あいつは、あんなひどい傷を負いながらも、ルフィのために、魚人と戦った。
案の定、戦いの最中、胸の傷が開いた。「馬鹿野郎が!!」
俺は、つい、あいつに眼を取られて、不覚にも、また、あばらをヤっちまった。
「クソッがあ・・・」
何だって、あいつはこうも、俺の心を乱すんだ!
それに、ルフィ、ルフィって、うるせえんだよ!!
・・・・・・・わかってんだよ。
てめえが、ルフィしか見てねえってこと位・・・・・。
・・・・・・・そんくらい。
そんなくだらねえこと考えてっから、たかが、魚野郎に、この俺様が、手こずったんだ。
くだんね〜。
あいつが、誰を見ていようと、何を考えようと、何で、俺が、気にすることがある。
・・・・・・・・・・・ほんと、くだらねえ。
俺は、お祭り騒ぎのココヤシ村で、レディ達に声をかけ、酒を飲んだ。
・・・・・・・くだらねえことを考えねえように。
本当に、レディ達は、かわいいし、優しいし、ふわふわして、酒もうめえ。
俺は、やっぱ、陸って良いなあ、なんて、憂かれはしゃいだ。
不意に、ナミさんのお姉様が、
「あなたも怪我してるんでしょ? お酒飲むのも、それくらいにして、医者に診て貰っ
たら? ああ、それと、この薬、熱冷ましよ。 あの緑髪の剣士に飲ませてあげて。
少しは、楽になるはずよ。」
そう言って、俺に薬を渡してくれた。
「何で、俺が...」
と喉まででかかった声を引っ込めて、
「了解しました!! ナミさんのお姉様vv いやあ、実に、お優しいvv」
と、笑顔で返事をした。
今、一番考えたくねえ奴のところか・・・・。
・・・・・・・・・・・まいったなあ。
でも、レディのお願いは断れねえ。
まっ、しゃーねーか。
俺は、周りのレディ達に、名残惜しくお別れの挨拶をすると、奴のいる医者の家に向かった。
家にはいると、奴以外、だれもいなかった。
大方、みんな、あのお祭りに出ていってしまったんだろう。
俺は、コップに水をくみ、薬と共に、奴のベットの横にあるイスに腰掛けた。
真新しい包帯を上半身に巻いて、奴は、眠っていた。
さすがに、あの傷じゃ、無理ねえか。
ふと、そばのテーブルに、色紙が数枚置いてあるのが目に付いた。
そおいやー、ガキん頃、クソジジイのために、千羽鶴ってもんを、折ったことあったよなあ。
あの頃は、本当に何にも出来ないガキで、クソジジイが、早く、元気になるようにって、
あれで、折り鶴の折り方を覚えたんだよな。
・・・・誰だっけか、確か、千羽鶴の意味も教えてくれたっけ。
確か、俺より、少し上ぐらいだったか・・・・・?
どんな奴だったかな?
そうそう、俺のこと、じっと睨み付けてて、何か、目つき、悪かったよな。
そうかと思うと、赤の他人の俺に親切に折り鶴なんか教えてくれっし、変な奴だったよな。
「クッ、クッ、クッ」
おまけに凄い不器用な奴でよう、看護婦さんが、噂してたもんなー。
たかが、鶴1羽折るのに、午前中一杯かかったってな。
俺が、簡単だと言ったら、ムッとした顔してよ、本当、面白れえ奴だったよな。
あっという間に、いなくなっちまったが・・・。
俺は、思い出し笑いしながら、テーブルの色紙で、鶴を折った。
いつも大人達の間にしかいなかった俺の、唯一の子供同士の想い出....
もっと、色々話したかったな。
結構、いい奴だったな。
けど、すんげえ、色だったよな。
おりゃ、初めて見たぜ。
あんな、緑色した・・・緑の髪・・・髪の毛???
俺は、ガバッとベットに身を乗り出した。
緑・・・緑・・・・
こいつの髪の毛も緑。
ははは、ま、まさかな・・・・?
同じ色の髪の毛なんて、そう珍しいことなんてない。
まして、10年以上前の、たった2、3日のことだったし、顔なんて覚えてねえし。
偶然、偶然!
こいつのはずねーだろ、やっぱ....
そう思いながらも、俺は、奴の顔から、目が離せなかった。
「き・・・い・・・だ・・・」
奴が、何か言った。
「ああん? 何か言ったか?」
俺は、奴に話しかけた。
奴はゆっくりと目を開けて、それから、覗き込んだ俺をじっと見ていた。
懐かしいそうに、眼を細めて。
こりゃ、まだ、寝ぼけてやがるな。
「何、じっと見てんだよ!」
覚醒を促そうと、そう声をかけた俺に、奴は、無邪気に笑いかけて、片手で、俺の頬を撫で
た。
ちょっと、かわいいかも・・・って、おい!
今まで見たことのない無邪気な表情に、俺の思考は、一瞬にして、ストップしてしまった。
全身の血が、その触られている頬に集中するのを感じる。
不意に、顔を引き寄せられる感じがした。
・・・・・・・・・これ以上は、やべえ。
きっと、どこぞの、レディと勘違いしてるに違いねえ。
それとも、ルフィか?
