく読めない。

 それでも目を凝らし、何とか単語を読んでいくとそこには『鍛冶屋』と書かれていた。

 「おい、ここ・・・・・・・・・・・」

 「へへ〜、びっくりしたろ?ここ、刀とかを手入れしてくれる鍛冶屋なんだけど、凄い腕利きの職人がいるんだってさ。

 この前の島で買った雑誌に載ってるのをたまたま見つけたんだよ。」

 「_____________________________刀鍛冶。」

 「そ。で、ナミさんに無理言ってこの島に寄ってもらったって訳。グランドラインでログポース無視して航海する事の大変さを知ってるから、

 頼むのも随分迷ったんだけど・・・・・・・・・ナミさんは笑顔で了承してくれたんだ。だからここ3日ほど彼女に尽くしてたって訳。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「お前も自分で手入れしてるだろうけど、やっぱり海風に当たりっぱなしじゃ刀には良くないだろうし。一度ちゃんとした職人さんに出して

 みるのも良いと思ってさ。で、丁度ここの記事を読んだからお前を連れてきた、って訳。でもな、お前の大事な刀を預けるからには、お前が

 納得した人じゃないと嫌だろうから・・・・・・・・・・お前の目で確かめてみて欲しいんだ。大丈夫だとは思うけどな、ってうわっ!?」

 手が自然に動き、サンジを抱き寄せていた。

 「お、おいゾロ!?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・悪かった。」

 俺は、サンジのこんな優しい気遣いにも気付かず、あろう事かナミとの仲を勘繰っちまったりしていたのか。

 「お前のそんな気持ちにも気付かねえで、あんな事言っちまって・・・・・・・・・・・・・本当に、悪かった。・・・・・・・・・許してくれ。」

 「許すも何も・・・・・・・・・・・・・んな事言うなよ。俺だって誤解されるような行動とっちまったのがいけないんだから。

 でも・・・・・・・・・・この事は、ここに来るまで内緒にしておきたかったんだ。俺こそごめんな、ゾロ。さ、中に入ってみようぜ!」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ。」

 サンジに促され、目の前のドアノブに手をかけゆっくりと扉を開いていった。

 店内は薄暗く、人の気配も感じられなかった。

 「すみませ〜ん、何方か居ませんか?・・・・・・・・・・・・・おっかしいなぁ〜・・・・・・・・・ここで間違いないはずなんだけど。あの〜・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・何か用かね?」

 突然声がして、店の奥の方から初老の男性が一人顔を出した。

 「あ、あのすみません。ここ、刀鍛冶の店じゃ・・・・・・・・・・・」

 「ああ、その話か。まったくあんな雑誌に無理矢理載せられたせいで大勢押しかけて来て敵わんよ・・・・・・・・」

 独り言のようにそう呟きながら覚束無い足取りで店内へと出てきた。

 こんな年寄りが名工なのか・・・・・・・・・?

 俺がサンジへと目線を向けると、サンジも同じ事を思ったらしく、浮かない表情になってしまっている。

 「・・・・・・・・・・・・・・・で?お前さん達もナマクラ刀を手入れして欲しいって輩かい?」

 その発言に俺がキレる前にサンジがキレた。

 「ああっ!?おいジイさん、誰の刀がナマクラだって!?こいつの刀はなぁ・・・・・・・・・・・・」

 「よせ、サンジ。」

 制止しようとした俺の方を振り返ったその爺さんの顔つきが急に変わった。
 
 「お前、その刀・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「あ?」

 「ちょ、ちょっと見せてくれ。」

 「お、おい・・・・・・・・・・・・・・」

 そう言うと、爺さんは俺の腰に下がっている三本の刀を凝視し始めた。

 「これは・・・・・・・・・・・・・『和道一文字』だね。久しぶりに大業物を見たよ。よく手入れされているようだ。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかるのか。」

 「まあ、大体はな。こっちは『雪走』。これもいい代物だねぇ。軽くて扱いやすいだろう?」

 「・・・・・・・・・・・ああ。」

 「そして・・・・・・・・・これは、『三代鬼徹』。この刀を持っている剣士には初めて会ったよ。妖刀も扱えるとは大したもんだ。」

 そう言い切ると、俺の顔を見上げ嬉しそうに微笑みながら話を続ける。

 「お前さんの瞳・・・・・・・・・・・濁りの無い、澄んだ綺麗な瞳をしている。いい剣士になれるよ。さっきは失礼な事を言って悪かった。

 最近あの雑誌の記事を読んだらしい口先だけの奴等が多くてな、閉口してた所なんだ。」

 「ああ、別に何とも思っちゃいねえよ。」

 「そうか、ならば安心した。・・・・・・・・・・どうだろう、この刀三本、私に委ねてみてはくれないだろうか?」

 「もともとそのつもりでここに来たからな。・・・・・・・・・・・・・宜しく頼む。」

 「それは有り難い。全力でやらせてもらうよ。そうだな・・・・・・・・・二日、待ってくれ。」

 「二日だな、わかった。おいサンジ、行くぞ。」

 「あ、ああ。じゃあジイさん、宜しく頼むな。」

 「任せておけ。」

 そうして俺はその刀鍛冶に三本の刀を託し、その場を後にした。

 街へと戻る途中、急にサンジが立ち止まり、俺に向き直ると

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なあ。」

 そう呼び掛け、柔らかな笑顔を浮かべる。

 「・・・・・・・・・・・・・・・ん?」

 一瞬その笑顔に見惚れつつ返事をするといきなり俺の胸目掛けてサンジが抱きついてきた。

 「うわっ!?」

 「ゾロ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誕生日、おめでとう。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誕生日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 一瞬の間。

