サンジのお仕置き 前編  20万感謝記念




頬を思いっきり膨らませて。
サンジは膝を三角に立てて胸に引き寄せた。
どこか恨みがましい目がジロリと睨み付けているのは、すぐ隣で大口開けて眠っている恋人。
その寝顔が物凄くスッキリしていて。満足げで。
サンジはダルい腰をさすりながら、益々頬を膨らませた。
せめてもの仕返しと、グーで緑の頭をガツンと殴ってみた。
この程度でゾロは起きないと、ちゃんと知ってる力加減。
案の定、ゾロは全く気にした様子もなく気持ちよさそうなイビキを響かせ続けている。
サンジはそんな恋人をもう一度睨み付けるとその隣に身を横たえた。
ゾロの懐にゴソゴソと潜り込み良い場所を探す。
太い二の腕に頭を預けたらゾロが抱き締めてきた。
大事に大事に、守るように。
ゾロの腕が「離すもんか」と、そう言っているようで。
苦しくない程度に抱かれたら、サンジの唇からはプホっと息が逃げていった。
「もう・・クソゾロめ」
サンジの少し悔しそうなその呟きは、残念ながらゾロには届かない。
いつも。
いつもこの手で誤魔化されているような気がする。
エッチで無茶を言われても、恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない事をされても、させられても。
朝までその怒りが持続した試しが一度としてない。

ゾロの無意識はいつだってサンジの怒りを半減していくのだ。  

横になったはいいが、一向に眠気の訪れないサンジは、取りあえず暇つぶしにとゾロの肩にカプリと歯を立ててみる。
そのまま甘噛みしながら、つい先程までこのベットの上で行われていた事を振り返ってみる。
 

部屋に入って・・・
・・・服を脱いで・・・ ゾロに担ぎ上げられベットへと放られた。
それからは・・・・それからはもう。

今夜もゾロは立派なる野獣でした。
 

思考を振り返らせていたサンジの全身が。
見事に湯で上がった。

「うぅーーッ!・・・・もうっ」
小さく唸り、噛んでいるゾロの肩に歯形を付けてやろうとガブガブと食らいつく。
彼なりに照れを隠しているつもりだ。
 

愛の営み。
サンジの思考ではあり得ない事を、ゾロは毎度してくる。
もしくは、サンジ自身にさせる。

今夜なんて。

ゾロの目の前で自慰をするように強要された。
大きく足を開き「自分で可愛がって見せろ」ときた。
当然サンジは断った。
イヤだそんな事できないと、涙ながらに訴えたのに。

その時既にゾロは野獣化していたので、そんなサンジの訴えは彼の耳を右から左へと綺麗に通過していった。
サンジとて技持ちの男であるから。
その気になれば、力づくでの抵抗という手もあった。
だが、そうさせないのがゾロの魅力というか、テクニックというか。

サンジの好きな顔をして、サンジの好きな低音を発して、サンジの好きな気持ちよさを中途半端に与えて。
サンジの可愛いピンクは限界間近だったのだ。
ゾロに舐られ扱かれて先端は雫を零して泣いていた。
愛撫を中断し、してやったりのニヤリ顔を浮かべたゾロは。
サンジの我慢が効かないだろう事を十分承知で再度「しろ」と告げた。
解放へと連れていってくれる唯一の相手が手を引っ込めてしまえば、自分でせずには居られなくなり。
結果、どうにもならなくなったサンジは、顔を真っ赤にしてゾロの前で自慰をする羽目になった。

恥ずかしくて泣きながら自身を擦るサンジを見て、ゾロはとても楽しそうで。
+嬉しそうで。

「良くできたな。可愛かったぞ」なんて。
指先を白濁で汚したサンジを抱き締めてそんな事を言うから。
「愛してる」なんて言うから。

サンジはもっと泣いた。

こんな事させるなと怒って見せた。

なのに。
その後、誤魔化されるようにゾロのおっきいので奥深くを貫かれて。
何も分からなくなって。

ゾロの事しか分からなくなって。
躰の奥でゾロのを沢山受け止めたあと、サンジは気を失った。
そして、目覚めてみれば。

自分を泣かせるだけ啼かせた男は、イビキをかいて爆睡していたという訳だ。


窓の外はまだ暗い。
気を失い覚醒するまでそう時間は経っていないようだ。
だが、あと数刻もすればコックの仕事開始時間となるだろう。
ゾロの肩を噛んだまま、サンジは「今夜のエッチについての思考」をポイっと捨てると、今度は寝るかどうかを悩みだした。

