LOVE DECLARATION


その1.



 




ゴーイングメリー号のクルー達は、只今、ナノハナで潜伏中。

と言うのも、肝心の船長ルフィの姿が、見当たらないからだ。

「本当、何処行ったんだ?ルフィの奴・・・」

「フン、誰かさんと一緒で迷子になってんじゃねえの? 俺の苦労がわかるだろ、

てめえも・・・・・」

ゾロの溜息混じりの言葉に、サンジはそう言って鼻で笑う。

まだ前回の虫刺され事件(?)が尾を引いているのか、サンジの機嫌はすこぶる悪い。

「あん? なんだよ、何が言いてえ・・・」

「じゃあ、ちゃんと言ってやらぁ、この鈍感マリモ。 てめえの迷子加減を棚に上げてん

じゃねえって言ってんだよ!」

「マリモじゃねえ!!」

「いいや、どう考えたってマリモだろ! 人間はそうそう迷子にはならねえんだよ!」

「てめえ、泣かすゾ、コラァ・・・」

「誰が、てめえなんぞに・・・」

ルフィの心配は何処へやら、いつものようにゾロの鞘が鳴り、サンジが靴音を鳴らす。

「いい加減に・・・!!」

「あー、なんだ、皆、ここにいたのかぁー?」

二人を止めようとしたナミの鉄拳より早く、そう呑気な船長の声が聞こえた。

その後ろには・・・・・・・海軍の追っ手がずらり。

「キャー、ルフィさん、なんで??」

「いいから早く逃げるのよ!皆!! 船はあっち!!」

「なんだって、海軍なんか連れて来んだよ、ルフィの奴!!」

ビビ、ナミ、ウソップはそう言って我先にそこから駆け出した。

「てめえ後で覚えとけよ。」

「さぁ? 俺は色々と忙しいからな。 マリモの言葉はわかんねえし・・・」

「上等だぁ!!コラァ!!」

「うおーっ!! ゾロ、サンジ!! 喧嘩してる場合じゃないって!!」

逃げながらも、器用に小競り合いを繰り返すゾロとサンジに、チョッパーはそう叫びながら、

ナミ達の後を追いかける。

「ぜってえ啼かす!!」

ゾロは、憎たらしい悪態ばかり吐くサンジに夜のリベンジを誓った。

そんなこんなで、船に戻ったクルー達は、大急ぎで港を出港、ホッと胸を撫で下ろす。

しかし、肝心のルフィの姿がまたしても見つからない。

「ったく、世話の焼ける・・・」

ナミは頭を抱えて、そう呟いた。

「ナミさ〜んvv ビビちゅわんvv 冷たいお飲み物、どうぞvv」

サッとタイミング良くサンジが、ナミとビビに飲み物を差し出す。

「ほら、こっちがてめえらの分・・・。」

サンジはそう言うと、先程とは打って変わったニコニコした表情でウソップ、チョッパーにそれぞ

れ飲み物を手渡した。




ったく、なんだってんだ、コイツは・・・・。

いつもこうしてれば、可愛げがあるのによ・・・。

まっ、お仕置きは程ほどにしてやるか。




などと、ウソップが聞いていたら即、噴き出したであろう言葉を心で発しながら、ゾロもサンジ

が近づいてくるのを待つ。

が、しかし・・・。

「あーっ!! ルフィの奴、あんなところで手を振ってる!!」

「なにぃー! あのクソゴム!一体何を・・・!!」

チョッパーの声にサンジは踵を返し、甲板の縁に駆け寄る。

「・・・・・・・俺よか、ルフィかよ。 ・・・・・いい度胸してるじゃねえか・・・クソコック。」

ゾロはサンジの後方で、グッと拳を握ると先程の考えを撤回した。

港には甲板の縁に腕を伸ばそうとしているルフィの姿。

「「ゲッ!!! うわっ!!」」

ゴムの能力でまっしぐらに突っ込んでくるルフィに驚愕の声を上げながら、チョッパーとサンジ

はルフィと共に甲板に叩きつけられる。

「わりい、わりい・・・。 けど、エースと逢ってさぁ・・・」

「「エース・・・・?」」

ルフィの言葉に、サンジとゾロの顔が引き攣った。

「ああ、エースは俺の兄貴だ。 すげえ強いんだ、エースは・・・」

ルフィは、二人の様子に気付く事もなくスラスラとエースについて語り始める。

サンジは、隣りから流れてくる不穏な空気に、ちらりとゾロの表情を窺った。

ゾロはと言うと、見た目は至って普通だが、瞳がかなり据わっている。

しかも、こめかみが微かに引き攣っていた。




うっわぁ・・・・・極悪面・・・しかも、不機嫌丸出し・・・。

これは、ちと気を遣わねえとヤバいかも・・・。




サンジは、先程までの件は水に流し、なるべくゾロに優しく接しようと決める。

そうでなくては、これからの自分の身が危ない事を、サンジは本能で悟っていた。

「誰が、勝てるって?!ルフィ・・・」

サンジが、ゾロの表情に焦っていると、甲板の縁にスタッと見たことある人物が現れた。

いや、正確に言うとサンジとゾロが、今、見たくもない人物と言う事になる。

「エース!!」

「やっ、皆さん、弟がお世話掛けっぱなしで・・・。」

「「「「「いや、まったく・・・」」」」」

エースは、そう言って皆にぺこりとお辞儀をした。

