FINAL COUNT DOWN


その1





ぽかぽかと温かな陽気に包まれて、ゴーイングメリー号は、のんびりと次のログが指し示す

島へと航海中。

と、いきなり、甲板で新しいパチンコ玉の研究中のウソップの頭上に、一通の郵便物が舞い

落ちてきた。

どうやら、サンジ宛の手紙らしい。

「お〜い! サンジーッ!! お前宛に、手紙、来たぞーっ!!」

そう言って、ウソップが、船尾で洗濯中のサンジのところに走っていく。

船尾に見えたサンジの金髪を目にしてウソップは、もう一度、サンジに声を掛けた。

「サンジーッ!! 手紙が来てるぞ・・・・・・あ゛っ・・・・・・」

そう言って、船尾に着いたウソップは、目の前に広がる光景に思わず、身震いする。

そこには、洗濯を終え、ゾロの腹巻きの上で、頭を乗せて横たわるサンジと、邪魔をするなと

ばかりに、ウソップに鋭い視線を向けるゾロの姿。

「ヒッ・・・・わざとじゃないぞ、わざとじゃ・・・お、俺は、サンジに来た手紙を渡しに来

ただけだからな。 ほ、ほらよ、サンジ。」

ウソップは、ゾロの視線にビクビクしながら、手紙をサンジに手渡す。

「お! ありがと、な。 ウソップ。」

サンジは、そんなウソップの様子も気に掛けることなく、身体を起こすと、そう返事して手紙を

受け取った。




・・・もう・・・・いい加減にしろよな・・・・一々、睨むなよ・・・・マジ心臓に悪いぜ・・・・・




「い、いいって事よ・・・・じゃ、俺、戻るから・・・・・」

ウソップは、たかがこれだけのことで、自分に、敵愾心丸出しの態度をとるゾロに、呆れなが

ら、また、甲板に戻っていった。




「・・・・・・誰からだ?」

自分の横に座り直し、手紙の封を切ろうとしたサンジに、ゾロはそう声を掛ける。

「ん?・・・・・あ、クソジジイからだ。 うわ、懐かしいなぁ・・・・」

サンジは、ゼフの筆跡を見つけ、嬉しそうに声を上げた。

サンジが、バラティエを出てから、そろそろ1年が経とうとしている。

その間、紆余曲折があったモノの、こうして、ゾロとサンジは、ゴーイングメリー号公認の

カップルとなっていた。

いや、正確には、馬鹿ップルとクルー達は、評している。

最近は、ところ構わず、このように二人だけの世界を作り上げているのだから・・・・・

「・・・・・っで、なんて書いてあるんだ?」

ゾロは、ゼフからの手紙に、いぶかしがりながらサンジにそう聞いた。

「あっ、あのね、ジジイ、俺達に会いに来るって。 ゾロに話があるって書いてるぜ。

・・・・・何の話だろ??」

首を傾げながら、手紙を読んでいるサンジに、ゾロは、顔を引きつらせた。

「・・・・・なぁ、サンジ。 ・・・・お前、ひょっとして、バラティエに俺達のこと書いた手

紙・・・・・・送ったりしなかったか?」

ゾロは、結果は分かっていたが、確認のため、サンジにそう聞く。

「おう! ちゃんと書いといたぞ。 ゾロと俺は、恋人同士になったって。 ・・・・・初め

て身体を繋げたときは、すげえ死ぬかと思ったけど、ゾロだったから、後悔してない、

今は、幸せだって、そう書いた。」

サンジは、ニコニコして、ゾロにそう答えた。

「はぁ・・・・・・サンジ。 ・・・・・・わかった、もういい・・・・はぁ・・・・」

ゾロは、深いため息を吐くと、サンジの身体を引き寄せる。

「???ゾロ??」

不思議そうに自分を見上げるサンジの顔に、ゾロは、軽くキスをして、これから自分の身に起

こるであろう不幸を呪った。

その容姿に違わず、キラキラと天真爛漫な腕の中の恋人は、素直に全てを手紙に書いて、

その一部始終をバラティエに報告したに違いない。

それを知ったゼフやバラティエのコック達が、どういう反応をするかも知らないままに・・・・・

きりきりと胃の腑が、痛んでくる。