少しの睡眠が深いものである保証はない。
ここで半端に寝て、明日のダルさに拍車がかかりかねない。
しかし、少しでも寝ないと明日一日体力が持たない事も身をもって良く知っている。
うむむ、と悩むサンジの耳に。

「ぐぉぉ〜・・」

一層響き注ぎ込まれたゾロのイビキ。
サンジの目が据わる。

「・・・なんか・・オレばっかり損してる気がする」
明日に響くからといつも言うのに。
ゾロは加減なんてしてくれない。
まぁ、加減なしの方が愛を感じられて嬉しいと思う事も事実だったりはするのだが。

この際、そんな事実はどうでもいい。
サンジはムカムカと腹が立ってきた。

平和そのもののゾロの寝顔が酷く腹立たしく感じられて仕方ない。
 
サンジはゾロの腕から抜け出すとベットを下りた。

床に足を着けた途端、カクンと折れてしまった膝。
忌々しそうに眉を潜めたサンジは己の膝をペシリと叩いて。
床に落ちていたシャツを羽織るとスリッパを履いて部屋を出た。
背中で扉を閉めると、そのまま扉に凭れかかり冷えた夜の空気に肩を震わせた。
そして。

「寝ねぇもん。そうすれば、怒ってるの忘れないですむもん」
朝目覚めてゾロの腕の温もりにこの怒りを誤魔化されない為に、一人静かに徹夜を宣言する。

今度こそ、ゾロにガツンと言ってやらねば!と。
固い決意を抱いたサンジは。

怒りを持続させる以外に別段やる事がないので、取りあえず朝食の準備をしようとキッチンへと向かった。

ちなみに、現在時刻夜中の二時半。
朝食の準備をするにはかなり早い時間なのだが、そんな事こそ今のサンジにはどうでも良い事実であった。
     




+++++




 現在のゾロの心境は。

(サンジが変だ)
 

珍しく昼寝もせず、船柵に寄りかかったまま甲板の一点を見つめるゾロ。
胸の前で腕を組み、右に首を捻る。

何やら深く考え込んでいるその姿を、仲間達は怪訝そうな瞳で遠巻きに見つめているのだが。

その沢山の視線の中にサンジのものが無いとしっかり認識しているゾロは。
首を左側に捻り返しながら、深い溜息を吐いた。
 

ゾロが思考の全てを使って考えているのは、可愛い可愛い恋人の事。
その恋人が、朝から様子がおかしいのだ。

今朝、いつも通り皆よりも大分遅く目覚めたゾロは、キッチンへと向かった。
もちろんサンジの作った朝食にありつく為だ。

キッチンの扉を開き、サンジしか残っていない室内へと足を踏み入れながら、
「おはようさん」

朝の挨拶を口にしてみた。
なのに、返事が無かった。

聞こえなかったのかと、洗い物をしている後ろ姿に向かってもう一度同じ台詞を言ったゾロに、やはり返事はなかった。

その時点で何やら変だなぁと思わなかった訳ではないが、きっと何か考え事でもしているのだろうと勝手に納得し、その後は敢えて何も言わず一人朝食を食べ始めたゾロである。
そして、テーブルに乗っていた一人分の朝食は、数分もしない内に綺麗に平らげられて。

ゾロは膨らんだ腹をさすりながら、片づけくらいは自分でやろうと皿を手に立ち上がった。
だが、ゾロがシンク前に居るサンジの隣に並び立った途端、二人の間の空気が動いた。
いや、正確には、サンジがクルリと身を翻した為に空気が動いたのだ。

ふいっと顔を背けるように、サンジは何も言わず、ゾロの顔も見ず。
スタスタとキッチンを出ていってしまった。

扉の向こうに消えた細い後ろ姿。

皿を持ったまま固まり、つい静かにそれを見送ってしまったゾロは。

ハッとして我に返った。
背中に嫌な汗が浮かぶのを感じた。
余り良い予感はしない。

今、すごく綺麗に無視されたような気がする。
存在自体を無視されてしまった気がする。

これはもしかして。
・・・・いや、もしかしなくても。
「アイツ・・なんか、怒ってやがんのか?」

この場にサンジが居て、このゾロの呟きを聞いたならば、彼は深く頷きながら「その通り」と言った事だろう。    


その朝食の以降も。

ゾロが声を掛けてもサンジは返事をしない。
ゾロの顔すら見ないのだ。

まるでゾロの存在なんか最初から知らないとでもいうようなサンジの態度。
これには訳が分からない分、ゾロも傷ついた。

それでも、俺はお前を怒らせるような事をしでかしたのか?と、幾度と無く問いかけたりするのだが、サンジからは一度として言葉が返ってこない。
傷つきつつも、訳が分からないまま無視され続けたら、ゾロだってイラついてしまう。
元々気の長い男ではないのだ。

