トライアングル★スクランブル★ANOTHER STORY


その4





(俺・・・死んじまうのかな・・・・・ユーリさん・・・大丈夫だったかな・・・・ゾロ・・・俺が

死んだら、少しは、泣いてくれるかな・・・・ナミさん・・・・さいごまで・・・ごめんな・・・

・・・ジジイ・・・皆・・・本当に・・・・ごめん・・・・俺・・・ここまで・・・だ・・・ゾロ・・・

ゾロ・・・ゾロ・・・)

サンジは、海の中で、薄れ行く意識の中、ゾロの名を呼んだ。

(サンジ! どこだ・・・どこにいる!! 俺を呼べ!! 俺を呼んでくれ!!)

ゾロは、薄暗い海の中、必死で、サンジを捜した。

『・・ゾロ・・・・』

サンジの声が、確かにゾロの耳に届いた。

その声の方に急いで泳ぐと、キラキラと漂う金色の光を見つけた。

(いた!! サンジ・・・やっと、見つけた・・・)

ゾロは、サンジをギュッと抱きしめると、急いで、海上に上がった。

海の上には、ナミが操縦する、ゴーイングメリー号の姿があった。

ナミは、すぐに、ゾロとサンジを見つけると、素早く、小舟をつけて、サンジとゾロを引き上げ

た。

「ナミ!! サンジが、息してねえっ!! チョッパーいるか?」

「お、おう、ここにいるよ! ゾロ、早く、サンジをこっちに・・・」

「チョッパー、早く見てやってくれ!!」

「ゾロ!! 俺が、心臓マッサージするから、ゾロは、息を吹き込んでくれ!!」

「わかった!」

「サンジ、しっかりしろよな・・・」

「がんばって!!サンジ君!!」

「サンジ〜!!死ぬな〜!!」

「「「縁起でもないこと、言うな!!」」」

(頼む・・・死なないでくれ・・・誤解したまま・・・逝くな・・・)

ゾロは、祈るような気持ちで、何度も、サンジに息を吹き込んだ。








10分後・・・

「グッ・・ゲッボッ、はあ、はあ・・・」

サンジは、ようやく、息を吹き返した。

しかし、まだ、意識は戻らない。

「サンジ!!」

「ゾロ! 揺すっちゃ駄目だよ・・・それより、身体が、冷えてきている・・・早く、ベッド

に寝かせて! 急いで!! 体温が急激に、下がってる・・・このままじゃ!!」

チョッパーが、せっぱ詰まった声で、ゾロに叫んだ。

「私達の部屋の方が、暖かいわ。 さあ、早く、サンジ君を!!」

ゾロは、ナミに言われるまま、サンジを毛布でくるむと、女部屋に急いだ。

「すぐに、暖めるわ。」

そう言って、ロビンは、ハナハナの能力で、ストーブを倉庫から女部屋に運ぶと、急いで、火

を付けた。

「ゾロ!!何ぐずぐずしてんの!! 早く裸になって、サンジ君をあたためて! 