この手紙が、今日来たと言うことは、もうすでに、この近くまでやって来てるかも知れない。

「・・・・・・・・・・カウントダウン・・・・・スタートだな・・・・」

ゾロは、そう小さな声で呟いた。




それから、2日後。 ゾロの予想通り、海上レストランバラティエは、ゴーイングメリー号の前

に姿を現した。

「クソジジイ、皆、元気だったか??」

サンジは、嬉しそうにゼフに抱きつき、その再会を喜んだ。

「おう、チビナスも相変わらず、元気そうだな。 ・・・少し、線が細くなったんじゃねえ

のか? ちゃんと食ってるのか?」

ゼフも久しぶりの再会に嬉しそうにそう言った。

「いよう、おっさん、久しぶり! なんか用か?」

ルフィが、そう言ってゼフに声を掛ける。

「いや、用って事の程じゃねえんだが・・・・ちょっと、な・・・・・」

ゼフはそう言って、先程から一言も発さずに瞳を瞑って甲板に腰掛けているゾロに瞳を向け

る。

「なあ、飯食って良いか? やっぱ、ここの店、美味いもんな・・・・」

「ああ、勝手にしろ。 2、3日は、いるつもりだから・・・・」

「おっしゃ、頂き〜vv」

「あ、じゃあ、あたしも・・・・」

「お、俺も・・・・」

「俺も行く〜!!」

「これが、噂に聞く海上レストランバラティエ、ね・・・・・楽しみだわ。」

ゼフの言葉に、サンジとゾロを覗いた他のクルー達は、一斉にバラティエに向かった。

「サンジ〜!! せっかくだから、厨房の方、手伝わねえか?」

パティがバラティエの甲板から、そう言って叫んだ。

「チビナス、行って来い。 あとで、てめえの料理の腕が落ちてねえか、俺がきっちり

見てやるから・・・・」

ゼフは、そう言うとサンジの頭をポンと叩く。

「チッ。 いつまでも、チビナス扱いしてんじゃねえぞ、このクソジジイ。 ・・・・仕方ね

えな。 おう、今行く!!」

サンジは、ゼフにそう悪態を付きながらも嬉しそうに、バラティエの厨房に走っていった。

ゾロは、そんなサンジの様子を見て、のっそりとそのまま無言で、バラティエの店の方へ向

かう。

「おい、てめえ。 俺になんか言うことあるんじゃねえのか・・・・」

ゼフがそう言ってゾロを睨み付けた。

「あァ? 別に、言う事なんて何もねえよ・・・・」

ゾロは、だるそうにそう言うとゼフを睨み返す。

「・・・・てめえは、本当、口の利き方っていうもんを知らねえな。 ちょっと、面貸せ。

・・・・話がしたい。」

「俺は、話したくねえ・・・」

「いいから、来いって!!」

「うげっ!! おい、離せよ! 猫じゃあるまいし、んなとこ掴むな! おいって!!」

ゾロは、ゼフに首根っこを捕まれて、ゼフの部屋に無理矢理連れて行かされた。








「・・・・だから、来たくなかったんだ・・・・・はぁ・・・・」

ゾロは、ゼフの部屋に通されて、ブツブツと一人そう呟いてため息を吐いた。

ゼフの部屋の壁には、びっしり、チビナスサンジの写真が貼ってある。

机の上やタンスの上にも、ゼフやバラティエ時代に皆で撮った写真が飾られていた。

それだけで、サンジがゼフや他のコック達ににどれほど溺愛されて育ってきたか、わかるも

のだ。

それだけに、何処の馬の骨ともわからない自分に可愛いサンジを横取られたと聞けば、居て

も立っても居なかったんだろうとゾロは思う。

その気持ちは、わからないわけではない。

しかし、19歳にもなって、そこまで干渉されるのは、ゾロにとって面白くないのは当然と言え

よう。

「・・・・っで、話って、なんだ。」

いつまで経っても、アルバムを見つめたまま口を開こうとしないゼフに痺れを切らして、ゾロは

そう言った。

「ああ・・・・てめえ、真剣なんだろうな。」

ゼフはそう言ってゾロを睨み付ける。

「なにが?」

「なにがって・・・・・サンジのことだよ! ・・・・ったく、てめえも、なんで話があるか、

