うれし、はずかし・・・大好き☆


その2



 




付き合いだしてから初めて二人で街に繰り出したゾロとサンジ。

互いに、うきうきして、そわそわして落ち着かない。

普段なら見向きもしない店や風景も、サンジと一緒にいるだけで、こんなにも楽しいものかと

ゾロは、微笑みながらそう思った。

「あ、ゾロ、ちょっと待っててな。 あの店覗いてくる・・・。」

嗅いだ事のない香辛料の匂いを嗅ぎつけて、サンジは、ゾロにそう言うとその店に入ってい

く。

「ああ、ここで待ってる。」

ゾロは、そう返事して、店の前の街灯に凭れ掛かり、サンジを待つことにした。

見たことも無い香辛料に瞳を輝かせ、サンジは、店内を物色し始める。

すると、店の中にいた女性達の話し声が、サンジに耳に入ってきた。

「見て見て・・・あそこ・・・。 凄く格好良い人が立ってるんだけど・・・。 誰か待ってるのかし

ら・・・?」

「やだ、本当。 ねえ、声かけてみようか? 人を待っているなら、その間、話ぐらい出来るか

もよ。 ねっ?行ってみよう・・?」

「そうね。行こう、行こう・・。」

その女性達はそう会話して、店を出て行くとゾロの元に向かっていく。

「・・・・・クソッ!」

サンジは、そう吐き捨てるように呟いて、何種類かの香辛料を素早く手に取ると勘定を済ま

せ、ゾロの元に急いだ。

そんなサンジの瞳に映ったのは、先程の女性達と困った様にはにかんだ顔をしたゾロの姿。

チクンとサンジの胸に痛みが走る。

「あ、もう買い物済んだのか?」

サンジの姿を見止めて、ゾロがホッとしたように、そう言って近づいてきた。

「あ、ああ・・・・もう・・・・済んだ・・・。」

サンジは、それだけ言うとスタスタと道を歩き始める。

「お、おい・・・?」

一人で歩き始めたサンジに、ゾロは慌てて後を追いかけた。




・・・・・・・やっぱし、ゾロは、もてるんだ。

男の俺が見ても格好良いもんな。

・・・・・・・・・なんで、俺なんかと・・・・。




「こら、クソコック!! おい、って!」

ゾロはそう言って、サンジの肩に手を掛ける。

「あ? ごめん・・・・ゾロ。」

サンジは、ゾロを正視できずにそう言って俯いた。

その瞳を見れば何もかも見透かされそうで・・・。

あんな些細な事で、嫉妬している自分を知られたくなかった。

耳を澄ませば、すれ違う女性の囁く言葉がサンジの耳に入る。

サンジには、女性達が皆、口々にゾロのことを誉めそやしている様に聞こえた。

「・・・・お前、あの店でなんかあったのか? あの店出てから変だぜ、お前・・・。」

サンジの気持ちを知らないゾロは、そう言って溜息を吐く。

ズキンとサンジの胸の痛みが酷くなった。




・・・・・・・俺・・・・ウザがられた・・・?




