愛を繋ごう

 





ゾロとサンジの喧嘩。
それはゴーイングメリー号にとっては、ごく当たり前の事。
だって放っておいても、気がつけば仲直りしてるから。
ところが。
今回の喧嘩は違っていた。
喧嘩してからもう、十日は経つというのに。
未だ2人は口をきかない。
ゾロはいつも以上に無口になって、鍛錬してるか昼寝してるか。
サンジはいつもと変わらないように見えるが、普段の仕事でのミスが目立っている。
船内には重苦しい空気が漂っていた。
「・・・・・・全く。ガキなんだから」
「今回のはえらく長いよなぁ」
よく晴れた気持ちのいい甲板で。
ナミとウソップは、カードゲームをしながらそんな事を話していた。
「いい加減、元の鞘に収まってくれないかしら」
「この雰囲気は・・・、つらいよなぁ」
うーん・・・と唸りながら、ゲームを続けていたら。
「そうだわっ!!!」
突然ナミが大きな声をあげた。
「なっ、なんだっ!?どうしたっ!?」
「いい考えがあるの♪ウソップ、耳貸して!」
ナミはグイッとウソップの耳を引っ張ると、今思いついた事をそっと耳打ちした。
「・・・それ、上手くいくのか?」
「何もやらないよりかはマシでしょ?あんただって早く、仲直りして欲しいくせに」
「それは違いねぇ・・・。よし!協力するぜっ!!」
「そうと決まれば、早速準備よっ!!」
ナミとウソップはカードをその場に放り出すと、足音高く部屋へと消えていった。

愛を繋ごう


その日の夕食はナミの一言で、甲板での宴会と相成った。
ゾロは1人、黙々と酒を飲んで。
サンジはクルー達への給仕に勤しんでいた。
そしてナミからウソップへ、視線で合図が送られた。
(ウソップ!始めるわよっ!!)
(ラジャっ!!)
チョッパーに楽しい嘘を聞かせていたウソップは、おもむろに立ち上がり。
「よ―――しっ!!宴もたけなわという事で!ウソップ様の手品を見せてやろ―――!!」
「おおーっ!!!手品かっ!!」
「ウソップ、手品出来るのっ!?」
ルフィとチョッパーの期待に満ちた瞳に、ウソップは少々罪悪感を感じつつも。
(これもあいつらのためだっ!!)
そう自分に言い聞かせる。
「あったり前よぉ!このウソップ様に不可能はなーーーいっ!!」
そう言いながらウソップが取り出したのは、鎖がほんの少し長めの手錠だった。
コレは今日の昼間、ナミから手渡されたもので。
この計画には、必要不可欠のアイテムだった。
―――ナミがどうしてこんなものを持っているのかは、この際気にしない事にする。
「ゾロ、サンジ!手伝ってくれよ」
突然話を振られたゾロとサンジは、見るからに嫌そうな顔をした。
「ああ?何で俺が、んな事手伝わなきゃならねえんだよ」
「俺は忙しいのっ!見てわかんねえのか!!」
これがゾロだけ、とか、サンジだけ、とかなら。
こんなにも嫌そうな顔はされなかったかもしれない。
が。
計画上、どうしても2人じゃないと駄目なのだ。
「いいじゃないの。やってあげたら」
「嫌だね」
「ゾロ・・・。あんた、私に借りがある事忘れてないかしら?」
「借り・・・・・・?」
「私、あんたのためにいろいろしてあげたでしょ・・・?」
ナミの言葉に含まれているのは。
サンジと恋人になれた事や、その他諸々。
「ぐっ・・・!!」
「サンジくんもやってくれるわよね?」
元からフェミニストのサンジである。
ナミの誘いを断れるはずがない。
「ナミさんが・・・・・・、仰るなら」
どうにかこうにか説得された二人は、ぶすっとした顔でウソップのところに行く。
「さて。ここにあるこの手錠。これを・・・」
カシャン。
ゾロの左手と。
カシャン。
サンジの右手に嵌める。
「そしてこの上に布を被せる」
手錠で繋がった2人の手に、真っ白い布が被せられた。
「俺が数字を数えれば、この手錠は外れてるって寸法だっ」
「おおーっ!!!」
「すっげー!!!」
どこにでもあるような手品に、真剣に見入っているルフィとチョッパーを見て。
(こいつら・・・、馬鹿か?)
ゾロは誰にも気付かれないくらい小さく、溜息をついた。
(2人とも、ほんとガキだよなー。可愛いなぁ♪)
サンジは呑気に笑っていた。
その笑顔を横目で見ていたゾロは。
(・・・・・・こいつの笑った顔・・・。久しぶりだ)
そんな事を考えているうちに、ウソップがカウントダウンを始めた。
「行くぞー?1・2・3っ!!!」
ウソップの声と共に、白い布がめくられた。
その下にあったのは。
―――未だ手錠で繋がれたままの2人の手。
沈黙が船を包む。
「・・・・・・・・・おい」
「あれー?おっかしいなぁ?」
そう言いながらウソップは、何度も同じ事を繰り返す。
しかし、手錠が外れる事はなかった。
当然といえば当然だ。
ウソップは手品など、最初から出来ないのだから。
「いやー、悪い悪い。失敗だ!!」
堂々と言い切るウソップに、ルフィとチョッパーはブーイング。
ゾロとサンジは、ますます不機嫌に。
そんな中、ナミは1人でほくそ笑んでいた。
「ったく・・・。出来ねえなら最初っからすんなっての」
「早く外せ」
「いやー、悪いな・・・・・・。あれ?」
ごそごそとポケットを探るウソップに、2人は怪訝そうな顔をする。
「おい、どうした?」
「いや・・・、鍵がだな・・・・・・」
数分間、ポケットを探って。
そしてウソップは言った。
「悪い。鍵、なくしちまった」
「「何――――――っ!?」