わかってんだろ? サンジは、俺にも信じられねえくらい、純粋で素直な奴に育った。

なんでこう荒くれ共の中で育ったのにああ育っちまったのか・・・・世界の七不思議に

数えても不思議はねえとそう思っている。 ・・・・それだけに、俺は、あいつが可愛

い。 他のコックの連中だって皆そうだ。 ・・・・これ、見て見ろよ。」

ゼフはそう言って、ゾロにサンジのアルバムを見せ始めた。

開店当初のゼフと一緒の写真、初めてのコック仲間と撮った写真、誕生日の写真、クリスマ

ス・・・・お正月・・・・年々増えていく仲間達と笑い合っている写真・・・・どれもこれも幸せなの

だとそのアルバムに貼られているサンジの笑顔は物語っていた。

「あいつはなぁ・・・・島から助かったときには、それはもうビクビクとしてて・・・・海を

見るのも嫌がったほどだった。 まあ、あれだけの飢えと精神的ダメージを子供なが

ら受けたからな。 それも仕方がねえ。 けどな、あいつは、死にかけてた俺の身体

にしがみついて、もう一度海に出て、このバラティエを一緒にやるってそう言ったんだ

よ。 だから、死ぬな、俺を置いて死ぬなってな。 あの一言が、始まりだった。 

あれからずっと、俺達は、強い絆で結ばれてきた。 仲間も増えた。 そして、あの

麦藁に逢って・・・・サンジは、俺の元から巣立って自分の夢を掴むために、海に出て

いった。 ・・・・・それが・・・・てめえとこんなことになってるなんて、な。」

ゼフはそう言うと皮肉めいた笑いをゾロに向ける。

「・・・・・何が言いてえんだ・・・・」

「はっきりと言わせて貰う。 サンジが、いくらてめえに惚れていようが、たかが一剣

士ごときに、俺の可愛いサンジをくれてやるわけにはいかねえ。 サンジが、本気で

欲しかったら、さっさと鷹の目でもブッ倒して、世界一の剣豪にでもなってみやがれ。

そしたら、二人の仲を認めてやる。」

ゾロの言葉に、ゼフは、きっぱりとそう言いきった。

「いい加減にしろ! なんで俺達のことを一々あんたに認めて貰わなくちゃならねえん

だ! これは、俺とサンジのことだ。 余計な干渉は止めて貰おう・・・・」

ゾロは立ち上がると、全身から不機嫌なオーラをまき散らし、ゼフにそう言う。

「ほう・・・・・自信が無えのか? 夢は世界一の大剣豪とほざいていながら、やっぱ、

夢は夢か?・・・所詮、その程度の男なのか? てめえは。」

ゼフが、ニヤリと笑ってそう言い返した。

「ハッ。 ・・・面白れえ。 やってやろうじゃねえか。 但し、てめえに言われたからじ

ゃねえ。 俺は、俺の意志でそうするんだ。 それに、あんたに認められようが認めら

れまいが、俺は、サンジを手放すつもりはねえからな。」

「フッ。そんなことは、ちゃんとできてから言うんだな。 てめえは、一回、鷹の目に負

けてんだ。 それまでは、犬の遠吠えにしか聞こえないぜ。」

「一々、むかつくことばかり言いやがって・・・・あんたは、俺に喧嘩ふっかけるために

ここに連れてきたのか・・・売ってる喧嘩なら、買うぜ。」

ゾロのイライラは、絶頂に達していた。

「クソジジイ!! パティとカルネが店のほう、たてこんできたから、来てくれってさ。

あっ、ゾロ。 なんだ、ここにいたのか。 さっき、ルフィ達が何処に行ったんだろうって

話してたぜ。 ・・・・もう、話は、済んだのか?」

厨房の白いコック服に身を包んだサンジがそう言って部屋に入ってきた。

「ああ、もう済んだ。 じゃあ、てめえの腕が落ちてねえか、俺が、見てやる。 

ほら、行くぞ、チビナス・・・・」

ゼフはそう言って、サンジを抱き抱えるとゾロに見せつけるようにニヤリと笑って部屋を出て

いく。

「あー、また、チビナスって言った!! 俺はもう、チビナスじゃねえって、何度言った

ら、わかるんだ。 このクソジジイ!!」