人間の体温の方が、早く、あたたまるはずよ! あたし達、外で待ってるから、

サンジ君のこと・・・お願いよ!!」

ゾロと一緒に、部屋に入ったナミは、ゾロに向かってそう言うと、そっと、部屋を出ていった。

「・・・サンジ・・・・逝くな・・・・・俺の体温・・・全部、お前にやるから・・・

戻ってこい・・・サンジ・・・」

ゾロは、裸になって、冷たくなったサンジの身体を、強く抱きしめた。










「ごめんなさい・・・全部・・・私のせいで・・・・」

ユーリは、ナミに、そう言って泣きながら、頭を下げた。

「・・・貴女のこと・・・ゾロに聞いたわ。 ・・・親友の妹さんなんですってね・・・ 

・・・あなた・・・ゾロが、黙って出ていった理由・・・本当は、気付いてるんじゃない

の? ゾロは、ああいう言葉が上手くない奴だから・・・でも、本当は、優しい奴だか

ら・・・」

「ええ・・・ナミさんがおっしゃるように・・・私・・・わかってました・・・ゾロは、私なんか

見てないことぐらい・・・姉によく似た私に・・・姉の面影を見ていただけだと言うこと

も・・・だから、私・・・あの人が、私を、私だけを見てくれるようにって・・・ずっと昔に、

あの人が夢で見たって言う・・・その人と同じ格好にしたんです・・・元々、私、姉と同

じで、真っ黒な髪の毛と、黒い瞳だったんです・・・だけど、あの人、それじゃあ、いつ

までも私を見てくれそうにないと思って・・・夢の人と同じ・・・金髪で、蒼い瞳の人

に・・・そうしたら・・・あの人・・・悲しそうに・・・そのまま・・・黙って・・・」

「えっ?! ちょっと、待って?! 金髪に蒼い瞳って??」

「昔、あの人が、言ってたんです・・・夢を見たって・・・姉を失ってから、夢なんか見た

ことなかったのにって・・・金色の髪をした・・・海のように蒼い瞳の人が・・・俺の名前

を呼んでた・・・って・・・俺は、あいつに逢わなきゃならないって・・・ 私は、そんな

の、ただの夢だと言いました・・・でも、あの人は・・・」

「私・・・崖で、サンジさんに助けられて・・・その時、確信しました・・・その夢の人

は・・・きっと・・・ ・・・・ごめんなさい・・・私が、あの人達を傷つけてしまった・・・

・・・私さえ、あの人を追いかけてこなければ・・・本当に・・・ごめん・・・な・・・さ

い・・・」

「・・・・・・・・」

ナミは、思わず、絶句した。

(・・・なんて二人なの・・・・神様! 一生のお願い!! ・・・もしいるのなら・・・

・・・サンジ君を・・・あの二人を・・・助けて・・・)

ナミは、生まれて初めて、神様に、祈った。











やがて・・・・・夜が明けた・・・・・

クルー達は、一睡もせず、皆、キッチンで、サンジのことを心配していた。

「・・・俺、ちょっと、様子見てくる・・・」

チョッパーは、サンジのいる、女部屋へと、急いだ。

「・・・ゾロ・・・どうだ? ・・・サンジの様子・・・俺、ちょっと、診察してみていい?」

「ああ、チョッパーか・・・・サンジ・・・大分、あったかくなってきたと思うんだが・・・

まだ、意識が、戻らねえ・・・」

「・・・わかった・・・診てみるよ・・・」

チョッパーは、聴診器を当てて、サンジを診た。

「・・・かなり・・・脈が・・・弱い・・・後は、早く、意識が戻らないと・・・身体が、衰弱し

ていく・・・でも、コレばかりは・・・俺には、どうしようも・・・ご・・・ごめん・・・ゾロ・・・

俺・・・何の役にも立たなくて・・・俺・・俺、医者なのに・・・」

チョッパーは、帽子を深くかぶると、ゾロにそう言って謝った。

「お前のせいじゃねえよ・・・ ・・・それに、こいつは、そんな柔な奴じゃねえ・・・・ 

大丈夫だ・・・こいつは、きっと、目を覚ます・・・」

そう言って、ゾロは、チョッパーの帽子を、ポンと軽く叩いた。

「うん、そうだよね・・・ サンジが・・・そうだよね!! ・・・ゾロ・・・何かあったら、

俺、呼んで。 すぐに、駆けつけるから・・・」

「・・・・わかった・・・」

チョッパーは、そう言うと、部屋を出ていった。

「・・・・サンジ・・・・お前・・・何処にいるんだ・・・サンジ・・・俺を呼べ・・・ 

・・・俺を呼んでくれ・・・」

ゾロは、サンジを抱きしめて、そう、囁いた。











(・・・・誰だ・・・・何を言ってる? ・・・お前は・・・ダレだ? 俺は、お前みたいなガ

キ・・・知らねえぞ? 何だ、てめえ・・・泣いてんのか? ・・・男はな・・・人前で、泣

くもんじゃねえんだぞ。 ・・・って、俺、ナミさんの前で、大声で、泣いたんだよな・・・

人のこと、言えないか・・・ ところで、てめえ・・・ゾロって言う男、知らねえか? 

