Angel Agein


その1






「もう、ロロなんて知るか! ・・・・馬鹿野郎! 俺、家出するからなっ! 

探すんじゃねえぞっ!!」

バタン・・・・・

「お、おいっ! テンってば・・・・ちょ、ちょっと・・・・・あっ。 ・・・・・行っちまいやがっ

た。 ・・・・もう、本当に家出する奴があるか・・・・ それに探すなって言っといて、

本当に探さないと怒るし・・・・・あいつのへそ曲がりにも、困ったもんだよな。 

・・・・あれで、天界最上級の天使っていうんだから・・・・・・育てた奴を恨むぜ、

俺は・・・・・・ ・・・・大方、また、ナナのところだろうけど・・・・ しょうがない、迎えに

行くか。」

ロロはそう言って、ナナのところに向かった。



ここは、天界・・・・

この前の事件(テンが、人間界で生まれた話)から、もう、半年の月日が流れ、その後、特に

事件らしい事件もなく、ロロとテンは、仲良く暮らしていた。

っで、なんで、仲の良い二人が、このようになったのかと言うと、平和な(?)天界でのくらし

に飽きたテンが、ロロを誘って、人間界に遊びに行こうと言い出した。

もちろん、死の天使としてだ。

人間界で暮らしたことのあるテンは、好奇心も旺盛で、何かあるとすぐに、人間界のことに首

を突っ込む。

死ぬ予定の人間を助けるなんて、ざらだ。

この前なんか、『冗談じゃないわよぅ・・・』と口走る変な人間の命を、助けた。

ロロが、それとなく諫めても、

「あいつは、前に、ゾロやサンジやゴーイングメリー号の仲間を助けてくれたんだぞ。

これくらい良いじゃねえか。 ・・・別に、それで、人間界が、変わるって事もねえ

し・・・・」

そう言ってのける始末・・・・・・

「あなた様が、しっかりフォローして貰わないと、困りますよ! だいたい最高権力者

ともあろうお方が、人間界のことに一々行動されては、天界の秩序が、損なわれま

す! もっと、威厳と自覚を持って・・・・・」

「ああ、わかってるって・・・・・・ テンには、俺から言っとくから・・・・・」

「ロリエル様! 『テン』様じゃありません! 『セージ』様とおっしゃって下さい。 

だいたいあなた様が、そうやって甘やかすから・・・・」

「・・・もう、勘弁してくれよ。 ナナ、後は任せた。」

「お待ち下さい! ロリエル様!! まだ、話は・・・・」

ロロはそう言って、いつも、長老達から、うだうだと説教される羽目になる。

テンに逆らえない分、ロロには、言い易いらしい。

そんな時に、テンが、死の天使として、人間界を覗きに行こうなんて言うもんだから、つい、

ロロは、嫌みな言葉を言ってテンを怒らせてしまった。






「クソッ。 ロロの奴・・・・・ 俺だって、わかってるんだ。 一人の人間の生死を無駄

に、いじくっちゃいけねえって事ぐらい・・・・・ けど、どうしても、目の前で、死にそう

な奴が居たら、手が出ちゃうんだよ。 ましては、あいつらに係わる人間・・・・ 

はあ、俺って、天使失格だよな。 なんで、神様は、俺なんかに、羽を8枚もくれたん

だろ・・・・・・」

テンは、そう呟いて、ナナのところに、向かっていた。

何か嫌なことがあると、テンは、いつも、ナナのところに行く。

途中、雲の切れ目から、人間界の様子が、テンの瞳に映った。




今日は、嵐なのか・・・・・

あ~ぁ、あの船・・・・・・ヤバそうだな・・・・・

ロロから言われたばっかだし、ごめんな。

今は、助けてあげられねぇんだ。




テンは、そう思いながらも、その船をじっと見つめていた。

よく見ると、見覚えのある羊の形の船頭・・・・・




・・・・・・あれってもしや・・・・・・・




そうテンが考えるのと、身体が動くのとほぼ同時だった。

