ANNIVERSARY


その14






それから、ラピスは、順調に、成長していった。

2ヶ月目に、首もすわり、金色の髪もふさふさと生え、少しずつ、『あー』などと言葉も発する

ようになった。

お風呂は、ゾロの専任だ。

あんなにおむつを換えるのに、抵抗を示したゾロだが、お風呂は、別格らしい。

日に日に重くなるラピスの体重を腕に感じて、自分と同じ湯船に浸かり、縮こまっている手足

を徐々に伸ばし、湯船に浮かぶラピスを、ゾロは、とろけそうな瞳で、洗っていく。

最近は、サンジにだって、風呂だけは、譲らない。

『お前は、一日中、ラピスと一緒にいるんだ。 お風呂の時間ぐらい、俺にも、独占さ

せろ。』

・・・それが、ゾロの言い分だった。

サンジは、仕方なく、身体を拭く側に回る。

湯気が全身に立って、ぽかぽかと暖かいラピスをゾロから受け取って、サンジは、傷つけな

いように優しく身体を拭いていく。

・・・・その後で、用意して置いた白湯をラピスに飲ませる。

そんな日常の一こまが、サンジには、嬉しくて、新鮮で堪らない。

ラピスは、よく食べて、よく寝た。

そのおかげか、風邪一つ引くこともなく、ラピスは、7ヶ月になった。

皆にかわいがられ、すくすくと育つ、ラピス・・・

ゼフなどは、もう、お姫様呼ばわりだ。

店の合間を縫っては、せっせと、ラピスのために、新作のオリジナル離乳食を作り、ロロノア

家にやってくる。

・・・それはもう、他のコックに見せられないような、ジイジになりきって・・・・

ゾロの母親も、しょっちゅう来ては、新作のベビードレスとか、様々なベビーグッズを置いてい

ってくれる。

『あー、もう、ゾロの子供で、こんなに可愛い子が出来るなんて・・・・ サンジ君、こん

な可愛い子なら、後、何人いても良いわっv 是非、お願いvv』

もう、手放しの喜びようであった。









「ただいま〜、ラピス、いい子にしてたか?」

ゾロは玄関に着くなり、ラピスの元に急ぐ。

「ゾロ! うがいと手洗い! ・・・もう、ラピス、ラピスって・・・・俺のこと無視しやがっ

て・・・ゾロなんか、もう知らねえ!」

サンジは、ゾロにそう言うと、ラピスを抱いて、寝室に鍵を掛けた。

ゾロは、うがいと手洗いを済ませて、リビングに向かうが、ラピスとサンジの姿は、何処にも

ない。

「サンジ〜、ラピス〜、何処に行ったんだよ。 出てこいよ。 な、俺が悪かったら謝る

から・・・」

ゾロはうろうろと、トイレやおふろ場を探す。

「あ〜、う〜・・・」

「あっ、ラピス、しっ・・・ゾロに聞こえる・・・」

サンジとラピスの声を、ゾロが聞き逃すはずはなく、ゾロは、寝室の前に立つ。

「なあ、サンジ・・・出てこいよ。 別に、お前を無視したんじゃねえんだ。 つい、な。

お前だって、最近、ラピス、ラピスって、俺のこと、二の次にしてるじゃねえか。 

なあ、頼む! 出てきて、俺に顔を見せてくれよ。」

ゾロは、降参と言ったポーズをとり、サンジにそう言った。

カチャリっと、ドアの鍵がハズされ、ラピスとサンジの顔が覗く。

「ごめんな、ゾロ。 俺、てめえが、帰ってくるなり、ラピスの事ばかり言うから・・・

ちょっと、嫉妬した。 ・・・そうだよな、俺だって、最近、てめえより、ラピスの方をつ

い、気にしちゃうし・・・ ごめん・・・・俺、ゾロに同じ気持ち味あわせてた。 ラピスも

大切だけど・・・・やっぱり、俺の一番は、ゾロだ。 お帰り、ゾロ。」

そう言って、サンジは、ラピスを抱いたまま、ゾロにチュッと口付ける。

「・・・まあ、俺だって・・・最近、ラピスばっかり、かまってたし・・・・これで、あいこだ。

ただいま、サンジ。」

そう言ってゾロもサンジにキスを返す。

「だあ・・・だあ・・・」

ラピスが二人の間で、ゾロに抱っこをせがんだ。

「おっ、抱っこか? よしよし、パパと一緒に、ママの料理が出来るまで、おとなしく、

待ってような。」

ゾロはそう言って、サンジからラピスを受けとると、サンジと手を繋いで、リビングに向かっ