サンジは、別にゼフが抱き抱えるのを嫌がる風でもなく、そのままにゼフの髭を引っ張ってそ

う文句を言った。

たぶん、ここ、バラティエにいた時には、そうやって抱き抱えられていたのであろう。

しかし、その姿を目の当たりにしたゾロの額に青筋がくっきりと浮かび上がる。

「あっ、ゾロ。 皆、店の方でてめえが来るの、待ってたみてえだったぞ。 早く行って

やれよ。」

サンジは、ゼフに抱き抱えられたまま、顔だけゼフの肩から出して、ゾロにそう告げた。

「ああ、わかった。」

ゾロは、こみ上げてくる怒りを必死で押し殺して、そう短く返事する。

ここで、不機嫌な声を出せば、ゼフが、了見の狭い男だとも言われかねないことをゾロは、

知っていた。

「ん?? じゃあ、な。 ゾロ。 俺も、厨房終わったら、来るから。」

サンジは、そんなゾロの心情などわかる筈もなく、若干、ゾロの口調に違和感を感じたもの

のさほど気にせずにゼフと共に、部屋を出ていった。

「あーーーっ!!! むかつく、むかつく、むかつくーーーっ!!!」

ゾロは、誰もいなくなったゼフの部屋で、そう叫んで店の方へ向かった。








「ゾ、ゾロ・・・・・・なんかあったのか??」

チョッパーが、おどおどとした声で、そうゾロに話しかける。

他のクルー達にゾロが合流して席について、真っ先にその不機嫌さに気が付いたのは、

チョッパーであった。

「・・・・・別に、なんでもねえ。」

ゾロはそう言うなり、テーブルの上の酒を手酌で次々と空けていく。

「チョッパー、そんな奴、放っときなさい。 大方、サンジ君をこの店に取られて、むか

ついてるだけだから。 それより、早く食べないと、ルフィに全部、食べられちゃうわ

よ。」

ナミは、平然とそう言うと、テーブルの料理を口に運ぶ。

その隣では、腹をパンパンに膨らませながらも、料理を口に運ぶルフィの姿があった。

「うおお!! 俺のサラダが!!」

チョッパーは、自分の前の皿が消えていくのに気が付いて、慌てて料理を食べ始める。

「本当に、食意地汚ねえな、てめえは・・・・・」

ウソップが、呆れたようにルフィを見つめた。

「ふふふ、でも、本当に、ここのお料理、美味しいんだもの。 船長じゃなくても、食べ

たくなるの、わかる気がするわ。」

ロビンも、ワインを片手に、そう言って笑った。

「うがーっ!! それ、俺の肉ーっ!! 返せよ! 返せって!!」

「ふがが・・・ふがふが・・・ふががが・・が・・・」

そうして、若干一名を覗いて、楽しい食事の時間は終わった。

「「「「「ごちそうさまーーっ!!」」」」」

「あ〜、美味しかった。 さて、部屋に戻るとするか・・・おい、チョッパー、ルフィを転

がすの、手伝ってくれ。」

ウソップがそう言って、丸くなって動けないルフィを転がす。

「うん、わかった。 あれ?ゾロは??」

「・・・・・俺は、もう少し、ここで飲んでる。 ちょっとまだ、飲み足りねえし・・・・」

チョッパーの言葉にゾロは、そう言って、そのままテーブルで酒を飲み続けていた。

「・・・・・あんたねえ、あれだけ飲んどいて、まだ飲むつもりなの? いい加減にしな

いと、本当に身体壊すわよ。 行きましょ、ロビン。」

「自棄酒は、身体に悪いわよ、剣士さん。」

ナミとロビンは、そうゾロに忠告して、自分達の部屋に戻っていった。

「チッ。 ・・・・・一言、多いんだよ・・・・・」

ゾロは、そう呟いて、クルー達がいなくなった店で一人酒を飲んだ。








  
<next> 




<コメント>

はぁ・・・・・・実は、これ、キリリク用に書き始めた奴なんですが・・・・
書き終えた後、リクに全然沿ってないことが、発覚!
急遽、普通の駄文としてUPさせて頂きました。
なにやってんだろ・・・・・っていうか、いつも、はずし気味なんですよね。
まあ、こんな駄文も、たまには、良いか・・・・・はぁ。(死)
では★