「このクソ野郎っ!!こっち来いって言ってんだろうがっ!!」
「俺は昼寝すんだよっ!!!」
ゾロとサンジが手錠で繋がれた翌日。
ゴーイングメリー号に漂うのは、騒がしい空気に変わっていた。
相変わらずゾロとサンジは喧嘩中だが、しゃべっている分雰囲気が変わった。
「やっぱ喧嘩してるっていっても、あーゆー喧嘩がいいわね」
「だな」
「ご苦労様、ウソップ」
「いいって事よ!」
そんな2人の計画の事など知らず、ゾロとサンジは喧嘩をしていた。
お互いにもう怒っていないのに、引っ込みがつかなくなってしまって。
ずるずると続けてしまってる喧嘩。
本当は仲直りしたいのに。
手錠で繋がれてから、ゾロは思った。
(ひょっとしたら・・・、これで仲直りできるかもな)
手錠で繋がれて、サンジは思った。
(こんなにゾロが近くにいるのって・・・・・・、久しぶりだ・・・)
心の中ではそう思っていても。
「痛いってのっ!!ひっぱんなっ!!」
「お前が動くからだろうがっ!!!」
口では喧嘩をしてしまう。
どこまでも意地っ張りな2人。
それでもゾロは。
サンジが働きやすいように、なるべく邪魔にならないようにしていた。
当然、サンジもそれに気付いていて。
(どうしよ・・・。今、だったら・・・・・・謝れるかな?)
水仕事をしていた手を少し止めて、ありったけの勇気を出して。
「ゾ、ゾロ・・・・・・」
「・・・・・・ん?」
久しぶりに呼んだゾロの名前。
そして返ってきた優しい声。
それだけで。
サンジは泣きそうで。
言葉がそれ以上、続かなかった。
(やばっ・・・。泣きそうっ・・・!!)
ぎゅうっとシンクの縁を握り締めるサンジを見て。
ゾロはかしかしと、空いてる手で頭をかいて。
「あー、そのな・・・・・・。・・・・・・・・・悪かった」
「っ・・・!?」
「つまんねー意地、張っちまってよ・・・」
空に彷徨わせていた視線を、サンジに戻して。
まっすぐに見つめる。
「やっぱ・・・・・・、お前の笑顔が見れねえのは・・・・・・辛え」
そうっと抱き寄せた細い身体は、小刻みに震えていて。
ゾロの広い背中に、華奢な腕が回された。
「俺、もっ・・・ごめんなさいっ・・・!!ごめっ・・・」
「これでもう・・・・・・、喧嘩は終わりだ。な?」
「ゾロっ・・・、ゾロ・・・・・・!!」
きゅうきゅうとしがみついてくるサンジが可愛くて。
こんなにも細かったかと思う。
そしてどれだけ自分が、サンジに触れてなかったか知った。
「サンジ・・・・・・・・・」
泣きじゃくるサンジの顔を持ち上げて、濡れた頬をそっと拭う。
「ゾロぉ・・・・・・」
子供みたいな泣き顔に、小さく笑って。
そっとくちづけた。
十日も触れていなかった唇は、少ししょっぱくて甘かった。
それは触れただけですぐ離れたけど、サンジの身体はゾロにくっついたままだった。
