始まりは、ジャパネスク


その7





・・・俺が最後に見たものは・・・

泣いているゾロの姿・・・

ゾロが、俺を呼んでいるようで・・・思わず振り返った・・・その姿・・・

・・・たった・・・たった1週間だったけど・・・俺には、忘れられない・・・想い出・・・

「はあーっ。」

今日、何度、ため息を吐いたことだろう・・・














「サンジ君、どうしたの? 時空旅行から帰ってきたと思ったら、ずっと、ため息ばかり

吐いて・・・さては、恋でもしてきたのかしら?」

ナミは、わざといたずらっぽくサンジに言った。

「!! そ、そんなんじゃありませんよ、ナミさんっv」

「えーっ、サンジ。 お前、好きな娘、出来たのか? 誰だ、それ。 俺の知ってる奴

か? ダメだぞ、サンジ。 サンジは、俺んだ。」

「・・・何で、俺がてめえのなんだ? 勝手言ってんじゃねえぞ、オロすぞ、コラ。」

サンジはそう言って、ルフィの頭に蹴りを入れた。

「・・・そう言えば、今日、転入生が来るっていってたような・・・どのクラスになるのか

しら・・・」

いつもながら、ナミの情報の速さは、他の生徒の比ではない。

どんな些細な出来事でも、ナミが知らないことはないと言うほど、ナミは、情報通であった。

「あっ、予鈴だ。 それじゃあ、あとでねっv バイバイ。」

そう言って、ナミは、またサンジのそばから離れないルフィの襟首を掴むと、引きずるようにし

てクラスに戻っていった。

(そう言えば、平安時代のナミさんも、ルフィの面倒よく見ていたよなあ・・・)

サンジは、思い出したように、フッと微笑んだ。

「おっ、サンジが笑ったぞ・・・」

「あっ、サンジ君が笑った。」

「やっぱり、こうでなくっちゃっv」

「やっぱり、かわいいよねっv」

「素敵な笑顔だ・・・」

「かわいいっv」

ひそひそとクラスでそんな会話が囁かれた。

サンジの笑顔で、クラスの雰囲気が、パッと明るくなる。

「ハイ、皆。 席について・・・今日は、転入生を紹介する。 ・・・君、入ってきて良い

ぞ。」

そう言って、担任のスモーカー先生は、転入生の入室を促した。

「はい。」

そう一言言って入ってきた、生徒の姿を見て、サンジは、思わず立ち上がって、大声を上げ

た。

「ゾロ!!」

ざわざわとクラス中にざわめきが起こった。

「おや? サンジ、お前、知り合いか? ロロノア君、君たち、知り合いか?」

スモーカーが、ゾロに聞いた。

「・・・いえ。 今、初めて逢いましたけど・・・」

ゾロは、不思議そうにサンジを見つめた。

(あの緑色の髪の毛・・・あの顔・・・あの声・・・絶対にゾロだ。 俺が、ゾロを見間違

うわけがねえ。 ・・・なんだ・・・こっちの世界にも、いたんだ・・・そっか・・・

お、俺・・・もう・・・会えないと思ってた・・・もう、声聞けないと思ってた・・・

よ、良かった・・・俺・・・俺、嬉しい・・・)

サンジは、ゾロの顔をじっと見つめたまま、ポロポロと涙を流した。

「サ、サンジ?! 何だ、何が起こったんだ?! おい! どっか、痛いのか?!」

急に泣き出したサンジにスモーカーは、おろおろして、サンジに声をかけた。

クラスの皆も、口々にサンジを心配する。

不意に、スモーカーの隣にいたゾロが、スタスタとサンジの前まで歩いてきた。

「てめえ・・・俺の顔見て泣くんじゃねえよ。 ・・・泣くな。 てめえの泣き顔、見たくね

え。」

そう言うと、ゾロは、サンジの頭を自分の肩に押し付けた。

「っ・・・ゾロ・・・ゾロ・・・ゾロ・・・」

サンジは、堰を切ったように泣きじゃくり、ゾロにギュッとしがみついた。

ゾロの背中に、刺すようなクラス中の生徒の冷たい視線が集まった。

(・・・しかし、まいった・・・こいつの泣き顔にいてもたってもいられなくなって・・・気が

付いたら・・・これかよ・・・ それにしても、こいつ・・・何で、俺見て、ここまで泣くん

だ? 俺、何かしたのか? ・・・それに俺の名前知ってたし・・・どっかで逢ったこと

あんのかなあ。 でも・・・いくらなんでも、これじゃあ、俺が泣かしたみてえじゃねえ

か・・・ これから、どうしよう・・・こいつ、泣きやまねえな・・・なんか嫌なんだよな、こ

いつが泣くの・・・何か、俺まで悲しくなっちまう・・・いや、とりあえずは、この状況を

何とかしねえと・・・)

