ジャパネスク ふたたび −平安時代編− その1 |
ここは、平安時代、世はまさに、藤原の栄華を極める今上帝シャンクスが、治める京の都。 春の除目も、一通り済んで、宮中の人事も、大きく変わった。 権大納言であったウソップは、関白左大臣に、権少将だったルフィも、権中将に、その位を上 げた。 もちろん、左近少将だったゾロも、例外ではなく、衛門督(えもんのかみ)と、検非違使(けび いし)の別当(べっとう)(=今でいうところの警察庁長官)に、昇進していた。 ゾロは、その除目で、宮中に参内途中、猫の死骸に、行き触れて、そのまま、先触れ悪しと 言うことで、その除目には、参内しなかったのだ。 (この時代、不吉なモノにでくわしたら、なには、ともあれ、禊ぎして、その身に受けた穢れを 落とさないといけなかった。 ましては、宮中に、その穢れを持ち込むなど、言語道断だっ た。) そして、今日、ゾロは、ルフィに招かれて、桜の木のある庭先で、夜桜を風流に楽しんでい た。 「・・・・なあ、ゾロ。 今度、この前、新師の宮になったばかりの宮様の歓迎の宴が、 「・・・サンジ様だろ。」 「そうそう、そのサンジ様だ。 そいつ、凄い綺麗な奴だったぞ。 瞳の色は、蒼くてさ ルフィは、思い出したかのように、ほーっと、息を吐くと、杯の酒を飲み干す。 「・・・・そりゃ、残念だったな。 ・・・・まあ、そのうちにでも、逢えるだろ。 歓迎の宴 ゾロがそう言うのも、無理はない。 「ああ、ちゃんと、練習してるぞ。 今から、吹いてやろうか。」 ルフィは、そう言って、女房のナミに箏を持ってこさせ、吹き始める。 ぶふぅ〜ぶ・・・ぶ〜 その音色は、とても、箏の音には、聞こえない。 「・・・・・もう良い、止めてくれ。 酒が、まずくなる。」 ゾロは、呆れ顔でそう言うと、ナミの顔を見る。 「・・・・・なあ、ルフィ。 月を見てると、なんか、思い出しそうな気がしてくるんだ。 ゾロは、月を見上げて、ルフィにそう言った。 「ああ、俺も・・・・そんな気がしてきた・・・・」 その夜、ルフィとゾロは、月と桜を肴に、酒を酌み交わした。 ゾロはそう言って、ぐてんぐてんに酔っぱらったルフィを担ぎ上げると、関白左大臣の車宿 「なあ、済まないが、こいつ、家に連れ帰ってくれないか。」 ゾロは、車宿で待機していた家人を捕まえて、そう頼んだ。 「いつも・・・・済みません、ゾロ様。 さっ、ルフィ様、もう、帰りますよ・・・・」 家人は、そう言ってゾロに頭を下げ、ルフィを車に押し込んだ。 「・・・・・はあ・・・・また、俺・・・・笛吹くのかよ・・・・・・」 ゾロは、これからのことを思うと、足取りが重く感じた。 「・・・・・・??変だな。 確かにこっち側だとそう思ったんだが・・・・・」 自分では、宴の席に戻っていたはずのゾロは、いつまでもその宴の席に着かないことに疑 「・・・クソッ。 広すぎて・・・・・迷ったようだな。 さて、どうしたものか・・・・・」 そう言って考え込むゾロの耳に、涼やかな声が、聞こえてきた。 「照りもせず曇りも果てぬ春の夜の・・・・朧月夜に似るものぞなき・・・」 その声の主は、桜の木の下で、散りゆく桜の花びらを手に取り、一人佇んでいた。 「・・・そう言う貴方は、月の精ですか?」 ゾロは、そう優しく声を掛け、その声の主に近づく。 「あっ、なにをする! 無礼は許しませんよ。 わかったら、手を離して下さい。」 声の主は、そう言ってゾロを睨み付ける。 「これは、失礼しました。