あまりの常識的な挨拶に、クルー達は一様にこの船長の兄弟かと驚きを隠せない。

それ以上に、その後の敵船との戦闘で如何なく発揮されたその戦闘能力の高さにクルー達

は目を見張った。

「・・・・・とまぁ、こんな具合で暫く、一緒に旅させて貰うぜ。 皆さん、どうぞよろしく。」

そんなエースをクルー達は喜んで仲間に迎える。

但し、一部の者はそうはいかない様だったが・・・。






「なんなんだよ、ありゃあ!!」

「知るかよ!俺が!!」

「けど、てめえ、あいつ知ってたんじゃ・・・」

「ああ、エースは知ってたさ。 けどな、ルフィの兄貴だなんて初耳だ。」

エースの兄弟再会を祝して宴会が開かれ、クルー達の目を盗んで、キッチンでゾロとサンジが

そう言い合いをしている。

「・・・・っで、どういう知り合いなんだ? てめえとあいつは・・・。」

「ど、どう言うって・・・・・・エースは、昔、店で無銭飲食の代わりにタダ働きしてたん

だ。 そ、それだけで・・・・・」

ゾロの質問に、サンジは動揺を隠せない。

別にゾロに隠すようなやましい関係ではなかった。

まぁ、一緒のベッドで寝たとか、別れ際に泣いてほっぺにチューされたとか、そんな子供じみ

た事があったのは事実なのだが。

大人ばかりのバラティエに於いて、自分と年が近いエースと仲良くなるのはサンジとしては

必然の事で。

しかし、それを洗いざらい瞳の前で鋭い視線を向ける魔獣一歩手前のゾロに話す程、サンジ

は命知らずにはなれなかった。

「ふ〜ん・・・・。 それだけ、ねえ・・・・」

サンジの動揺を見抜き、ゾロは更に厳しい視線をサンジに向ける。

ゴクリとサンジは嚥下した。

こういう時のゾロの視線は、慣れてる筈のサンジでも背筋が薄ら寒くなる。

「な、なんだよ! 俺の言う事が信じられねえってのか?!」

サンジは、ゾロの視線にいたたまれずに背を向けた。

「・・・・・別に・・・・信じてねえ訳じゃねえよ。 ただ・・・・・」

そう言って、ゾロがサンジをそっと背中から抱きしめる。

「てめえの過去をどうこう言うつもりはねえし・・・・けど・・・・気になる。 あいつが・・・

あいつの瞳が気にいらねえ。 きっと、あいつは・・・」

ゾロは、サンジの肩に顎を乗せそう呟いた。

ククッとサンジの喉が鳴る。

「ばぁ〜か。 なにらしくねえ事考えてんだよ。 いつもこっちがむかつくほど余裕ぶっ

こいてやがる癖して・・・。 こんな物好きがそうそういる訳ねえだろ・・?なっ?」

サンジは、そう言いながらゾロの頭に腕を回し、そのこめかみに口付けを落とした。

「サンジ・・・・・」

「ん・・・・ダメだって、ゾロ。 まだ、皆、甲板で起きて・・・・」

甘い声で囁かれ、耳朶を甘噛みされ、ゾクンとサンジの背中に甘い痺れが走る。

ゾロの手がサンジのシャツを撫で、裾から中に進入した。

サンジの肌を確かめるようにゆっくりと腹から胸へとその指を這わす。

「ふっ・・・・ん・・・・ダメだって・・・・」

その肌に触れる度に、サンジの口からは吐息が漏れ、ふるふると小刻みに身体が震えだし

た。

ゾロは、もう一押しとばかりに、その唇を自分ので塞ぐ。

後は、陥落して自分に凭れかかるサンジをすぐ脇のソファーに横たえて、恋人達の時間に突

入するばかりと思った次の瞬間、勢いよくキッチンのドアが開いた。

「んげっ!!」

その音に我に返ったサンジは、思い切りゾロを壁に突き飛ばす。

哀れ、ゾロは壁に頭から突っ込んだ。

入ってきたのは、エースだった。

「あ? なにやってんだ?サンジ・・・。 ところでよ、皆、酔い潰れたらしくってさ。 

部屋は何処だ? ルフィ達を寝かせたいんだが・・・。 っと・・・・大丈夫か?ロロノア・

ゾロ君?」

慌てふためいて紅潮したサンジと、壁に激突して頭から血を流すゾロを交互に眺めながら、

エースはそう言ってにこやかに笑う。

「あ、ああ。 じゃあ、案内してやるよ。 こっちだ。」

サンジは努めて冷静を装うと、そう言ってキッチンのドアを開けた。

「ククク・・・悪いな、本当。 別に邪魔する気は無かったんだが、ルフィ達をそのままに

しとく訳にはいかないだろ? それと、ここではしない方が良いぜ。 人の出入りが多

すぎる。」

エースは、ニヤリと笑ってゾロにそう呟くと、そのままサンジの後に続いてキッチンを出る。

「あの野郎・・・。 やっぱ、気にいらねえ・・・。」

ゾロは、頭から流れる血を拭いながら、忌々しげにその後姿を見送った。









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<コメント>

【DECLARATION】は、宣言と言う意味。
別に深い意味は・・・まぁ、エースがゾロに宣誓布告?みたいな。(笑)
いやぁ、こういう三角関係は面白いよね☆
能天気なサンジにイラつくお馬鹿ゾロv
はてさて、どうなる事やら☆
続く・・・・・。