た。





「ゾロ、この鍋、そっちに運んでくれるか?」

サンジの声に、ゾロは、カーペットにラピスを置いて、テーブルの上に鍋を運ぶ。

「あ〜、あ〜、う〜・・・」

ラピスの声が聞こえる。

「はいはい、もうちょっと待っててね。」

そう言って、ふと、ゾロがラピスの方を向いてみると・・・・

ラピスは、ズリッ、ズリッと足で、床を蹴って、ゾロ達のいるキッチンに這ってきている。

「サ、サンジ!! 見ろ! ほらっ! ラピスが・・・ラピスが・・・」

ゾロは興奮してうわずった声を上げ、サンジを呼んだ。

「ん?何だ、ゾロ。 ラピスに何かあったのか?」

ゾロの声に、サンジは、慌ててラピスの方に目を向けた。

「あ〜、あ〜・・・」

ラピスは、相変わらず、声を上げながら、ほふく前進を続けていた。

「ゾロ! おい、なにボーっとしてんだよ! カメラ、カメラ。 記念すべきラピスの初ハ

イハイだ! 写せよ、早く!」

「ああ、持ってくる!」

サンジの言葉に、ゾロは慌ててカメラを取りに行って、構えた。

パシャッ

カメラの中に、記念すべき、ラピスのハイハイ第一歩が、記録された。

この写真は、すぐに現像され、『バラティエ』の【ラピスアルバム】に早速、飾られた。

【ラピスアルバム】とは・・・・ゼフが、ラピスの成長記録を収めるために、奥の個室にひっそり

と作ったコーナーの名称。

この個室は、一般の人には、予約できないVIPのみのパーティールームになっている。

つまり、ゼフとその身内、親しい友人だけのためのプライベートルームであった。

その一角に、堂々と、【ラピスアルバム】は、あるのだった。











年月は流れて・・・・・

ラピスは、4歳になった。

今年の4月からは、近くの私立ラフテル学園幼稚舎に、入園することになっていた。

サンジは、ラピスが幼稚園で使う、スモッグバッグや、お弁当袋、小物などを作りながら、

フーッと、ため息を吐く。

・・・何か、アッという間だったよなあ・・・・

この前、生まれたばかりだと思ってたら、もう、幼稚園だもんな・・・

・・・・時が流れるのは、早いよなあ・・・・

・・・あんなに小さかったのに・・・・

サンジは、隣のテーブルで、絵を描いているラピスに、近づいて、声を掛ける。

「・・・ラピス・・・何、書いてんだ?」

「うんと、ね。ラピと、サーしゃんと、ローたんと、ジイジと・・・・みんな!」

ラピスはそう言って、サンジに絵を見せる。

ラピスは、自分のことを『ラピ』、サンジのことを『サーしゃん』、ゾロのことを『ローたん』、ゼフ

のことを『ジイジ』と呼んでいた。

「上手に描けたな。 また、ジイジんとこに持っていくか?」

「うん。 ジイジのとこ、行く!」

ラピスはそう言って、お気に入りの猫のバッグに描いた絵を入れて、玄関に走った。

「サーしゃん! 早く、早く!! ジイジ、待ってるよ!」

「ちょっと、待てって。 そんなに急がなくても、ジイジは、何処にも行かねえから・・・」

今にも玄関を飛び出していきそうなラピスに、サンジは、慌てて外出の用意をする。

「・・・さて、今日は・・・・・・・親父・・・また、びっくりするかな・・・・」

サンジは、そう呟いて、そっとお腹に手をやった。

・・・そう、さっき、チョッパーの病院に行って・・・・・・確認してきた・・・・・

・・・まだ、ゾロにも知らせていねえ・・・・

今度は、真っ先に、親父に知らせようと思って・・・・・

・・・それから・・・・ゾロに、だ。

サンジは、ラピスと手を握り、ゼフのいる店に向かう。

「おう! お姫様、今日は、何しに来たんだ?」

ゼフは、ラピスの瞳の高さまで、身を屈ませて、そう言った。

「うんと、ね。 これ、ジイジにあげようと思って・・・・」

ラピスはそう言って、先程描いた絵をゼフに差し出す。

ゼフは、その絵を優しく眺め、ラピスに、こう言った。

「ラピ、ありがとうな。 今日は、この礼に、ジイジがよりをかけたデザートを食わせて

やるから、な。 そこにかけて、待ってろ。」