俺は、奴の頭上に、多少の手加減を加えた踵落としを食らわせた。
「うごっ!!」
奴は、うめき声を上げた。
「いってえー!! てめえ、何しやがる!!」
何しやがるだと?!
寝惚けんのもたいがいにしろよ・・・・・このクソ野郎・・。
「そりゃ、こっちの台詞だ! クソ野郎・・・。」
俺は、タバコを口に銜え、努めて冷静に奴に言った。
「?・・・・何って・・?」
奴は、ポリポリと頭をさすりながら、そういった。
「てめえ・・・覚えてないのか?!」
俺は、キッと奴を睨み付け、そういった。
さっきの感触が、フラッシュバックしたような感じがして、顔から、火が出そうだった。
俺の剣幕(?!)に動揺したのか、奴は、真剣に考え込んでいる様子だった。
眉間にしわを寄せ、顎に手をかけて、小首を傾げて考えている。
これが、先日、あの鷹の目のミホークに勝負を挑み、魚人を相手に戦った、世間では魔獣と
呼ばれ怖れられる男と、同一なのか?!
・・・・・・・かわいいじゃねーか。
俺は、なんだか妙におかしくなり、
「もう、いい!!」
と、一言言うと、大きなため息を一つ吐いて、笑いをこらえた。
それから、俺は、ココに来た用事を思い出した。
「ナミさんのお姉様が、熱があるから、お前に薬持ってけって。 お優しい方だよな
vv ・・・ほらよっ!!」
そういうと、俺は、薬と水の入ったコップを差し出した。
すると、奴は、神妙な顔をして、
「そういうてめえは、どうなんだよ。 あばら イっちまったんじゃねえのか?」
と、予想外のことを言い出しやがった。
へ??
・・・・・・・・なんだよ。
一応、心配してくれんだ。
ルフィのことしか考えないのかと思ってたぜ。
俺も、てめえの眼中に、入ってんのか?
チクショー・・・・・。
なんか、ドキドキする・・・。
さっきのことがあったから・・・・か?
俺は、心の動揺を、押さえるように、横のテーブルに薬とコップを置いて、タバコに火を付け
冷静を装った。
奴は、また、じっと俺を睨んでいたが、俺は心の動揺を知られるのが嫌で、無視していた。
「仕方ねえ。」
いきなり、奴は、そういうと、テーブルの上の薬とコップを持って、2倍の量の薬と水を口に入
れた。
「あっ、おい! 馬鹿! そんな、いっぺんに飲んだら・・・・・・」
熱冷ましって言うのは、たいていは、劇薬で、大量に飲むことは、タブーだ。
そんなことも、しらねえのか、こいつは・・・・・
俺は、あわてて、奴に近づいた。
不意に口の中に、なにか入ってきた。
な、なんだ?
うわあ、苦げえー!
苦げーよ。
それに・・・・・・・・・苦しい。
一体、何が起こったんだ?
俺は、無我夢中で、口の中の苦い物を飲み込んだ。
しかし、まだ、息が出来ない。
なんでだ?
どうなってる???
俺は、初めての衝撃に、頭が、真っ白になっていた。
どれくらい経ったのか・・・・。
俺は、ようやく、口が塞がれているのを把握した。
・・・・・・・・・・・それも、奴の唇で・・・。
そ、それって・・・・
それって・・・・?
俺はまた、別の意味で、頭が真っ白になった。
しばらくして、また口の中に何かが入ってきた。
なんか、なま暖かくて、柔らかくて、グネグネして・・・・・・
「ふぁ・・・・あふ・・・んんっ」
無意識に声が漏れた。
・・・・・・・・・・気持ち・・・いい。
「ふぁ・・んんっ・・あふ・・・んんっ」
グネグネって、・・・・・こいつは、舌か?
・・・・・・・・・・・・舌?
っで、なんで、俺はこいつに抱かれてんだ?
俺は、即効、現実に戻った。
俺は、奴にキスされていた。
・・・・・・・・・・それも、かなり濃密なやつを。
俺の中で、何かが、キレた。
「て、てめえ! いっぺん、死んでこーい!!!
俺は、今度こそ、手加減無用の踵落としを奴の脳天に食らわした。
「ぐはあ!!」
奴は、そのまま、気を失った。
クソッ、クソッ、俺の大事な唇を・・・
ああ、これから先に出会う、美しいレディに捧げるはずだった俺の口づけを・・・・
何で、よりによって、この馬鹿剣士に・・・・・
ああ、誰か、嘘だと言ってくれ・・・・。
記念すべき、俺のファーストキッスが・・・・。
こ、こんな、こんな、馬鹿アホマリモ野郎とだなんて・・・・・
だ、誰か、嘘だと言ってくれ・・・・。
俺は、ふらつきながら、その場を後にした。
テーブルの上には、俺の作った折り鶴が1羽、羽を広げてのっかっていた。
<END>
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<コメント>
何か、馴れ初めの前に、ワンクッションおきたくて、子ゾロとチビナスをからめてみました。
ショボイですね・・・・うちのサンジもゾロもかなりボケまくってます。
でも、これから、意識し出す二人が始まります・・・
それでは、★
・・・・・逃げる!!
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