今にも、転覆しそうな船は、まさしく、ゴーイングメリー号だった。

クルー達は、皆、懸命に嵐を乗り切ろうと甲板で動き回っている。

その中に、ゾロとサンジの姿もあった。

高波が、容赦なく船を襲う。

「あっ、アブねえ!」

テンは、思わず、叫んだ。

サンジを飲み込もうとした波に、ゾロが庇って、海に投げ出されたのだ。

テンは、躊躇無く、人間界に飛んだ。

ロロに諫められたことなど、すっかりと忘れて。

テンは、荒れ狂う海に漂うゾロの姿を捕らえると、抱き上げて、船に下ろす。

空は、天使の降臨に嵐を止め、海は、嘘のように、静まり返った。

ゴーイングメリー号のクルー達は、目の前で、起こった出来事に、その場を動けないで居た。

「ゲホッ、ゲホッ・・・・馬鹿が、サンジッ!! なんで海に飛び込んだ!」

ゾロは、甲板に着くなり、テンの胸ぐらを掴んで、立ち上がる。

「お、おい! ゾロ!」

「うるせえ! ウソップ、黙ってろ!! 俺は、今、こいつに文句・・・・・・」

ゾロは、テンを掴んだまま、ウソップの方に視線を移す。

・・・・・ウソップのすぐ横に、サンジの姿。

「???????」

ゾロは、自分が今掴んでいる人物と、サンジを見比べる。

どっちを見ても、サンジ・・・・・・

何回見比べても、サンジ・・・・・・・

違うのは、巻いてない眉毛とその服装と背中に見える羽・・・・・・

「???・・・・はあ??」

ゾロは、素っ頓狂な声を上げ、腕を下ろした。

「ゾロ! 久しぶり!! 俺だよ、わかんねえかなあ・・・・・」

テンはそう言って、ゾロの首に抱きついた。

「「!!! イッ!!」」

ゾロとサンジが、同時に叫んだ。

「ああ、他の皆も、久しぶり。 俺だよ、『テン』。 成長したから、わかんなかった

か?」

テンは、ゾロにしがみついたまま、皆に挨拶する。

「・・・・『テン』って、あのテンちゃん??」

第一声を口にしたのは、やはり、ナミだった。

「うん、そうだよ、ナナ・・・じゃない、ナミ。 良かった、覚えてくれてたんだ。」

テンはそう言って、羽をパタパタと震わせると、嬉しそうに笑った。




うっ・・・・・こんな体勢で、その顔で、そんな嬉しそうに笑うな・・・・・

・・・・・か、可愛い・・・・・・・




ゾロの頬が、自然と緩む。

それをいち早く察知して、サンジが、ウソップの隣で、鋭い視線で、ゾロを睨み付けた。




・・・・ヤバい。

・・・・・サンジの奴、気付いたかな・・・・・・

・・・・・・し、仕方ねえだろ、これは・・・・・・

・・・・・・・不、不可抗力だ、そう、不可抗力・・・・・・




サンジの鋭い視線を感じて、ゾロは、慌てて、頬を引き締めると、テンの身体を、引き離す。

テンは、やっと、ゾロの身体から離れると、サンジの方に飛んでいった。

「サンジ~! 会いたかったぜ! 俺さあ、あの後、成長したんだよ。 久しぶりだ

な。 元気だったか??」

そう言って、テンは、サンジのギュッと抱きつく。

「あ、ああ・・・・お前・・・・本当に、テンか??」

「おう、サンジが、俺の名前付けてくれたじゃんか。 あの時食べた、パンプキンプリ

ン、美味しかったぞ。 ・・・・もう、忘れたのか??」

テンは、サンジの頬に顔をすり寄って、猫のように甘える。

「すっげえ!! サンジが、二人居るぞぉ?? すっげえ!!」

その様子を見ていたルフィが、凄いを連発する。

本当に、成長したテンは、サンジとうり二つであった。

羽と眉毛の違いがなければ、さすがのゾロも、見るだけでは、違いに気が付かないだろう。

「わ、わかったから、離れろって。 同じ顔に懐かれても、ちっとも嬉しくねえんだよ。

ところで、テン。 お前、何しに来たんだ? 天界に戻ったんだろ??」