歌と声が、あまりにも、見事だったので、つい、声を掛けてし ゾロは、そう言うと、優しい瞳で、声の主を見つめる。 「・・・・・どこかで、お逢いしましたか?? 私には、全く覚えがないのですが・・・・ 暫くして、声の主は、そう言ってやんわりとゾロの腕を払った。 「あっ、貴方のお名前は・・・・」 「・・・・人に名前を尋ねる前に、まず、自分から言うのが、礼儀というものでしょう。」 「失礼しました。 私の名は、ゾロ。 衛門督の任を頂いております。 っで、貴方 「あなたが、ゾロ。 いや失礼、ゾロ殿でしたか。 ・・・・・私は・・・・・・」 「おい! サンジ! ここにいたのか・・・・帝が、探してたぞ。」 不意に、ゾロの後ろの方から、声がした。 「おや、これは、左近中将のゾロ殿ではありませんか。 どうかしましたか? このよ エースは、そう言って、ゾロを見てニヤリと笑う。 「よせよ、そんな言い方。 肩が凝っちまう。 いつものように、喋れよ。」 ゾロは、呆れ顔でエースにそう言った。 「悪い、悪い。 一応、宮中だからな。 っで、お前、本当に、ここでなにしてんだ?」 「・・・・道に迷った。」 「はぁ?? またかよ・・・・お前なあ、よくそれで、検非遣使の別当なんか務まるよ エースは、大げさに呆れてそう言った。 「うるせえな、放っとけ! ところで、お前こそ、何しに来たんだよ。」 「あっ、そうだった。 サンジ、帝が、お前を探して来いって言ってたんだ。 まだ、ここ エースは、思い出したように、そうゾロに言った。 「・・・・やはり、貴方が、サンジ様でしたか。 お噂通りの方ですね。」 「・・・・・噂??」 ゾロの言葉に、サンジが、ピクリと反応する。 「ええ、とても綺麗な方だと、皆が、噂してましたよ。」 ゾロが、にっこりと笑ってそう言った。 「外見だけで、判断すると、馬鹿見るぜ・・・・」 ボソリと、小さな声で、サンジが呟く。 「へ??」 「・・・・だから、外見だけで、そう決めつけんじゃねえ!! 先に言っとく。 ゾロが、思わずあげた間抜けな声に、サンジは、額に青筋を立ててそう捲し立て、さっさと、 「ククク・・・まあ、そう言うわけだ。 ほら、お前も、宴に、戻るんだろ? ついて来い エースは、呆然としているゾロの肩を叩いてそう言うと、サンジの後を追って歩き出した。 「・・・・・嘘だろ・・・」 ゾロの呟きは、桜の花びらの中に消えていった。 帝のシャンクスが、戻ってきたゾロにそう声を掛ける。 「・・・・・承知しました。 でも、少しだけですよ・・・・・・」 ゾロは、そう言うと、真ん中に立って、笛を吹き始める。 「・・・・・笛・・・上手いじゃねえか・・・」 「ん??何か言ったか、サンジ?」 「いや、別になにも・・・・・」 思わず呟いた自分の声にそう聞き返したエースの言葉に、サンジは、慌ててごまかした。 「・・・・笛吹きの中将か・・・・ククク・・・あの時の間抜けな顔・・・・面白い奴だな・・・」 サンジは、一人聞こえないような小さな声でそう呟くと、一息に、杯の酒を飲み干した。 |
<コメント> やっと、始めました。 平安ゾロサン。 約2ヶ月ぶりですよね。 どんな話だったのか、ルナももううろ覚えで・・・(っておい!) 最後の最後まで、素直で可愛いサンジにしようか迷ったんですが、 結局こんな感じのサンジにしちゃいました。 さて、どうなることやら・・・・地道に続けていこうと思いますので、 気長によろしくお願いします。(出たよ、『気長』が。笑) |