LOVE MARK


その1.


 




ゴーイングメリー号は、順調にアラバスタに到着。

ビビの提案で、クルー達は、ナノハナに上陸し旅の準備を整える事となった。

「おい、てめえ一人で大丈夫かよ。 なんなら、俺もついて・・・」

「あ? 何言ってんだ。 てめえ、面子割れてるだろうが。 心配するな、チョッパーも

一緒に来てくれるってさ・・・。」

ゾロの言葉をサンジは途中で遮ると、そう言って街に買い物に出かけた。

「しっかし、ここは、穏やかで豊かな街だな・・・。 えっと、服も買うんだったよな・・。」

暑さでぐったりとなったチョッパーを先に戻らせ、サンジは、せっせと買い物に精を出す。

「おっ、お客さん、他所から来なさったね。 どうだい、これ、買っていかないか? この

土地の特産品だよ。」

ナミの注文で香水を買いに店に来たサンジに、店の主人はそう言って小瓶を差し出す。

「んあ? なんだよ、そりゃあ?」

「いやだなあ、お客さん、媚薬だよ、媚薬・・・。 とってもよく効く即効性の奴で、どん

なにお高くとまった女性でも、いちころの代物だよ。 ここじゃあ、香水も有名だが、こ

の媚薬も有名なんですよ。」

怪訝そうなサンジの声に、店の主人はそう言ってにやりと笑った。

「・・・・・媚薬、ねえ・・・・。 悪いが、そいつに用はねえ。 こっちの香水をくれ。」

「毎度あり〜。 お客さん、おまけしといたからね・・・。」

「ん?ああ、そりゃ、サンキューな・・・。」

サンジはそう言ってナミに頼まれた香水を買うと、そのまま店を出る。

 

「ほれ、着替え買って来たぜ。」

他のクルー達に着替えを渡し、自分も着替えようと服を脱ぐサンジ。

「わっ! 馬鹿!! ちょ、ちょっとてめえ、こっちに来い!!」

慌ててソロがそう叫んで、サンジを瓦礫の裏に連れて行く。

「あ?なんだよ! なにしやがる!! 離せよ!!」

ゾロの行動に、訳がわからずサンジはそう言って文句を言った。

「ばぁか・・・。 よくてめえの身体見てみろ・・・。」

ゾロは、額に手を置いて、サンジにそう言うと、胸の部分を指差す。

サンジがその指された身体の部分を見てみると、そこには、前日の情事の名残・・・・。

「あっ! うぎゃあ!! てめえ、こんなに一杯・・・!!」

虫に噛まれた様に、ところどころ赤くなっている箇所を見ながら、サンジはそう言って真っ青に

なった。

「大丈夫だ。 ナミ達には、見られてねえ筈だから・・・。 ほれ、俺が見張っててやる

から、ここで着替えちまいな・・。」

ゾロは、唖然としているサンジそう言って、着替えを手渡す。

そんな平然と構えるゾロに、サンジはだんだんと腹が立ってきた。

「大丈夫、じゃねえ! てめえのせいだろが!! 暫く、俺、てめえとはしねえ・・!」

「あ? なに言ってんだよ! それとこれとは、関係ねえだろ。」

サンジの口から思っても見なかったこと言葉を聞いて、ゾロは眉を潜める。

「関係大有りだ!このエロ剣士!!」

「そんな事言ったって、てめえ、我慢できんのかよ!!」

ゾロは、そう言ってサンジを見てにやりと笑った。

そんなゾロの態度にサンジのボルテージは上がる一方。

「何が言いてえんだ、このクソ剣士!! それじゃあ俺が、てめえにメロメロみてえじゃ

ねえか!」

「・・・・・そうだろ・・。 違うのか・・?」

サンジが真っ赤になって怒るのとは対照的に、ゾロは冷ややかな口調でそう言い返す。

「うるせえ!! ちくしょー!! こうなったら、ぜってえやんねえ!! 少なくても、こ

の内乱が決着つくまでは、てめえとは、やんねえ!!」

「お、おい!サンジ・・・!!」

サンジの言葉に、ゾロが慌てて宥めようとするが、もう後の祭り。

「うるせえ!! てめえ、傍に寄るな!!」

引っ込みがつかなくなったサンジはゾロの腹に蹴りを入れると、そう叫んでアラバスタの衣装

に着替えて、さっさと皆のところに戻って行く。

「・・・・やばいなぁ・・・。 ・・・・・臍曲げちまった。 まっ、いちゃついてる場合じゃねえ

し、しゃーねーか・・・。」

ゾロは、蹴られた腹を擦りながら、サンジの後を追い、他のクルー達の元へと戻った。

それから、着替えたクルー達は、それぞれナノハナの町を散策する。

しかし、ゾロとサンジだけは、先程の件が尾をひいて互いに別行動をしていた。




クソッ!!

ゾロの奴・・・。 

確かに俺は、てめえに惚れてるよ、ベタ惚れだ。 

けどよ・・・・それって、俺の方が惚れてる比重が大きくねえか・・・? 