「うん。 ラピ、ジイジの作るデザート、大〜好きっv」

ラピスは、喜んで、テーブルに腰掛ける。

「・・・なあ、親父・・・・・俺からも、話がある。 実はなあ・・・・・また、赤ん坊・・・

できた。 ・・・今度は、10月頃、生まれるって・・・・ 今日・・・チョッパーの病院に行

って、確かめてきた。 だから・・・親父が、一番始めだ。 今度は、どうしても、一番

始めに話しておきたかったんだ。」

サンジは、いそいそとラピスのために腕を振るうゼフに後ろ姿に、そう言った。

「な、なに〜?! てめえ、そんな大事なこと・・・・あっさりというんじゃねえ!  

お前、身体の方は、大丈夫なのか? ラピス、生むときも、危なかったんだぞ。 

おい、すぐ、ゾロに電話しろ! 良いか、今すぐにだ。 そこの電話使って良いか

ら・・・」

ゼフは、身を乗り出してサンジにそう言う。

「大丈夫。 今度は、大丈夫だ。 女性ホルモンも、万が一を考えて、今から、充分な

量を精製するようにしてるって言ってたし・・・2度目だから、初めのような、精神的な

不安もないだろうって。 じゃあ、今から、ゾロに電話する。」

サンジはそう言って、受話器を握った。 

その日、ゾロは、定時と共に会社をでて、一目散にサンジとラピスの待つ、『バラティエ』へ、

向かう。

「サンジ! サンジ!! あれは、本当か? お前、身体のほう、大丈夫なの

か??」

ゾロは、店に入った途端、そう言った。

「・・・全く、てめえ、少しは落ち着けよ。 親父もゾロも、心配性だな・・・ああ、今度

は、大丈夫だって、チョッパーに太鼓判、押されたから、な。 ほらっ、水だ。」

そう言って、息の上がったゾロに、コップを差し出す。

・・・なら、いいんだ。 っで、今度は、どっちだ? いつ、生まれんだ?」

「・・・そんなの、まだ、解るわけねえじゃん。 生まれんのは、10月だ。」

「いやったー!! 今度は、絶対男だぜ。 男にしろ! いいな!」

ゾロはそう言って、サンジを抱き上げる。

「馬、馬鹿か、てめえ・・・そんなの、俺にどうしろってんだ。 ・・・おらっ、下ろせよ。 

ラピスが、笑ってみてるじゃねえか!」

ラピスは、そんなゾロとサンジをゼフと一緒に笑って、見上げた。















「ホンギャー!ホンギャー!!」

キンモクセイの香りが、風にのって運ばれる季節・・・・・

逞しい産声と共に、ロロノア家に、新しい命が、生まれた。

保育器には、『サンジベビー男』のプレート・・・

鮮やかな緑の髪の毛・・・

その前髪に、一房の金色の髪・・・・

その泣き声は、凄まじく大きく・・・・・

切れ長の瞳から覗く色は・・・・

・・・・・蒼・・・・・蒼・・・・・蒼・・・・・・

・・・・薄く透明な・・・・サンジとそっくりの色で・・・・・

わずかに、眉間には、しわが寄り・・・・

どこからみても、ゾロ、そっくりで・・・・・

唯一、心配された眉毛は・・・・・わからない程度に、渦巻いて・・・・

皆を、笑いの渦に巻き込んだ。







「お前の名は、『零(ゼロ)』、ゼロだ!」

ゾロは、新生児室に眠る新しい家族に、そう囁いた。







 <END>






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<コメント>

如何だったでしょうか?? 凛様・・・
どうしても、簡単には、書けなくて・・・こんなにお時間頂いてしまいました。(-_-;)
また、時間がありましたら、ロロノア家に起こる様々な事件、出来事を
ピックアップして、お届けできれば・・・そう考えてます。(ビクビク)
最後に、ここまで、黙って文句も言わず待っていただいた凛様、
赤ん坊のお名前を考えてくれたビリー様、
こんな長いだけの駄文を心待ち(?)にして、
最後までおつきあいしていただいた皆様、
本当に、ありがとうございました!
・・・なんか、閉店の挨拶みたい(笑)
まだまだ、やっていきますよ〜!!
次回、また、新たな設定のゾロサンで、お会いしましょう!!
では★