一度、逃がさん心意気のまま無理矢理サンジの腕を掴み問いつめようとしたら、物凄く冷たい目で見られてしまった。

妙なまでに気迫のあるその目。
その目つきに、逃がさない心意気はどこへやら、ゾロはついサンジの腕を離してしまった。誰にも言えないが、微妙にサンジを『怖い』と思ってしまったのだ。
フンと逸らされた横顔を見つめ、ゾロは服の上から左胸を押さえた。

ジクジクする心臓。

らしくなく、しゅんと落ち込んだゾロには、サンジの怒りの理由が全く分かっていなかった。
  そして、現在の甲板での考え事に至るのだ。
様子を見るに、自分以外の人間には普段となんら変わらぬ態度で接している。
という事は、サンジはゾロに対してだけあんな態度を取っているという訳で。

それなら、サンジの冷たい仕打ちの理由はゾロにあるという事になる。

 
だったら。
ゾロが悪いのならば、そう言えばいいのに。
何が悪いのかはいまいち分からなかったが、それでも怒っている理由を教えてくれればいいのに。

自分が悪い事をしてしまったのならば、それを改めてちゃんと謝るのに。
サンジは何も言わない。
それどころか口すら聞いてくれない。
強気で問いつめて、またあんな目で見られたらと思うと、もっと凹んでしまいそうで出来ない。
 

海風に短い髪を撫でられながら、ゾロはむぅっと口を歪めた。
少しばかり拗ねてしまう。

サンジなんかもう知らねぇと、そう割り切れれば楽なのに。
可愛い恋人の不可解な行動に、ゾロの胸を占めるのは不安ばかり。
らくしない自分に落ち込んだゾロは、顔を上げ空を見た。

のんびりと青い空を流れていく雲。

それをボケっと見つめながら、自分の思考も流していく。
そして、思考が流れ着いてしまったのは、とんでもない考え。
「・・・待てよ・・・・もし、」

言わないのではなくて、言えないのだとしたら・・・。
 

あり得ないと、ずっと思っていて。
そんな想像をする予定なんて一生ないだろうと思っていたのに。
もしかして。
もしかしたら・・。  

ゾロは頭を抱え、ガバリと蹲った。
「・・・・・・他の誰かに心変わりでもしたんだろうか・・」
嫌な想像を口にしたら、胃の奥辺りが冷えて。

深く寄せた眉間にはズキンズキンと痛みが走る。

「ま・・まさかな・・ありえねぇって、ははは・・は・・は・・」
自分はなんて嫌な想像をしてしまったのだろうか。

一人虚しく空笑いを発してその想像を吹き飛ばそうとするのだが。
脳裏に浮かんで消えるサンジの無表情。

こちらを見てくれない瞳。

ゾロと名を呼んでくれない唇。  

ゾロはガックリと肩を落とし、深く項垂れた。
あぁサンジ、一体なぜ。
 
サンジの内心ばかりが気になる余り、自分の胸に手を当て己を振り返る事をしなかったゾロは。

気持ちを沈ませたまま、その日一日しっかりとサンジに無視し続けられた。














そしてその日の夜。
 

恋人部屋の前ではゾロが冷や汗流したまま立ちつくしていた。
もう夜遅い時間。

寝ようと部屋の前まで来たはいいが、中にはサンジが居る。
二人の部屋なのだから、サンジが居るのは当然なのだが。

数刻前の夕飯時を思い出すと、ゾロの胃はキリキリと痛み出す。
夕飯。

仲間に対しては、テーブルに静かに皿を置き給仕していたのに。
ゾロの目の前にだけは、ダン!ダダン!と皿を置かれた。
まるで叩き付けるかのように。

こらこら皿が割れるぞ、と。

引きつってはいたが一応笑顔でツッコミを入れてみたりはしたのだが、サンジは無視。
そして、ルフィには要求されるままに肉を。

ウソップの皿からは優しくキノコを取り除いてやって。
ナミにはいつも以上に丁寧に。

チョッパーに至っては、膝に乗せて食べさせてやったり。
そして、サンジの態度にいい加減キレそうになったゾロの目の前に、出されたデザート皿。
見れば他の誰よりも量が多い。
もしかしたら機嫌が治ったのかもしれないと、イソイソと山盛りアイスを口にしたゾロは。
正直泣きそうになった。

