深愛 その6 |
俺は、本当に殺るつもりだった、あの時点まで。 殺って、ずっと、俺の傍に置いて・・・・・・・・ それなのに、あいつは・・・・・・あいつは、最後の最後で、笑いやがった。 そして、俺に・・・・・・・殺られようとしやがった。 あの店に入って、あの曲を聴いたサンジの顔を見たとき、俺は、なんとなく気が付いてしまっ た。 この曲は、サンジにとって特別だと・・・・・ 当然、歌ってる奴もあいつにとって特別な存在だと・・・・・ ・・・・・・それが、今でも、と言うことが、俺には、凄くショックだった。 あいつの心に、俺以外の存在があるのを認めたくなかった。 ただでさえ、女に優しいあいつ。 今までに、色々な恋愛をしてきたのだと思う。 それが当然で、自然なことだとわかっている。 過去のことはどうであれ、今は、俺一人だと信じたかった。 しかし、あの歌の人物だけは、俺を不安に陥れた。 誰が相手だろうと引くつもりはなかった俺を唯一不安にさせる人物。 それが現実に自分の前に現れて、またサンジと出逢ってしまった。 いい知れない焦りと醜い嫉妬。 一瞬、昔の事が思い起こされた。 彼女の時と同じように、俺は、サンジに選ばせることができなかった。 彼女の時のように、冷静にいられなかった。 あいつが俺から離れていくのは、耐えきれなかった。 その時点で、俺の負けだった。 より深く相手を愛した時点で、負けなのだ。 だから俺は、サンジを殺ろうと決めた。 どんなに、非人道的だと罵られようが蔑まれようが、構わなかった。 サンジが、俺の側にいれば、それで良かった。 たとえそれが、物言わぬ骸であったとしても・・・・・ だがそれも、あいつのあの笑顔を見た瞬間に、身体が動かなくなってしまった。 あいつの笑顔が、俺に気付かせる。 ・・・・・・・骸は・・・・・決して、笑わない・・・・・・ 俺は、本当にそれで良いのだろうか・・・・ 俺は、あいつのクルクル回るそんな表情も愛していたんじゃねえのか・・・・・ その表情があってこそ、サンジじゃねえか。 骸は・・・・・・・骸・・・・・・・・・それは・・・・・・・・サンジであってあいつじゃねえ・・・・・・ そう思ったら、嘘のように心が静かになっていった。 あいつを殺る気も失せていく。 それなのに、あいつは、俺に刀を振らせようと、次々に蹴りを繰り出してくる。 情け容赦のない蹴り・・・・・・しかし、微妙にポイントがずれている。 おかしい・・・・・俺はそう気が付いて、あいつの顔を見た。 あいつは、泣いていた。 いや、正確には、泣きそうに顔を歪め、俺を見ないように俯いていた。 それでも、蹴るのを止めようとしない。 なんで、そんなに俺に殺らせたがる・・・・・・俺の中で疑問が膨らんでいく。 「・・・・・・ろせ・・・・・・・殺せよ・・・・・・」 蹴りの途中で、小さく呟かれたあいつの声に、俺は、ハッとする。 『待たせるぐらいなら・・・・別れ別れになるくらいなら、あなたの手で、私を殺して。 彼女が言った言葉とサンジが発した言葉が、重なっていく。 「クソッ。 離せ! 離しやがれ!! っ・・・・・やっ・・・・見るな!! 俺を見る あいつはそう言って両腕で、顔を覆う。 「・・・・・・・・サンジ・・・・・・」 俺は穏やかな声であいつの名を呼んで、そっと頬に流れる涙を拭う。 「・・・・・・ゾ・・・・・・・ォロ・・・・・・・・」 あいつは俺の名を呼んで、堰を切ったように泣き出した。 「ッ・・クッ・・・ゾロ・・・・・・ゾロ・・・・・ロッ・・・・」 あいつは、俺の名を何度も呼んで、俺の首にしがみついた。 「・・・・・もう良い。 ・・・・・・・お前が俺の側で、笑っていてくれるなら、それ以 俺は、あいつの頬に手を添えて、そう囁く。 「ゾ・・・・ロ・・・・ごめ・・・・俺・・・・・俺・・・・別れたくねえ。 もう、離れられねえよ。 「もう良い。 ・・・・・言わなくても、わかったから・・・・ お前の考えてたこと、俺、 俺は、サンジの言葉を遮ってそう言うと、そっと唇を重ねた。 「・・・・・・・・ゾ・・・・ロぉ・・・・・・」 あいつが、そう言って泣きながら微笑んだ。
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<コメント> 如何だったでしょうか? かなり暗いお話になってしまいました。 落ちもありません。(苦笑) ロロスキーのルナは、やはり、ロロノ気持ちで締め!!っと。(笑) サンジの愛情とゾロの愛情を対比させるつもりだったんですが・・・ う〜ん・・・なんか、思いっきりゾロ寄り。(笑) 何となくわかったぞ、とおっしゃっていただけると、嬉しいです。(お仕着せ) では★ |