サンジは、テンを押しのけて、そう聞く。

「ああ、ちょっと、いろいろあってさ・・・・なあ、少しの間で良いから、俺、ここにいても

良い??」

テンは、サンジにそう言った。

「・・・ナミさん、どうしますか??」

「・・・・そうねえ・・・・テンには、借りがあるし・・・・・良いんじゃない? 別に、急ぐ旅

でもないし・・・・ 皆は、どう??」

「別に、良いんじゃねえか。 久しぶりだな、テン。 覚えてるか? キャプテン・ウソ

ップ様だ。 俺が、お前のイスとか作ったんだぞ。」

「おう! テン、久しぶりに遊ぼうぜ。 サンジが二人いるみてえで、面白いぞ。 

ニシシ。」

「お、お前・・・・羽の数、増えてないか?? 俺、チョッパー・・・覚えてる??」

「こんにちは、テンちゃん、ロビンよ。 ふふふ、もう、ちゃんづけは可笑しいわね。 

また会えて嬉しいわ。」

ナミの言葉に、他のクルー達は、ゾロを覗いて、皆、賛成した。

「どうしたのよ、ゾロ・・・・・さっきから、ボーっとしちゃって・・・・・ふふふ、まさか、

二人に見とれてたとか??」

先程から、ボーっとサンジとテンに見とれているゾロに、ナミは、笑いを堪えながら、そうちゃ

かす。

「う、うるせえっ!! そ、そんなんじゃねえ・・・・・クソッ、俺、寝る!」

ゾロはそう言って、一人、船尾の方へ、向かっていった。

「ふふふ・・・・図星、ね。 ・・・・なんか、楽しいことになりそう・・・・」

ナミは、焦ってその場を逃げ出したゾロの後ろ姿を見てから、サンジ達に目を移してそう呟い

た。




・・・・・・ナミ・・・・・その呟きは・・・・・聞かなかったことにする・・・・・・




ウソップは、心の中で、そう決めた。

「じゃあ、嵐も去ったことだし、皆、片づけ、よろしくねvv ・・・・・ところで、テン・・・・・

その格好、どうにかならない??」

「あっ、じゃあ、サンジの服、貸して貰うことにする。 良いよな、サンジ。」

テンは、そう言って、サンジの方を見た。

「おう、俺は、かまわねえけど、その羽が有るんじゃ、着れねえだろ・・・・・

どうする??」

サンジは、タバコに火を付けながらそうテンに言う。

「ああ、これね。 大丈夫。 ・・・・ほらっ、こうすればいいだろ。」

テンはそう言って、呪文を唱えて、羽を背中から消した。

「おわっ! なんだ?? 羽って、消せるのか??」

サンジは、思わず、吸っていたタバコを落とす。

「おう、俺ぐらいの天使になると、呪文で、自分の身体にしまい込めるんだ。」

テンはそう言って笑った。




・・・・・・・どっからみても、サンジじゃねえか・・・・・・・・

・・・・・・・本当、眉毛だけしか違いがないわ。



その様子を見ていた他のクルー達は、心の中でそっと呟く。

「うっひょ~!! サンジが二人になった! ってことは、飯も二倍になるのか??」

「「「「なるかーっ!!!」」」」

ルフィののんきな言葉に、ナミ達は、即行で、ツッコミをいれる。

「ふふふ・・・・どっちにしても、面白いわね。」

ロビンは、目を細めてそう呟いた。






 
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<コメント>

はい、これは、NOVELSに置いてある【Sweet Angel】の続きと言いましょうか・・・・
クミ様ご依頼の『サンジ似の天使』のキーワードで、作らせていただきました。
ボキャが、狭くて、こんなモノしか書けなくて・・・・・ごめんなさい、クミ様。(ペコリ)
まあ、これからどんな展開になるかは・・・・次をご覧下さいませvv
リクをはずしてなければ・・・・・いいのですが。(-_-;)