 「・・・・・・・・・・・・・・今日、11月11日か。」

 間抜けな答えを返してしまった。

 そんな俺に半分呆れたような口調で

 「やっぱり忘れてやがったな・・・・・・・・・・・・・そうだよ、今日はお前の誕生日。だから今日は船には戻らなくてもいいんだよ。

 ナミさん達にはちゃんと許可取ってある。」

 「って事はさっきのあの刀鍛冶は・・・・・・・・・・・・・」

 「勿論、誕生日プレゼントv」

 「ああ、そういう事か・・・・・・・・・・・・・・サンキュ。」

 「あ、でもまだメインが残ってるぜ?」

 「メイン??」

 「そ。まあ今更って言っちまえばそれまでだけどよ、今日は特別大サービスしてやるぜ?」

 「そりゃ有り難えなぁ。じゃあ早速これからメインを頂くとするか。」

 「了解v」

 刀を携えていなく、心持ち軽くなった右側にサンジの熱を感じつつ、俺達は宿屋へと急いだ。

 最高の誕生日プレゼントを貰う為_____________



































 二日後、指定された通りにあの刀鍛冶の所へ行くと、三本とも見事に仕立て直されていた。

 「こりゃ凄え・・・・・・・・・・」

 思わず零れた感嘆の声。

 今まで自分である程度手入れをしていたとはいえ、十分とは程遠い状態だった。

 通常では考えられない程の激戦を幾度もくぐり抜けてきた刀達は正直ボロボロで。

 だからこそ、今この時期にこうして修復出来たのは何よりも有り難かった。

 「久しぶりに寝ずに打ち直したよ。かなり満足いく出来だとは思うんだが、どうかね?」

 「ああ・・・・・・・・・・・・・・・・・文句の付けようがねえよ。完璧だ・・・・・・・・・・・・・・助かった。」

 「そりゃ良かった。・・・・・・・・・・・・・・おや、アンタ大丈夫かね?どこか怪我でもしたのかい?」

 爺さんは俺から視線を外し、後ろでぎこちなく壁に寄りかかっているサンジへと声を掛ける。

 「は?あ、いや全然大丈夫だ。・・・・・・・・・・・・・・・・気にしないでくれ。」

 引き攣った笑顔でそう答えるサンジが可笑しくてつい頬が緩んでしまった。
 
 途端に物凄い形相で睨み付けられる。

 「あ、いや・・・・・・・・・・・・・・・爺さん、ほんと礼を言う。悪いが、船に仲間を待たせてるから・・・・・・・・・」

 「そうか。・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあな。いい刀だ、大事にしろよ?」

 「ああ、わかってる。」

 「じゃあな〜ジイさん。またここに来る事があったらコイツの刀見てやってくれよ!」

 店主に笑顔で見送られ、俺達は船へと戻る為歩き出した。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい。」

 ずっとむくれていたサンジがキッと俺を睨みつける。

 「あ〜・・・・・・・・・・・・・・・悪かったよ。」

 「てんめえ・・・・・・・・・・んな事これぽっちも思っちゃいねえんだろ!笑いやがって・・・・・・・・・誰のせいで俺がこんな状態になったと思って

 やがるんだ!?離せっつーのに何度も何度も・・・・・・・・・・・・・・底なしか、てめえは!?」

 「んだと!?てめえが大サービスするって言い出したんじゃねえか!」

 「サービスするとは言ったが回数こなすとは言ってねえ!!しかも二晩続けてだぜ?俺の身にもなってみろ!!」

 「仕方ねえだろ!!てめえがあんな誘うような顔すんのがそもそも悪いんだよ!」

 「逆ギレすんな〜〜〜!!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・当分エッチ禁止だからな。」

 「んなっ!?」

 「一晩に5回もヤりゃ十分だろうが!!!ったく・・・・・・・・・・・・・いいな?ほら、とっとと戻るぞ!ナミさん達が心配すんだろうが。」

 そう言い残すとさっさと港へ向けて歩き出してしまった。

 ________________が。

 「当分エッチ禁止ねぇ・・・・・・・・・・・・・・んな事が出来るかねえ、アイツに。」

 ニヤッと笑い、サンジの背中へと目を向けた。

 宿屋にずっと篭っていたこの二日間、何度となくサンジの身体を貪った。

 おかげでどうすればサンジが堕ちるのかがすっかりお見通しになっている。

 「・・・・・・・・・・・どんな顔して俺に懇願してくるか、楽しみだな。」

 俺の考えが間違っていなかったのが証明されるのは、その夜の事。

 こりゃ・・・・・・・・・・・・・ある意味、最高の誕生日プレゼントだったかもしれねえな。

 腕の中で安らかな寝息を立てる恋人を眺めながら、満足気にそう呟いた。









  

                                                                               Fin



<コメント>

ひろ様のゾロ誕部屋から頂いてきましたvv第一弾vv
ナミにやきもちを妬くゾロと、ゾロのために甲斐甲斐しくナミに
サービスするサンジvv
ラブラブな二人、ごちそうさまでしたvv
おこちゃまは、ここまででご遠慮下さいませvv
宿屋の二人が気になるお嬢さん、ふふふ、抜かりはありませんぜ。
早速、
ここから、覗いて下さいませvv素敵な夜を過ごす二人の姿をvv
こんな素敵なSSが、たくさんある、ひろ様のサイトは、
ここから、飛んでいきましょう!!


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