「先生。 ちょっと、こいつ、保健室、連れていって良いですか? こいつ、何か、熱っ

ぽいようなので・・・」

ゾロは、そう言うと、スモーカーの返事も聞かず、サンジの手を引っ張って、教室を出ていっ

た。



いざ、教室を出てみたものの、後ろで、まだ、グスグスと泣いているサンジをどうしたもの

か・・・ゾロは、思案した。

(とりあえず、屋上でも行くか・・・)

今日、転入してきたばかりのゾロが、保健室の場所など到底知っているはずもなく、ゾロは、

サンジの手を引っ張って、屋上に上がった。

「なあ・・・いい加減、泣きやんでくれねえか・・・俺、訳わかんねえ・・・」

ゾロは、サンジの正面に立つと、頭をガシガシと掻いて、そう言った。

「ああ、グスッ、ごめんな・・・俺、嬉しくってさあ・・・ズッ、はは。 恥ずかしい奴だよ

なあ・・・ごめんな。」

サンジは、そう言って、目をゴシゴシとこすった。

「こらっ、あんまし、こすんねえ方が良いぞ。」

ゾロは、そう言ってサンジの手を掴んだ。

「あっ・・////」

「あっ、ごめん・・・////」

二人は、そのまま、真っ赤になってしまった。

「あ、あらためまして。 俺、サンジって言うんだ。 よろしくな。」

そう言って、サンジが、手を差し出す。

「ああ、俺、ゾロだ。 ロロノア・ゾロ。 ふ〜ん、お前がサンジなんだ・・・」

ゾロはサンジと握手しながら、まじまじとサンジを見た。

「ん?!どうした?? 俺、何か変か?」

サンジは、キョロキョロと自分の格好を見回した。

「いいや、そうじゃねえ。 お前、ここの学園じゃあ、有名みてえだったから・・・

どういう奴か、見てみたかったんだ。」

そう言って、笑った。

「??有名って? 俺、別になにも悪いコトしてねえぞ?」

(一体、何が、有名なんだ?)

サンジは、理由がわからず、首を傾げて考えた。

(嫌、そう言う意味じゃねえと思うぞ・・・俺は・・・)

ゾロは、サンジの仕草に、思わず吹き出してしまった。

「おまえ、なんか、かわいいなあ。」

ゾロは、思わず、言葉に出してしまった。

しまったと思ったが、後の祭り・・・

(やっぱ、野郎相手に、可愛いはねえよな・・・サンジの奴、気い悪くしたかな・・・)

そう思って、サンジの方をちらっと見る。

すると、サンジは、顔を真っ赤にして、黙って俯いたままだった。

(やっぱ、まずかったよな。)

「ごめん、サンジ。 気い悪くしたなら、謝る。」

ゾロは、サンジに頭を下げた。

「えっ、ゾロ。 別に良いよ。 そんなのは、慣れっこだから・・・俺・・・こんなだろ?

しょっちゅう、先輩とかから、そんな事言われてっから。 ・・・ただ・・・ゾロに言われ

て・・・ちょっと・・・照れた・・・」

サンジは、はにかんでゾロにそう言った。

「ドキン。」

ゾロは、自分の心臓が飛び出すんじゃないかと思った。

ドキドキして、まともにサンジの顔が見れない。

「なあ・・・お前・・・生まれ変わりって・・・信じるか?」

不意にサンジが、真剣な顔でゾロに言った。

「も、もしもだぞ。 もしも、好きになった奴が、また生まれ変わって、自分の側に現れ

たら・・・ゾロ・・・お前なら、どうする?」

「・・・さあな。 俺は、俺だし・・・生まれる前のことなんか知らねえし・・・好きになる

のは、俺の意志だし・・・生まれ変わりだろうと関係ないんじゃねえのか。」

ゾロは、率直にサンジにそう答えた。

「・・・・そうか・・・・」

サンジは、寂しそうにそれだけ言った。

(・・・何で、そんなこと・・・俺に聞くんだ? ・・・こいつ、好きな奴とかいるのかな・・・

クソッ。 何か、イライラしてきた・・・なんだ、俺・・・おかしいぞ・・・)