三刀流で、方向音痴で、何考えてんのかわからねえムッツリ野郎のことなんだ

が・・・ あん?! てめえがゾロだって?! ・・・笑わせるなよ・・・てめえ、どうみて

も10歳ぐれえだろ? 俺の探してるゾロは、19歳なの! 俺と同じ・・・19歳・・・・

『サンジ・・・』・・・あん?! てめえ、今、何か言ったか?? 『サンジ・・・』 

・・・ああ、もう、うるせえんだよ・・・ ああ、ごめん・・・てめえに怒ったんじゃねえん

だ・・・さっきから、俺の名前呼ぶ奴の声が・・・うるさくて・・・ごめん・・・俺

・・・あっち、行ってみるわ・・・ じゃあな、ちびゾロ!また、逢おうな!!・・・)

「・・・・・サンジ・・・・・サンジ・・・・・」

「ん? ・・・ゾ・・・ロ・・・」

俺は、ゾロの呼ぶ声が聞こえたような気がして、目を開けた。

「・・・サンジ!! 気が付いたか? 良かった・・・サンジ!!」

目の前に、ゾロの顔が、あった。

「・・・どうしたんだ・・・そんな泣きそうな面しやがって・・・・」

俺は、そう言って、ゾロの頬にそっと手を伸ばす。

「馬鹿野郎・・・男はな、人前じゃ泣かねえんだよ。」

ゾロは、そう笑って、俺の手を握った。

「ん・・・そうだったな・・・」

俺も、ゾロの顔を見て、笑い返した。

「あれ?! ユーリさんは??」

俺は、少し、心配になって、ゾロにそう言った。

「・・・あいつは・・・あいつは、くいなの妹だ・・・ ・・・俺達は、恋人同士なんかじゃね

え・・・」

ゾロは、そう言って、ユーリさんのことを、俺に話してくれた。

「何だ・・・そうだったのか・・・そうか・・・・」

俺は、ユーリさんの気持ちが痛いほどよくわかって・・・素直に、喜べなかった。

「・・・ゾロ???」

ゾロは、黙って、俺を抱きしめる。

「・・・・・もう・・・何処にも・・・いくな・・・・俺から・・・・離れるな・・・」

そう言ったゾロの声は・・・少し・・・震えてた。

「ああ、もう大丈夫だ・・・ゾロが、俺を呼んでくれたから・・・」

そう言って、俺は、ゾロを抱きしめかえした。














「良かったわ。 早く元気になって。」

「もう、すっかり元通りだね。 サンジ、凄いよ。」

「サンジ、あんまり、無理すんなよ。 何か手伝って欲しいのがあったら、このウソップ

様に、言えよな。」

「サンジ君v 本当に、良かったわ・・・コレ・・・ユーリさんからの手紙・・・貴方に渡し

てくれって・・・」

「サンジ〜、俺、腹減って・・・サンジのメシが、食いてえ〜」




「ああ、いいぜ! ちょっと、待ってろ。 すぐ作ってやるから・・・」

サンジは、そう言うと、胸のポケットに、ユーリからの手紙を入れ、キッチンに向かった。




「ナミさ〜んvv、ロビンさ〜んvv、お待たせしました〜。ランチの用意、整いましたっ

v おい、野郎共!! メシ食いたきゃ、手え洗って来やがれ!!」

「「「やった〜! サンジのメシだ〜!!」」」

「「久しぶりね、サンジ君のランチ・・・」」

クルー達は、サンジの作ったランチを食べに、キッチンへ向かった。

サンジは、一人、船尾で、タバコに火を付けると、ユーリの手紙を読んで・・・

・・・・それから、海に流した・・・

「・・・どうした。」

ゾロが、後ろから、サンジに声をかけた。

「・・・いいや、なんでもねえよ・・・」

そう言って、サンジは、ゾロに、もたれ掛かった・・・。








<END>



    
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<コメント>

久しぶりに(いや、初めて?)、シリアスでまとめてみました・・・
途中、何度も、ギャグをかまそうかと・・・(笑)
何とか、発作を押さえての駄文でした・・・
まっ、たまにはね。
こう言うのも書けるってとこ、アピールしなくては(笑)
お気づきの方も、多いと思いますが、
コレ、元々キリリク100番のお話として
書いたんだけど・・・あまりのリクとの違いに・・・断念したもの・・・

お題は・・・「ゾロの昔の恋人登場!サンジVS元恋人。二人のラブラブぶりに、
呆れて諦める・・・H有りで。」
だったの・・・ほら、全然違うでしょ?
だから、これは、【another story】と言うことで、
こちらに置きました・・・

キリリクのと、比べてみては・・・如何でしょう・・・
逃走・・・・