てめえは、違うのかよ。 

俺とは違うのかよ・・・。 




先程の喧嘩の事ばかり考えて歩いていたサンジは、いつの間にか裏路地の治安の悪い場所

を歩いていた。

周囲の建物から、ぎらついた視線が、サンジに集中する。

周りの壁に寄りかかっている男達が、サンジを見てひそひそと囁きあっていた。

「あら、綺麗なお兄さん、遊んでいかない? サービスするわよ・・・?」

そう言って派手な化粧の女性が、サンジに声を掛けてきた。

「レディ・・・申し訳無いんだが、今は、そういう気分じゃないんだ。」

サンジはにっこりと微笑んでそう言うと、その傍をすり抜ける。

「あら? 残念ね・・・。 あっ、ちょっと待って・・・・・・肩にごみが・・・。」

その女性はそう言うと、サンジの肩に触れた。

と、同時に、サンジの首筋にチクリと痛みが走る。

「な・・・なにを・・・?」

そう言って首筋を押さえたサンジの視界が、揺らぐ。

「・・・・ごめんなさいね、お兄さん。 貴方、綺麗だから、目立っちゃったのよ・・・。」

「・・・・・麻酔か・・・?」

「ううん・・・・少し違うわ。 即効性の媚薬よ・・・。 幻覚と弛緩成分の入った、ね・・。

けど、すぐに気分も良くなるわ・・・気持ちも、ね。 ボスが・・・・相手してくれるっ

て・・・。」

その女性はそう言って、にっこりと笑うと、周りにいた男達に合図を送った。

「・・・・それは、相手が貴方じゃなくて残念。 だが・・・生憎、俺は決まった奴がいる

んでな・・・・ご期待には添えそうもない・・・。」

サンジはフラフラとしながらも、近づいてくる男達に蹴りを放つ。

しかし、弛緩剤の入った媚薬のせいで思うように身体が動かなくなっていった。

身体が、熱を持ったように火照ってくる。

「クソッ! 身体に力が入らねえ・・・。 瞳が・・・・かすむ・・・。」

サンジは、そのまま崩れ落ちるように地面に蹲った。

「やっと、大人しくなりやがったか。 ったく、手間かけさせやがって・・・」

そう言って、男達がサンジに触れようとした時、爆炎があがる。

「・・・・・・そいつに触れるな。 そいつは、てめえらが触れていい奴じゃねえ。」

「誰だ? てめえは?」

一斉に、男達の目が、その男に注がれた。

「・・・・・・そいつの・・・・知り合いだ。」

そう言って男は、周囲の男達を次々に倒していく。

「ちくしょー、覚えてやがれ・・!!」

男達と女性は、そう言ってサンジ達の前から姿を消した。

「・・・・サンジ、大丈夫か・・・?」

その男は、そう言ってサンジを抱き上げる。

「・・・・・あ・・・・・ゾロ・・・。 ゾロ・・・さっきは、ごめん。 俺・・・・俺・・・・」

サンジは、そう呟きながらその首筋にしがみついた。

「・・・・・う〜ん・・・。 ゾロって奴じゃねえんだけどな・・・?」

その男は、困ったようにサンジを見つめる。

しかし、サンジには、媚薬のせいでその男がゾロに見えていた。

「ゾロ・・・・・ゾロ・・・・。 ダメだ・・・・俺・・・・ゾロ・・・・・お願いだ・・・・俺を・・・」

相手をゾロだと信じきっているサンジは、そう言って切羽詰った表情でギュッとその男にしが

みつく。

「・・・・まっ、役得って奴か・・・?」

その男は、そう言って地面にサンジを押し倒すと、その衣服をたくし上げ、サンジの肌に手を

這わした。

「んっ・・・あ・・・・ゾロ・・・・はぁ・・・ん・・・・・」

ビクンとサンジの身体が震え、サンジから嬌声が漏れる。

「・・・・・・だから、ゾロじゃねえって!って言っても、わかんねえか・・・。 まっ、このま

まだと、お前辛そうだしな・・・。 手伝ってやるよ・・・。」

その男はそう囁いて、サンジの首筋に唇を落とした。

「・・・・・・・おい! てめえ、そこで何してんだ・・・。」

不意に、男の後ろでそう声がして、項に冷たい切先が当たる。

男は無言のまま、ゆっくりとサンジから離れ立ち上がった。

「・・・・人のもんに手えつけてんじゃねえよ・・・。」

そこには、、これ以上ないほど不機嫌なゾロの姿。

「・・・・・・・・ゾ・・ロ・・・?」

ゾロの声に、サンジはそこで我にかえった。

「オイオイ・・・。 俺が襲ったわけじゃねえよ。 サンジが教われてたのを助けただけ

だ。 こいつ、媚薬打たれたみたいで幻覚見ててよ・・・・俺をゾロとか言う野郎と間違

ったらしい・・・。 まっ、お前が来なきゃ、据え膳は頂けたんだがな・・・。」

その男はそう言うと、ニヤリとゾロを見て笑う。

「っざけんな!!」

ゾロはそう叫ぶと、その男に和道一文字を振り下ろした。

その瞬間、ゾロの前で爆炎があがり、ゾロを炎が襲う。

「チッ! 誰だ、てめえは!!」

「ん・・? 俺か? 俺は、エース・・・。 サンジの・・・・昔のダチだ。 お前さんが、

ゾロか。 噂は聞いてる。 三刀流の剣士だとか。 そうか・・・・お前があの店から

サンジを・・・・・。 まっ、良い。 俺は他に用があるから・・・。 サンジを頼むぜ、

ロロノア・ゾロさんよ・・・。」

エースはにやりと笑ってそう言うと、火柱をあげてゾロ達の前から姿を消した。








<next>