ゾロの吐いた溜息に、サンジの瞳に涙がこみ上げてくる。

「別に・・・・・・・・なんでもねえ・・・。 もう帰る!!」

泣き顔を見られたくなくて、サンジは俯いたまま、そこから走り出した。

「はぁ? おい待て! サンジーッ!!」

突然走り出したサンジの背中に、ゾロは大きな声でそう叫ぶ。

ピタリとサンジの足が止まった。

初めて人前で名前を呼ばれて、サンジはゆっくりとゾロのほうを振り返る。

「ッ・・・・・ゾロ・・・・。」

駆け寄ってくるゾロを見つめるサンジの瞳からは、次々と涙が溢れてきて・・・。

「はぁ、はぁ・・・。 今度は、一体なんなんだよ。 なんで泣く? 俺、なんかしたのか、お前

に。 理由を言え、理由を・・・。」

ゾロは息を切らしながら、そう言うとサンジの顔を見つめた。

そっとサンジの頬を伝う涙を指で拭うゾロ・・・。

そんな優しいゾロの仕草に、サンジは、グッと唇を噛み締めて言葉を発する。

「・・・・・・ごめん、ゾロ・・・。 俺、ウザい・・・よな・・? ごめん・・・。」

「いいから、理由を言え、理由を。 なんでお前が泣くんだ・・? ・・・・・俺のせいか・・?」

困ったように寂しげな表情を浮かべるゾロに、サンジは無言で首を横に振った。

「じゃあ、なんで・・!!」

「・・・・・・ゾロは・・・・もてるのに・・・・なんで、俺なんかと・・・・」

ゾロの言葉にサンジは、そこまで話して言葉に詰まる。

そこから先の言葉がどうしても言えない・・・・。

言葉の代わりに、涙がサンジの頬を濡らした。

「馬鹿野郎!! じゃあ、なんでお前は、俺と付き合ってんだ?! 好きだからじゃねえのか

よっ! 俺と同じ・・・・好きだからだろっ!!」

ゾロはいらただしげにそう叫ぶと、サンジの身体を引き寄せる。

「・・・・・・ゾ・・・・ロ・・・。」

「・・・・・うるせえよ。 少し、黙ってろ。 俺、今、すんげえ事口走っちまって、恥ずかしいんだ

からよ・・・。」

ゾロは照れたようにそう言うと、ギュッとサンジを抱きしめる腕に力を込めた。

「ゾロ・・・・ありがとう。 ・・・・もう平気・・・。」

サンジは涙を拭い、にっこりとゾロに微笑んで、そっとゾロの背中に腕を回す。

不意にゾロが、サンジから視線を逸らした。

「・・・・・・・もう二度とあんな事言わねえからな。 ほら、戻ろうぜ・・・?」

ゾロは、サッと身体をサンジから離し、サンジの頭をポンと小突いて歩き出す。

「・・・・・・ゾロ・・・?」

いきなり身体を離されたサンジは、きょとんとしてゾロを見つめた。

「あのなぁ・・・。 あんな顔、こんなところですんなよな。 マジ洒落にならねえんだよ! ただ

でさえ、我慢してるのに・・・。」

ゾロは、ボリボリと頭を掻きながら、そう言ってばつが悪そうに空を見上げる。

「クスクス・・・。 んじゃ、早く帰るとするか!! 走るぞ、ゾロ!!」

「あ、おい、待てって! 俺を置いていくな!!」

笑顔でそう言って走り出したサンジを、ゾロは、また追いかけて走り出した。

「・・・・・・・・・あいつら・・・・・船の中だけじゃなく、こんなところでもやってんのかよ・・・。」

遠目で、ずっと二人の様子を見ていたウソップが、呆れ顔でそう呟く。

「・・・・・・あの二人って・・・・黙ってても目立つのに・・・。 ある意味、凄いよね・・・。」

チョッパーもウソップの隣りで、そう呟いて二人の背中を見送った。








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「ねえ、サンジ君・・・・。 あたし、街で変な噂聞いちゃったんだけど・・・。」

「え? 何の噂ですか?」

「今日、道のど真ん中で『好きだ』と大声で叫んだ挙句、男同士で抱き合ってるホモップルが

いたそうよ・・・。 それってさ・・・・・考えたくもないけど・・・・」

「・・・・なら、考えるなよ。」

「あはは・・・・やだな、ナミさん・・・・。」

「やっぱりあんた達だったのね?! 船の中だけでなく、外でもなんて・・・!! 問答無

用!!」

バキッ!! ボカッ!!

夕方、戻ってきたナミが、そう言って二人に鉄拳を加えたのは、言うまでもない。






<END>



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<コメント>

タイトルをなんとかしろよ、だな。(第一声)
はぁ・・・・始めは、9000番と組み合わせて書く予定でした。
しかし、書き始めたら、単発で終わった方が良いかなぁと。(殴)
今回は、可愛いゾロを目指したのですが・・・
世間も呆れる馬鹿ップル!(笑)
いかがざんしょ?凛さん?!
リクエストは、【もてもてのゾロにサンジが動揺して…】だったと・・・。(汗)
違ってましたか?凛さん??
うひゃあ・・・・逃げる!!


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