口の中が物凄く甘い。

いつもなら、甘い物が苦手なゾロの為にデザートは砂糖控えめで作ってくれるのに。
ワザととしか思えない程、ゾロの口の中は砂糖味で溢れている。
余りの甘さに目眩すら起こしそうになったゾロへと、今日初めてサンジから声がかかる。
「残したらオロス」 ニッコリ笑顔付きであった。
そしてゾロに残せるはずがなく。
鼻血を吹きそうな勢いで男を見せたゾロである。
   


閉じられたままの扉を見つめ、ゾロの喉がゴクリと上下する。
開けても良いものか大いに悩む。

そもそも、ドアノブを捻ってこの扉が開くとは限らない。
サンジの様子からすると、締め出しを食らってもおかしくはない状況なのだ。
しかし、こうやって立ちつくしたまま夜を迎えて、また今日と同じ明日が来るとしたら・・ゾロの胃が保たない。

それならば意を決して飛び込んだ方がまだ解決方法が見えそうで。
例えサンジが悪い想像通りにゾロをもう嫌いになってしまったのなら。

理由も聞かされずに納得する事なんて出来ない。
なによりも、サンジを手放すなんて露ほども思っていないゾロであるから。

嫌われてしまったとしても、また惚れさせてやる位の心意気はまだある。
ゾロはもう一度大きく息を呑み、ドアノブへと手を掛けた。

そして目を瞑り、えぇいままよ!と扉を開いた。
 

ガチャ。


扉は簡単に開いた。
知らず止めていた息を吐き出し、開かれたゾロの瞳に映ったのは。
「遅いぞゾロv」
「へ?」

大きなベットの上。
素っ裸のサンジがゾロに向かって両手を広げていた。
「ほらほら、カモーンv」

「・・・へ?」

下半身は辛うじてシーツにくるまれているが、そこから飛び出した白く細い足。
際どく見えている太股のライン。

そんな場合ではないというのに、サンジのあられもない姿にゾロの一部が熱くなった。
今日一日が夢だったのかと、ゾロは何度も目を擦った。

擦って擦って睫が目に入って痛いとか思いながら、擦りすぎて霞んだ瞳でにこにこ笑顔のサンジを凝視する。

「お前・・いったい・・」
「あーんv早く来て、ダーリンv」
甘えた声で呼ばれた。
 しかも、サンジはシーツをベットの下へと放り投げ、その身の全てをゾロの眼に晒してくる。
今度は違う意味で喉が上下する。
昨夜の名残濃いサンジの肌。
ゾロが残した沢山の印が紅く散っていて。
ワザとかそれとも天然物なのか、潤んだ瞳はうっとりとゾロを見つめてくる。
フラリ・・と。

ゾロの足下が揺れた。
カモーンと呼ばれるままに足が勝手に動き出したのだ。
引き寄せられる様にベットへと腰を下ろしたゾロ。

少しばかりだらしない顔でサンジの裸体を見つめるゾロの服を、細い指先が脱がしにかかる。

刀を取りベットの横へ立てかけ、腹巻きを取り、シャツを脱がせ、ズボンやブーツも全て剥ぎ取った。

されるがままのゾロは、時折される抵抗を封じるような甘いキスに、すっかり骨抜きにさせられてしまう。
すっかりサンジと同じ姿になったゾロは、

「サンジ・・」
かなり乗り気で恋人の肩を掴んだ。
もうサンジが怒っていた事なんてどうでもいい。
今は、据え膳の方が大事。

熱っぽい目でサンジを見つめ、押し倒そうとしたゾロの後頭部に。
「ッ!!」

サンジの踵落としが炸裂した。
頭を抱えてベットへと蹲ったゾロを、見下ろすサンジの瞳は先程までとは全然違う。
怒りに燃えた蒼い瞳。
額に浮かぶのは青筋である。
「いつもそう簡単にさせて貰えると思うなよ!」
「な・・っ」

サンジは、でかいコブをさすりながら顔を上げたゾロへと、人差し指をビシっと突きつけた。
  「今夜はお仕置きだ!オレの苦労をちっとは味わえ!!」




 
next to 後編 



<コメント>

・・・・これから先は、むふふっvお子ちゃまの閲覧は、
禁止とさせていただきます。
えっ?! 別に、裏には、行きませんけどね・・・
鼻血出るから・・・(笑)
それでは、Let’s Go!


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