シャラ・・・と長い鎖が音を立てる。
「・・・これのおかげだな」
「うん」
そこでふと、サンジは気になっていた事を口にした。
「なあ、ゾロ・・・」
「ん?」
「どうして手錠、壊さなかったんだ?」
ゾロの力があれば、こんな手錠などすぐに壊せるだろうに。
どうしてそれをしなかったのか、サンジはずっと気になっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ら」
「?何?聞こえねえ」
ゾロはほんの少し顔を赤くして、酷く言いにくそうに。
「無理に壊したら・・・・・・、お前が怪我するから」
サンジの言う通り、ゾロにはこんな手錠すぐに壊せるだろう。
だけどそんな事をして、サンジが怪我をしてしまったら?
だから。
出来なかった。
「ゾロ・・・vvv」
優しいゾロの想いに、サンジの胸はきゅぅんとなり。
更に強く、ゾロにしがみついた。
「・・・・・・おい。あんま、くっつくな」
「・・・・・・なんで?」
「・・・・・・・・・・・・ヤりたくなんだろうが」
十日間も触れていなかった愛しい恋人に、こんなに無防備にくっつかれたら。
ゾロだって健康な男な訳で。
「っ・・・・・!?」
反応してしまうのは、当然の事だろう。
「馬鹿っ・・・・・・」
「仕方ねえだろ?ずっとお前に触れてなかったんだぜ?」
「・・・・・・・・・ほんと、馬鹿っ」
それでも。
愛しい恋人が、自分を求めてくれるのは嬉しくて。
サンジは自分からキスをした。
「・・・・・・・・・部屋、連れてってくれるんなら・・・・・・いいよ?」
恥ずかしげに、それでも了解してくれたサンジに。
ゾロは柔らかく笑って。
「任せとけ」
華奢な身体を、軽々と抱き上げた。




「仲直り、したみてえだな」
「全く、世話のかかる・・・」
よく晴れた気持ちのいい甲板で。
ナミとウソップは、カードゲームをしながらそんな事を話していた。
「2人とも、意地っ張りだからなぁ」
「最後に折れるのは、いっつもゾロだけどね」
「・・・・・・今からヤるんだろうなぁ」
「・・・・・・さぞかし激しいんでしょうよ」
バカップルの絶倫ぶりに呆れながらも。
ナミとウソップの顔は、嬉しそうに綻んでいた。




本日も晴天なり。




END.





<コメント>

いやあんvv レボレボ☆あゆみ様のDLF小説です。
サイトUPする前から、実は、狙ってました!!
だって、あゆみ様のゾロサン、大好きなんだもの・・・
・・・しかも・・・珍しくエリョ無しで、終わってるし・・・(笑)
でも、ご安心(?)下さい!
やっぱり、あゆみ様vvそのへん、抜かり有りません・・・
その後の
ラブラブぶりを覗いてみたい貴女!!
↑こちらからどうぞ!!


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