ANNIVERSARY


その1





今日は、俺の大事な日。

生まれて初めての緊張と期待、そして、最愛の人と誓い合う大切な日。

もうすぐ、あいつがやってくる。

ほらっ、足音が聞こえる・・・もうすぐ・・・

ここが、俺達の新しいスタートライン・・・








++++++++++++++++++



『・・・ゾロ! ゾ〜ロ! 起きて、あ、な、た。 もう、朝御飯、冷めるじゃん。 早く起

きて、会社に行かないと、遅刻するぞ。 ねえ、ゾロ、ゾロってば・・・』

サンジの声が耳元で聞こえる。

(ああ、もうそんな時間か・・・ 俺としては、もう少し、お前と・・・グハッ)

俺は、腹に強烈な痛みを感じて、ベッドから飛び起きた。

「よう、お目覚めか? 何、朝っぱらから、にやついてんだ? てめえ、気色いぞ・・・

ほらっ、今日から、3年生なんだから、少しは、シャキッとしろよ。 ・・・全く、なんで

俺が、毎朝、てめえを起こしに来なきゃならねえんだ? 俺は、てめえの嫁じゃねえ

んだぞ。 てめえの嫁は、苦労するぜ・・・俺、同情するよ・・・」

サンジは、ブツブツと俺に文句を言う。

「・・・何だ・・・夢か・・・・」

俺はそう呟いて、ちょっと・・・がっかりした。

俺は、サンジが用意した朝食を食べて、一緒に学校に向かう。




俺の名は、ゾロ。

現在、高校3年生。

只今、母親と二人暮らし。

親父は、俺が、5歳の頃、事故で死んだ。

とっても強い人で、近所の子供達に、剣道を教えていた。

人に言わせると、柔よく剛を制すの代名詞みたいな人で、普段は、穏やかな人物だが、その

剣は、世界で、5本の指にはいるほどの腕前だったとか。

俺の剣捌きは、親父に似ているらしい。

親父を良く知っている俺の師匠は、俺に、『お前の剣には、剛しかない。柔を知れ。』とよく言

う。

柔って何だ?

俺には、その意味が、まだよくわからない。

っで、今、俺の隣にいるこいつ。

こいつは、サンジだ。

中学の時からの同級生。

数少ない俺の理解者であり、親友だ。

いつの頃からか、仕事で忙しい母さんに代わって、毎朝、俺を起こしに来るついでに、朝食を

作ってくれる。

こいつの作る料理は、とにかく美味い。

母さんが作るのより、格段上だ。

まあ、なんたって、テレビのグルメ番組とかで有名な、あの、『バラティエ』レストランの一人

息子だからな。

味にうるさいのは、親父譲りだな。




・・・でも、最近・・・なんか、俺・・・違うんだよな・・・

親友・・・そう、親友には違いないんだ、今でも、そう思ってる。

けど、違うんだよ・・・それだけじゃねえんだ。

ナミや、ウソップや、ルフィとは、全然違う・・・

側にいると、息苦しくなって・・・でも、側にいないと・・・耐えられない・・・

この前、ナミに相談したら、『あんた、自覚が足りないわ。』って言われた。

(自覚って・・・何のだ??)

俺には、さっぱりわからねえ。

そう思って首を捻っていたら、ナミが、ため息をついて、こう言った。

「あんた・・・サンジ君に、恋してるのよ・・・」

「なにーっ?!」

俺は、思わず、叫んだ。

恋、恋、恋・・・この言葉が俺の頭の中で、グルグルと回った。

(・・・俺は、サンジに恋してるのか?)