ゾロは、自分の心の変化にとまどいといらだちを覚えた。

「・・・ゾロ? どうかしたのか??」

ゾロの周りの空気の変化を感じ、サンジがおずおずとゾロにそう言った。

「・・・別に・・・」

「別にって、お前、急に不機嫌になってんじゃねえか・・・ごめん・・・俺が、変な事言っ

たから・・・でも、俺・・・俺・・・」

サンジは、また涙声になってくる。

ゾロは、ギョッとした。

「ああ、すまん・・・俺が悪い。 悪かった。 謝るから泣くな。 頼む、泣かないでく

れ。 ・・・俺は、お前に泣かれると・・・ああもう、泣くな!」

ゾロはそう言うと、サンジをギュッと抱きしめた。

「っ・・・・ゾロ・・・ゾロ・・・俺、俺・・・ゾロのこと、好きだ・・・逢ったばかりで、変な事

言うなって怒るかもしんねえけど・・・男に向かって、こんな事言うなんて変だとわかっ

てんだけど・・・俺・・・俺やっぱり・・・ゾロのこと・・・ゾロのこと、好きだ・・・」

そう言って、サンジはゾロを抱きしめ返した。

「・・・サンジ・・・それって・・・どういう・・・」

ゾロは、突然のサンジの告白に、言葉を失った。

「あ・・・ご、ごめん、俺・・・言うつもりなかったんだ・・・ごめん・・・気持ち悪いよ

な・・・ごめん・・・忘れてくれよ・・・」

そう言って、サンジは、ゾロから身体を離した。

(なに言ってんだ? サンジが、俺のこと好きだって・・・そう言ったのか? ・・・本当

なのか・・・本当に俺のこと・・・でも・・・なんでこんなに・・・ドキドキしてんだ? ・・・

野郎に言われてんのに・・・何でこんなに嬉しいんだ・・・ああ・・・そうか・・・俺も・・・

俺もきっと、こいつのこと・・・だから、こいつにイライラしたり・・・ドキドキしたり・・・俺

の方が・・・変だ・・・逢ったばかりなのに・・・)

「ごめん・・・ゾロ、忘れてくれ。 もう俺、平気だから・・・悪かったな・・・教室、戻って

良いぞ・・・」

サンジは、そう言って笑うと、ゾロに背を向けた。

『・・・行ってきても良いぜ・・・俺は、平気だから・・・ごめんな・・・そう言うから・・・

ゾロ・・・行っても良いよ・・・』

ゾロの中で、言葉がリフレインされる。

(俺は・・・この言葉を・・・知っている様な気がする・・・ずっと昔に・・・似たようなこと

が・・・ ・・・いや、確かに俺は・・・・・・知っている・・・こいつのこと・・・

・・・俺の想い・・・)

「・・・忘れて、良いのか?」

ゾロは、静かな声で、サンジに言い返す。

「ああ・・・何度もそう言ってる・・・」

(・・・ゾロの顔を見ると、自分を止められなくなってしまう・・・これ以上・・・ゾロに、変

な野郎と・・・思われたくねえ・・・)

サンジは、背中を向けたまま、グッと涙を堪えた。

「・・・なら、こっち向いて・・・俺の顔を見て、そう言ってみろよ。 お前の好きだって言

う気持ちは・・・そんな簡単に忘れて欲しいって言えるほどの・・・その程度のものな

のか・・・その程度の気持ちで・・・俺に言ったのか。」

「っ・・・違うっ!! そんなことあるもんか・・・俺は・・・ゾロが・・・ゾロに変な奴と思

われたくなくて・・・これ以上、嫌われたく・・・」

「俺の気持ちも返事も知ろうとしないで、勝手に、自己完結するんじゃねえよ。」

ゾロは、サンジの言葉を遮ってそう言うと、サンジの腕を取り、振り向かせた。

「・・・好きだ、サンジ。」

ゾロはそう言ってサンジの頬に伝う涙を指でそっと拭う。

「・・ゾ・・ロ・・・」

サンジは、もう一度ゾロに抱きついた。

「お前、ずっと、泣いてばっかしだな・・・」

ゾロは笑ってそう言うと、サンジの目元に優しく口付けた。

「馬鹿・・・これは、嬉し涙なの!」

そう言って、サンジは、最高の笑顔をゾロに向けた。





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<コメント>

やっと、終わりました・・・第一部(純情編)・・・(笑)
いや、これには、続きがあるんです・・・またかよ・・・(-_-)
いや、Hしてないから・・・欲求不満でして・・・(笑)
左近少将ゾロと師の宮サンジのお話(絶対にR!)と・・・
あとは、・・・キリリクNO.222に!
けど、これUPしたとき、キリリクがUPされているかは・・・
神のみゾ知る・・・(笑)
たぶん・・・UPされてると・・・だって、ルナ、かのんさんに、
9月中にはって、お約束したから・・・
って、ぶりっこしても、ダメ??(逃亡!!)