愛を繋ごう |
その日の夕食はナミの一言で、甲板での宴会と相成った。 ゾロは1人、黙々と酒を飲んで。 サンジはクルー達への給仕に勤しんでいた。 そしてナミからウソップへ、視線で合図が送られた。 (ウソップ!始めるわよっ!!) (ラジャっ!!) チョッパーに楽しい嘘を聞かせていたウソップは、おもむろに立ち上がり。 「よ―――しっ!!宴もたけなわという事で!ウソップ様の手品を見せてやろ―――!!」 「おおーっ!!!手品かっ!!」 「ウソップ、手品出来るのっ!?」 ルフィとチョッパーの期待に満ちた瞳に、ウソップは少々罪悪感を感じつつも。 (これもあいつらのためだっ!!) そう自分に言い聞かせる。 「あったり前よぉ!このウソップ様に不可能はなーーーいっ!!」 そう言いながらウソップが取り出したのは、鎖がほんの少し長めの手錠だった。 コレは今日の昼間、ナミから手渡されたもので。 この計画には、必要不可欠のアイテムだった。 ―――ナミがどうしてこんなものを持っているのかは、この際気にしない事にする。 「ゾロ、サンジ!手伝ってくれよ」 突然話を振られたゾロとサンジは、見るからに嫌そうな顔をした。 「ああ?何で俺が、んな事手伝わなきゃならねえんだよ」 「俺は忙しいのっ!見てわかんねえのか!!」 これがゾロだけ、とか、サンジだけ、とかなら。 こんなにも嫌そうな顔はされなかったかもしれない。 が。 計画上、どうしても2人じゃないと駄目なのだ。 「いいじゃないの。やってあげたら」 「嫌だね」 「ゾロ・・・。あんた、私に借りがある事忘れてないかしら?」 「借り・・・・・・?」 「私、あんたのためにいろいろしてあげたでしょ・・・?」 ナミの言葉に含まれているのは。 サンジと恋人になれた事や、その他諸々。 「ぐっ・・・!!」 「サンジくんもやってくれるわよね?」 元からフェミニストのサンジである。 ナミの誘いを断れるはずがない。 「ナミさんが・・・・・・、仰るなら」 どうにかこうにか説得された二人は、ぶすっとした顔でウソップのところに行く。 「さて。ここにあるこの手錠。これを・・・」 カシャン。 ゾロの左手と。 カシャン。 サンジの右手に嵌める。 「そしてこの上に布を被せる」 手錠で繋がった2人の手に、真っ白い布が被せられた。 「俺が数字を数えれば、この手錠は外れてるって寸法だっ」 「おおーっ!!!」 「すっげー!!!」 どこにでもあるような手品に、真剣に見入っているルフィとチョッパーを見て。 (こいつら・・・、馬鹿か?) ゾロは誰にも気付かれないくらい小さく、溜息をついた。 (2人とも、ほんとガキだよなー。可愛いなぁ♪) サンジは呑気に笑っていた。 その笑顔を横目で見ていたゾロは。 (・・・・・・こいつの笑った顔・・・。久しぶりだ) そんな事を考えているうちに、ウソップがカウントダウンを始めた。 「行くぞー?1・2・3っ!!!」 ウソップの声と共に、白い布がめくられた。 その下にあったのは。 ―――未だ手錠で繋がれたままの2人の手。 沈黙が船を包む。 「・・・・・・・・・おい」 「あれー?おっかしいなぁ?」 そう言いながらウソップは、何度も同じ事を繰り返す。 しかし、手錠が外れる事はなかった。 当然といえば当然だ。 ウソップは手品など、最初から出来ないのだから。 「いやー、悪い悪い。失敗だ!!」 堂々と言い切るウソップに、ルフィとチョッパーはブーイング。 ゾロとサンジは、ますます不機嫌に。 そんな中、ナミは1人でほくそ笑んでいた。 「ったく・・・。出来ねえなら最初っからすんなっての」 「早く外せ」 「いやー、悪いな・・・・・・。あれ?」 ごそごそとポケットを探るウソップに、2人は怪訝そうな顔をする。 「おい、どうした?」 「いや・・・、鍵がだな・・・・・・」 数分間、ポケットを探って。 そしてウソップは言った。 「悪い。鍵、なくしちまった」 「「何――――――っ!?」 「このクソ野郎っ!!こっち来いって言ってんだろうがっ!!」 「俺は昼寝すんだよっ!!!」 ゾロとサンジが手錠で繋がれた翌日。 ゴーイングメリー号に漂うのは、騒がしい空気に変わっていた。 相変わらずゾロとサンジは喧嘩中だが、しゃべっている分雰囲気が変わった。 「やっぱ喧嘩してるっていっても、あーゆー喧嘩がいいわね」 「だな」 「ご苦労様、ウソップ」 「いいって事よ!」 そんな2人の計画の事など知らず、ゾロとサンジは喧嘩をしていた。 お互いにもう怒っていないのに、引っ込みがつかなくなってしまって。 ずるずると続けてしまってる喧嘩。 本当は仲直りしたいのに。 手錠で繋がれてから、ゾロは思った。 (ひょっとしたら・・・、これで仲直りできるかもな) 手錠で繋がれて、サンジは思った。 (こんなにゾロが近くにいるのって・・・・・・、久しぶりだ・・・) 心の中ではそう思っていても。 「痛いってのっ!!ひっぱんなっ!!」 「お前が動くからだろうがっ!!!」 口では喧嘩をしてしまう。 どこまでも意地っ張りな2人。 それでもゾロは。 サンジが働きやすいように、なるべく邪魔にならないようにしていた。 当然、サンジもそれに気付いていて。 (どうしよ・・・。今、だったら・・・・・・謝れるかな?) 水仕事をしていた手を少し止めて、ありったけの勇気を出して。 「ゾ、ゾロ・・・・・・」 「・・・・・・ん?」 久しぶりに呼んだゾロの名前。 そして返ってきた優しい声。 それだけで。 サンジは泣きそうで。 言葉がそれ以上、続かなかった。 (やばっ・・・。泣きそうっ・・・!!) ぎゅうっとシンクの縁を握り締めるサンジを見て。 ゾロはかしかしと、空いてる手で頭をかいて。 「あー、そのな・・・・・・。・・・・・・・・・悪かった」 「っ・・・!?」 「つまんねー意地、張っちまってよ・・・」 空に彷徨わせていた視線を、サンジに戻して。 まっすぐに見つめる。 「やっぱ・・・・・・、お前の笑顔が見れねえのは・・・・・・辛え」 そうっと抱き寄せた細い身体は、小刻みに震えていて。 ゾロの広い背中に、華奢な腕が回された。 「俺、もっ・・・ごめんなさいっ・・・!!ごめっ・・・」 「これでもう・・・・・・、喧嘩は終わりだ。な?」 「ゾロっ・・・、ゾロ・・・・・・!!」 きゅうきゅうとしがみついてくるサンジが可愛くて。 こんなにも細かったかと思う。 そしてどれだけ自分が、サンジに触れてなかったか知った。 「サンジ・・・・・・・・・」 泣きじゃくるサンジの顔を持ち上げて、濡れた頬をそっと拭う。 「ゾロぉ・・・・・・」 子供みたいな泣き顔に、小さく笑って。 そっとくちづけた。 十日も触れていなかった唇は、少ししょっぱくて甘かった。 それは触れただけですぐ離れたけど、サンジの身体はゾロにくっついたままだった。 シャラ・・・と長い鎖が音を立てる。 「・・・これのおかげだな」 「うん」 そこでふと、サンジは気になっていた事を口にした。 「なあ、ゾロ・・・」 「ん?」 「どうして手錠、壊さなかったんだ?」 ゾロの力があれば、こんな手錠などすぐに壊せるだろうに。 どうしてそれをしなかったのか、サンジはずっと気になっていた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ら」 「?何?聞こえねえ」 ゾロはほんの少し顔を赤くして、酷く言いにくそうに。 「無理に壊したら・・・・・・、お前が怪我するから」 サンジの言う通り、ゾロにはこんな手錠すぐに壊せるだろう。 だけどそんな事をして、サンジが怪我をしてしまったら? だから。 出来なかった。 「ゾロ・・・vvv」 優しいゾロの想いに、サンジの胸はきゅぅんとなり。 更に強く、ゾロにしがみついた。 「・・・・・・おい。あんま、くっつくな」 「・・・・・・なんで?」 「・・・・・・・・・・・・ヤりたくなんだろうが」 十日間も触れていなかった愛しい恋人に、こんなに無防備にくっつかれたら。 ゾロだって健康な男な訳で。 「っ・・・・・!?」 反応してしまうのは、当然の事だろう。 「馬鹿っ・・・・・・」 「仕方ねえだろ?ずっとお前に触れてなかったんだぜ?」 「・・・・・・・・・ほんと、馬鹿っ」 それでも。 愛しい恋人が、自分を求めてくれるのは嬉しくて。 サンジは自分からキスをした。 「・・・・・・・・・部屋、連れてってくれるんなら・・・・・・いいよ?」 恥ずかしげに、それでも了解してくれたサンジに。 ゾロは柔らかく笑って。 「任せとけ」 華奢な身体を、軽々と抱き上げた。 「仲直り、したみてえだな」 「全く、世話のかかる・・・」 よく晴れた気持ちのいい甲板で。 ナミとウソップは、カードゲームをしながらそんな事を話していた。 「2人とも、意地っ張りだからなぁ」 「最後に折れるのは、いっつもゾロだけどね」 「・・・・・・今からヤるんだろうなぁ」 「・・・・・・さぞかし激しいんでしょうよ」 バカップルの絶倫ぶりに呆れながらも。 ナミとウソップの顔は、嬉しそうに綻んでいた。 本日も晴天なり。 END. |
<コメント> いやあんvv レボレボ☆あゆみ様のDLF小説です。 サイトUPする前から、実は、狙ってました!! だって、あゆみ様のゾロサン、大好きなんだもの・・・ ・・・しかも・・・珍しくエリョ無しで、終わってるし・・・(笑) でも、ご安心(?)下さい! やっぱり、あゆみ様vvそのへん、抜かり有りません・・・ その後のラブラブぶりを覗いてみたい貴女!! ↑こちらからどうぞ!! |