そう考えただけで、全身が、カーッと熱くなる。

そういやあ、最近、あいつが笑うと、ドキッとする。

でも、それが、俺に対して向けられてないと、何だか、無性に腹が立って・・・

・・・泣いてると、抱きしめて、慰めたくなる。

サンジの姿を見つけると、ほっとする。

でも、俺の知らないとこで、他の野郎と話してると、苛ついて・・・

それが、恋してるって事なんだろうか・・・

俺は、こういうことには、縁がないほうだから、ナミに指摘されるまで、わからなかった。

俺は、この年で、初めて、自分の気持ちを自覚した。

サンジと出会って、もう5年になるのに、今頃、気付いてしまった・・・自分の気持ちに。

でも、サンジは、相変わらずで・・・

俺は、この関係を失くすのが、怖くて・・・言い出せない。







「・・・って、ゾロ。 おい!ゾロ。 聞いてんのか?」

「あっ、ああ、なんだ。」

「ああ、なんだじゃねえだろ? 進路だよ、進路! 俺ら、もう3年じゃん。 お前、防

衛大から、推薦きてんだろ?? やっぱ、そっち受けるのか? ・・・俺はなあ、どうし

ようか迷ってんだよ・・・ オヤジは、大学行けって言うし・・・ 調理師専門学校ってい

う手もあるしな。 まっ、どっちみち、お前との腐れ縁も、この1年で終わりかあ・・・ 

思い出すよな、5年前・・・」

サンジは、そう言って、5年前の俺との出会いを話しだした。




・・・5年前の中学の入学式・・・

その中学は、私服通学が認められていて・・・俺は、不覚にも、また寝坊して、入学式に間に

合わなかった。

仕方ないので、裏庭で、時間を潰そうと行ってみたら、綺麗な女の子が、先輩達に絡まれて

いた。

金色の髪の毛に、桜の花びらがついてて・・・

後ろ姿だけで、綺麗な子だってわかった。

人が困ってるのに、放ってはおけない。

まして、可愛い女の子なら、尚更だ。

俺は、彼女のところに急いだ。

「てめえら、ふざけんな!!」

そう言って、その娘は、俺の目の前で、先輩達を蹴り倒していった。

俺は、自分の目を疑った。

こんなに強い娘が、他にいたなんて。

俺が知っている強い娘は、道場の娘のクイナだけだった。

あの強さに匹敵するほどの娘がいるなんて、俺は、信じられなかった。

「・・・何だ? てめえもか?」

彼女は、そう言うと、俺に向かって蹴りを繰り出してきた。

ヒュンと空気がうなる音が聞こえる。

「ば、馬鹿、違う。 俺は、お前が絡まれてると思って助けに・・・」

俺は、ギリギリで、その蹴りをかわしながら、彼女にそう言った。

「・・・そうか、ごめん。 俺、てっきり、こいつらの仲間かと・・・本当に、ごめんな。」

そう言って、彼女は、にっこりと、俺に微笑んだ。

「俺、サンジ。 サンジって言うんだ。 今日、入学式だったんだけどさあ、こいつらに

絡まれて、うざいから、相手してやったんだ。」

「・・・俺、ゾロだ。 でも、お前、強いなあ。 俺の出る幕無かったな。 でも、あまり

感心しないな・・・女の子が、そんなコトしちゃ、いけねえ・・・ガフッ!!」

「・・・てめえ・・・俺の何処が、女の子なんだよ! その目玉は、飾りか? 俺は、れ

っきとした、男だ。 てめえも、ふざけたこと抜かすと、この場で、オロすぞ。」

サンジは、俺の頭に、見事な踵落としを決めると、不機嫌そうに、そう言った。




・・・それが、俺達が出会ったきっかけ。

そう、俺は、初め、サンジを女だと思っていた。

誰だって、あのときのあいつを見りゃ、間違うだろ?

だって、あいつ、真っ赤なパーカーにバーバリーチェックのパンツはいて、白いシャツにピンク

のネクタイはめてんだぜ。

身体の線は細いし、金色の髪は、長いし・・・

瞳なんか、そりゃあもう、綺麗な蒼色で、ファッション雑誌とかに出てくるモデルみたいだった

んだから・・・

もしかしたら、俺、あのときから、ずっと・・・想ってたのかも知れねえ・・・








「・・・なあ・・・ゾロ・・・ お前、最近、変だぞ? 俺の言ってることも、上の空だしさ。

何か、悩み事でも、有るのか? 俺、何の力にもなれねえけど、悩み聞くことぐらい出

来るからさあ・・・俺達、親友だろ?」

そう言って、サンジは、俺の顔を覗き込んだ。

(・・・////改めて、自分の気持ちに気がつくと・・・やばい・・・ドキドキする・・・でも、

どう言えっていうんだ・・・お前に惚れてるって言えばいいのか? ・・・ダメだ・・・そん

な事言ったら、この関係も終わっちまう・・・振られた挙げ句に、サンジから避けられた

りしたら・・・俺・・・耐えられねえ・・・)

「・・・すまない、サンジ。 今は、言えねえ。 ・・・でも、お前に相談できるようになっ

たら、その時は、言うから・・・」

(・・・そんな日は、来ねえよな、きっと・・・)

俺は、サンジが真剣に俺のこと心配してるのがわかったので、それだけ、答えた。

「・・・わかった。 でも、その時は、絶対に、真っ先に、俺に言えよな。」

「おう。」

サンジはそう言うと、またどうでもいいようなことを、俺に話し始めた。













それから、年が明けて。

サンジが、大学受けることが決まって、俺は、決まっていた防衛大の推薦を蹴って、サンジと

同じ大学を受験した。

少しでも、サンジと一緒にいたかった、ただ、それだけの理由で。

サンジも、担任の先生も、クラスメートも、皆、俺の決断に驚いていた。

事情を知っているナミと自分のしたいようにやりなさいといった母さんだけが、何も言わず、

黙ってた。

俺達は無事に、二人とも合格し、学部も同じ、教育学部だ。

ただ、専攻がそれぞれ違う(俺は、体育専科、サンジは、外語専科)ので、俺は、共通の講

義をまめにチェックし、サンジにあわせた。

大学にはいると、サンジはすぐに、サークルから声をかけられる。

何たって、俺が惚れるほどの容姿だ。

入学早々、サンジは、他の学生達の注目の的だった。

でも、不思議なことに、サンジは、どのサークルにも入ろうとしなかった。

あれだけ、中学・高校とサッカー界の星と騒がれていたにもかかわらず、サッカー部の入部

もあっさりと断った。

何度も、顧問の先生が来て入部を勧めたが、『サッカーよりも、今、やりたい事があるから』と

言って、最後まで、OKしなかった。

俺は、心底、ほっとした。

サンジがサークルに、入るなら、俺もそのサークルに入ろうと決めていた。

俺の思考は、自分でも、かなりやばいところまできていた。

俺の大学生活は、サンジを中心に回っていた。

でも、俺は、自分の気持ちをサンジに伝えることに、まだ、ためらっていた。

この穏やかに流れる時間を失うことが怖くて・・・俺は、逃げていた。

そんな俺達に、事件が起こった。





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<コメント>

ロロノア家・・・・
とうとう、このサイトで独立したパラレル分野に昇格してしまいました。
キリリクが、初めだったんですね・・・これ。
今でも、キリリクにはちゃんと置いて有るんですが、
この際と思い、こちらに作ってみました。

では★